本文へスキップ

エターナルファンタジーはファミリーミュージカル公演サイトです。

音楽劇 ガラスの仮面 2008 観劇感想

満足度星星星星星
公演時期 2008年8月8日~24日
会場 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
原作 美内すずえ
脚本 青木豪
演出 蜷川幸雄
音楽 寺島民哉
美術 中越司
照明 室伏生大
衣装 宮本宣子
音響 井上正弘
音楽監督 池上知嘉子
振付 広崎うらん

あらすじ

北島マヤは、映画、舞台、ドラマが好きな一見平凡な少女。 しかし、一度見ただけで、そのシーンのセリフや、 俳優の仕草を記憶してしまうほど感性は鋭い。 そのマヤの才能に気づいたのが、 演劇界の名作と呼ばれる「紅天女」を過去に演じた大女優、月影千草。 学校演劇の舞台で、演技をすることに対する生きがい、魅力を見いだしたマヤは、 母の反対を押し切り、千草が経営する「劇団つきかげ」に入団する。

一方、マヤと同年齢の姫川亜弓は「劇団オンディーヌ」に所属。 母は大女優、姫川歌子。 父は世界的にも有名な映画監督という両親をもつ、演劇界のサラブレッド。 全くことなる境遇に生まれ育ちながら、 いつしか二人は「舞台」という名のもとに導かれ、互いを意識していくこととなる・・・ (パンフレットより一部抜粋)

感想

あくまで、私の独断と偏見の感想ですが、 とにかくすごい!! すばらしい!!

マンガの「ガラスの仮面」ファンの私ですが、 文句無しの舞台。 私が言うんだから間違いない(そんなことないけど)

自分を分析すると、 舞台好きの脳と、ガラスの仮面好きの脳が完全にマッチングして、 脳内からドーパミンが大量に発生し、椅子の痛みも感じず、 2時間30分以上でも全く疲れることなく、もっともっと観たい感覚でした。

パンフレットで蜷川氏も発言していますが、 原作がある場合は、それに似せるか、全く逆にするか悩むところで、 今回は前者でいくとのことでした。 イメージ的に「破」の蜷川、みたいな感覚があったので意外ではありましたが、 今回の舞台を観る限り、似せて正解でした。 さらに、今はインターネットでどこに行かずとも何でもできる時代。 だからこそ、劇場に足を運んで舞台を観てもらうことを意識しているようです。 なかなか奥深い言葉。 私もそれに対して、少しでもお役にたてればいいな~と感じました。 もっともっと、たくさんの人に観劇してほしいです。

もうひとつ、今回は脚本が大変だったことと思います。 脚本は、青木豪氏。 当然のことながら長いマンガ。 それをどういう場面をピックアップして舞台にするか? ものすごく難しかったことでしょう。 ガラスの仮面ファンの、この場面だけははずせない!とかあるでしょうし。 今回の舞台を観るかぎり、脚本はバッチリでした。

じつは蜷川演出は初めてだったのですが、 すばらしい舞台演出に感激、感動。 言いきりますが、 私も長年ほどほどに舞台観劇をしてきましたが、 その中でもナンバーワンの舞台。最高でしょう!! 明日地球が滅びてもかまわないくらい。 「ガラスの仮面」の最終回がいつになるのかわかりませんが、 とりあえずこの舞台を観られたから、もういいです(笑)

一番驚いたのは、意外とコメディが多いんですね。 蜷川氏自身、怖いイメージがあるので(汗) もっとシリアス路線かと思ったのですが、そうでもありません。 勉強になりました。

「ミュージカル」ではなく「音楽劇」ということで、 歌重視というわけではありません。 さりげない「歌」という感じでしょうか? 私としては無くてもいいぐらい。それだけのめり込みます。

ファミリーシアターということで、やや家族向けの演出だったようですが、 それでも妥協は許さない蜷川演出・・・すごい、本当にすごい。

ちなみに、私はキャストが決まる相当前から予約をしていたのですが、 それでも中盤よりやや後方・・・ビックリ。 ただ、彩の国さいたま芸術劇場大ホールは後方でも、 ものすっごく観やすかったので安心しました。

さて、まずは開演前。 何か会場内の雰囲気が変。 というのも、開演前だというのに舞台上には、 これからオーディションが始まるかのようで、役者がたくさん集まり、 ストレッチ等で汗を流しているんです。 しかも、よく見ると普通に観客と同じように会場内に入ってきて、 そのまま舞台上にあがるというスタンス。 もちろん、中村裕香里もいるし、亜弓役の奥村佳恵もいます。 ビックリ・・・ ただ、この演出、昔、南青山少女歌劇団でもあったような気が・・・記憶違いかな?

