◆ 腰抜け男ども、義理と人情は…女が見せてやる!

満足度
◆公演時期   2012年4月10日〜15日
◆会場 AOYAMA DDD HALL
◆脚本・監修 竹田昌広(サテライト大阪)
◆演出 松本昇天
◆制作 イストリ
◆総指揮 片桐豊(トップコート)
◆制作プロデュース 仲圭太
◆アクション監督 加藤学
◆振付 広瀬双葉・佐藤春樹
◆舞台監督 北井佳輔(ジュア・プロ)
◆照明 糸賀大樹(アクア)
◆音響 橋口修(サウンドオフィスミル)

あらすじ
正義感の強い女性、桜子は、
デートの最中、不良グループ虹子たちのカツアゲの現場を目撃してしまう。
止めに入ろうとする桜子だったが、
恋人は無視するどころか、彼女を置き去りに行ってしまう。
報復を受け、ぼろぼろになった彼女の前に現れたのは……?
(チラシより引用)
観劇感想
2012年に観劇した、「100年分の声援を」
脚本・監修 竹田昌広
演出 松本昇大
の舞台。

私がまず思ったことは、観客。
若い客層で、女性も多い。
昨今の、ミュージカル「テニスの王子様」や、
D-BOYSのような舞台役者を応援する女子、
さらには、若手芸人等の影響もあるのかな〜?と思いました。

この舞台のように、
役者が生で演じて、大声を張り上げて、アクションをする。
そのライブ感のために、
お金を払って観に来る若い層がいることを思うと、
日本の若者も捨てたもんじゃないな〜と、老婆心ながら思いました。
マスコミ等の情報に惑わされず、
本物を見極める目や耳をもっている若者がいることに、
本当に安心しました。

口パクでも満足する人と、生のライブ感を大事にする人、
若者でも、これから大きく別れてくるでしょうね。

その観客に答えるべく、
出演者たちもパワー全開。
声を張り上げて演じてくれる。
気合入りまくりの舞台。
荒削りなところもあるけれど、これはこれでいい。

今の子は本当に声がでない。
ボソボソ・・・
私の方が声がでる。
グラップラー刃牙のガイア並に声がでる。
元副応援団長ですからね、小学生の頃ですが(笑)
もちろん、普段は声を張り上げませんけど。
だから、自分より年下の俳優が声が出ないのをみると、
正直、腹立たしく思ってしまう。
もっと声出せよと。
NHKかどこかで特集を組んだいましたが、
今の子は口が開かなく、子供なのに低音が多いとのこと。
要因はいろいろあると思いますが。

さて、話の流れとしては、
→弱々しい彼氏、堤とデートをしていた桜子。
→暴行現場を目撃するが、彼氏が逃走。桜子ひとり、リンチを受ける。
→たまたま通りかかった引退間近のレディースの総長に救われる。
→何の因果か、桜子は総長を引き継ぐことになる。
→総長としての訓練、指導を受ける。
→暴行したグループに復讐。女番長を倒す。
→数日後、倒したはずの女番長がパワーアップして復活。作戦を考える。
→男性に免疫力がない桜子の仲間を男たちが誘惑、彼女から引き離す。
→孤立、さらに誤解や噂のたぐいで、あらぬ言いがかりをつけられる桜子。
→虹子のグループに逆襲を受けるが、先代総長や糸満の力によって、
メンバーを取り戻していく・・・
こんな感じです。

何よりも、まずは主役、桜子役の中村裕香里
彼女が輝いている。
あまりヘタなことは言えませんが、
やっぱり、主役の子に集中できないと、舞台はお話しになりません。
ルックス・・・という言い方は本当に申し訳ないのだけれど、
お金を払って観に来ている以上、
空想、妄想、夢をもらいにきているわけですから。
なのに、主役、ヒロインがう〜んだと、
いくら演技が物凄くうまくても、舞台全体として私は集中できない。

その点、中村裕香里に関しては全く問題無し。
まず、とにかく可愛い。
最初の方はヤンキーになる前なので、
普通のおとなしい女の子の感じですから。
それが、総長というヤンキーに変化をする。
そのギャップも狙い目でしょう。

それから、彼女は声質。
よく声が出ている。
ダミ声というか、少し声の低い、ドスの効いた感じ。
その声質をずっと張り上げていますからね。
2公演の時もあるわけで、かなりのどを鍛えてないと無理なレベル。
昔の中村裕香里では、考えられなかった。
発声もいいし、歌もうまいし、
それでいて、ルックスは小さな頃からほとんど変わっていない。

