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「フラッパーズ~私たちにできること~」2019年

満足度
チーム風 星星星星空星
チーム桜 星星星空星空星
公演時期 2019/8/6→12
会場 下北沢 小劇場 楽園
構成・演出 桝川譲治
上演台本 阿原乃里子

あらすじ

強豪陸上部の部室から遠く離れた場所に、
控えの、そのまた控えの選手たちが集まる部屋があった。
レギュラーになれるチャンスもなく、
ただ放課後に決められたように集まるだけ・・・
そこに集まってくる控えの選手たちは、
必要とされていない己自身に各々が問いかける。
そんな彼らに思いがけない依頼が・・・
(パンフレットより抜粋)

 物語の流れ

2011年2013年2015年に続いての公演。
詳しい本編の内容はそちらでも掲載していますが、
久々なのでここにも。
陸上部の控えの、さらに控えのメンバー4人+マネジャーの部室。
特にやることもなく、レギュラーの雑用ばかり。
そこに転校してきたみくにがエリート意識をもって登場。
レギュラーになれるタイム・・・と本人は自信をもっていたものの、陸上部のレベルは高く、じつは平凡なタイムでガックリ。
そんな時、コーラス部が体調不良になり、明日にせまったコンクールに出場するよう代役を頼まれる。
マネージャーになった千歳の過去、陸上部に入る前の真咲の過去、遥香と希未の友情に隠された過去の亀裂、
様々な思いが重なり、6人はコーラスの練習を始める・・・

私の感覚として、もしかしたら微妙に脚本が変わったかもしれない。
なんとなくそんな気がしました。
今まで物語のセリフや演出を全部覚えているわけではないので、一概には言えませんが。
カギの流れとか、バトンとか。
特に山谷と山本の友情の部分も前はもっと深刻だった気がしましたが、今回は少し緩いかな?

ちなみに、ラブリーズ、フラッパーズ、けっこうごっちゃに観ていていろいろなバージョンもあるので、
頭の中がこんがらがって整理できなくなることもある。
それは私の責任だが。
記憶があっちゃこっちゃするのは申し訳ない。

チーム風


まず5人の個性が良くわかり、演技達者のメンバーも多いせいか、集中して観劇することができ、全く飽きることがない。
淡々としたストレートプレイの舞台はエンターテイメントの舞台とは違うので、観客に思考停止「飽き」が起きることもしばしば。
そこをどう回避するかが演出、演者たちの見せ所でもある。
綾川える以外は、ベテラン臭がすごかった(笑)

チーム風では、最初に山谷希未役の井上沙香が登場。
近年だとラブリーズ「君の迷い道」で観劇。
けっこう絶賛してるな私。
それはともかく、彼女は観客を引き込む力が凄い。
ひとり芝居に近い演技から始まるので、最初のツカミで心を持っていかれました。
この最初の部分のツカミはラブリーズ、フラッパーズともに本当に難しい導入部分。
それをこなしてしまう井上沙香の演技力は素晴らしい。
元気で活発な役柄。
本人の性格とは違うようだが、全く違和感なし。
真面目なベースもありつつの明るい性格といった感じ。
さすがにチーム桜の工藤安奈と比べると明るさの振り幅が違うが、
そこまで気にするレベルではない。
彼女なりの山谷希未で十分。
去年に比べてさらにできるようになった!
他のメンバーのコメントどおり、笑顔も抜群なんだな~彼女は。
素の本人は真面目系じゃないかな~と思ったら、そのまんまだった。
役に取り込む姿勢も素晴らしい。

山本遥香役の綾川えるは初舞台。
他の4人のメンバーと比べれば、それは見劣りする。
表情付けも固いところがたしかにある。
他のメンバーはみんな笑顔で観客に対応していても、
緊張してぎこちない笑顔にもなる。
でも全く気にする必要はない。
みんな初めはそう。
彼女のなりの山本遥香が十二分に演じられていたと思う。
特におっとり、ちょっと天然ボケキャラ役だから、あの雰囲気で全然問題ないと思う。
回りもフォローしてますしね。
170センチの高さがあり~の、ボケキャラって、すごく面白い設定だもの。
ほわんとした雰囲気でよく演じてくれた。