また、マンガ「ガラスの仮面』」の劇中劇の舞台「狼少女ジェーン」の演出のように、 客席から突如登場したり、通ったりするのは当たり前。 前から何列目か忘れましたが、その列は何回も審査員役が通ってました。 ある意味落ち着かないか(笑)

話の流れ的には、

  • ラーメン屋
  • 月影千草邸へラーメンの出前。そこで千草に自分の演技を見せる。
  • マヤ、「国一番の花嫁」でビビ役を演じる。
  • 「劇団オンディーヌ」にて 「逃げた小鳥」のパントマイムで姫川亜弓とマヤが対決。
  • 本格的に女優を目指し、「劇団つきかげ」に入団。自己紹介等。
  • 姫川亜弓が「劇団つきかげ」に現れる。「四つの言葉」で亜弓とマヤが対決。
  • 劇団つきかげの「若草物語」公演が決定。ベス役にマヤが抜擢。
  • 病気で倒れるベスがうまく演じられないマヤ。
  • 雨が降る中、桜小路と一緒に帰るが、最後はひとり。そこで雨にうたれる。
  • 「若草物語」壮絶なベスのベッド上での病気のシーン。
  • マヤの演技に心打たれた速水真澄が、花屋で紫のバラを買い、こっそり送る。
  • 「若草物語」が劇評論家に酷評。月影千草が青柳芸能の黒服に「演劇コンクール優勝」を強要。
  • 「演劇コンクール予選」劇団つきかげ、劇団オンディーヌともに演目が「たけくらべ」しかも主役のみどりに、マヤと亜弓。
  • 千草とマヤの「たけくらべ」の壮絶な稽古。
  • マヤの母親が「劇団つきかげ」に現れる。マヤを連れて帰ろうとするがマヤが拒否。
  • 「演劇コンクール」予選開始。大雨が降るシーンで、マヤと亜弓のみどり役に違いが・・・
  • 「つきかげ」「オンディーヌ」ともに1位。全国大会へ。
  • 「劇団一角獣」が登場。演目は「運命」
  • 「劇団オンディーヌ」の演目はサロメ。主役は亜弓。
  • 「劇団つきかげ」の演目は「ジーナと5つの青いつぼ」主役のジーナはマヤ。
  • 何者かに舞台セットが壊され、仕方なくセットを借りるために、 劇団員が取りに出かけるが、トラックが故障をして動けず、大雨で立ち往生。
  • マヤ、ひとりで舞台に立つ。
  • 観客による一般投票ては1位になるものの、審査対象からははずされ失格。
  • 紅天女とは・・・

こんな感じです。

「国一番の花嫁」ビビですが、 出前持ちの割烹着姿から脱いで衣装変えとは思いませんでした。 ちょっと驚き。 そして、マヤ役の大和田美帆が、 学校の先生の指導によりる本当にお馬鹿なビビと、 自分の思い描いた心底悲しいビビを演じわけます。 演じ方が素晴らしいし、演出も観客にもわかりやすい。 違いがすぐにわかりますから。 濃い演技なのですが、元々がマンガなので全く問題無し。

でもって、超絶的に驚かされる演出。 「雨」 桜小路と一緒に帰るシーン、 最初は細かい粒子の照明かな~と思ったのですが、 何やら一番前の観客がゴソゴソ動いている・・・・ よ~く見ると、 降ってます。雨。 本当に振らせてます。 しかも、パラパラの雨やシャワーではなく、どしゃぶりのザーザー雨。 舞台上で、こんなに大雨が降るなんて夢にも思いませんでした。 すごい~~~!!! さらに、ここでマヤ役の大和田美帆は、 ベスの病気の演技を身につけるため、傘を捨て、自ら雨の中に・・・

当然びしょ濡れ。 しかもここで雨のナンバー。歌うんですよ(爆) またまたすごい~~~! そして、すぐに早着替え。 あれだけびしょ濡れですから、相当な早着替えだったと思います。

