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ミュージカルキッズ・アルゴ「かぐやの浦島モモタロウ」東京 青山公演

満足度星星星空星空星
公演時期 2005年7月27日~8月7日
会場 東京 青山円形劇場
原作・音楽 小椋佳
演出、振付 宮崎渥巳
脚本 森田等
作曲 金子貢
歌唱指導 長田明子
美術 斎木信太朗
音響 清水吉郎
照明 高見和義
衣装 小峰リリー
パーカッション指導 中山航介
舞台監督 岡林真央

あらすじ

むかし、むかし、あるところに、おじいさんと、おばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ竹を伐りに、おばあさんは川へ洗濯に。すると、竹藪の奥から光が・・・川の上流からも光が・・・ふたりが見つけたのは、男の子と女の子の赤ちゃんでした。

観劇感想

青山での観劇は5回です。

円形劇場

今年も円形劇場なので、舞台との距離がひじょうに近く、とても見やすかったです。一体感もありました。ただ、やはりイスは固いので90分間休憩無しは厳しかったです。たしかにこの舞台だと、休憩を入れてしまうと集中しているものが途切れる可能性があり、仕方がないとは思いますが。 また、円形劇場ということで見る位置によって、大きく異なります。特に真正面の位置。G列ぐらいでしょうか?これが全然違います!ほんとにビックリ!サイドから見た後にこの位置で観劇すると、いろいろな発見があって楽しいです。

パンフレットを見てから今回の舞台を見ると、一番最初に気がつくのが出演者たちの姿。明らかに痩せているのがわかります。ダンスメインということもあり、相当な稽古を積んだことでしょう。特に私が思ったのは船越英里子ちゃんのウエスト。尋常ではないほどの細さでした。かなり驚くと思います。

「かぐや姫」「浦島太郎」「桃太郎」3つの童話

さて、今回の舞台は題名のとおり「かぐや姫」「浦島太郎」「桃太郎」という3つの童話を、ひとつにまとめたら?という解釈に基づいて新たに脚本されたものです。基本は、口上しているように劇団「竹雀」の公演ということでしょうか?時代がかった雰囲気は、今の子供たちにどのように伝わるのか私も興味深いです。

で、ですが、結局何が言いたいのか全くわからなかったです。今回はメッセージ性が無いです。う~ん、「物語」というものを次の世代に伝えていこう、ということなのでしょうか?無能、非才の才乏しき私には理解できませんでした。あくまでも子供が見るミュージカルなので、単純明快にわかりやすさを追及しても良かったな~と思いました。知り合いの小学生にも感想を聞きましたが、全く意味がわからなかったそうです。「桃太郎」「浦島太郎」「かぐや姫」がひとつになった話、としか理解できてません。それが主目的であれば問題無いのですが、何かしらかのメッセージを子供たちに伝えるのがアルゴミュージカルだと私は思うので、そのあたりは残念でした。

今回の舞台はダンスがメイン。群舞がかなり多く、全員の呼吸が必要とするものが多いため、個人というよりも、群舞や楽器等、連携がたいへんだったことでしょう。

気になったのは、髪をアップしている人と髪を下ろしている人がいることです。正直、髪をアップにしていると「ちょっと可愛らしさが半減だな~」と思う方もいました。このあたりはどうなんでしょうか?特に女の子は前髪を気にしますからね。

毬子役はダブル・キャスト

船越英里子ちゃんと早野薫ちゃんが演じています。ごめんなさい。私にはダブルにする意味合いがよくわかりませんでした。薫ちゃんが明るい系、英里ちゃんちゃんがやや暗い系ぐらいにしか感じませんでした。きっと、壮大な秘密があるのでしょう。

オープニング

舞台の真ん中には大きな銀の折鶴。そして、エンディングには天井部にたくさんの銀の折鶴がありました。ところが、私は最初の観劇では一番前で観ていたこともあってか、このたくさんの銀の折鶴の存在に全く気づきませんでした。これは、もう少し下にさげたほうが良いのではないでしょうか?私以外にも気付かない方が多いらしいです。

※追記。再び観劇しました。あくまで私の勘ですが、以前よりも銀の折り鶴を下げているように思えました。これなら観客にもハッキリとわかります。ライトアップもされていました(当初はどうだったか忘れましたが・・・)

開演初めは人形劇のような演出。その人形となる、服部杏奈ちゃんと長澤茜ちゃんの動きはじつにすばらしいです。関節の微妙な動きや、首の動かし方、慣性など、うまく調和されていました。ここも練習量、意外に多かったのではないでしょうか?

