ミュージカル ドラゴンファンタジー2009 観劇感想

◆公演時期   2009年3月18日(水)〜22日(日)
◆会場 銀座 博品館劇場
◆作・演出 滝 一也
◆作曲 柳志乃
◆作詞 緑が丘笠歩
◆振付 金本美智子 木戸友香 安江友和

あらすじ
人間界と壁一枚隔てた異空間にあるラマダの国。
そこに突然危機が訪れる。
突如、まおうが現れ、国王の娘である姫を誘拐し、国に対し降伏をせまってくる・・・・・
最後の望みは、かつて国を平和に導いたと言われる青いドラゴンの化身。

そして今!勇者が無理やり立ち上がることとなった!
嫌々ながら、翔の冒険が始まるのである。
観劇感想
2005年 2006年 2007年に続いて4回目の観劇。

内容的には、ドラゴンファンタジー1と2の美味しいところを、
うまく組み合わせた感じですね。
なんとなく、私も予想はしていました。
芳賀優里亜がイボガエルを演じる時点で。

流れ的には、
突然ヒロシが翔と言う名の勇者とされ、
お姫様を助けだし、魔王を倒す旅に無理やり行かされる。
勇者ご一行として子供たちや動物たちが仲間として加わり、
旅の道中にいろいろな出来事が起こる・・・
こんな感じです。

内容的にはとても面白かったです。
お腹抱えて笑いました。
特に2幕の家でのやりとりは爆笑。
求愛ダンス、ポッキー、面白すぎるでしょ。
ヒロシのとぼけた感じも、それが妙に合う。
喋らないので、ある意味ずるいですが。

基本、ダンスが主体のミュージカル。
ダンスが下手な子いるでしょうか?
私が観る限り、レベルは相当高かったと思います。

ただ、なんだか調子の悪い子が多い。
子供ですし、前日何事もなく、当日突然熱が出たりするのはよくある話。
だからこそのダブルキャストではあります。
今までの他の観劇でも、そういったことが何度もありました。
・・・にしても多すぎる。さすがに体調管理が気になります。
一般の市民ミュージカルではないのですから。
大人も子供も自覚を持ってほしい。

今回「エコ」も加わり、それについての説明も入ります。
特に3R
リサイクル(いらなくなったものを再利用)、
リユース(もう一度使う)、
リデュース(いらなくなったものを「捨てる」こと自体を見直す。必要のないものは買わない)
これの勉強ですね。

人間と動物たちが一緒に魔王を倒す旅に出かける際、一悶着がおきます。
人間のゴミのせいで、自分たちの住む場所が汚され、無くなっている。
その問いかけに、子供たちもエコについて学ぶわけですが・・・

この舞台を観終わって、果たしてエコのことを覚えているのか、
ちょっとあやふやかもしれませんが、なんとなく気になる感じで、私はいいと思います。
そんなに説教じみているわけでもなく、
ミュージカルナンバーの「いいじゃん別に」と「お家を返して」が、
対象的な歌であることから観ている子供たちもなんとなく気づくでしょ。
私が子供の頃よりも、今の子供の方が理解力早いですから。

気になるのは「エコ・ミュージカル」どうこうよりも、間延びしたシーン。
前半がテンポ良くすすむのに、後半が重い感じ。
後述しますが、岩田麻衣のソロは厳しい。
やはりここは聴かせられるレベルの歌唱力をもっていないと・・・
また、最後の決戦(レッドドラゴンを呼ぶところかな?)
ここが間延びする。
たしかに岩田麻衣はかわいいし、存在感はあるけれど、
いろいろな部分も見えてしまうんですよね〜私は。
そういえば、姫が歌う意味合いもよくわかりませんでした。
動物たちが「お姫様の歌声が聞こえる」とか言われても・・・ちょっとね。

照明の気合の入り方も印象深いです。
兵士の棍棒の殺陣の時の赤、青、黄色の照明もかっこいいし、
スワンのソロの、ピンクと黄色の照明もいい感じでした。

今回はミュージカルナンバーも楽しい。
テーマソングの「BY OUR HANDS」はもちろん、
「いいじゃん別に」もいいし、「お家を返して」のナンバーも好きだな〜
わかりやすいし、口ずさめる曲ばかりで、まさにファミリーミュージカル。
こういう曲調はすごく好き。
作曲、柳志乃ですからね〜見事というしかない。良い曲書きます。
1997年の「夢に口づけ」も、ちょっと環境を意識した舞台でした。
不思議と思い起こされる。
ただひとつ「THANK YOU」のナンバーは、
「僕は忘れない」「私忘れない」をわざとわけていたが、
できたらひとつに統一してほしかった。ちょっと違和感ありました。