そして、「若草物語」のあのベスの病気のシーン。 ちなみに、ここでジョー役の青木麗こと月川悠貴が登場するのですが、 本人もパンフレットに書いていますが、 彼はマンガ「ガラスの仮面」をあえて読んでいないんですよね。 オリジナルの青木麗。 だからマンガを知っている私としてはやや違和感はありました。 悪くはないんですけど。 演じるジョー役が穏やかで優しく、 活発的でなかったのが少し残念かな。原作ファンとしては。

そして、マンガで有名なベスのベッドシーン。 ひとり、夢遊病患者のように逆さになるベス・・・ ハッキリ言って、これを本当に舞台で演じていたら、 演出家の人に怒られると思います(爆) 観客の方が「それはないよ~」と、絶対に引きますから。 ところが、やっぱりこれはマンガが主体。 逆さになっても、それがいいんですよ。 あのマンガの場面をそのまま表現してくれて、すごく嬉しかったです。 マンガ原作好きと、普通に舞台好きとでは、評価が別れるかもしれませんが。

ちなみに雨のシーンは、ここ以外にもあと2回。 舞台「たけくらべ」の最後のシーンで、マヤと亜弓が一緒に現れる演出と、 「ジーナと5つの青いつぼ」で「劇団つきかげ」のメンバーが、 帰ることができない旨を携帯電話で話すシーン。 雨の音は強かったのですが、そんなにセリフが聞きづらいことはありませんでした。 雨が降った後は、特殊なゴムのモップで黒子や役者が掃除。 水を入れる隙間があるのでしょうね。 その間、雨は止んでいるものの、少し雨粒は落ちてきます・・・

マヤがベスの病気の演技をするために、 雨にわざと打たれたことを知る速水真澄役の横田栄司。 ここでソロが入ります。 演技力はあるのだけれど、 歌唱力は・・・残念ながらありません。これは仕方ないです。 ただそれよりも、 「病気の演技を身につけるために、病気になるなんて」みたいセリフがあるのですが、 それをそのまま、私も蜷川氏に言いたいです。 「マンガの雨の場面を表現したいからと言って、本当に雨を降らせるのか~!」と。 しっかし、この雨は本当に凄かった・・・

これだけマヤが素晴らしい演技をしても、 大都芸能か、小野寺の仕業かはわかりませんが、 その舞台を観た演劇評論家は酷評。 まったく、ひどい演劇評論家もいたもんだ(超爆) 許せないな! だったら自分で演出して、役も演じてみろ! 演出家や演じる役者の立場になって、よく考えてほしいものです。 ・・・と、マンガ原作を読んでいる私の心がのたまうわけです。

さて、「演劇コンクール」の予選では両劇団ともに「たけくらべ」 主役をマヤ、そして亜弓が演じます。 最初は、ひとつのセットで「劇団つきかげ」「劇団オンディーヌ」のメンバーが、 入れ代わり立ち代わりで舞台を進行していきます。 最後の演出。 大雨の中、みどりの家の前で、信如の草履の鼻輪がとれてしまうシーン。 ここで、みどりの家のセットが二つ登場。 一方が北島マヤたち「劇団つきかげ」 一方が姫川亜弓たち「劇団オンディーヌ」 この対比の演出はすごく良かったです。そして、面白い。

ただ、じつのところ今回の蜷川演出で一番残念なところがこの場面。 ここで、マヤと亜弓の「みどり役」の違いがわかるようにしてほしかった。 私はイマイチよくわかりませんでした。 審査員が客席に登場したりするので、 あえてお節介ではあるものの、「○○が違いますね~」 みたいな発言をしても良かったと思います。 そちらの方がわかりやすかったかも。 それとも、もう一回観て確認してください、ということかしら?

