満足度
公演時期 |
2017/9/22(金) →24(日) |
会場 |
AiiA 2.5 Theater Tokyo |
演出 |
児玉明子 |
脚本・作詩(1部) |
三浦香 |
あらすじ
舞台少女たちの学び舎・聖翔音楽学園。
俳優育成科2年A組の愛城華恋、天堂真矢、星見純那、露崎まひる、
大場なな、西條クロディーヌ、相羽あいな、石動双葉、花柳香子は、
舞台女優になることを夢見て、日々切磋琢磨していた。
そんな平和な学園生活を一変させたのが、英国帰りの転校生、神楽ひかり。
彼女の出現を機に突如学園で開催されるオーディションは、
トップスタァになれるというたった一人の勝者の座をかけ、
己の夢をかけて戦うバトルロイヤルだった・・・
(プログラムより引用)
観劇感想
まずこの舞台は、「二層展開式少女歌劇」だという。
ミュージカル×アニメーションによる新感覚のエンターテイメントメインプロジェクト。
メインキャラクターの9人は舞台とアニメ共に同じキャストが担当するという試みを実現。
ということで、今後のアニメでもこのメンバーが声優になります。
声優さん主力の舞台ということでどんな感じになるのか、とても気になりました。
まず当然と言えば当然ですが、「声」に特徴あります。
普通の舞台よりも「声」に重きがおかれる印象。
そこで気になるのは、マイクの音量、音楽の音量のバランス。
セリフの声量がかなり強く大きく感じます。
歌も、おそらく私が見る限りは口パクではなく、生歌(後半のライブはどうかな?)
普通の舞台を観劇するよりも、かなりセリフも歌もよくとおる。
これが会場の音響設備によるものなのか、通常よりも音量を上げての公演なのかはわかりません。
いずれ、彼女たちが小さい箱、もしくはマイクが無い舞台で、
どれだけ声量が出せるか?生歌で声が出せるか?
そこが問われることになるとは思います。
「声」以外として、演技も各々しっかりしていることに驚きました。
「声優」という「声」が主体の職業とはいえ、おそらく「声」以外にも、
演技、ダンス、セリフ回し、舞台役者としての訓練、稽古は積んできているのだと思う。
今だと養成所やシステム的に、そういった部分がしっかりしているのかもしれません。
現に、
山寺宏一、
釘宮理恵の舞台を観劇していますが、普通に舞台役者ですからね。
多少経歴を確認してみると、
ミュージカルアニーで主役、さらにたくさんの舞台で活躍している富田麻帆のみならず、
他の方々も舞台経験が豊富。
ということは、どちらかと言えば「声優」の舞台というよりかは、
元々舞台で活躍していた「声優よりの女優」の舞台とも言えます。
とはいえ、
石川由依も元々舞台役者で、そこから声優ですから。
あまりボーダーラインはないのかも。
何気ない舞台、精神的な舞台とは違ったSF的な舞台。
2.5次元ミュージカルだと、
「赤ずきんチャチャ」、
「七つの海のティコ」
アイドル的に言えば、
『BOYS BE・・・ALIVE -TRY AGAIN-』
こういった舞台に近い。
観客の動員を考えると、
グッズの売上、CD、DVD、アニメ、舞台、いろいろ合わせるメディアミックスというものかな?
照明や演出もかなり凝っていて、プロジェクションマッピングも使っていたかも?
ちなみに舞台本編よりも、
後半のライブでの照明の方がさらに凝っていた気がしないでもない(汗)
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物語本編
内容としては、
舞台のトップスターを目指すために少女たちが戦い合う、という謎のストーリー。
戦って頂点を目指すということから、
おそらくはその戦いの経験を経て、みんながひとつにまとまって、
素晴らしい舞台を作り上げる、仲間集め的な感じかな~?という予想が私にはありました。
なぜ戦闘するのか、細かいことはいいのかもしれない。
SFアニメの2.5次元ミュージカルですから、深く考えてはいけない。
戦う=オーディション。
そこに「演目」がかかげられる。
そしてアドリブの舞台が始まる。
舞台セット、衣装、音楽、照明も、魔法のように現れ、それらを駆使し、
少女たち固有の武器を使って戦闘が繰り広げられる。
その「演目」の力が強くなれば、己の戦闘の力もパワーアップする。
ようは「演目」にあった演技をすれば、相手に勝つことができる。
相手を負かし、次なるステージへ。
少女たちは再び戦うことになる。
ある意味、彼女たちは自分の演技を磨くための純粋な戦いにすぎない。
ただ私からしてみると、プロデューサー的な考えから言えば、
そこにはエンターテイメントなり、
ビジネスライク的なドロドロの欲望がある現実も忘れてはならない、
なんて偉そうに語りたくもなる。
舞台の中では淡々と説明されていましたが、
かつてフローラとクレールというトップスターの少女がおり、
何らかの出来事が起こり、二人は引き離される・・・
フローラは富田麻帆かな?(母親とか?)
