ドラゴンファンタジー2013

星組 満足度
公演時期 2013年7月14日→18日 
会場 阿佐ヶ谷アルシェ
作・演出 滝一也

あらすじ
人間界と壁一枚隔てた異空間にあるラマダの国。
そこに突然危機が訪れる。
突如、まおうが現れ、国王の娘である姫を誘拐し、国に対し降伏をせまってくる。
最後の望みは、かつて国を平和に導いたと言われる青いドラゴンの化身。

そして今!勇者が無理やり立ち上がることとなった!
嫌々ながら、翔の冒険が始まるのである。
(過去のチラシより一部抜粋)
観劇感想
2005年 2006年 2007年2009年続いて5回目の観劇。
星組のみの観劇。
ダイヤ組も観たかったのですが、どうしても予定が合わず。

まず思ったことは、子役のレベルが高い。
この出演者を見ただけでも、レベルが高いことがわかります。
そして、それにふさわしい出来ばえ。
ただ、子役というには今までの出演者と比べると年齢は高め。
そのため、もともとこの脚本、
低年齢の子が話すことにより、
大人びたセリフでコメディになっていたのですが、
それが失われている。
セリフひとつひとつがピュアで無くなってしまい、
ストレートにそのセリフを受け入れることがてきない。
その裏を考えてしまう。
本当にここは残念。
笑いの質が変化してしまった。

実力ある子役が多いため、
残念ながらその弊害も出てくる。
その子たちをピックアップするミュージカルナンバーが、
突如として出てくるし、唐突感も否めない。
出演シーンを増やさないといけないので、
仕方のない部分ではありますけど、
そのぶん、物語の流れ、テンポが悪くなりました。
舞台の空気、流れが停止する。

基本、初期のドラゴンファンタジーの脚本ですが、
2005年の時は1時間弱だったでしょうか?
テンポ良く進んだせいか、すごく見やすかったのですが、
今回は2時間弱。
正直ダレル部分もありました。
出演者の出番と、物語としてのテンポ。
難しい選択ではあります。

そして、何より私が気になったのは、
脚本の変質。
そもそも前の脚本は、
たとえば、ピーターは大人になりたくない、
ピノは嘘つき、
セレブの潔癖症、
スワンの不幸な生まれ、
というコンセプトが明確で、
それぞれ後半になって、
ピーターは大人になる意味に気づき、
ピノは嘘をつく行為をやめ、
セレブは仲間の為に潔癖症を克服し、
スワンは見すぼらしい娘ではなくて・・・
という、キャラクターたちの努力と成長の物語でもありました。

それが、今回の舞台は全く無くなりました。
そのぶん、兄や姉、父といった、家族愛がテーマとなります。
この舞台は初観劇という方でしたら、全く問題が無いのですか、
私の場合は、過去の記憶が鮮明で、
どうしても気になってしまうのは申し訳ない。
2009年は、たしか子供たちの成長と家族愛、
両方をいれた脚本だったんですけどね。
あちらは場所が銀座博品館劇場で箱も大きく、
公演時間にも余裕があったためか、
盛りだくさんに詰め込むことができた為でしょうか?

私としては、特にピノとかピーターのエピソードは、
魔王と戦う上でも、凄く重要でした。
正直無くしてほしくなかった。
これは素直な気持ち。
別物の「ドラゴンファンタジー」と考えることにします。

大魔王の部下と戦うということで、
ドラキュラ、オオカミ男、フランケン、メドゥーサが、
各シーンごとに登場します。
ドラキュラ、オオカミ男、フランケン、
ここは話のテンポが止まってしまった為、残念。

ドラキュラのくだりは、一番グタグタだったかな?
私はちょっとついていけなかった。
あのグタグタ感を楽しむ、という意味合いはあると思いますが。

オオカミ男との雨宿りのシーンは、
「あらしのよるに」のオマージュですね。
じっくり観せたい部分だったのかもしれませんが、
ちょっと長め。

フランケンは、ジグゾーパズルが後半フラグなので、
そこまで印象に残らず。
子役とのからみをもっと使えは良かったのですが、
まっ、いろいろ事情があるとは思います。
メドゥーサ3姉妹との対決は、フェンディが登場するので楽しいのだけれど。

子役のレベルが高いということで、
ダンスレベルも高かったです。
メドゥーサやアンサンブルを含めて、
相当見応えありました。
速見里菜が振付をしたようですが、
やりますね。

気になった役者は・・・

フェンディ役、速見里菜
速見里菜がフェンディですか。
時の流れを感じます。
演技や歌唱力は、子役レベルではない。
もう大人と言っていい。
かつての子役の中でも彼女は色気を感じるタイプ。
女性のお色気的な部分もかなり頑張っていたと思います。
それに彼女は瞳の力が強いから、
それを活かせるのは利点。
観客の印象にも強く残る。