予選が終了し、二幕。 最初のシーンで、よ~やく「劇団一角獣」が登場。 町中、演劇コンクールが行われることをPRするためのもの。 演目の「運命」も少し演じます。 ここで、よ~やく登場の「劇団一角獣」の紅一点、二ノ宮恵子役の黒木マリナ 彼女は演技もダンスも歌も、折り紙付きですからね。 ただ、私が観た回では、やや声がかすれていたでしょうか? 長丁場の舞台なので仕方はありませんが。 マンガと同じように、舞台のあちらこちらを飛び跳ねます。 マンガよりも、ヘビメタ系、ロッカー的な雰囲気になっていましたが(汗)

「劇団一角獣」のリーダー堀田役の新川將人は、 ロンゲで本当にロッカーそのまんま(笑) 演劇集団というよりも、完全にパフォーマンスが主体。 ある意味、「電撃ネットワーク」的な感じでした。 結局、演目の「運命」も全体像としては演じられませんでしたから、そこは残念。 いろいろな道があって、最後はこの道に進む・・・みたいな演目なのですが。

本選。「劇団オンディーヌ」の演目は「サロメ」 姫川亜弓こと奥村佳恵のダンスシーンですが、 ここはものすごく素晴らしい、というか美しい。 円城寺まどかでもかなわない(笑) 薄い衣装と、絹のようなスカーフをまといダンスをする姿はじつに魅惑的。 彼女のダンスの柔らかさが十分にきわだつ演出でした。

いっぽう、「劇団つきかげ」の演目は「ジーナと5つの青いつぼ」 スタッフがセットを組むかたわら、 こっそり小野寺役の原康義が登場。 サングラスをかけた姿は、まさにマンガの小野寺そのもの。 全くもって違和感ありません。 ここで、スタッフに耳打ち。 「○○くんだよね~?う~ん惜しいな~ 劇団オンディーヌだったら、もっと良い役を与えられるのにな~」 みたいな誘惑。 ここの独特の間合いは、コメディチックでとても面白かったです。 ベタな展開だからこその、このノリ。最高。

で、結局何者かに舞台のセットを壊されてしまい、 「劇団つきかげ」のメンバーが、 地方の学校にいらないセットがあるので取りにいくこととなり、トラックで向かうが故障。 再び「大雨」の演出。青木麗が携帯電話で月影に連絡します。 じつはすでにマヤが、ひとり舞台として演じるとのことで、 驚愕する「劇団つきかげ」メンバーたち。

「ジーナと5つの青いつぼ」の演出は、裏表。 つまりは、観客が見る表の舞台と、 反転してスタッフが見る裏の舞台。 両方を観客に見せるわけです。 じつのところ、ちょっとイマイチかな~? 物語を全部語っているわけではないので、話自体がわかりずらかったです。 マンガの演出では、月影千草の腕が「にゅう~っ」と現れ、 怖い演出をかもしだしていたのですが、今回はありませんでした。 あくまで、「マヤがひとりで演じている」というところをピックアップするのみ。 物語の内容としては、置き去りにした感じ。

さて、審査の結果、最初は1位になるものの、 小野寺が演劇コンクールの趣旨とは合わないと、へ理屈(爆) 結局、観客が投票する一般投票では1位になりますが、 審査員が審査する演劇コンクールの方は失格となります。 たしか、高校演劇コンクールでは、ひとり舞台の受賞もありましたが(汗)

ここから、マヤ、亜弓の対決が始まりを迎える・・・というところで幕。 最後の最後に、おかめの仮面を被った紅天女が登場して、 天空に舞い上がり、宙づりになるという仕掛けがありました。 以上。 物語の流れを書いていても、じつに楽しい~!

今回の蜷川演出で驚いたものは、前述した「雨」の演出。 そして、もうふたつ。 ひとつは会場の広さ。

彩の国さいたま芸術劇場大ホールは、 「NEWSエンターテイメント」のイベントや舞台で何回か観たことがあるのですが、 今回初めて驚いたのは、舞台がものすっごく広い。 演じる舞台の後ろにも舞台がある、という感じです。 いうなれば、セットや、人が待機しているだろうところも全て排除。 後ろにもうひとつふたつステージがある感じ。 上を見ると奥まで照明がたくさん設置されているので、 もともとこういうホールなのでしょうね。 蜷川氏が埼玉出身なので、本人の希望で作ったのかと思うくらい(笑)

つまりは、通常の3倍ほどもあるステージ。 この奥行き感、遠近感がものすっごい! なにこれ(爆) 遠くから、こちらに向かってダンスをしてくると、すごい迫力があります。 たしか、もう一度、この奥行き感を使った演出がありました。 2幕最初の「劇団一角獣」と一般人とのナンバーだったかな~? 集団ですと、さらにに迫力が倍増。 ビックリしました・・・