クレールが走駝紗羽=椎名へきるかな?
ダンスというよりも、どちらかというとアイドルの振付。
戦うということで殺陣もあるが、ここは改善の余地があると思う。
やはり戦闘シーンは迫力がないと。
女性の戦闘シーンというと、
アサルトリリィ × 私立ルドビコ女学院 vol.1「シュベスターの祈り」に、
似てなくもない。
主人公補正がかなり強い。
当たり前と言えば当たり前なのだけれど、
主人公だから「強い」「無敵」「何でもアリ」みたいな感じが気になります。
ご都合主義な舞台であることは百も承知だけれど、
私はなかなか受け入れにくい。
戦闘シーンは、薄い幕の向こう側でおこなっていることが多い。
これは気になる。
プロジェクションマッピングや衣装の早着替(?)等の理由があるとは思うが、
正直見にくい。
ここも改善の余地あり。
戦闘シーンで、かなり重要な場面なのだから、
薄い幕を通して見たくない。
コロス→群衆という意味。という説明セリフは良かったと思う。
観客にもわかりやすい。
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気になった役者は
小山百代 愛城華恋役
年齢も若く、本当に新人という感じ。
ただ、舞台経験もミュージカル経験もあり、主役としての重責は全うできたと思う。
大きなお世話ながら、及第点をあげられる。
演技もセリフ回しもほとんど違和感を感じないし、歌も良かった。
歌うシーンは多かったけれど、声が裏返ることもなく、とても素直な歌い方。
子供の頃の思いを胸に、純粋に成長してきた愛城花恋。
その気持ちがストレートに演じられていた。
前述していますが、ちょっとエコヒイキと思えるほどの主役補正はズルイけれどね。
そういった強くなる部分での、純粋さを超えた凛々しい表情の変化は、
本人も意識していたと思う。
目力もあるし、そういった部分でさらなる可能性を感じる。
あえてひとつ突っ込むとすれば、歌舞伎の決めのように、
少し首を「カクッ」とする時がある。
おそらくは決めポーズのような、ブルースリーのような間のような。
そこは無くてもいいかな~?と思います。
演出の意図なら仕方ありませんが。
回りのみんなが支えてくれたこと。これが一番大きいと思う。
私はとても評価してあげたい。
三森すずこ 神楽ひかり役
言い方は失礼にあたるかもしれないけれど、彼女はベテラン。
歌手ですし、歌唱力抜群。言うことありません。
ルックスの印象も強く、華がある。これに加えての歌唱力だから、
確かに魅力度が上がるのはわかる。
愛城華恋との過去の友情はありつつ、現在は謎めいた静かな孤高の女性。
聖闘士星矢でいう、一輝のようなポジションか。
それが彼女の憂いある表情をさらに引き立てる。
静かな演技ということで、どちらかといえば演技がしやすいキャラクターだけれど、
演技力も非常に際立っていた。
富田麻帆 天堂真矢役
富田麻帆に関しては、言うことないな~
前述しているとおり、
ミュージカルアニーの元アニー。
当時の表情付けと笑顔は全く変わっていない。
さらに過去を言えば、
『ミュージカルアニー』(1993年)のモリー当時とも変わっていない。
とは言え、彼女の演技を観るのは久々。
『ミュージカル ギャラクシーエンジェル Re-MIX』以来。
セリフ回し、表情付け、ダンス、何をしても素晴らしい。
ま~超ベテランのプロだもの。
一本すじがとおった、本当に「芯」のある女優。
彼女は舞台における、空気を読み、間合いを計算できる。
これゆえに、彼女の演技に引き込まれていくんですよね。
特に今回の天堂真矢役は、演劇界の天才、
かつ、それにあぐらをかくことなく、さらにストイックに努力を続けるキャラクター。
性格は少し違うが、その根本は富田麻帆の精神を彷彿させるような役柄。
物凄くしっくりくる。
今回も彼女の演技には圧倒されました。
ひとつ思ったことは歌声。
私が思い描いていた歌声とは変わりました。
記憶違いなら申し訳ないけれど、歌い方を変えた気がする。
さらにできるようなった。
当たり前のことだけれど、努力、精進、半端ない。