翔を恋する・・・ところはまだまだかな?
恋愛的な「好き」ではなく、ペット的な「好き」という感情。
まぁ、カエルだからいいのかもしれません。
子孫を残すことが重要ですから。

ただ、メドゥーサ3姉妹との男を惑わすミュージカルナンバーのところは、
さすがにまだまだでしょう。
ミュージカルナンバーとしては、無難にこなしているけれど、
恋愛テクニック的な精神部分での表現力は、これから。
これがいきなりできたら、それはそれで大変ですけど。

セレブ役、本橋舞衣
2009年ではコアラ役で、
私なんて印象に残っていないほど。
それがラブリーズ等で、本当に成長していく。
そしてセレブ役ですからね。
彼女場合は、観劇していると成長過程が楽しめる。
今回のセレブ役は、お嬢様的な雰囲気のイメージにピッタリ。
笑顔はかわいいし、潔癖症なところもいいし、なにげに皮肉を言うところもいい。
じつに惚れ惚れする演技。
唯一?ロングスカートだったので、本当は暑かったかもしれませんが、
そんなことは表情から微塵も感じられません。
演技だけではなく、彼女は歌もうまいですから。
ま〜見応えありました。

ピーター役の優花
たぶん私は初めて観劇したと思いますが、
演技よりも、まず歌ですね。
歌唱力は高い。
いい歌声ですし、これからますます伸びていくことでしょう。
演技はこれから頑張ればいい。
惜しむらくは、ピーターの大人になりたくない、
的なエピソードが無かったのは残念。

ピノ役の小峰里緒
リトルツインズ 2007では、かなり印象深かったです。
「メリッサのゆりかご ジルの監獄」2010年でも観劇していますが、
あまり印象に残らず申し訳ない。
ただ、今回のピノ役は素晴らしいと思う。
正直一番印象に残りました。
彼女は表情付け。
これがまず素晴らしい。
コロコロと表情が変わって楽しい。
表情のつけ方としては、同じく出演している藤井真世にも似ている。
色気は全く無い役だけれど、
とにかく観ていて飽きない。
さらに歌唱力もありますから。
歌う場面が多かったら、もっともっと印象に残るでしょうね。
惜しむらくは、彼女も嘘つきエピソードがあったら、
さらに輝いていたと思う。
今後、要注目の女の子。

スワン役の池田玲奈は、
これまで私が「子役のレベルが高い」と言った中では、
正直落ちる。
演技はまだまだ。歌もこれから。
ただホワッとした、か弱いスワンのイメージはピッタリ。
一途でほのぼのした感じもいい。
回りのメンバーのサポートも良かったと思います。

ラビット役の松崎れいみは、
ミュージカル シュガー〜空色のプールサイド〜
「フラッパーズ〜私たちにできること〜」2013年、と、
けっこう出演しています。
今回は真面目なラビット役。
本当の性格はわかりませんが、
真面目な雰囲気は松崎れいみにピッタリ。
ただ、私的に言わせてもらうと、
もっともっと、誇張した真面目さがあっても良かった。
馬鹿真面目で、大げさでもいい。
ちょっと枠にとらわれ過ぎている気もする。
そこが真面目である所以でもありますが。

今回はダイヤ組を観られませんでしたが、
アンサンブルでは登場しています。
ひと目でダンスレベルが高いことがわかるほど。
それに、アンサンブル等で出演していても目立つ。
石川楓子は昔と雰囲気が全く変わっていないので、
逆に安心しました。瞳パッチリで、可愛らしい女の子。
藤井真世藤井結夏姉妹は、
前に観た時と、そこまで変わっていないかな?
小林ひな実も本当はスワン役として、きっちり観たかった。
ただ、ドラゴン役として出てきたので爆笑しました。
あれはズルイ。
そして、何よりいちぱんキラキラした瞳が、
佐藤里緒でした。
めがば的ミュージカル「ドラゴンファンタジー」 2006年ではラビット役。
今後、何かしらの舞台で観劇したい。
彼女の演技を観られなかったのは、かなり残念。

総括
今回は「家族愛」がテーマのドラゴンファンタジー。
初見の人であれば、十分に楽しめますが、
子供たちの心の成長のストーリーを知っている私としては、
その部分を切られてしまって残念でした。

子役のレベルが高いゆえの、ミュージカルナンバー重視。
それゆえに、物語の流れがおざなりになり、テンポが止まる。
バランスが本当に難しいと感じた舞台。

(敬称略)
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