そういえば細かいところですが、牛は食べている時、ちゃんと反芻していました(笑)

スワンを助け、ようやく勇者として自覚が出てきたところの翔のSEがちょっと変。
他の時のSEと同じで、ここは違う音の方がよかったかな。

気になった役者は・・・

翔役のヒロシはうまい。
やる気無さそうに、「俺なんて劇できないよ〜」
なんて言っておきながら、しっかり稽古してますよね。
できないふりして、影で物凄く努力するタイプ。
カツゼツバッチリですし、何よりこの役はハマリ役ですから。
観る前から私も予想していましたが、その通り。
ヒロシが歌おうとすると、途中から失速して歌えずじまいな演出もピッタリ。
素直に面白いと。

フェンディ役 芳賀優里亜
芳賀優里亜の舞台観劇も久々。
TVドラマにはたくさん出演してる女優ですが、舞台の演技とはまた違いますから。
2006年の「アルジャーノンに花束を」以来。
う〜ん、なるほど、落ち着いた演技。
声の張りもじつに舞台声になってきました。
あまり力む演技が必要ないので、
ある意味淡々とした演技が良かったのかもしれない。
舞台女優としても成長している姿がよくわかります。
歌が無いのは・・・ま〜ね(汗)

馬王(群馬の王)の部下の3人のダンスはうまいですよ。
「これドラファン?」って感じ。
なんといっても、止めるところはピッチリ止めるし、ダンスが滑らか。
下地が違いますよ。なんて、私が言っても仕方ありませんが。

シャイナ役 上田あすか
GANg等で何回か観劇したことはあるのですが、
本格的にメインキャストで観るのは初めてかも。
けっこう大人な雰囲気。
う〜ん、一応三人娘の長女という立場ということもあり、
その性格付けとして、冷静なクールビューティのイメージ。
落ち着いた雰囲気で、3人の中で一番色気を感じる。
セリフ回し、カツゼツはしっかりしてるし、なかなかバランスがとれている女優。
歌はうまいけれど、もう少し声量はほしい。
イメージ的にはダンスの印象が強いです。

エルミナ役 池田彩
池田彩の観劇も久々。
2006年『フレンズ 〜ガラクタ怪獣のなみだ〜』以来か〜
じつはこれより昔から、けっこう知ってるんですよね。いろいろと(汗)
言うまでもなく、劇団四季の「ライオンキング」のヤングナラ役だった彼女。
下手なわけがない。
演技もセリフもしっかりしているし、歌唱力もあるし、悪役ということで雰囲気も怖かった(爆)
今回の印象としてはダンスのイメージが強い。

ワイス役 猪野由梨佳
彼女の舞台は初めて。
うん、なかなか面白い。
歌、ダンス、表情付け、セリフと、ひじょうにバランスがとれている。
喋りが声優っぽく、じつに聞き取りやすいセリフ回しでした。
中でも歌がいいかな?客席までよく響いてました。
明るく、かわいこブリッコキャラ(死語)も良く特徴をとらえています。
初めて観劇という新鮮さもあるけれど、なかなか実力ある舞台女優だと思う。

姫役の岩田麻衣
ルックスは言うまでもなく美人。
彼女の舞台観劇は久々。
2007年のミュージカル「CHANCE2007」の岸本麻衣役以来。
背筋もピシッ!としているし、ドレスが豪華!
一瞬、「森は生きている」の黒木マリナかと思いました。
昔と比べて演技は良くなってますね。
舞台度胸満点で落ち着いた演技。
なかなかやります!
ただ、やはりミュージカルということで、ソロもあることから歌唱力はもっとほしい。
わざわざ暗幕おとして場面転換してのソロ。
そこまでお膳立てしているのに、観客に聞かせる歌唱力が無いのはつらい。
グラビア系ということもあるけれど、歌唱力を頑張ってくれると、
もっともっと良い女優になるのにな〜

ピーター役の小野田美夕
彼女はずっと前からピーター役をやってますからね。うまいもの。
演技もいいけど、やっぱりダンスかな?彼女は。
特に足の素早い動きが印象深い。

同じく渡辺里佳
う〜ん、なんというかな。
どういう事情があったのかはわかりませんが、
彼女の実力からして、この役はどうかと・・・
どう考えてもフェンディか姫でしょ。
ピーター役をやらせるのはもったいなさすぎる。
主役級の女優ですから。
あえて100歩ゆずるとして、男っぽい役を演じた経験がついたということかな。
主役ではない、引きの役で回りを見つめることも大事・・・というふうに考えるしかない。
だがまぁ〜人生いろいろ。忍耐。
もっともっと上を狙える女優。次、頑張ってほしいな。