エンディング前

毬子とともに3人の女の子が現れ、モモタロウを囲みます。あくまで私の想像の範囲ですが、4人それぞれがいろいろな時代の毬子ということでしょうか?私はそう解釈しました。

気になった役者

ヒメ役の船越真美子

ダブル主役のひとり。演技は文句無し。かぐや姫そのものでした。ヒメらしいセリフ回しも、聞いていて心地良かったです。

歌唱力も、そうとうつきましたね。 はかなげで悲しい歌い方は秀逸。 特に「美しき難題」のナンバーは聞きごたえありました。 歌う場面が多いため、裏返ってしまうこともありますが、 私は許容範囲内だと思います。なにより一番難しい役ですから。 「プロ意識を持って」ということでしたら、許されませんけど。

モモタロウ役の大山真志

演技、歌、ともに申し分ありません。桃太郎役、カッコ良かったです!歌は絶品!ソロ、そして真美子ちゃんとのデュエット曲も聞きごたえあります。※追記。後に再び観劇をしたのですが、やや、のどの調子が落ちていました。長丁場の舞台なので仕方ありません。ただ、ほんとに微々たるものですし、セリフに支障をもたらすものではありません。しかも歌唱力はそのまま。ここはかなり高評価です!

子供時代のヒメ役の後藤夢乃

ルックスは可愛らしいし、演技、そして表情の表現力も抜群。 あいかわらず彼女は目立ちます。 劇団竹雀の一員になっている時の表情も、本当に豊か。 歌唱力、ダンス、ともに成長の度合いが見てとれます。 なにより、今回の舞台では彼女の実力を十分に発揮できたように思えます。 今後、舞台系だけでなく、いろいろな方向性が感じられるほどの出来ばえでした。 私なら、CMですぐにでも使いたいです(笑)

舞台上で胡弓をひくところがありましたが、ここがテープなのは残念。中国の伝統ある楽器ですから、マスターするのは難しいでしょう。

服部杏奈

一座の座長、おじいさん役で登場するので、かなり目立ちます。常に堂々としていて大物感が漂います。彼女は、常にすました表情が印象的だったのですが、今回の表情豊かさにはビックリ!彼女も相当練習を積んだことでしょう。いろいろな表情を見せてくれて楽しいです。 特に「モモタロウの出陣」のナンバーの、鬼気せまる雰囲気はなかなかのもの。

歌唱力も抜群。去年にも増してレベルアップしました。 言うならば、声量が増大した感じでしょうか? あくまで私が感じたことですが、 メインとして登場したり、デュエット曲もあるため、 「集団で歌う時は力をセーブするかな~?」と考えていたのですが、 彼女が私の間近に来た時、すごい声量を発揮していてビックリしました。 長丁場の舞台であることを気にすることなく、声量のある歌声。 恐れ入りました。 それからもうひとつ!長澤茜ちゃんとの鶴と亀のナンバーは聞きごたえありますよ!

長澤茜

前回に続いての出演。 どちからと言えば、前回は地味でした。 今回はおばあさん役という大役。 これが、かなりすばらしいです。 演技もいいですし、喋りもいい。ダンスも見応えあります。

服部杏奈ちゃんとのデュエット曲が多いため影になりがちですが、 彼女の歌唱力もなかなかのもの。 ダンスは、特に町民(?)4人のカルテットのナンバー(ヒメの嫁入り) 一番小さく、スピード感あふれることも加味されますが、ひじょうに目立ちました。

後藤夢乃ちゃんのような「華」は持ち合わせていませんが、 「泥臭い」という言い方は失礼ですが、 この年齢にして「玄人好み」という表現が似合います。 「アルゴ」だけでなく、大人が多数出演する舞台でも重宝されることでしょう。 去年との対比で、成長の度合いが一番把握できた女の子だと思います。