森井真咲役の吉池鈴舞
2015年のフラッパーズでは山谷希未役。
あ~なるほど、自分の観劇感想を読んで記憶がよみがえってきた。
たしかに変わった変人役を演じてました。
変な歌い方をしているシーンはとても印象に残っています。
今回は真咲役。
どちらかと言えばこちらの方が彼女に合ってるかな?
女優なのでどんな役ができても当然ですが。
声は大きいし、セリフ回しも抜群。
人を引きつけるセリフ回し。
セリフに重みもある。
ひじょうに丁寧に思えました。
困った表情とか、表情付けもいい。
一人芝居っぽい独白のところなんて、非常に感情豊か。
彼女の誠実さも伝わってくる。
いや、真咲の真の誠実さかな?

歌のソロもあったため、彼女の歌声がいかに綺麗なのかも良くわかる。
もっと聞きたかった気分。

仕切りのリーダーの千歳、そのサブ的ポジションの真咲だが、
彼女は非常に重要な位置で安定した演技を観せてくれました。
この柱がしっかりしていたことが、チーム風が印象深かった所以のひとつかもしれない。
公演が終わった後の挨拶や立ち振る舞いを観て、
お嬢様っぽいな~と思ったらそのままだった。
しつけというか、彼女の性格というか、日常の生活態度がしっかりしているだろうな~と、
余計なお世話なことまで考えてしまった。
感想を書いていると、役者ひとりひとりの思いが入ってしまう。

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花村みくに役の大野愛美
今さらながら思ったけれど、彼女のルックスは金光歩乃佳の小さい頃に似ている。
それはさておき、正直まいった。
チーム風において大野愛美が効きに効きまくっている。

ラブリーズ「君の迷い道」でも観劇していて、印象には残っている女の子。
だがしかし、さらに岡村ほまれの印象が強かったので、過去の印象度合いとしては薄れていました。
大変申し訳ない。

まず喋り方がかわいい。
セリフ回しもいい。
そしてイントネーションが面白い。
ちょっとたどたどしい間合いも面白い。
瞳の動き、視線のつけどころも面白い。
見応え抜群。
なぜかほっとけない。
こんなに魅力的で引き寄せる女の子だったとは思いもよりませんでした。
舞台上だとじつに光る。

妹キャラ的で、きょとんとした表情、また、すっとんきょうな表情もいい。
人を喰ったような表情付け。ひねくれもの。
なんと言うかな、 可愛い子が毒舌、皮肉的なセリフを吐くと面白くなる。
それなりの子が同じセリフを喋ってもそれは悪口になってしまう。
これは彼女の成せる技。
持って生まれたもの。
みくに役としてはまさに適役。

もうひとつ思ったのは、彼女のアドリブ、舞台の突発的な適応対応能力。
他のベテランメンバーが彼女に圧を飛ばし(笑)
ムチャブリなツッコミをしてもそれを面白おかしく返し答えてくれる。
ここが素晴らしい。

大昔の表現で失礼だが、萩本欽一と坂上二郎のコント55号。
萩本欽一のムチャぶりを天才的な天然ボケの坂上二郎が返して舞台を沸かす。
萩本欽一も言っているが、アドリブのムチャぶりを坂上二郎さんが全部面白おかくし返してくれたとのこと。
台本があってないような即興劇。
その感覚を大野愛美には感じました。
何を仕掛けても大野愛美は面白おかしく返してくれる。
そのベテラン勢の信頼があるからこそ成り立つ舞台。
「年ですよ」とか「イノシシ~!」とか、面白過ぎるでしょ、あの返しは。
しかも可愛いとくる。

彼女の今後については目が離せない。
ひじょうに強力な女優だ。
一昔前の表現で言えば、ブレイク前女優。
去年、注目はしていたけれど流石の私もここまで成長するとは思いませんでした。
私の予測を遥かに超えていた。

いずれは成長して、演技も歌もダンスもさらにうまくなっていくかもしれない。
顔だちも体格も変わっていく。
だが、今この瞬間、この時点での大野愛美を見ることは、たった今しかない。
その瞬間を観ることができて本当に幸せな気持ちになりました。