さらにもうひとつの演出として、 場面場面で、大きな差し絵、パネルが登場。 それが原作のマンガ「ガラスの仮面」 月影千草の絵であったり、北島マヤであったり、姫川亜弓であったり、 原作のマンガのパネルがスライドガラスのように、左右に行き渡ります。 この演出もすばらしい。 マンガをすごく意識してますね。

一番最初のオーディション風景。 バーレッスンの風景で、セットは大きな鏡ばりがふたつだけ。 派手な演出は他にあるものの、じつは基本はこのセットがメイン。 あえて鏡を使ったのだと思います。 このセットが左右に動いたり前後に移動したりします。

「劇団つきかげ」で自己紹介の場面があるのですが、 ここで、一応マンガ原作でも主力となる 沢渡美奈(つきかげメンバー、けっこう美人) 春日泰子(つきかげメンバーの中で一番地味な存在) 青木麗(つきかげメンバー、いつも男と間違えられる) 水無月さやか(つきかげメンバー、小柄でおさげ髪が特徴) が登場。

青木麗は月川悠貴、水無月さやかは中村裕香里とわかったものの、 他の二人はわからずじまいでした。残念。 沢渡美奈は細いスタイルの女性、 春日泰子役は松田まどかと、キャスト表には書かれていましたが、 私が観た時はここは変更されていました。 写真とは全く別人のかなりふくよかな方でした。

けっこう力を入れてるな~と思うシーンが、 花屋の場面。 速水真澄が北島マヤの「若草物語」ベス役に感動し、 紫のバラを選ぶシーンです。 普通であれば、こじんまりとしたお店のセットで、 花を少し置いておけばいいシーンなのですが、 舞台全部を使って花屋にしていました(笑) なので、紫のバラ以外の花も、ま~造花とは思いますが、 いろいろな種類をとりそろえたことにビックリ。 場面的にはそんなに長いシーンではないのですが、 ここが重要ということで、蜷川氏も重きをおいたのだと思います。 紫のバラは、青いバラを作るためにの品種改良の最中に偶然にできたもの。 失敗の産物。だかこらそいい。 それが「紫のバラの人」ということなんですよね。

意外と言っては失礼ですが、 青柳プロ社員役の田村真と月影千草の会話のシーンは、 マンガ通りの流れで、けっこう印象深いです。ここも緊張感あります。

ガラスの仮面の舞台では、いろいろ素晴らしいシーンがあるのですが、 私の中で一番印象深いシーンが、 舞台「たけくらべ」で稽古をするマヤと指導する月影千草のシーン。 ここが、ものすっごい!! マヤに対して演技の駄目だしを何回もする千草。 本当に指導しているかのようで、観ているこちらも緊張が走ります。 まさにマンガそのもの。 ここは本当に凄かった・・・・・・

ミュージカルナンバー?と言っていいのでしょうか? そのナンバーの中では、 「はい いいえ ありがとう すみません」が私は一番好きです。 まさにマヤと亜弓が直接対決する場面。 マヤは「はい いいえ ありがとう すみません」しか言葉を発することができません。 それに対抗するように、亜弓がいろいろしかけてきます。 回りの劇団研究生たちも固唾をのんで見守りつつ、歌いあげます。 ここもマンガそっくり! めっちゃ面白い。

気になった役者

北島マヤ役の大和田美帆

今回のマヤの年齢設定は高校1年生。 母が岡江久美子、父は大和田獏という、親の七光とも思われる女優ですが、 ど~して、ど~して、なかなかやりますね! マヤの素朴で地味なところもすごく似てるし、役になりきるところもいい。 表情のの変化もいいし、演技力あるし、 セリフの発声もしっかりしてるし、歌もうまいです。 私的に、このマヤは大満足。 コメディチックなところも、すごく面白い。 初めて紫のバラをもらったところのボケキャラもいいし、 「たけくらべ」で「劇団つきかげ」「劇団オンディーヌ」とともに両劇団が1位になり、 そこで亜弓と一緒に登場をして挨拶をする場面も楽しい。 マンガ原作どおり、舞台を降りた後の空気の読めなさが、さらに笑いを誘います。 本当にマヤそっくり。 ちなみにテレビでは安達祐実でしたが比較にすらなりません。論外。

