ミュージカル シュガー〜空色のプールサイド〜

M組 満足度
N組 満足度
◆公演時期   2012年8月7日(火)〜14日(火)
◆会場 下北沢「劇」小劇場
◆構成・演出・作曲 桝川譲治
◆脚本・作詞 田村綾子
◆振付 羽永共子・吉永まりや・他

あらすじ
毎年、夏になると結成される水泳サークル。
しかし、年内いっぱいでプールは取り壊しが決定。
今年が大好きな仲間たちと過ごす、最後の夏となった。
(パンフレットより抜粋)

観劇感想

ジョーズカンパニー、久々の新作ミュージカル。
ストレートプレイの「ラブリーズ」等が続きましたが、
「ココスマイル」の流れのようなミュージカルは本当に久々。
私もとても楽しみにしていました。

まず一番最初に気付いたのパンフレットの制作の部分。
う〜ん、みんないろいろと協力しているんだな〜という、
絆が伺える。
「いろんな形で協力したい」というのが、
ここだけでも伝わってきます。

さて、内容的には、
ミュージカルと言いつつも、
正直、ストレートプレイに近い。
セリフ劇がメイン。
もちろん、歌やダンスシーンもあるのだけれど、
「ココスマイル」のような雰囲気ではなく、
やはり「ラブリーズ」的。

特に前半、全員が集まっての話し合いは、
ものすごいセリフ。
いろんなことがありすぎて、
観ているこちらは何の話しだったか追えない。
頭の中で話しを整理する時間が欲しかった。
暗転はあるのだけれど、基本、同じ部屋。
場面が変わるわけではないので、難しかったとは思う。

同じ部屋ということもあり、
場面展開が無いのは本当に残念。
たとえば、ミユキがネコを見つける場面。
本来であれば、その探すところや、ネコを発見する場面がほしい。
さらには、マキセが少女を見つける場面も。
それが、結局言葉での説明だけで、
実際の場面は表現されていませんから。
観客の脳内で再生するしかない。
いろいろ制約はあるのだろうけど、私は残念に思いました。
ミユキがネコを見つけるシーンは脳内再生簡単にできますが。

それから、今回の「箱」だから仕方がない部分はあるけれど、
暗闇の中でのスポットライトの表現が乏しかった。
やっぱり、スポットライトは正直欲しい。
その女優を際立たせる意味合いがあるもの。
それゆえに、今回は印象が薄かった部分もありました。

さて本編。
今回はまさかの水泳がテーマ。
水着も出てきます。
内容としては、
プールが閉鎖されてしまう。
→その前に深夜にこっそりプールで泳ごう。
→幽霊が出る噂がある。
→真相を確かめよう。
→幽霊の正体?
→プールの跡地にできる公園の名前をみんなで考えよう。
→突然の嵐。
→少女が迷子?みんなで捜索。
→解決。そして真相。
→最後にみんなでメドレーリレー。

なんとなくは、こんな流れです。

水泳サークルの部員以外として、
リンカがいるのですが、この役の立ち位置がイマイチ。
2年前?ぐらいのお守りをずっと探しているし(しかも深夜に)
結局のところ見つからずに、
親友のマキセが自分でお守りを作って渡すという流れ。

最近は現実問題重視で、
あまりエンターテイメイント、SFチックなことをしない、
ジョーズカンパニー。
それはそれでいいけれど、
たまには、エンターテイメント的要素として、
SFファンタジー的な部分もいれてほしいな〜
だからこそ、このリンカは、幽霊なのか、実際にいた人物なのか、
あやふやにしても良かったと思います。

あくまで、私が観るかぎりで申し訳ないけれど、
現実の少女だとしたら、インパクトが弱い。
そもそも出番が途中から、そして少なめ。
リンカと他のメンバーとのからみ、かなり少ない。

あと、切実な話が多い。
離婚とか、片親とか。
入れてくるかーという感じ。
現実問題はわかるんですけどね。
なんというか・・・つらい部分が正直あります。
大人の舞台ならわかりますが、
子役中心の舞台でこれをやられると、けっこうくるものがあります。
それだけ、社会性を重視した舞台に特化しているということでしょう。

対立関係があるグループでの展開であれば、
物語の流れはわかりやすいですけど、
今回は元々が仲良しグループでのお話。
展開の仕方が難しい。
淡々と物語が進んでいく感じでした。

Nバージョンのチームは、
とにかく、関谷、野、高木。
この3人の声がでかい。
まずここが印象的。
舞台特有の声の出し方というか、
それを知っている。
回りの子は普段の声質なのかもしれませんが、
この3人は昭和ではないけれど、
昭和の雰囲気をかもしだすパワーを持っている。
やっぱり声に覇気が無いと。
他の子はみんないい子って感じ。
やっぱり声量は大事。

