私立ルドビコ女学院開校記念公演「最凶ガール」

満足度
公演時期 2014年4月22日〜27日
会場 新宿 サンモールスタジオ
作・演出 桜木さやか

あらすじ
私は自分の名前が嫌い。
だって、全然あってない。
幸福に恵まれると書いて幸恵・・・・・・真逆だ。
私は超がつくほどついてない。
小さい時から、ジャンケンは勝ったことがないし、クジや抽選は絶対ハズレ、
お菓子についてくるおまけはたいてい壊れてた。

私はこの春、転校する。
しかも半分が中高一貫というお嬢様女子校。
わたしの身に一体何が起こるのか。
嫌な予感しかしない・・・
(公式サイトより一部引用)
観劇感想
女性だけが登場する、アイドルチックな舞台。
スタッフを見ると、出演者も多い。
歌唱指導、制作に木村若菜、振付に藤堂光結
手作り感がある。
そして、舞台も手さぐり感がある。

率直に言うと、まずとにかく中村裕香里
この人がいるといないとでは、全然違う。
私の満足度でも、星半分違う。
本来であれば星2だけれど、中村裕香里の主演の力で星2半。

「いや、みんなで作り上げた舞台でしょ?」
と、言いたいところなんですけど、それはそれ。これはこれ。
演技の実力も明らかに秀でているのは当然として、
私が一番感じるのは、声の張り。
これが他のメンバーとまるっきり違う。
一番彼女が声出ている。
一番セリフ量が多いのに。
これは他のメンバーも頑張ってほしいところ。

そして、いきなり次の課題の話しをしてもなんなんですけど、
中村裕香里の演技に対抗できる人物が、
現時点ではいないところがつらい。
彼女ひとり頑張ると、逆にそれが違和感に感じてしまうほど。
異質になってしまう。
彼女の演技に対抗できる、
受け止め、反発できるメンバーがほしい。
このメンバーからして、現時点で対抗できるのは、
大谷楓役の泉川恵美であろうか?
今吉めぐみ為近あんなにも期待したいところなのですが、
女優としてはまだまだ発展途上。
ここのレベルアップを求めたい。

さて、オープニング、エンディングは、歌やダンスもあって楽しい。
が、残念なことに、舞台中にはいっさい無し。
まっ、いろいろ事情があるとは思いますが。
私としては、もうちょいエンターテイメントしてもいいかな〜?と思います。
基本ストレートプレイですから。
完全にプロの女優であれば、
演技だけで観客を魅了していけるのだろうけど、
これからの子が多いので、ミュージカルナンバーとまでは行かなくても、
簡単なダンスがあってもいいかな?と思います。
そもそも、OP、EDのパフォーマンスを観るかぎり、
みなさんダンスはけっこうできましたからね。
あれを見ると、本編でもっとみたいな〜なんて、
観客として率直に思う。

話の流れとしては、
とにかくあらゆる運に見放された女性、福山幸恵。
→お嬢様女子校に転校。
→人と関わりたくないと思いつつも、
ヤンキー系なり、生徒会なり、オカルト研究部なりが近寄ってくる。
→さらには学園一かなり残念な妄想女、大谷楓につきまとわれる始末。
→学校では聖母マリアを主役にした演劇が行われる予定。
→旧校舎には、階段先に鏡があり、
ある時間にそこに立つと魂を奪われるという噂が・・・
こんな感じです。
じつは、もっと複雑ですが。

内容としては、「序章」という意味合いもあってか、
主役である福山幸恵の「最凶」の過去説明が、やや長いかな?
幼稚園、小学校とあるし。
まー美波ちゃんの伏線があるので、少し強めにしたいところではありますが。

転校してからの、ヤンキー系グループ、生徒会、オカルト研究部、変人キャラ、
学園七不思議を追う一般の子たち、等、個性的なキャラが登場。
ここもよくあるパターンなんですけど、
いかんせん、キャラ設定が薄い。
私はもう少し濃く、デフォルメしてもいいと思う。
自然な演技を求めるタイプの舞台でもないし、
誇張してもいいと思う。
後半の演劇部分のところは、あえて誇張させていますが。
女優として、まだまだこれからの子が多いので、
そこまで言うべきことではないけれど。
個性の主張としては弱いかな?