日野千歳役 橋本わかな
2009年のココスマイル6以来。
2008年のココスマイル4が初。
当時はセリフ回し、カツゼツもまだまだでした。
それが全くなくなったベテランへ。
時の経過は人を成長させる。
当時と比べても、ここまでのセリフ量があるのはなかったと思う。

年齢のことをみくににいろいろツッコミされてましたが、
実際問題、このメンバーといても全く違和感なし。
年齢差は全く感じない。
高校生でも余裕で通じますね。
お肌のピチピチ度も半端ない。
おそらく化粧落としたすっぴんでも問題ないでしょ。
ベースのルックスがいいもの。
当時からルックス抜群だったけれど、今も全く変わりなし。
他の既存のアイドルと比べても、断然アイドルアイドルしている。
普通にモデルとしても十二分に対応できる女優。

彼女が凄いのは、そのアイドル的、モデル的ルックスなのに、
そんなことを鼻にかけることなく、躊躇なく変顔ができる点。
何というか、自分を馬鹿に魅せることができる。
簡単に言うけれど、これって難しいこと。
それを平気でできるのが彼女の魅力。
だからこそ、今回の千歳役もハチャメチャの表情付けも
表情の強弱の付け方は昔と変わらないか(笑)

誇張する表情は彼女特有のもの。
強弱の振り幅が大きいからね。
激し過ぎるぐらい。
大人だともっと柔和な感じになるのかな?
何気ない微妙な表情の変化が求められるかもしれない。

千歳の駅伝選手だった思い、マネージャーになったことへの葛藤、
後半にそれを吐露したソロの独白シーンは、彼女の感情が揺さぶられて涙を流していた。
公演をこなすごとにどんどんと千歳の気持ちが自分の中で消化していったのだろう。

そもそもチーム風は各メンバーに、個の力がある。
その個の力が合わさって和になり、より強大なものへと進化し、そして昇華した。

こちらのチームの方が明らかに長い。
コメディ要素も多い。
自分たちで考えて面白くしている。
相手チームは台本どおりかな?
アドリブ的な雰囲気も盛りだくさん。
この違いかな?。

千秋楽の「金星のステージ」は懐かしかった。
ただただ、懐かしかった。
ジョーズカンパニー、ココスマ関連を知る人にとっては、とても大切な曲だ。

チーム桜

チーム風と比べると、こちらのチームはスロースターター。
初めの入り口、つっかかりで観客の心を引っ張っていくのは難しい。
後々わかることだが、良く噛みしめて、じっくり観て、
面白さ、楽しさが伝わっていく。

日野千歳役 黒江あかり
彼女を観るのは初めて。
チーム風の橋本わかなとはうって変わって別のタイプの千歳。
生真面目で、よくあるマンガの学級委員長タイプ。
超しっかり者。
ただそこまで規律正しいというわけではなく柔和な部分ある。
派手ではないが、みんなをまとめるお姉さん。
いや、もしかしたら4人を見守る母親的な感じかもしれない。

どっしりかまえて、演技の安定度は抜群。
セリフ回しもとてもしっかりしている。
落ち着き払って、ピシャリとみんなを叱ったりもする。
だからこそ、自分の駅伝選手だった頃の思いが心に残り、
他のみんなに強く当たったりもする。
それが自然な流れ。

ケガによってリレーの選手からマネージャーになる経過の話をすることろは、
淡々としみじみとした感情。
抑えながらの話し方だ。
彼女なりの千歳がそこにいる。

あくまで舞台の雰囲気からすると、オレオレ詐欺には引っかからないでしょうね。
良いお母さんになりそうだ。しつけは厳しいが。

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花村みくに役 菊地優美
彼女は初舞台のようだが、なかなか舞台度胸がある。
表情からは緊張している雰囲気なんて微塵も感じなかった。
表情に全く隙がなく平然としている。

前述しているとおり、チーム桜は導入部分からの観客への引き込みはなかなかつらいものがあるが、
この菊地優美みくにが登場してから舞台の空気が一変する。
パッとした変化、化学反応だ。
彼女がいるといないでは、このチームは大きく異なりますね。

やや舌なめずりの口調だけれど、そこまで違和感があるものでもない。
背が一番低くてちっこいからマスコット的キャラにもなり、それがまた観客の印象度も上げる。
それでいて、みくにの性格である皮肉屋?な感じがじつにいい。
正論を述べるから前の学校では嫌われていた、と言うが、いやまさに彼女ならやりかねない、
なんて素直に思ってしまうほど、みくに役にピッタリ。

