「針が指す彼方まで」

満足度
公演時期 2013年10月23日(水)→27日(日)
会場 池袋 シアターKASSAI
脚本・演出 高島紀彦
監修 まつだ壱岱

あらすじ
時間移動装置が開発された未来。
「時空情報局」「時空探訪局」により、管理、記録、調査が行われていた。
その中で、謎の時間移動能力者、宮子の存在が噂となっていた。

2013年11月。東京。
都内の美大に通う前田敦司は描きたい題材を探し過ぎて、留年。
弁当屋でアルバイトをしながら生活していたが、ついに題材を見つける。
お店の常連で夜10時に必ず来店する女性、シエル。
彼女をモデルにしたいと切望するも、言えずじまい。

バイト先からの帰り道、前田敦司は偶然にも宮子と出会う。
この出会いにより、前田敦司の運命が大きく変わっていく・・・

(チラシより抜粋)
観劇感想
ACTOR'S TRASH ASSH別腹公演。
120分近くの休憩無し作品。
SFものですが、率直に言って面白い。
2時間の映画を見るぐらいな感覚。
最近はほとんど日本のテレビドラマを観ないので、
舞台が私の中では日本のドラマ感覚。

流れ的には、
美大に通う前田敦司が弁当屋でアルバイト。
→店の常連の女性をモデルにしたいと、切望するも言えずじまい。
→ある夜、見知らぬ女性を助けたことにより、死亡。
→その女性は「宮子」という名前で、じつはタイムトラベラー
→時を戻してもらい、なんとか生存。自分の死を回避することに成功。
→そのまま別れるが、アパートにつくと宮子と、憧れの女性が居すわっていた。
→時を戻したことにより、時空のゆらぎを感じた「時空情報局」は、
その原因が前田敦司ではないかと疑う。
→そんな中、その前田敦司の娘である前田シエルの存在消失の懸念が。
→時空情報局のクオンがシエルを保護。前田敦司の死を止めようと過去へ。
→なぜか前田敦司の中学生時代へ。
→時空情報局の次長である周防から連絡があり、すぐに戻れとのこと。
→クオンは仕方なく戻ろうとするが、
なぜかシエルはタイムトラベル装置をもっており、父の死を止めるために独断で移動。
→現代。父と出会い、さらには宮子と出会う。
→シエルは父から自分の自画像を描いてもらったことがない為、
現代の父に自分の画を描いてもらうことを要望する。
→そもそも前田敦司にとって、シエルこそ理由のモデルであったため承諾。
→翌日、描いた画を大学のレポートとして提出するが、
実際にはこの時代にいない人物を描いたことにより、シエルが消失してしまう・・・

こんな感じです。

タイムトラベラー、時間軸、バタフライ効果等、
最近・・・というか、かなり前から、
いろいろなところでこれをもとにした作品が作られています。
海外映画ですと「バタフライエフェクト」が有名ですね。
アニメは「STEINS;GATE」や「ひぐらしのなく頃に」「まどかマギカ」
他にもたくさん。

基本SFなのだけれど、その中には家族愛もテーマに含まれてます。
ネタバレになってしまいますが、小石川は意外でした。
たかこかと思いました。

オープニングというか、自分が刺されるまでのバイトでの繰り返しは、
もっともっと繰り返されてもいいかな?
なかなか連鎖が止まらない、という方に私は期待していたのですが。
意外とすぐに解決して、場面転換していきます。

時間移動装置を管理統括する組織「時空情報局」
時の流れの記録、調査を行う「時間探訪局」
いろいろ複雑な組織ではありますが、
言うなれば、ドラえもんで言うところのタイムパトロールですね。
そう思った方が手っとり早い。
そして宮子は謎のタイムトラベラーで、組織も追っている。
それを頭において、観劇。