そんな中で、学園七不思議を追っていた、
一般的な女子高生たちが出会う少女、岸本歩夢。
後半真相はわかるのですが、それでもイマイチわかりそうでわかりづらい。
ここはちょっといろいろひねりすぎな感もある。
ただ、このキャラ的にはハマリ役だと思う。
配役としても絶妙でしょう。
この役を演じる、前田美里が小さくて可愛い。
私のイメージ的にまつながひろこに似ている。
この子に、あのビックリした時のリアクションをさせるということは、
絶対に考えていたでしょうね。
可愛いからこそ、あの場面が映えますから。
女優としてはこれからだと思うけれど、
非常に魅力的な女性だと思う。
今後に期待したい。
ま〜人気出るでしょう。

降霊やら、魂の移動やら、
見ていてちょっと混乱することも私はありました。
「あれ?どっちだっけ?」と。
このあたりは、出演者だけが理解して、
観客が置き去りになっている感もある。
こういう時こそ、ゆっくり丁寧な補足説明が必要かも。

コメディタッチ、「クスッ」と笑う部分もたしかにあるのだけれど、
内輪ネタも多く、私が変人なこともあり、
「笑い」という部分に関しては、あまり伝わってきませんでした。
「鼻毛」のところも、
物語の流れとしてのワンクッションという部分においては好きだけれど、
その他の部分はほとんど印象に残っていない。

気になった役者は・・・
今回は役者も多く、チラシは顔写真付きではないので、
私の記憶だけの判断。
全員確認できず申し訳ない。

中村裕香里 福山幸恵役。
前述していますが、彼女は全てにおいて秀でている。
2006 新かぐやの浦島モモタロウ おばあさん役
2005 かぐやの浦島モモタロウ おばあさん役
2004 ココスマイル3 ハル役
2003 フレンズ カヤ役
これのみならず、音楽劇 ガラスの仮面 2008では、
蜷川幸雄氏に鍛えられてますからね。
大きなお世話ながら、エターナルファンタジー演劇大賞 2012ではMVP。
これ以降も、飛ぶ鳥を落とす勢いのように、
「100年分の声援を」
「腰抜け男ども、義理と人情は…女が見せてやる!」
「LIFE 〜未来のあなたの為に〜」
「Legend〜風のなかの塵〜」
MOSH04「知りすぎていた男」
「針が指す彼方まで」
ツラヌキ怪賊団 4th Navigation「Beautiful Runner」
まー舞台漬け。

今回の舞台、最初からほぼ出ずっばりで、
セリフも膨大。
中盤あたりようやく舞台から消えることもありますが、
ほぼ彼女メイン。
彼女におんぶに抱っこの面があることは否めない。

前述した役者としての声の張りもありますが、
さらに彼女は瞳の動かし方、目配り、眉毛の動かし方もじつに丁寧。
女優として当たり前のことなのですが、それを自然とできる。
だから観客も感情移入する。
彼女のはそれができる女優だもの。

今回の役は、とにかく不運、不幸な女性。
天然ボケキャラ系が得意とはいえ、この役はボケキャラでありつつ、
自分でツッコミもする。
言うなれば、「さまぁ〜ず」の三村マサカズ。
舞台中でもけっこうしんどいと思う。
現時点で22歳ではあるけれど、
女子高生役も全く違和感がない。
逆に演技が上手過ぎて、違和感を感じてしまうのがつらいところ。
本当はもうひとりふたり、バチバチ演技バトルできる役者がほしい。
そうすれば、もっと彼女も光るはず。

今吉めぐみ 泉莉奈役。
いわゆるヤンキー系な役なのだけれど、
じつはちょっと優しい・・・みたいな感じ。
中村裕香里についで出番が多い。
一応、対抗のキャラのはずなのだけれど、
いかんせん、中村裕香里の演技の実力と比べると、
明らかに落ちることは、観客が一番わかっていることでしょう。
表情もパっとしないし、なにか暗い雰囲気だし、
キャラ設定がイマイチつかみきれていない感もある。
過去回想の違う役の部分があるので、それはそれで大変だけれど。
発声も、普通の声質なので、舞台声ではない。
このあたりも頑張ってほしいな。
う〜ん、後はやっぱり、表情の変化がもっとほしい。

為近あんな 園田美波役。
ルックスは本当に美少女。
良い意味でのアヒル口。
ひじょうに目立つ。
今回のメンバーの中では、ほどほどに演技ができる方ではある。
ただ、私のようにいろいろ観劇している人間から言わせてもらうと、
まだまだお話しにならないレベル。
舞台上、集中できてないところもある。
ムラもある。
気になる部分は山ほどある。

