100年分の声援を

満足度
◆公演時期 2011年6月9日〜12日
◆会場 恵比寿 エコー劇場
◆脚本・監修
竹田昌広
◆演出
松本昇大
◆総指揮 片桐豊
◆プロデュース
仲圭太
◆振付
佐藤春樹
◆スペシャルサンクス
我武者羅應援團
◆主催・制作
S-TRINITY

あらすじ
ある平和な学校でお金が盗まれる事件が起きる。
その疑いをかけられたのは、孤独で闇を抱える女の子、恋(れん)
そんな彼女を救いたいと様々なことに葛藤する生徒会長、正田正直。
そして、学校で異彩を放つひとつの集団。
人だけでなく、万物のありとあらゆる物を応援する応援団。
彼らのガムシャラな応援がやがて奇跡を生む。
(パンフレットより引用)
観劇感想
そもそも、この舞台を観るきっかけは、
申し訳ないけれど、中村裕香里
子役からの脱却の舞台、なにより、この舞台のヒロイン。

舞台に「友近」が出るから観てみようと思って、
初めて観る舞台が「ミュージカル・アニー」だったという意味合いと同じ。
舞台の内容も何もかも知らず、その人が出るから観る。
そういう「きっかけ」も大事です。
特に有名人の場合は、観客動員にも響きますから。
その後に、好きな舞台だから観に行く、
好きな劇団だから観に行く、
という選択肢が増えるのは良いこと。

まずこの舞台、前提として、
「我武者羅應援團」について、知っていただかねばなりません。
パンフレットを引用しますが、
「気合と笑いが一体となった独自のパフォーマンスを繰り広げる、
実在する応援団です」
それがこの高校の応援団のモデルという感じですね。
というか、この舞台が高校というの、舞台途中で初めて知りましたけど。
ほぼ全員が高校生とは・・・
ま〜数年留年している人もいましたが。

変顔というわけではなく、
集中した表情をずっと気合をこめて続けています。
はたから見れば「奇面フラッシュ」とも言えるでしょう。
一般の人にはギャグそのもの。
ただ応援団のメンバーは真剣。
何事にも常に全力、超ポジティプシンキングの集団です。
死んでいるネコまで生き返らせようと頑張るほど。
マンガ「魁!男塾」のノリもありますね。

その応援団の汗と気合は物凄い。
汗の量は半端ないです。
滝。まさに滝のような汗だくの応援でした。
声を枯らすのは仕方ないですよね。全力だもの。

あらゆるものを応援、なんでも応援団、
って、「ラブリーズ」みたい。
ただ、こちらは気合の集団ですし、可愛さは1ミリグラムもありません。

この舞台、
応援団が登場するギャグの流れ、
学園の生徒のほのぼの感、
恋が登場する、シリアス展開の3種類。
けっこうばらけます。
シリアス路線を続けるのは疲れますから、
その一服の清涼剤として応援団が登場、みたいな感じです。
ま〜演出的にも稽古的にも、
場面が変わるし、キャストも変わった方がやりやすいですけど。
ただ、舞台の進行、流れは早めかな。

どうやら、この公演は演劇集団「S-TRINITY」旗揚げ公演のようで、
(佐藤春樹、仲圭太、 松本昇大の3人)
他の共演者はどういう意味合いなのか、
オーディションなのかはわかりません。
事務所がらみとか、いろいろあるのでしょうか?
モデル的雰囲気の子もいるし、演技ができる子もいるし、
実力はけっこうバラバラでした。

オープニングの導入部分はいいですね。
「キャラメル・ボックス」っぽい。
全員が登場するし、歌も歌ったりします。
導入部分が楽しいと、やっぱり期待もてますから。

全体的には、
演技があって、歌もあって、ダンスもあって、とても楽しめます。
雰囲気にSETにも似てます。
しかも、男性、女性含めて、ダンスがしっかりしているのには驚き。
ダンス関係の専門学校も関係があるのでしょうか?

思うに、この舞台は子供向けでも十分に楽しめるし、
通用すると思います。
子供受けしやすいですよ。
ちょっと厳しいところもあるけれど、
今の子供は、けっこうすれてますから大丈夫。

エコー劇場は、銀座博品館劇場をもう少しせまくした感じでしょうか?
私が観た回は満席でした。
このカンパニーの存在が知れ渡れば、
もっと大きなキャパでもやっていける予感がします。
題材も重要ですが。

話の流れ的には、
→とある学校でお金が盗まれる事件が起きる。
→その疑いをかけられたのは、孤独で闇を抱える女の子、恋(れん)
→そんな彼女を救いたいと様々なことに葛藤する生徒会長、正田正直。
→そして、学校で異彩を放つ応援団が登場。
→その応援団に魅せられてか、ふたりの人物が入団。
→正田正直に恋するユイは、恋(れん)が気にかかる。
→盗難事件に警察が介入予定で、指紋採取もあるとのこと。
→あまりにもおおごとになり、動揺する生徒たち、そして・・・
こんな感じです。