セリフ回し的に、「時よ進め」「時よ戻れ」がありますが、
「時よ戻れ」は普通に過去に戻るとして、
「時よ進め」は瞬間的に未来に行くのではなく、
相手より先に行動をする。いわば加速になる場合もあります。
ここはちょっと私は違和感を感じました。
ネタ的になってしまいますが、「時は加速する」みたいな感じ。
ジョジョネタになってしまいますが。
蛇足ついでに・・・
ジョジョネタのプッチ神父は「宇宙の一巡」
人類は未来の全てを体験して再び元の時間へ。
精神がそれを体験しており、全員が数秒先の未来を予想できる。
しかし、運命は変えることはできない。すでに起こった出来事なのだから。
しかし、「覚悟」はできる。
明日、死ぬと分かっていても「覚悟」があるから幸福なのだと。

「時よ進め」「時よ戻れ」のSE、そして照明もかっこよかったです。
ここはSFチックに頑張ったと思う。

今回はこの話しで終わりましたが、
結局のところ、宮子がなぜタイムトラベルできる機械を持っているのか、
その存在、生誕等は謎のまま。
続編、余裕で作れるでしょう。

後日談とかはないんですけど、
バイトのメンバーに食事に誘われて行った時と、
行かなかった時とでは、その後の事情が変わっている気がしますね。
残った二人がデキちゃった結婚、なんて予想すらしてました。
フラグがあったんですけど。
時間の都合でカットだったのかもしれませんが。

前田敦司が刺された時の真実のスローモーション解析、
まさかの意外な人物の存在、ここはけっこう面白かったです。

エンディング近くで、主役の前田敦司が放つ言葉。
それがこの舞台のタイトルにもつながります。
って、最近けっこうこのパターンが多いかな。

気になった役者は・・・

シエル役の新名杏梨は、人形のような感じで本当に美人。
私的にはもうちょい声張ってもいいかな?
嫌いではありませんが。
うん?「LIFE 〜未来のあなたの為に〜」で、奈々役の子でしたか。
意外でした。
今伸びている真っ最中でしょう。

宮子役の中村まいはけっこう独特。
写真と実物とでは、雰囲気がかなり違うような(汗)
それはそれとして。
MOSH04「知りすぎていた男」「戦国降臨GIRL」にも出演していたんですね。
セリフ回しは独特。
彼女の演技は、好き嫌い別れるかも。
面白いことは面白いんですけど。
なにか、かなりおばちゃんチックだった気もする。
それも時間に関係あるのかな?

このカンパニー、けっこうネタを放り込みますが、
今回の主役の名前が前田敦司。
呼ばれ方が「前田のあっちゃん」
このフレーズは、ガンガン出てきます。
嫌いじゃないですよ、私は。
その主役の前田敦司役、松浦温生ですが、
見た目はなかなかの好青年。
「仮面ライダーオーズ」に出ていた、
アンクになる前の穏やかバージョン的な雰囲気。
主役で地味な感じではあるものの、私はとても素晴らしかったと思う。
彼は前半の店長の部分以外は、
とりたてて派手な行動をするわけでもない。
でも、観てる方としては、けっこう彼を追っていくので親しみがわきます。
私はあまり存じあげない方ですが、
ど〜考えても女性ファンがつくでしょう。

藤川役の鵜飼主水は、沈着冷静な悪役として物凄く印象に残りました。
ムカツキます。
でもその感情を観客にもたせるのだから、たいしたもの。
彼の悪役ぶりがあったからこそ、この舞台も引き締まる。
殺陣にも精通していて、後半に見せ場がありました。
クオンとの戦いは見応えあります。
ふたりとも殺陣がしっかりしている。
戦っているシーンをもっと長く観たかったぐらい。
ちなみにこの冷静な人がガチャピンネタを言うギャップ、
これは笑いが生まれる要素でもある。

クオン役の中村裕香里はま〜かわいい。
しかもミニスカ。
美味しい役だし、なんと言っても「華」がある。
最初は機械的な超真面目のエリートキャラと思いきや、
意外とツンデレキャラで、人間くささもある。
殺陣もありましたが、もっと見ていたい。
あいわからず、中村裕香里には「華」がある。

総括
エンターテイメント性バッチリで、物凄く楽しかった舞台。
2時間の映画を見る感覚で、意外とあっという間でした。
主役に感情移入ができ、悪役もしっかりしいて、美人が脇を固める。
まーハズレないですね。
素直に楽しめました。

(敬称略)
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