満足度
公演時期 |
2017/7/24(木) →8/3(木) |
会場 |
東京国際フォーラム ホールC |
原作 |
ジェームズ・M・バリ |
作詞 |
キャロリン・リー |
作曲 |
ムース・チャーラップ |
翻訳/訳詞 |
青井陽治 |
演出 |
藤田俊太郎 |
音楽監督/作・編曲 |
宮川彬良 |
振付 |
新海絵理子 |
あらすじ
イギリスのロンドンにあるダーリング家の子供部屋。
両親がパーティーに出かけ、寝静まった子供部屋に、
一人の男の子と光の妖精が飛び込んできます。
彼の名はピーターパン、そして妖精はティンカーベル。
ピーターパンは先週もこの部屋に忍び込んでいたのですが、
その時に家の愛犬であるナナに自分の影を捕まえられてしまい、
ダーリング夫人によってタンスの中しまわれてしまったのでした。
それを取り戻そうとやってきたのですが、影を見つけたもののくっつきません。
悲しんで泣いているピーターパンを、
目を覚ましたこの家の少女ウエンディが、影を縫い付けてくれました。
騒ぎで、マイケルとジョンを目を覚まします。
喜んだピーターパンは子供たち3人に空を飛ぶ方法を教えてあげました。
ティンカーベルの道案内で、
ピーターと3人の子供たちはネヴァーランドへの旅に出かけます。
観劇感想
1996年、
2002年、
2005年、
2007年、
2013年についで6回目。
内容的には大きな変化は無いので、上記を参照していただけると幸いです。
私はおべっかが嫌いで、ステルス・マーケティングも何もありません。
率直な感想。
2013年以来のピーターパン。
パンフレットは1500円だが、中身がないのが寂しい。
客席は3階席までほぼ満員。
この動員力は毎回思うが本当にすごい。
子供たちがいかに期待しているのかがわかる。
今回の演出は藤田俊太郎。
そして、主役のピーターパンが唯月ふうかから吉柳咲良へ。
共演陣もベテラン揃い。
どのような舞台になるのか、とても楽しみにしていました。
1954年ブロードウェイ初演を意識した演出?
パンフレットにも少し触れていますが、
1954年のブロードウェイ初演の舞台に近づけることを目指しているとのこと。
もちろん私は観たことはありませんが、
今回のピーターパンは今までとかなり異なった演出でした。
開演前、客席に子供の姿をしたキャストがピーターパンの本を読んでいる。
開演後の1幕も、子供の姿をしたキャストたちが本を持って、
舞台中央で繰り広げられる演劇を観ている演出。
あくまで私なりの解釈だと、
ピーターパンを読んでいる子供たちの思いが舞台に投影している感じでしょうか?
謎は謎のままのメイド
流れの中でメイドとしてライザが登場するのですが、
最初は普通にメイドかな~?と思いきや、ネヴァーランドにもいるし、ピーターパンを助けたりもする。
1幕は下手にずっといます(メイド部屋?)
ストーリーテラーかな~?とも匂わせるけれど、そうでもない。
結局、最後まで秘密は明かされず、謎のままでした。
意味合いとしては、彼女も前述したピーターパンの本を読んでいるひとり、
という立場なのでしょうか?
う~ん、やっぱり謎だ。
舞台セット
今までは、最初の豪邸が舞台そのままでしたが、
スケルトン使用の階段がある2階構成。
しかも回転して、裏側はウェンディたちの寝室にもなります。
2幕のネヴァーランドのところも似た感じ。
ピーターパンや迷子たちの秘密基地が同じもの。
3幕の海賊船になって、ようやく舞台全体が使われる感じ。
1幕、2幕は、意外とこじんまりした印象が強い。
また、舞台のセットとして、今回は舞台の端、
上下左右にピーターパンの本がパネルとして何十冊も散りばめられています。
時に舞台中央に大きな本も(飛び出す絵本のようにもなる)
この理由のひとつとして、光のティンカーベルを動かす、というものがあります。
上下左右にあるので、レーザー光線?が当たって動きやすく、
止まっていても妖精の姿がすぐにわかります。
特にティンカーベルが飛んだ後の妖精の粉?の流れ出る雰囲気は抜群にいい。
私が過去に観た時には、本当にただの光だけでしたが、今は妖精の姿がしっかり確認できます。
また、おそらくプロジェクションマッピングを使っていると仮定しますが、
その本の中にピーターパンの影絵のような動画をいくつも投影していました。
もしかしたら、舞台中に登場するピーターパンの影やウェンディの影も独立しているので、
単純な投影ではなく、プロジェクションマッピングかも?