これだけの逸材、芸能関係者の目はフシアナですね。
最近だと、若奈まりえ、北川理恵。
このクラスと匹敵するレベルの逸材。

男性陣は本当に良く声がでている。
子役時代は、どうしても女性優位で、男性の役者の印象は低い。
ところが、高校生ぐらいからは、
男性も進路として役者志望を目指す人も出てくるので、
真剣味が増し、女性を上回ってくる。
演技力があがって、声がでてきて、
男性と女性が逆転してしまうんですよね。
よくベテラン芸人が、
新人芸人の声の無さにガッカリすることもあるけれど、
この舞台の男性陣は本当によく声が出ている。
男性陣の口パクじゃない、生のライブを見ると、
男でも嬉しい。

エンターテイメイト満載な舞台。
素直に面白かったです。
オープニングから歌ですから。
私がよく観る舞台のようなオリジナル曲ではないけれど、
70年、80年代を意識した歌謡曲がどんどんでてきます。
もちろん、口パクじゃありません。

それにこの舞台はアクション、殺陣。
これは本当によくやっている。
雰囲気的には、若手のSETっぽい。
見た目以上に体力が消耗する舞台。

物語の冒頭から、女性への暴行でどうなることかと思いました。
さらに電球くわえさせて、割らせますからね・・・
大丈夫なのかと・・・
まっ、その為に、ナレーションかつ副音声かつストーリーテラー的な、
ツクダがいるのですが。

ふらふらと気ままに野田についていくとか、
維新の会とか、
時事ネタ、政治ネタと入れてくのは、私は好き。
社会風刺があっていい。

糸満が最後に死闘を繰り広げた、ジンベイザメとの格闘。
じつはとても大人しいサメなんですよね。
それと戦ったというのが、笑いのツボなんですけど、
ある程度知識がないと、その笑いを共用するのは難しい。

途中、メンバーのユカリが突然ピックッアップされるのは驚き。
ちょっと唐突すぎるかな?
母親との確執があっての脚本だけど、
伏線もフラグもあまりなかったので、
私は少し違和感。
それに、正直、ユカリ役の関谷桃子の演技はまだまだ。
ここがもっと演技のできる役者であれば、
印象度が違うのかもしれないけれど、
現時点では、見ていてつらい。

また、4人の女性メンバーが相手のグループの男たちに、
ドンドン惹かれて恋に落ちていく場面。
ここが舞台の流れ、テンポ的にいうと長い。
というか、ちょっと停滞する。
おそらく、ひとりひとりの役者においしい場面を与えるために、
少し長めに尺をとったのだろうけど、
私は長い印象を受けました。
時間的に言えば、モモコとレイニーのやりとりぐらいがちょうどいい。
もっと役者の演技に力があれば、
そんな印象すら受けず、舞台に集中できるのだけれど、
まだまだ発展途上ですからね。
それはおいおいでいいと思います。
今は若さの勢いでいい。

私は変人で、なかなか感情移入できない人間なので、
お笑い的には、ちょっと対応できませんでした。
あえていうのなら、糸満と、虹子変身後ぐらいかな?
ハッキリ、ストレートで笑える方がいい。

最終的に、ユカリの母親失格な母親がキーポイントになるっていうのは、
ガチガチな感じでしょうか?
こういう流れ、海外ドラマ好きな私としてみれば、
かなり多いんですよね。
子供を捨てたり、虐待していたのに、
子供が大人になってから探し出し、
謝って仲良くなるという。
それが家族愛というのか、エンターテイメント的というのか。

気になった役者は・・・
主役、桜子役の中村裕香里
「フレンズ 〜ガラクタ怪獣のなみだ〜」(2003年)カヤ役
「ココスマイル3 〜虹色のメロディー〜」(再演)(2004年)ハル役
ミュージカルキッズ・アルゴ 「かぐやの浦島モモタロウ」(2005年)
ミュージカルキッズ・アルゴ 「新かぐやの浦島モモタロウ」(2006年)
音楽劇 ガラスの仮面(2008年)水無月さやか役

「100年分の声援を」(2011年)恋役
これだけコケティッシュで可愛くて、
演技もできて、声も張り上げることができて、
歌も歌えて、アクションもできれば、
特撮のヒロインでも抜擢されそうなもの。
な〜んて、私は思ったりします。

見た目は本当に可愛らしく、おとなしい性格に見えます。
そういう子がヤンキーになると、ギャップがあっていいんですよね。
「魁クロマティ高校」ではないけれど、
優等生が真面目に勉強する姿と、
不良が真剣に勉強する姿だと、
不良の方がかっこよく見えますから。
そういったのも狙いでしょうね。

それに彼女は、もう子役の役者じゃない。
大人の舞台女優。
前述していた子役の経歴は、大人では通用しません。
ここが今までの役者人生とは全く違う。
大人の女優として完全に開眼。

男性陣は、前述しているとおり気合が入っていい。
佐藤春樹のサンダーはイケメンだし、本当にかっこいい。
ただ、私的にはもっと重要な役かと思いました。
虹子にとって一番信頼できる部下みたいな感じで。
そこを変身虹子が出てきてしまったため、
ちょっとインパクトには欠けたかな?
もっと桜子とガチガチなバトルをしてほしかった。

糸満役の仲圭太は、文句ないな〜
男は絶対好きなキャラだし、硬派かつコメディチックな部分は最高すぎる。
自分が一番笑えたのは糸満だけかな?