Mバージョンのチームは、
物語の流れ、進行がいい。
だから楽しく観劇できました。
Nバージョンのチームは、セリフを発しているだけ感を感じてしまう。
流れが止まるんですよね、私としては。
それゆえ、私としてはMバージョンの方が満足度が高い。

気になった役者は・・・
今回は、どちらかというと普通な役が多い。
とりたてて強力な個性な役柄を作らない形になったのかな?
あくまで自然体。

三石真紀子役の吉永まりや
今回、化粧とか、髪形とか、
雰囲気を変えてきました?
あくまで、私の主観として、
今回の髪形はエルダ・アルゴ・『スタート』でのアイドルユニット、
「ダッシュ」かと思いました。
すごく若く見える。
髪形のせいかな?
演技的には、吉永まりやであれば、
このぐらいやってくれるでしょ。
派手系ではなく、今回の抑えた演技の方が彼女は魅力的。

同じく関谷彩花
物凄く久々の関谷彩花。
関谷彩花とは腐れ縁で、
1999年の「ココスマイル再演」の時から。
ま〜長い。
それはともかく、前述していますけど、
やっぱり声が良く出ている。
覇気がある。
やっぱり舞台なんだから、パワーが無いと。

今回はまとめ役で、他のメンバーより上の立場。
今までの感じとは趣が違う。
なんというかな、過去の安藤聖のように、
年上のお姉さんらしさ、未来に希望を与える感じがほしいかな?
ちょっと重く感じるし、後半は悲壮感が強いような・・・
感情移入しすぎたのかもしれませんが。

佐倉保奈美役の越川萌花
ミュージカル 葉っぱのフレディ〜いのちの旅〜 2011ではクリス役。
これが超絶的に素晴らしかったです。
その彼女が演じるということで、私もすごく楽しみにしていました。
ま〜予想はしていましたが、その予想通りにうまい。
演技力は言うことないでしょ。
表情も、セリフ遣いも。
どちからというと、彼女のほなみ役はしっかりしつつもコメディチック。
ダンスもうまいし、歌唱力抜群だし、
さらには存在感が段違い。
観ていて引き込まれる。
ただ、ちょっとやりすぎ感もあるので、
そこは賛否あるかもしれませんが。
実力があるゆえの、舞台のバランスかな?
ツインテールもかわいい。

同じく高木夏美
う〜ん、高木夏美は言うことないな〜
うまいもの。
声はとにかく良くでていた。
演技もしっかりしているし、歌唱力もあるし。
どちからというと、みんなをまとめるリーダーで、
重厚感も感じました。
彼女のほなみは、そんなに弾けない性格。
越川のほなみとは、そこが違います。

牧瀬いつみ役の金光歩乃佳
ま〜化けた。
ルックスの可愛らしさはそのままだけれど、
ダンスも歌も、物凄くレベルアップしている。
まだドキマギした瞳の部分もあるけれど、
演技においても、相当うまくなった。
というか、セリフの量も多いですからね。
これは今までのストレートプレイをやり続けた、
努力の成果でしょう。
だって、ダブルの相手が元主役のココ役、渡辺菜花ですから。
現時点において、優るとも劣らない。
「ファミリーミュージカル ココスマイル」2010年では、
菅野吏紗とダブルキャストのルカ役。
菅野吏紗の印象が強過ぎて彼女の印象は薄かったけれど、
まさか数年の時を経て、ここまで成長するとは思いませんでした。
年齢は若いけれど、ジョーズカンパニーおいて、
中堅的役割を今後も担っていくでしょうね。
この段階でもまだ「未完の大器」ですから、
まだまだ伸びていく。
というか、年齢まだ若過ぎますけど。

同じく渡辺菜花
前回は主役のココ役。
それからの演技、ものすごく楽しみにしていました。

正直、ココの雰囲気がもう無いので、
最初は誰だかわからないくらい。
とにかくいろいろ成長している。
歌・・・はけっこう頑張ってますが、これから。
でもそれ以上に、演技。
レベルアップしているのが、すぐにわかります。
当時ココ役のダブルキャストであった田村芽美が、
ほぼ完成された女優であったのに対し、
渡辺菜花はド素人満載でありながら、新鮮で荒削りでした。
だからこその今回の成長度合いも、
観劇している私にしてみると、嬉しさはひと塩。
成長の度合いが観られるのは素直に嬉しい。
田村芽美はうますぎて、
そこからさらに上を目指すのが大変ですから。
そこを脱却しないと・・・ま〜女優路線かはわかりませんが。

元井佳奈役の西原杏佳
彼女はミュージカル サウンド オブ ミュージック 2008の、
ブリギッタ役を観ています
久々観ましたが、大きくなりました。
演技的にはダブルキャストの野愛が演じた佳奈とは微妙に違い、
落ち着いて、ちょっとほんわかした演技。
演技もうまいけれど、ダンスも歌もいい。
パッと見は派手系ではないので、わかりづらいけれど、
安定力は抜群。