話の内容だけを見ると、なんとなくありそうな流れ。
ただ、ここに「我武者羅應援團」をオマージュした応援団が加わる為、
かなりコメディチックになります。
物語の流れとしては、アップテンポしてますね。
青春学園ものでありながら、シリアスもあり、コメディもある。
社会風刺も加わっていますから。
観てる側としてみると、わかりやすいし、飲み込みやすいです。

私は感受性が低い人間で、感動すらほとんどしない人間。
そんな人間がたくさん観劇しているのもなんですが。
なので、他の観客の方が笑っている場面、
(だいたい若い人向けの笑いかな?)
ほとんど笑えなかったのですが、
そんな中でも笑えるシーンはありました。
反町隆史に変化とか、ビューティフルのVとか。
このへんは面白い。
応援団団長の仲圭太と、
ちょっとふっくらした元恋人、横山彩里菜のかけあいも面白い。
基本、各キャラクター、ピックアップする場面がありますから。
チアガールメンバーだって、けっこう登場します。
どこかにいっちゃう子は、結局意味不明でしたが。

照明も頻繁に色を変えていました。
照明設備がととのっているせいでしょうか?
けっこう派手めな色使いの場面もあります。

生徒会長の家庭が大変だとか、
妹の為だとか、
そのことを先生が見つけるとか、
ちょっとお約束的な流れはあります。
この背景もじつは重要な流れのひとつ。

ひとつだけ、どうしても気になってしまうのは、
恋と母親との関係。
ここは、正直つらかったです。
真実味、怖さが全く伝わってきませんでした。
あくまで私の場合だと茶番に見えてしまう。
もちろん、あまりにも怖くしてしまうと、
それはそれでバランスが大変とは思いますが、
私はあの場面、物凄く違和感がありました。
しかも後で改心って・・・
「それはないわ〜」なんて、私の心の叫びがあります。

エンディングは「魁!男塾」の大鐘音みたいなものですね。
どんなに離れていても、全力で応援する。
私だったら、ここで軽いフラッシュバック。
電車の座席に乗っている恋の表情が出てもいいかな。
聞こえてるのか聞こえていないのか、わからないけど、
軽く気づき、微笑む。
そんな終わり方でも面白いかな、と。

気になった役者は・・・
本メンバーなのか、友情出演なのか、
そのへんはよくわかりません。

恋役、中村裕香里
中村裕香里のジュニア時代の舞台。
『フレンズ 〜ガラクタ怪獣のなみだ〜』(2003年)カヤ役
『ココスマイル3 〜虹色のメロディー〜』(再演)(2004年)ハル役
ミュージカルキッズ・アルゴ 『かぐやの浦島モモタロウ』(2005年)
ミュージカルキッズ・アルゴ 『新かぐやの浦島モモタロウ』(2006年)
けっこう観てます。
最近ですと
音楽劇 ガラスの仮面(2008年)水無月さやか役
これでしょうね。
蜷川幸雄演出の舞台。
しかも「ガラスの仮面」を知っている人にはわかりますが、
前半では水無月さやかは重要な役。
それを任せられています。
そりゃもう、鍛えられますよ。

子役の時から見てますけど、あの当時、
きっとこんな女の子に成長するんだな〜と思う、
そのとおりの成長の仕方には驚きました。
基本、変わってません。

ひとつ気になったのは、ハキハキしたセリフ遣い、
良く声がとおる、リナ役の広瀬双葉がいますが、
中村裕香里はそこまでではない。
役柄的に、ハキハキする性格の役ではないから仕方ありませんが。
聞き取りづらい、というレベルではないけれど、
もっと声が出てもいいかな。
ただ、後半ものすごい大声を出すので、
声、喉の管理は大変だったかもしれません。
昔はもうちょい高音だった気がするけど、どうかな?

彼女が昔から変わってない部分。
相手が尋ねて、それを聞き返す時の表情。
これが小さい頃と全く変わっていない。
私だけかな〜?ちょっと嬉しいところでもあります。
マニアックですが。

なんとなくではありますが、
彼女の雰囲気、性格は、ちょっぴりだけ知っています。
ほんわかで、天然ボケキャラでした。
子役時代は。
今、天然さはかなり緩和してますね。
やはり19歳にもなると変わってきますよ。
いつまでもボケキャラやってる場合じゃありませんから。
でも、そんな性格の彼女にしてみると、
今回のこの恋役はすごく難しい役。