そうそう、マヤの私服がダサダサなのは、わざとそういう演出なのでしょうね。 ここは細かい。 パンフレットにも書かれていることですが、本当にラーメン屋のオカモチが良く似合います(笑) 決してすっごい美人というわけではないけれど、とても魅力を感じる女優。 大和田美帆の演技に惚れてしまいそうだな~ 次の舞台も観たくなってしまう・・・

姫川亜弓役の奥村佳恵

オーディションで選ばれた本当にど新人。 正直、セリフのカツゼツはいまいち。 聞き取りづらいところはあります。発声等の練習はまだまだなのでしょう。

ただ、瞳の力、表情付け、演技の力強さは素晴らしい。 特に目の力。 もともと目がやや大きいこともありますが、 相手を威嚇するかのような瞳の使い方には驚かされます。 歌唱力はまずまずですが、おそらく基本はダンス系。 劇中劇である「サロメ」のダンスシーンは秀逸ですし、 すごい色気、というか美しさ。 おそらくですが、蜷川氏はこれを演出したいから、彼女に決めたのかも。 それほど素晴らしかったです。

月影千草役の夏木マリ

テレビでは野際陽子が演じていて、物凄く似ていましたが、 夏木マリはそれを完全に超えています。 あくまでも野際陽子はテレビドラマの人で、 舞台では夏木マリにかなわないです。 演技力、発声、表情、まさに恐るべしっ!って感じです。 特にやっぱりセリフの発声。 重厚感あるセリフは、本当に舞台女優だな~とつくづく納得させられます。 こういった緊張感があるところで、 「おばさんと言わないで」なんていうコメディをいれると、さらに光る(笑) ただ、歌唱力はあるものの、歌い方が独特なので好き嫌い別れるでしょうね。

姫川歌子役の月影瞳

この人も原作に近い雰囲気。 元宝塚ですから、下手なわけがありません。 瞳の印象が強く、落ち着いた雰囲気、清楚な感じもバッチリ。 あえていうと、原作はもう少しスレンダーですが(汗) もちろん太っているわけではなく、マンガが痩せ過ぎなのですが・・・

桜小路優役の 川久保拓司

どうやら、本当はウエンツ瑛士だったようですが、いろいろな理由で降板。 ただ、もしウエンツ瑛士だとしても、そんなに印象は変わらないでしょうね。 今回はマヤ、亜弓、月影の印象度が物凄いですから。 大雨の中でのソロ。歌はまずまずかな~と思います。 マヤのことが好きなのに、 マヤは自分のことには目もくれず、演技、舞台に夢中になっている・・・ 遠い目をしている演技はとても良い表情。

マヤと二人きりのシーンでも、マヤは天然ボケキャラで、 こちらのことに気づいてくれません。 会話がコメディになってしまうのも、本人が一番悲しいでしょうね。 っていうか、なんとなく桜小路に肩入れしてしまいます。マヤ、早く気づいてと(笑) おだやかな桜小路優を好演し、私的には全く問題ない演技で大満足。

青木麗役の月川悠貴

青木麗とは、一見超美男子ではあるものの実は女性なのですが、 今回、蜷川演出として、男を配役しました。 前述しましたが月川悠貴は、 あえてマンガの「ガラスの仮面」を読んでいないそうです。 ということで、女性らしい雰囲気はあるものの、 マンガの世界の青木麗とは大きく異なります。 マンガの方が内面はもっと短気で、表情豊かで、 おっちょこちょいのところがありますから。 月川悠貴の青木麗は、穏やかで落ち着いた雰囲気。 演技的に悪くはないのですが、 ややイメージは違うので違和感をもつ人はいるでしょう。 私的には、これはこれでアリだと思います。 女性らしい演技は良かったし、歌も頑張っていました。 歌の場面は高音の歌なので好き嫌い別れますが。

源造役の岡田正

パンフレットで気になる言葉があるので、少し抜粋。 「この年になっても、叱ってくれる演出家が周りにいる。これは宝ですよね」 すごく良い言葉、グッときました。 年齢を重ねても、叱ってくれる人がいるのは財産なんですね。 月影を影で支える源造役は、原作のイメージどおりの演技でした。