ピノ役、相馬毬花
う〜ん、彼女はうまい。
セリフもダンスも。
「花の海 花いろの風−里山小学校5年1組−」では主役のレイ役ですから。
ただ、この役はもったない。
本当の意味でのソロもありませんし。
センターで踊ったりしていて、目立つことは目立ちますが、
私としては全然物足りない。
コメディの対応はもう少しほしい。根が真面目だからね。
こういう場合は、弾けたキャラの方が印象に残ります。
「いいじゃん別に」のナンバーの「ぽ〜い、ぽ〜い、ぽ〜〜〜い」の印象だけが強い。

スワン役 橋本彩花
あの、いつの間にかスワン役がかなり重要な役になっているのですが(汗)
まずこれにビックリ。
前はここまで重要なキャラではなかったような・・・まっいっか。いいじゃん別に。
この役はおいしい。
なんといっても、ソロがあるのはスワンと姫だけですから。

2008年ミュージカル魔法使いサリーではまき役、
2008年『ココスマイル4〜金星のステージ』ではアリー役、
と、順調に大役を任せられていく美少女。
細い線の体ながら、ダンスも素晴らしいんですよ。
今回、スワン役ということで、最初は地味な衣装。
あくまで私の印象としては美少女オーラを消して、すごく貧相に見えました。
意図してやったのでしょうか?だとしたら、すばらしい。
それもあるためか、後半、衣装チェンジの時はまさに美少女!!
この切り替わりはすごく良かったです。
これからますます橋本彩花の存在は増していくことでしょう。
彼女はけっこう感情移入しますね。
お母さんと話しかけるナンバーでは涙目で歌も震えてました。
歌唱力は普通ですが、彼女は成長の度合いが早い。

同じく石川楓子
2008年ミュージカル魔法使いサリーではすみれ役、
2008年『ココスマイル4〜金星のステージ』ではミキ役。
ファミリーミュージカル系では常連のベテランと言っていい。
彼女の場合は、最初から最後まで美少女オーラ全開(爆)
目がクリッとしていて、あいかわらず舞台の華。目立ちます。
美少女系は役が固定されかねないので、舞台女優としては意外と大変なんですよね。

彼女はすごく成長しているのがわかる。
ダンスもどんどんレベルアップしているし、演技もしっかりしているし、
なにより今回は歌。
スワンはソロがありますが、なかなか素晴らしい歌声。
もしかして、歌い方変えました?
少しビブラートを効かす歌い方になったような気がします。
もう完全にルックスがいいだけの女の子ではなくなりましたね。
舞台女優として、さらに伸びていくことでしょう。

セレブ役の矢野彩佳
後述しますが、セレブ役はダブルキャストともによく特徴をとらえています。
ふたりともに素晴らしいと思う。
矢野彩佳はどちらかというと落ち着いたセレブかな?
無難に演じていて、特に違和感はないです。
あくまでどちらかと言うと、淡々としたセレブ。
それはそれで面白い。

同じく稲葉遥香
表情がひじょうに豊か。ダンスの時の笑顔も楽しいし、歌唱力もある。
彼女は、演技、ダンス、歌、表情付けとバランスがとれていて、安定感があります。
2007年の「ドラゴンファンタジー2」では、厳しいことも書いていますが、
ものすっごい成長。
まいった。
彼女はアンサンブルでも目立ちます。
努力の成果がうかがえますね。

ラビットの岡山優花
2007年の「ドラゴンファンタジー2」ではミフィー役。
この時も小さいながらにそうとう上手かった記憶が今も鮮明に残っています。
あれから2年。
すばらしい。また成長してますね。すごく上手くなっています。
今回の舞台で一番印象に残っているのはRANAですが、
彼女の場合は初めて観る新鮮さとしての印象が強いため。
かつて観たことのある女優としては、岡山優花の印象度が一番強いです。
セリフ回しがいいし、声もハッキリしていてカツゼツいいし、表情も面白い。
これから他の舞台でも見かけるかもしれません。
そうとう実力をつけてきましたから。
今後要注目の女優のひとり。
絶賛しすぎるのもなんなので、あえてひとつツッコムのであれば、
表情がやや作りすぎる面が見られる。
「あっ!この表情をしなきゃ!」というのが見え見えすぎ。
急に表情が変わったりしますから。
自然な感じで表情に出てくると、なおいいかな?
にしても、今後間違いなく彼女は伸びるでしょ。