友達の前での表と裏の性格。
母親との家庭の事情。
なんというかな、この役からすると、
エターナルファンタジー演劇大賞 2008年のMVPをとった、
日美野梓のような、
ずるがしこさ、怒り、震え、毒、ドス黒い重さがある演技がほしい。
中村裕香里のほんわか系、私は見えてしまう。
やっぱりかわいいし、ほわ〜んとして優しいもの。
もちろん、恋は優しい性格でもあるのだけれど、
一部分においては、
みんなに、やっぱり嫌な奴なんだ・・・という部分を見せないと。
ま〜私的にAKB48のアイドルより断然かわいいし、
元々不良っぽさ全くないですから。
なんとか、不良というより、孤独、寂しさがある役になってるかな。
そもそも生徒たちが悪い噂話を信用して、
恋に対して距離感を持ってしまい、「シカト」状態というのが正しいかも。

みんなが楽しく会話をして、ギャグを言って笑っている時も、
ひとり片隅での無表情は、さすがの演技。
ただ、後半のみんなとなじんでいるところはともかく、
前半はもっと冷たい性格の部分、
人を寄せつけない雰囲気も見せてほしかった。

ソロの歌が無いのは残念。
歌ったのはあの主要な3人だけかな〜?
ひとりぐらい女性が歌ってもいいのに。

中村裕香里はダンスもうまいんですよね。
端っこのほうで帽子をかぶっていますが、
ダンスレベルが高いのがバレバレでした。

今回の役は本当に難しい役柄。
中村裕香里クラスでないと、演じきれない。
だからこその配役でしょう。
本人のキャラには合わないけれど、よく頑張った。

下記3人、佐藤春樹 仲圭太 松本昇大が、
演劇集団「S-TRINITY」旗揚げしたのですから、
演技はしっかりしています。
特に言うことありません。
キャラクター濃いです。

正田正直役 佐藤春樹
基本、この舞台の主役でしょう。
真面目な生徒会長役ですが、何かどこか抜けている生徒会長。
パンフレットの写真と、舞台の上でメガネかけている正田正直では、
印象違いますね。
口には出さないのだけれど、
結局恋のことが好きだったのか、
やっぱりなんとなく過去の記憶が強いユイが好きだったのか、
よくわかりませんでした。
正田正直自身も、よく気づいてないのかもしれません。

華の応援団長・中金田金造役 仲圭太
とにかく、この役は大変・・・
ずっと全力だもの。
そりゃ、滝の汗も流しますって。
いい演技だった・・・としか言いようがないです。
元恋人、チアガールの横山彩里菜とのかけあいが特に印象的。

セイジ役 松本昇大
セイジ役は、最初の方と、途中からは印象が全く異なります。
けっこう驚く。
雰囲気変わるので、美味しい役でもある。

マヨ役の青木ケイト
セイジが憧れる女性。
彼女のせいってわけでもないけれど、
セイジが応援団に入ってしまいます。
パッと見は普通にモデルさんかな〜?と思いました。
マドンナという感じ。
演技はまだまだこれから。
でも、セイジと二人のシーンもあって、けっこう頑張りました。

ユイ役の川口恵里奈
中村裕香里に対抗するのは、やっぱりこの子でしょ。
笑顔が可愛いし、演技もできるもの。
表情もよく変化しますし。
地味な性格の演技だけれど、けっこう印象に残りました。
ちなみに中村裕香里がこのユイ役をやってもいい感じ。

ミキ役の秋田仁美は表情が変化して楽しい。
ルックスは矢口真理っぽいところもあります。
演技とか、セリフ遣いはまだまだだけれど、
これから伸びる可能性大。
要注目の女の子だと思う。
私はこういうタイプの女優さんは好きですね。

イケメンのメンバーは舞台というか、テレビ映えする感じ。
デジマ役の多和田秀弥なんて、背も高くてかっこいい。
特撮ヒーロー物で抜擢されやすい。

応援団、唯一の女性、山中アキラ役の金子紗也加
あのメンバーの中で、
あの気合の入った顔をずっとし続けていました。
女の子なのに大変。
でもすごい。なかなかできませんよ、あの気合の入れ方は。

リナ役の広瀬双葉
彼女は演技できますね。
発声が違うもの。
よく声がとおりました。
メガネ無しの演技も観てみたい。

総括

とても楽しい舞台でした。
学園物で、シリアスの場面があって、家庭の問題もあって、
鬼気せまる応援団の勢いもあります。
シリアスとコメディのバランスの舞台。

男性陣3人はうまいので、女性陣をどう輝かすかがポイントでしょう。
チアガールのひとり、ひかりを活用させるのは私的に凄く好きな展開。

2時間休憩無しですが、全く飽きる部分がありませんでした。
あ〜親子のところだけは、申し訳ないけど論外。

今回「我武者羅應援團」がモチーフでしたので独特でしたが、
また違う舞台でどういった展開になるのかは観たいですね。
同じような流れで、またひとつだけ違った部分を見せる、
というやり方は通じないかも。
ただ、新進気鋭の演劇集団なので、
ひじょうに今後が楽しみな劇団です。
次回公演もぜひ観てみたい。

(敬称略)

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