?役の宇田川晃希は、
ま〜あれだと、本当の顔が良くわからないので、なんとも言えないけれど、
キャラは強烈でした。
テンション高く、ノリノリでやれる役ではあるけど、
最初にそのテンションを持っていくところが大変かも。

ユカリ役の関谷桃子は、
桜子の仲間の中では一番目立つ奴ではあるのだけれど、
演技的にはまだまだ発展途上かな?
美味しい場面がたくさんありましたが、
ちょっと私には伝わってこなかった。
美人は美人なんですけどね。

モモコ役の金山愛理は、キャラ的におもしろい。
ヤンキー系だけれど、ホワッとしていて、天然系でもある。
あくまで私的な見方だと、切れのあるダンスは見応えありました。

アオイ役の川口恵里奈はルックスの印象度が強かったです。
セミロングの80年代風?的な髪の印象が強いせいでしょうか?

レイニー役の是澤洋文の「ドヤッ」もおいしい。
子供目線から見ると、一番印象に残るかもしれない。

美ら役の今野真菜は、このメンバーの中ではマスコット的キャラ。
声質もかわいいし、戦闘ポーズもかわいい。
普通にアイドルとしても通用するレベル。
・・・って、なるほどね。
今にして思えば、それも納得な感じ。

堤役の多和田秀弥は、ヒョロっとして、なよなよっとして、
ルックスは全く違うけれど、千葉雄大のようなアンニュイな雰囲気。
女性人気は、間違いなくでるでしょう。
追っかけがいてもおかしくないくらい。
この役には、ピッタリあっていて良かった。
桜子もなんだかんだで、好きになっちゃいますからね。

ユキナ役の堤菜緒は、じつのところ、かなり難しい役どころだと思う。
心の揺れどころが一番難しい。
観客の感情移入として、彼女に重点をおく人もいるでしょう。
好きな人のために、その言葉を信じて従う・・・
けっこうせつない。
強気な部分と弱気な部分、ふたつの揺らぐ心の表現、
難しいですよね。
今度は清楚系も観たいかな?

虹子役の橋垣美佑は、
役柄だけど、嫌な女だ(笑)
それを観客にアピールできたという点においては、
成功だと思う。
変身後虹子も印象度強いですけど、
変身前もかなり印象に残りますから。
男を侍らす女番長、雰囲気でてました。

ユリ役の広瀬双葉は、かなりうまいでしょ?
声はとにかく良くでていたし、台詞回し、カツゼツもバッチリ。
若い子の勢いもあるけれど、こういったベテラン(失礼)がいるからこそ、
しっかり見られる舞台です。
私は影の立役者だと思う。

蘭子役の古寺ひとみは、先代総長。
雰囲気でていたし、怖い顔だし、声もよく出ている。
言うことないな〜
舞台のスパイス的に、ちょくちょく怖い役が出るのはいい。
ずっと出っぱなしは、私は怖いな〜

ツクダ役の吉田怜央は、
ストーリーテラー的な、副音声的な役柄。
本編には意味がない、ナレーション的存在。
物語の流れが暴力的になるのを抑えるための緩和的な意味合い。
なのに、ちょこっと本編にからむ時もあります。
のほほんとした感じが面白かったです。

総括
母親からの愛情とか、
そういった精神的な部分も伝えたいところがあったとは思うけれど、
そちらは私には伝わってきませんでした。
ただ、若さとパワーで押し切るのは決して悪いことじゃない。

まだまだ発展途上の部分も多いけれど、
若さとこの勢いはいいと思う。
「こまけーことはいいんだよ」的なノリ。
久々に元気をもらえた舞台。
長年観続けていた中村裕香里が、
ヒロインかつ、主役ですから、
その思いはひとしお。

テレビドラマを見て感動する人もいるでしょう。
それはそれでいい。
ただ、私にはなかなか通じない。
だからこそ、ライブ、舞台を見て、
出ている役者のパワーをもらって、
自分をリセットして仕事への励みにする。
それなんですよね。
本物の舞台こそ活力。

(敬称略)
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