ちなみに「大人にならない」のミュージカルナンバーでは、歌詞も表示されていました。
舞台のテンポ
セリフがやや早い。
良いように解釈すれば、テンポが早いのでドンドン進む。
ただ、解釈するまで時間がかかるので子供は置いてけぼりになるかも?
1幕のダーリング氏と夫人、ウェンディや子供たちのやりとりが、
前はもう少し長かったような気がします。
犬の毛がついてしまう、なんてやりとりは過去にもありましたが。
少し淡白かな?
けっこう早めにピーターパンが登場します。
「雄叫びあげて」のミュージカルナンバーが、イマイチ楽しくない。
後述しますが、新人ピーターパンの吉柳咲良が、まだまだ荒削り。
2013年の唯月ふうかがあまりにも素晴らしく、私の印象に強く残ってしまっているので、
仕方ないんですけどね。
比較してしまうのは本当に申し訳ない。
申し訳ないついでに、まだまだミュージカルナンバーの楽しさが伝わってこない。
歌っている本人が楽しくないと、観客、子供たちも楽しくありませんから。
初めてのピーターパン。
緊張しているし、セリフや歌で精一杯なのが、観ている私にもわかる。
「楽しませる」まで神経を尖らせるのは大変だもの。
海賊船の部屋の奥でピーターパンが化け物のふりをして、
海賊たちが出たり入ったりするところも、けっこう間延びしていた。
ここのテンポは気になりました。
エンターテイメント性に乏しい
2013年と比べると顕著。
この時は海賊ひとりひとりに、かなりキャラ設定をもたせていて、
凄く印象に残りました。
スミーも抜群に面白かった。
ところが今回は正直地味。
スミーもビックリするくらい面白くない。
前述しているように、初演に近い演出方法に切り換えた所以かもしれませんが、
私は残念。
ケーキ、ウェンディの家、ここはイマイチ理解できませんでした。
意外と静かなシーンが多い。
ピーターパンのミュージカルにしては珍しいと思います。
普通飽きさせないように、ずっと明るいテンションのままですから。
ここは少し気になりました。
ピーターパンが声色を使う場面。
海(?)に見立てた三カ所の布を巻き上げる場面の演出は素晴らしかった。
ここは面白い。
船の上の戦闘シーン
3幕でとても重要なシーンだけれど、ワクワク感が全くない。
長い戦闘シーンなのに、凄くもったない。
殺陣がイマイチのせいなのか?ピーターパンのスピードのせいなのか?
ドタバタ騒ぎ立てている感じ。
フック船長と一騎討ちのシーンも、全然物足りない。
もっと殺陣をバチバチやって、途中途中で飛んでほしい。
私は全然物足りない。
フック船長が爆弾を持って船ごと自爆しようとし、それが遮られ、
ワニに食べられてしまう・・・
この最後に食べられてしまうシーンが影絵になって、あっと言う間に終わる。
あまりにも唐突すぎてビックリ。
ここの最後のオチも物足りない。
ダーリング邸に戻ってきて
過去の演出を思い出しても仕方がないのだけれど、
ピーターパーンが屋根にこっそりいるとか、
海賊のスミーもいたりとか、
迷子のリーダーはネヴァーランドにずっといるとか、
そういう変な面白さが無かったの残念。
気になった役者は
吉柳咲良 ピーターパン役
初めてのピーターパン。
しかも前任が唯月ふうか。
比較されないわけがないから、正直可哀相ではある。
前任が偉大すぎると後任は本当に大変。
前述しましたが、セリフ回しはやや早い。
カツゼツもそこまでよくない。
途中、聞き取れない部分もありました。
舞台の宣伝で番組に出演していましたが、その時もテンションが低め。
いざ舞台では?と思ったら、同じようなテンポ。
何か楽しめない。
もっと自分が楽しんでほしいな~
とはいえ、この時点でまだ13歳。
酷なのは至極承知。
あくまで私のイメージとしては、ドタドタして体が重い。
身軽でスピーディーなピーターパンではない。
表彰付けは普通かな~?