だからこそ、彼女メインの歌が多かったのもうなずける。
佐藤日向 星見純那役
メガネキャラ。
学年1の才女。
勉強好きで、俗にいうオーソドックスな学級委員タイプ。
セリフ回しは抜群。流れるよう。
歌は前半よりも後半の方がいい。
岩田陽葵 露崎まひる役
おっとり、のんびり、引っ込み思案。
それでいて、愛城花恋のことが大好きで、後から現れた神楽ひかりのことを快く思っていないキャラ。
雰囲気的におどおどした感じがいい。
演技もできるし、歌唱力もある。
意外と重要なキャラクターなんですよね。
あまり目立たないキャラがじつは・・・という裏返しでもある。
小泉萌香 大場なな役
けっこうセリフがたどたどしい。
歌はこれから。
というか、回りのメンバーが声優なのに、舞台経験が豊富すぎる。
ただ、この演技も舞台後半になると私も慣れてきました。
相羽あいな 西條クロディーヌ役
富田麻帆が演じる天堂真矢とのやりとりが多いため、
彼女と対抗できるだけの演技がないと、失礼にあたる。
だからこその彼女かもしれない。
演技、高飛車的な表情付け、セリフ回し、歌もダンスもよくやっていると思う。
そうは言っても相手が富田麻帆なので、対抗するのは大変ですが。
生田輝 石動双葉役
ボーイッシュなキャラ。
当然ではあるけれど、
キャラクターにマッチした声質で、表情付けや雰囲気がとても良かった。
男っぽい雰囲気を演技で出すのは難しいけれど、
私はとてもよくやっていると思う。
セリフもしっかりしている。全く違和感ない。
印象度強い。
歌はもう少しほしいところ。
伊藤彩沙 花柳香子役
和テイスト。京都弁のほんわかした雰囲気を持ちつつ、
気性の激しい部分も垣間見得るキャラクター。
京都弁に詳しいわけではないが、ひじょうに滑らか。
演技もしっかりしているし、歌唱力もある。声の伸びがいい。
表彰付けもいい。
私的には、ひじょうにキャラクターとマッチしていた。
記憶に残る印象度も強い。
私はとても評価したい。
小林風花 綿里鶴子役
元々普段の声質がアニメ声ということもあり、
この「声」がメインの舞台でも、違和感がない。
特にセリフの部分では「声質」がとても重要視されているように感じましたから。
おしむらくはソロナンバーで、実力を見せつけてほしくもあった。
椎名へきる 走駝紗羽役
声優、歌手としても有名な方。
私でも知っているレベル。
けっこう重要なキャラクターで、かなり出番が多かったです。
ゲスト出演ということもあり、出番が増えているような気もしますが。
正直、そこまで出す必要もないかな?
舞台全体の流れからすると、テンポがずれる。
意味合いは重々わかるけれど。
歌唱力は歌手なので割愛。
総括
本編の演劇が1時間20分、ライブが30分
後半のライブはまさにアイドル。
これを見た時、普通のアイドルと声優との差が全く無いな~と印象を持ちました。
ボーダーラインが存在しない。
つまりは、おそらくアイドル関係の客層が声優に流れている。
ファン層が選別化。
逆に普通のアイドルの観客が減少しているのかもしれない。
過渡期であり、売上等のビジネス戦略としても厳しい状況のような気がします。
と、ちょっと分析。
舞台の中身は謎だらけ。
それゆえに、各キャラクターごとにストーリーテラー的な説明セリフも多い。
どんどん話しが進んでしまうので、
高齢者にはついていけないかもしれない(若い人メインなので、そういう方は少ないだろうが)
意味不明なことも、それが当たり前という思考にならないといけない。
常識は通用しない世界観。
ただ、舞台自体は声優というくくりが全くないほど、
しっかりした舞台なので見応えがありました。
今後改善してほしい点としたら、
1.殺陣をもっとスピーディーに、激しく。
2.戦闘シーンでの薄い幕の観にくさ。
3.椎名へきると、他メンバーとの出演シーンのバランス。
このあたりでしょうか?
すでに再演が決まっているようなので、
どんどん清廉、昇華していくことでしょう。
(敬称略)
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