同じく野愛
ミュージカル 葉っぱのフレディ〜いのちの旅〜 2010のアン役は、
特に印象的です。
彼女はもともと演技の実力もあるし、ダンスにも定評がある。
とにかく安定。
安心して観ていられる。
あくまで彼女の雰囲気だと、姐御肌的な役柄。

国光幸役の葛山優奈
「ファミリーミュージカル ココスマイル」2010年のビビ役から久々の観劇。
おっとりした雰囲気が印象的かな?
今回はそのぐらいの印象で申し訳ない。

同じく辻友里香
「フラッパーズ〜私たちにできること〜」では水川かえで役でした。
前の役に関しては、ホワッとしていて役に合っていました。
ストレートプレイで鍛え上げれてます。
今回も、似たような性格の役。
そのまんまな感じ。
そのぐらいかな?
印象度少なく申し訳ない。

三尾柚名役の初鹿野菜月
面白い。
初めて拝見しましたが、
なんとなくアルゴ・ミュージカルの役者を彷彿させる演技力。
雰囲気がいい。
ルックス的に言うと、南青山少女歌劇団にもいた、
湯田美央にも似ている。
かなりマニアックで申し訳ない。
表情の表現力もいいし、歌もいい。
何かのキーポイント的役割を与えてもらうと、
相当伸びてくるでしょうね。
皮肉屋みたいな役も観てみたい。
化けるかもしれませんね。

あえてひとつツッコミを入れるのであれば、
もっと笑顔が欲しい。
ダンスでもなんでも。
せっかく可愛いのにもったいない。
お客様にもっと楽しさを伝えてほしい。
今回思ったのはそこだけ。

同じく菅野吏紗
久々観ましたが、大きくなったし、美人にもなった。
手足も長い。
一番印象的なのは歌唱力。
ダンスもいいけれど、歌唱力はかなりレベルアップしている。
演技はまだまだ発展途上だけれど、
ルックスかわいいし人気出るでしょ。
それに、まだ背が伸びそうな予感。

ただ、あえて一言言わせてもらうと。
あとひとつ、もうひとつ何か欲しい。
それがあると凄く抜群になる!という感じなのだけれど、
それが何かわからない。
でも、その足りないものが補われると、
もっともっと良くなると思う。

ちなみに、誰かに顔を近づけて、
「私、気になります!」
なんてやると凄くいいな〜と、私の心の中で思いました。
そういうキャラに合っている。
というか、それをやると、男性陣ノックアウトでしょう。

高辻あや役の正木夢乃
彼女はとにかく笑顔が印象的。
ずっと笑顔。
それから、歌唱力。
声がとおっている。
よく声も観客席まで届きました。

同じく古川未結
この子は三日月瞳で、笑顔が物凄く印象的。
パンフレットの写真よりも、実物の方か可愛い。
意外と出番も多く目立っていた印象。
演技、ダンスもよくやっています。

佐倉美由紀役の松下華菜
声は良くでていた。
そこは印象的なのだけれど、
他は覚えていない。申し訳ない。

同じく花房有里
この子は今回の出演者の中で一番小さい。
アニメ声が可愛くて、演技もできて、ダンスもできる。
現時点ではマスコット的存在かもしれませんが、
面白い雰囲気があるので、
今後は物語のキーポイント的な役割に使われるかもしれません。
ひじょうに面白い。
今回の出演者の新人の中では、一番印象に残ったかも。
まだまだ伸びる。
ただ、今の声質が印象的なので、
成長にともない、その声質が変わったら印象度も変わるかも。
でもまだ先のことだから、このままでいい。

室橋鈴花役の松崎れいみ
正直、この役は物凄く難しい。
今回の全役の中で一番難しいと思います。
とにかく立ち位置が難しいですから。
演技をする上での、役の作り込みが大変。
室橋鈴花の人生経験が、かなり複雑ですから。

松崎れいみはどちらかと言うと真面目な印象。
演技がストレート。
とりたてて、特にこだわった性格付けはしていません。
そのぐらいかな〜?

同じく小林明日香
雰囲気的には、物憂げかつ、ほんわかした感じ。
そのぐらいかな〜?

総括
「ラブリーズ」等、ストレートプレイの延長線上のミュージカル。
長年「ココスマイル」や「フレンズ」を見ている私としては、
少々物足りなかったのが正直なところ。
それは場面転換の少なさのせいかもしれないし、
鈴花という存在の立ち位置が良くわからなかったせいかもしれない。

現実路線。
現在進行形の社会的要因による、
少女たちの「今」がメインのテーマも良いけれど、
私としてはそろそろ、エンターテイメント性も加えた舞台も観てみたい。
「ココ」のように前向き思考の不思議ちゃんがいてもいいし、
「フレンズ」の梢のように、明るくみんなに方向性を示すお姉さんがいてもいい。

社会風刺や感動もありつつ、
もっと楽しさに比重をかけても、そろそろいいと思うのですが、
どうでしょう?
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