フライングもまずまず。
前回のことがあるから、あまり派手な回転はさせなかったのかもしれない。
とにかく、まず「歌」をメインにしている感じ。
ティンカーベルが弱った時に、子供たちへ拍手をしてもらうようにうながすのだけれど、
ピーターパンの感情のテンションが常に一定で、イマイチ乗り切れない。
雰囲気がずっと同じ。
ここは正直、観ている間ずっと気になりました。
神田沙也加 ウェンディ役
ミュージカル「ウーマン・イン・ホワイト」以来、久々の観劇。
ハッキリ言って、言うことありません。
本当に子供のウェンディそのまま。
茶目っ気たっぷりで、じつに愛くるしい。
あくまでなんとなくだけれど、
少し2.5次元ミュージカル風の印象が残る。
歌っているはずなんですけど、正直、歌の印象は薄いかな?
宮澤佐江 タイガー・リリー役
頑張っているは重々承知なのだけれど、
私の場合は過去のタイガー・リリーと比較してしまう。
そこは申し訳ない。
過去には筋肉隆々の人もいたし、力強さが足りないな~
それがダンスの時の部分にも影響する。
さらに歌はつらい。ま~仕方ないか。
入絵加奈子 ダーリング夫人役
体の線が細い。
よく鍛えている。
正直、ダーリング夫人より、ジェーンを観るために来た(笑)
脱線して申し訳ないが、
入絵加奈子は舞台女優として数々の有名な舞台に出演しているけれど、
私は
「赤ずきんチャチャ」の主役チャチャ役が印象深い。
2.5次元ミュージカルの先駆者ともいえる。
当時でも、それなりの年齢だったとは思うが(失礼)
全く違和感のない子供役。
はしゃぎ方、笑顔、本当に素晴らしかった。
そもそもこのミュージカルは起承転結、脚本が素晴らしく、
さらには音楽がべらぼうに素晴らしかった。
ミュージカルナンバー、私なんてさらで歌えますからね。
(ひとりよりふたり、ふたりより~三人、もっと、もっと、みんなで~みんなで~)
鶴見辰吾 フック船長/ダーリング氏役
おそらく誰も言わないから一観客として言わせてもらうと、
老いたな~と感じました。
2007年でもフック船長を演じていましたが、私はどうしてもそれと比較してしまう。
特にダンス。
切れがなくなった気がする。
コメディチックにフック船長が踊るダンス。
ここがフックのキモなのに盛り上がらない。
とても残念。
ベテランの経験力で保っている感じかな?
鈴木麻祐理 双子役
おっとビックリ。
ミュージカル 葉っぱのフレディ~いのちの旅~ 2011ではアン役。
ミュージカル 葉っぱのフレディ~いのちの旅~ 2012ではクリス役。
クリッとした瞳とほんわかな雰囲気は、ほとんど変わっていません。
ダンスの丁寧な動きは印象深い。
桑原愛佳 マイケル役
マイケル役はダブルキャストですが、私が観た回は桑原愛佳。
茶目っ気たっぷりなマイケル。
今回、ジョンもマイケルもそこまで目立つわけでもないので、
空を飛ぶシーンと、
「キャンディー」のセリフ「大人にならない」のダンスの部分ぐらいかな?
それにもまして、ジョン役の福田徠冴も普通。
ま~ジョンはマジメキャラなので、地味で目立たなくていいんですけどね。
総括
プログラムでちょっと気になるのは、
演出家のコメントで、役者ひとりひとりに対してコメントをしていること。
役者の見どころを伝えたい気持ちはわかるんですけど、
それは観客が感じることであって、
演出家の文章から伝える必要はないと思うんですけどね~?
主要メンバーならいざしらず、全員のコメントをする演出家というのも珍しい。
たぶん、私は初めて。
前述しているように、今までの演出と比べるとエンターテイメント性は低め。
唯月ふうかからバトンタッチした、新人、吉柳咲良をベテラン勢が盛り上げる感じ。
ただ、ベテランすぎる感もある。
経験値、風格だけじゃ物足りない。
新人ピーターパンの吉柳咲良には、今後はスピード、敏捷性がほしい。
歌とか、ダンスとか、セリフは置いといても素早さがほしい。
子供たちに感情移入させるには、一にも二にも、ピーターパン次第。
(敬称略)