表情付けも素敵だな~
もちろんまだまだこれからだから、この先がとても楽しみな女の子。
ダブルキャストの大野愛美に目が行きがちだが、菊地優美のみくにも十分に素晴らしいと思う。
素直に面白かった。

森井真咲役 垂石瑚子
去年だとラブリーズ「君の迷い道」2018ではあげ葉役。
ミュージカル マイソング~誰かのために輝いて~2015から観ているが、
ジョーズカンパニー出演作品では中堅というよりかはベテランに近いとも言える。

1年ぶりの観劇だが、とても良い女優に成長した。
極端な性格の前のあげ葉と真咲を比べるわけにもいかないが、
破天荒なあげ葉と違った真咲をこんなにも落ち着いてできるものなのかと、素直に驚きました。
極端な表情の変化や派手なパフォーマンスだけでなく、
内面からの演技がとてもいい。

あくまで舞台上だけれど、回りの演者に合わせて演技ができるようになった。
それとも真咲役のせいでもあるのかな?
真咲の葛藤がある感情も伝わってきた。
ソロで歌う場面があるのですぐにわかりますが、彼女も歌唱力相当ありますね。
とても良い歌声。

彼女は元々表情の変化が面白いけれど、今回はそこまで大きな表情をつけることなく、
微妙な表情の変化で表現しているが好感触。
成長度を感じました。

山谷希未役 工藤安奈
彼女は「ココスマイル7 ~夏色のマイソング~」2016での広井久美子役が印象に残っています。
久々の観劇なので、まずでかくなった。
ダブルキャストだと井上沙香だけれど、雰囲気、タイプが全然違う。
かなり濃いキャラだ。
違って全然いい!
ウザさも感じた(笑)
でもそれが彼女の良い部分。
和気あいあいとして、希未の根っからの明るさが全身からみなぎっている。

表情の変化も楽しく、笑顔も抜群。
このチームの中では「華」は彼女。
観客もとりこにする。
セリフ回しもいいし、演技もいいし、とても清々しい気分になる。

ただ、前述しているとおり、演技の奥深さに関してはダブルの井上沙香の方が上。
一番最初の導入部分でのひとり芝居に近い演技は、
まだまだ観客の心をつかむまでには至っていない。
ここだな~
その後にみくにが登場し、段々とメンバーの個性がわかってくると、彼女の良さが伝わってくる。
そこまではちょっと時間はかかる。
ここが成長してくるとさらに良くなるな~

竹村衣織 山本遥香
彼女も初舞台。
たしかに表情がやや固いところもあるし、
舌なめずりなセリフ回しが気になるところもある。
でも、そこまで気になるものでもない。
こういう山本遥香だと観れば違和感は全くなし。

彼女はとても凛々しい表情、瞳をしている。
とても真っ直ぐで純粋。
変な表現だけれど、男装の麗人としてもいい感じになる気がする。
体の線がスラットしていてスタイル抜群。
彼女の真っ直ぐな前を見つめる瞳は、観客の心に響く。
こちらも見つめ返したいぐらい(キモイな)
他の演技がうまい子ともまた違った独特な個性。
彼女特有の魅力だ。
最近はなかなか似たタイプはいないな~
だからこそ貴重。

何かのきっかけで、爆発しそうな予感がプンプン漂う。
間違いなく大器晩成型の女優。
初舞台でこれなのだから、まだまだ全然これから。
非常に楽しみ。

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総括

両チームとも個性があって楽しかった。
満足度に違いはあるけれど、楽しいな、という気持ちは両チームに変わりはない。
ラブリーズ、フラッパーズ関連でこんなに楽しい気分になったのはいつ以来だろうか?
最近は嫌なニュースばかりで心苦しくなる日も多い。
テレビのコメンテーターも、そんなツッコミばかり毎日入れていて楽しいのか?
と、ニュース番組を観ていても不快な気持ちになる。
息抜きと言っては失礼だが、こういう舞台を観ると心が晴れる。

大野愛美の「イノシシ~」が最高すぎた。
これが今年の夏の最高傑作だな。うん。

※敬称略
キャスト表