中村裕香里

彼女はとにかく「おばあさん」役が秀逸。 地味な役柄ではありますが、意外と目立ちます。 前かがみ、そして腰の折り方など、相当研究したことと思います。 このメンバーの中では・・・おそらく彼女しかできないでしょう。 いや待て、新津つくしちゃんもできそうかな(汗) 群舞等での彼女の笑顔は本当にすばらしいですし、ダンスシーンも見どころのひとつです。

船越英里子

毬子役は、前述しましたが、 どちらかというと、やや暗めで影のある少女を演じていました。 歌唱力は喉を痛めているのでしょうか? ちょっとイマイチなデキでした。 毬子役でない時の「盗賊は鬼」のナンバーでの演技は、ちょっと怖かったです(汗) おどけたユーモアあるナンバーなのですが、彼女のイメージには向かない感じ。

早野薫

毬子役では、楽しそうにマリをついていたのが印象的でした。 可憐な少女という感じです。 歌唱力はなかなかありますね。 元東京メッツということもあり、ダンスも見応えあります。 毬子役でない時の「盗賊は鬼」のナンバー。 おどけたユーモアのあるところは、彼女にピッタリでした。

柴原史佳

前回同様、今回も声を低くしています。 男性役の紫ですから当然でしょう。 キリリとした表情もなかなかいいですね! ダンスも成長しました。 あくまで私の印象ですが、足を上げる打点の高さが上がったように思えます。

三井彩加

銀(しろがね)役でした。 彼女も男装、良く似合いますね。 歌唱力は悪くはないけどもう少しほしいかな? 有名な方が多いので、ダンスシーンはそちらに注目されがちですが、 彼女のダンスにも注目してほしいです。 かなり見応えあります!意外なヒットですね! 野口歩美

彼女はダンスのイメージが強いのですが、今回は演技にも注目です。 紅(くれない)役でしたが、彼女も他の二人同様に凛々しい男装でした。 喋りがしっかりしているし、目の力強さも感じました。 おそらく、ダンスが得意な分、やや弱い演技等を克服しようと努力したのでしょう。 その努力が報われていると思います。 もちろん、彼女のダンスシーンは秀逸。 特に「痛々しくも潔く」のナンバーでの立回り姿は、拍手を起こして良いほどの、 見応えある場面でした。

前回のアルゴでは初出演ということもあり、 ダンスの場面では、まだ表情付けがぎこちなかったように思えます。 ところが! 今回はそうとうレベルアップしました。 表情付けが抜群にいいです!これは間違いなく練習したことでしょう。 特に群舞の時の表情付けには目をみはるものがあります。

安藤美雲

悪くはないけれど、表情付けがもう少しほしいです。 特に群舞。なんとなく同じ表情ばかりなんですよね。 ちょっと見ていて飽きる感じ。 自分が脚光を浴びる場面では表情が豊かなのですが、 それ以外の時に、ややボッ~とする時があります。 ここを直してくれると嬉しいです。

舩橋理佳子

彼女は「Kiddy」の舞台で何度か見かけたことがあり、ひじょうに印象が強いです。 背も伸びましたね。でもまだ小学6年生!ビックリ! 彼女は実力はあるのに、表情付けがもうひとつという感じ。 舞台上で感じる彼女の表情は、何かどこかビクビクしている印象が感じとれます。 もう少し自信をもって余裕をもった表情付けをしてくれると、 今よりもさらに良くなることと思います。 まだ小学6年生ですから、これからに期待です。

安達妃美

瞳や口が大きいこともあってか、舞台上でもひじょうに目立ちます。 表情付け、発声もいいですね! ただ、「盗賊は鬼」のナンバーは、もうひとつかな? 頑張ってはいるものの、よく聞き取れない歌詞があります。 歌というよりもセリフに近いので、難しいことは難しいのですが。

それから、せっかくの美味しい場面なので、もう少し派手に立ち回ってもいいな~と思いました。 まぁ、演出上いろいろあるので難しいとは思いますが。 意外とこの場面、地味なんですよね。

新津つくし

言い方が微妙なのですが、すでに彼女は完成している気がします。 スピード感あるダンスは見事ですし、表情の付け方もうまいです。 さらには歌唱力もあります。間違いなくすべてにおいて安定しています。 安定しすぎて物足りないという、ちょっと贅沢な悩み(汗)