同じく原みずき
ダブルの岡山優花が抜群の演技力を持っているので、
彼女の存在がややかすむのは致し方ない。
それでもこのラビット役の演技はしっかりしている。
根が真面目すぎるのかもしれない。
皮肉っぽく、大人をないがしろにして、
もう少し弾けてもいいと思う。ギャグ満載のミュージカルですから。
ダンス得意でしょうね。メインでも目立ちましたが、アンサンブルのダンスでもよく目立つ。

ちびクマ役の関口旬莉
かわいい喋り方。
私が見た回は、最初から目がうつろで、表情から気だるさを感じ、
咳も多く体調が悪い感じでした。
もともと不機嫌な役という意味合いで演技をしていたのかもしれませんが。
ただ、後半のみんなのセリフの最後の相槌をうつところはよく頑張っていたと思います。

同じく 高地杏美
関口旬莉がかわいい系だとすると、
こちらは皮肉屋的なちびクマ。
このふたりのちびクマ役は対照的。
ダンスもスピード感ある。
ただ・・・この子はちょっと雰囲気が怖い。
もう少し柔和さを出した方がいい。
違う役だと違う演技をするとは思いますが、ちょっと嫌なクセがある。
演技をする上で、自意識過剰、自分しか見えていない感じ。
少なくとも私は感じてしまったので、笑顔、楽しさをもっと舞台上で見せてほしい。
ま〜現時点で小学2年生なので、自分のやることで精一杯ですけどね。
なかなか面白い実力者なので、今後確実に出てくるでしょ。
次へのステップとしての意見。

ビーバー役の鈴木千奈美はルックス抜群の美少女ですが、
演技も歌も、2007年とあまり変わっているように見えない。
とにかくもミュージカルなので、歌は頑張ってほしい。

同じく指出麻琴
2006年『フレンズ ガラクタ怪獣のなみだ』以来の観劇ですが、
歌唱力はなかなかある。ただもうちょい存在感ほしいかな〜
ビーバー役で出すのは難しいですが。

ペンギン役のRANA
今回、一番印象に残った女の子。
オープニングに登場しセリフが少しあるのですが、その言い回しだけで、
「うん?!」
と、気になりました。
雰囲気があるんですよね、彼女は。
この最初の時点で、只者ではないと感じました。

カツゼツ良く、セリフ遣いもいいし、ダンスもいいし、歌もいい。
なるほど、「赤毛のアン」の主役のアンをやってますか!
これはうなずける。
ペンギンという役を自分自身の中で消化させて演じているのがわかります。
じつに丁寧な演じ方。
役柄的にたくさん出演するわけではありませんが、
私はかなり印象に残りました。
これからさらに出てくるでしょうね彼女は。
そうそう。ど〜でもいいのですが、
パフレットの写真は大人すぎるかな(笑)

同じく横井結衣
花やしき少女歌劇団でダンスはうまいな〜という印象はあったのですが、
ここまでうまいとは思いませんでした。
ビビッた。
ダブルキャストのRANAも抜群にうまいのですが、彼女もうまい。
ダンスだけでなく、声の発声がいいし、演技もしっかりしているし、歌唱力もある。いい歌声。
派手さはないが、要所をうまく抑える演技力。
けっこうこれから重要視されるかもしれません。

ツバメの鈴木美穂
2007年 ココスマイル5 〜明日へのロックンロール〜ではまどか役
2008年ミュージカル魔法使いサリーでは香月弥生役。
彼女はうまい。存在ありますね。
演技がしっかりしているし、セリフ回しがいい、何より歌がいい。声量もあります。
バランス良く、落ち着いた安定感がある。
要所をおさえる役は適役かも。

コアラの吉野成美は、
声優さんのような、かわいらしくおもしろい声質・・・そこだけしか印象になく申し訳ない。

総括
コメディ的には面白かったです。
ヒロシもバッチリでした。
ただ、「エコ・ミュージカル」としてはまだ発展途上。
いろいろたくさん詰め込みすぎた感はぬぐいきれません。
仲間も・・・やっぱり多過ぎますよね。
動物と人間の関係という意味合いはわかりますが、
後半部分のダラダラ感はここが原因かもしれません。
ソロのスワンはともかく、姫の歌唱力はつらい。
ソロを入れるのであれば、聴かせる人でないと。ソロナンバーの意味がない。
正直、観ていて厳しい。
エコを取り入れたミュージカルとしては初めての挑戦ですし、
また精錬した舞台を観てみたいです。

(敬称略)


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