が!
彼女には「華」がある。
舞台を観た時に、パッと輝く。
これは彼女の天性。
いろいろなタイプの女優はいるけれど、
やっぱり「華」かあると、いつまでも観ていたい欲求にかられるもの。
それを彼女は持っている。
このカンパニー?からしてみると、外したくない。
ひじょうに重要。
演技が発展途上でも、舞台上で人を引きつける力は十分。
今回の、ちょっとずるがしこい感じも観ていて見応えありました。
いつかは中村裕香里と、舞台上で本気で演技バトルをできるぐらい、
成長してほしい。
私は期待しています。
アイドル活動をやっていることもあり、
OP、EDのダンスシーンも切れがあります。
あとは・・・やっぱムラを直してほしいかな。
そして集中力も。
観客は、けっこう敏感に感じとる。
いきなりうまくなるわけでもないので、
ゆっくり見守りたいところ。

前田美里 岸本来夢役。
前述していますが、私は面白いと思う。
クリクリな丸い瞳も印象的。
あとは、もっとメインキャラになった時に、
どうなるかですね。
予想外にダンスも良かった。

高坂夏乃 野村ひなた役。
じつのところ、けっこう印象深い。
演技的な面から言わせてもらうと、実力はあると思う。
声質もハッキリしていて、セリフも聞き取りやすい。
背丈は小さいけれど、けっこうテキパキしている。
ダンスもキビキビしていてスピーディー。
アイドル状況はよくわからないけれど、
演技力としては、良いものをもっていると思う。
舞台上での印象度も強い。
瞳とか、表情のつけかたもいいですし。
さらにメインキャラに格上げしてもいい。
私はけっこうかってます。

藤堂光結 佐野こころ役。
アニー(2002年) アニー 2005年のタップキッズ。
私としては注目していたのですが、ヤンキーメンバーのひとり。
そのぐらいの印象度で申し訳ない。
ただ、OP、EDのダンスは彼女が振付でビックリ。

木村若菜 小阪涼子役。
演劇部、部長役ということもあり、
後半の、あえて誇張した演技シーンが印象的。
あれは演出上の誇張シーンではあるけれど、
声の張りは、他のメンバー、通常でもあのぐらいあっていいかも。

長尾真奈美 西尾明日香役。
普通の女子高生だけれど、
岸本来夢の存在を記憶することができ、
なおかつ衝撃的なシーンも目のあたりにする。
ちょっとほのぼのとしたキャラ。
どちらかと言えば、地味な役ではあるけれど、
だからこそ岸本来夢のからみは面白い。
キャラ的にホワンとした感じがいい。

長橋有沙 長谷川つぐみ役。
オカルト研究部で、ルックスは印象に残っているのだけれど、
演技的にはちょっと覚えてなく申し訳ない。

永江榛野 二階堂螢役。
生徒会で、背が低いこともあって、印象に残っています。
可愛らしい、はにかんだ笑顔が印象的。

加藤はなこ 姫川桃花役。
キャラ的には印象すぎるほど、印象度大。
出演シーン的にも多いです。
仏頂面のシーンもインパクト大。
私の感覚からすると、
柳原可奈子のような、可愛いキャラもできそう。

泉川恵美 大谷楓役
前述していますが、声の張り、演技力、
テンションの高さ・・・は演出としても、
中村裕香里の演技力と張り合えるのは、
今回の出演者の中では彼女が筆頭だと思う。
二人だけのシーンが多いことも頷ける。
お互いかみ合わない設定なので、
和気あいあいとならないのは残念ですが。

今回の大谷楓役は、全キャラの中で一番難しい役かもしれない。
とてつもなく変人キャラで、妄想、自己陶酔、自己弁護、自己解決をする、
かなり痛いキャラ。
それを泉川恵美は元気爆発、ハイテンションキャラに仕上げました。
自分の中で反芻して、ここまで持ってきたのだと思う。

総括
派手な照明の変化や暗転もほとんどなく、
歌もダンスも本編中はなく、
音楽は弱冠流れるものの、比喩的な破壊的な印象も薄い。
完全に淡々としたストレートプレイのため、各キャラクターの印象度も薄い。
今後は、中村裕香里に対抗できる女優を育てるべき。
仮に彼女が出演できない場合、
演技ができる女優を使うことになるとは思うけれど、
やはり対抗できる人は絶対にひとりはほしい。
泉川恵美は頑張っているけれど、「華」という点でもうひとり、
為近あんなに頑張ってほしい。
同じレベルとは言わないまでも、近づけていってほしい。

発展途上、発展途上といいつつも、
全体的な演技の上でのレベルアップも必要。
次回作でどこまで、清廉した演出、脚本、
そして女優たちの演技の質を伸ばすことができるのか?
その意味において、興味深い。

※敬称略
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