齋藤大輝

子供の頃のモモタロウ役です。 ハッキリ言って、かなり大抜擢でしょう。 将来性を見込んでの起用だと思います。 正直、演技が弱いです。歌もまだまだ。 これからの成長に期待したいです。

岡田真彪

キジ役で登場しますが、 私的に言わせてもらえば、やはりスピード感あるものがほしかったかな? なんと言ってもキジですからね。 回転するところも華麗にスピード感を出してほしかった。 犬、猿、と同じようなたたずまいは、ちょっと残念。 ダンスは流石にうまいです。

堀広希

彼は前回よりも痩せました。 今回は意外と印象に残りませんでした。 犬役は印象に残りづらいですよね。 「ヒメの嫁入り」のナンバーで最初の4人の中のひとりですが、 長澤茜ちゃんの印象が強いため、視線は彼女に行きがち。 ユーモアあふれる演技もあって楽しいのですが。

岩瀬紗也加

明らかにパンフレットの写真より痩せてます。 たいへんだったことでしょう。 彼女については過去に「Kiddy」でも観劇したことがあり、 アルゴで観ることになるとは。感慨深いです。

彼女は歌唱力!と思っていたのですが、ダンス力も成長していてビックリでした! これはかなり練習したことと思います。 表情付けも良いし、地味ながら(爆)意外と見応えあるんですよね。 もう少し彼女がメインの部分があっても良かったかな?

小橋風花

オープニングでも歌っていますが、彼女の歌声には毎回惚れ惚れします。 ただ、今回ソロが減ったのは残念でした。 その分といってはなんですが、ダンスに力が入ってます。 ダンスの得意な方と比べると、たしに見劣りはしますが、 まずまず無難にこなしていたと思います。 「盗賊は鬼」での弾けた風花ちゃんの演技は興味深いです(笑) ちなみに、後半に登場する銀髪の女の子は彼女です。

石山絵里加

ソロがあります。 そして、その歌声にビックリ! 声量もあり、伸びやかな歌声です。 なるほど、風花ちゃんのソロが減ったのにもうなずけます。 彼女の歌声も、観客の方に聞かせたいですから。

清宮愛結花

お世辞抜きでダンス力は上がってます。 ターンの首の回転もスッと回って見栄えがいいです。 今回の舞台はダンスメインということもあり、 彼女に限らず、ダンスが得意な子は目立ちます。

演技的には地味な感じですが、 「バッカじゃないの!」のセリフ、そしてふてぶてしい表情もなかなか良かったです。 アニーのストリートチャイルド時代は淡々とした表情付けでしたが、 それに比べると成長していました。 群舞等での観客の方に伝わる表情付けが、これから加わるともっといいですね。

総括

私的には、何かしらメッセージが伝わるものが欲しかったです。 決してつまらない舞台ではありませんが、あくまでも子ども向けのミュージカルなので、 子供たちの心にスッと入ってくる、ストレートな問いかけが必要だったように感じます。 親御さんが今回の舞台を子供にどうやって説明していいのか、困惑してしまいますから。 ある意味、それが狙いなのでしょうか?そこで親子の会話をふくらませるという。

大人向けの複雑で難解なストーリーを私なりに解釈すると、 「モモタロウ」の、自分の手で世界をもっと素晴らしいものにしようという、創造、改革。 それに反する、「ヒメ」の自然のままで安定を求める、平穏、平和。 (これは、3人の結婚相手に難題を与えた場面にも通じます。 「自然には逆らえない」それを暗示しているのではないでしょうか?)

また、「モモタロウ」の「ヒメ」に対する恋愛感情にも似た描写もあります。 (同じく、3人の結婚相手に難題を与えた場面) ここもまた微妙。 特にそのあたりをふくらませるわけでもなく、淡々と経過するだけです。 ここもわかりづらかった。豊かさゆえの人の欲望の滑稽さを表現しているところもあります。 こういった社会的風刺をけっこう散りばめていました。 ただ、わかりづらいです。

これからもこの路線で行くのか? 再び、物語性を重視するのか? 来年がひじょうに気になります。

※敬称略
キャスト表