北島春役の立石凉子

今回は出番が少なくて残念。 最初のラーメン屋の食堂の場面と、 後半の、家出さながらにして飛び出したマヤを劇団から引き戻そうとする場面。 いかにも昔のお母さんといった感じで、すごく味わいがある演技。 特に「劇団つきかげ」の稽古中にマヤを劇団から引き戻そうと、 手を引っ張って退出しようとするところは、観ているこちらも緊張感が走るほど。 すごい真剣味というか、母親オーラ全開でした。 演劇業界とは無縁の母親役であるからこそ、印象深いシーン。

水無月さやか役の中村裕香里

これだけですと、よくある普通の観劇感想になりますが、 私はちょっとマニアック路線。 なんと言っても、中村裕香里! 彼女が出演しているんです。

  • 2006 新かぐやの浦島モモタロウ おばあさん役
  • 2005 かぐやの浦島モモタロウ おばあさん役
  • 2004 ココスマイル3 ハル役
  • 2003 フレンズ カヤ役

アルゴ、ココスマイル関連ですからね。 パンフレットの出演履歴にも、ちゃんと書かれていて嬉しいです。 黒歴史にしていませんから。 他の出演者はすごい出演履歴ばかりですし、ニナガワ・スタジオ出身者も多いです。 噂に聞いた話では、オーディションは物凄かったようです。 たくさんの方が落ちてしまう中、合格した彼女。 それだけでもすごい。

で、じつは役どころを聞いてビックリ。 水無月さやか役。 マジかと・・・・・ ガラスの仮面ファンなら知っていますが、超有名どころ。 「劇団つきかげ」の主要メンバーですからね。 観劇していて、役を聞いた時は本当にビックリしました。 (パンフレットには書かれていないので)

さらなる驚きはアンサンブルメンバーが舞台上に出てくる時は、 センターがひじょうに多いです。 これもまたビックリ。 元々彼女は瞳パッチリでルックスがいいので、ひじょうに目立つんですよ。 劇団一角獣の登場シーンでも、一般客として、カメラをバシバシとる少女役でした。 かなり目立つ位置どり。 観客の人も気づくでしょうね。 印象に残っているのは、表情付け、ダンスかな~? 明らかに蜷川氏は彼女に期待しているでしょ? でなければ、あんなに良い場面で使われませんから。 蜷川演出で中村裕香里を観ることになるとは・・・感慨深いです。

過去に当サイトでも動画等でご協力いただき、 一応、ほどほどに知り合いなので、終了後にご挨拶。 痩せましたね。 「アルゴ」の時は、少し女性らしい雰囲気が出てきてふくよかになっていたのですが、 一気に「フレンズ」時代に戻った感じ(笑) 蜷川演出を受ければ鍛えられて痩せますよね・・・ 太ってる方もいますが(爆)

性格はたぶん知っている方は知っていると思いますので、 天然な、あのまんまです(笑) 変わってません。 一言だけ、コメントをいただきました。 「最年少で頑張りました!ぜひ御観劇ください」 とのことでした。 最年少ですか・・・それもすごい話しです。

水無月さやか役を中村裕香里が演じるということで、 「あの「若草物語」のベスをマヤ役の大和田美帆と争う場面があるのか! 超楽しみ~!!」 なんて思ったのですが、そこの場面は華麗にスルー(涙) あ~あ、ここ、すごく観たかったのにな~ 中村裕香里対大和田美帆ですよ! 超!すごい対決なのに。マニアな人には(爆)

結局マヤに決まったというだけで、つきかげの劇団員は、 そのまま舞台から走り去って、はけるのですが、 私は見逃しませんでしたよ。 中村裕香里だけは、すごく名残おしそうにゆっくり舞台から退場しました。 演技的にはおそらく、「私の方がベスはピッタリなのに・・・」 という感じで、はけたのでしょうね。

総括

マンガのイメージ通りの舞台演出+驚きの演出。 原作ファンが描いてほしいシーンばかりでしたので、違和感ゼロ。 キャストの配役、演技ともに文句無し。 原作の美内すずえ先生も、この出来ばえであれば大満足でしょう。 前述しましたが、私が観劇した舞台の中でも最高の舞台。 この舞台を観ることができて本当に幸せでした。 今回の演出に限っては、蜷川演出最高!!

※敬称略
キャスト表