両チーム満足度
公演時期 |
2017/8/24 →27 |
会場 |
全労済ホール/スペースゼロ |
作・演出 |
犬石隆 |
音楽監督・作詩・作曲・編曲 |
玉麻尚一 |
作曲 |
金子貢 |
編曲 |
木並和彦 |
振付 |
中川久美/関根玲子/井上あゆみ |
マーケティングディレクター |
大山堅司 |
企画 |
黒岩祐治 |
あらすじ
母の病気などで重い苦悩や葛藤をかかえる17歳のマリア。
そんな彼女の心の中には、緑の星に住む王女様、
プリンセスの声がいつも聞こえていた・・・
マリアの所属する女の子ばかりの劇団「ボアベール」のオーナーで、
元俳優のマシューは父親のいないマリアと母親のケイトを、
マリアの幼い頃から物心両面で支え、励ましていた。
春、秋の劇団公演に向け、演出家のビリーの指導の下、子供たちの猛レッスンが始まる。
主役の座をめぐり、団員のソフィーがマリアに対しライバル心を燃やしていた。
夏になり、マリアは劇団の稽古もうまくいかず、母親の病状も悪化。
苦しむマリアの前に、プリンセスの姿が現れる・・・
(パンフレットより引用)
観劇感想
2015年、
2016年に、続いて3度目の公演。
話の流れは、前回、前々回公演を参照してください。
とはいえ、今回、演出がかなり変わりました。
劇場が変わったこと、出演者が変わったこと、増えたこと、
演出家のさらなるチャレンジ精神等、いろいろなことが考えられます。
特に印象深いのは、
加藤梨里香、小野田龍之介、吉川麻美 、横井結衣、4人のナンバー。
ここは痺れましたね。
各々に歌唱力があるので破壊力満点。
じつに素晴らしいミュージカルナンバーとなりました。
変わった部分
うろ覚えもあるので、完璧ではありませんが。
ビリーが語る丘の上の大樹のこと。
さらにこの場面でマリアとのミュージカルナンバー。
大人のナンバーが増えた。
中村鴈治郎が出演することになり、彼のソロが多めにあった気がします。
ちょっとした歌舞伎(扇子)の要素も。
トニーのコメディ的要素。
彼とマシューの二人のナンバーに子供たちが入ってくるのもいい。
なぜかここだけキャシーの歌声がオペラ調になる。
舞台セットとして、右上に緑の惑星、左下に青い惑星。
今回、劇場が変わったせいもあるけれど、
照明が気合入りまくり。
物凄く頑張ったと思う。
舞台全体を覆う幕はなく、そのひとつ奥の幕が銀ピカ。
これに照明でうまく色を調整していたのも良かった。
照明がてらで言うと、母親とマリアとのクライマックスの照明は抜群だった。
ある意味「あしたのジョー」の最後のような白黒の陰影。
じつに効果的。ここはよく練られた演出。
マリアとソフィーのダンスシーンバトルは、
ビリーとトニーの補助も加わる。
ここの対決も見応えありました。
ひとつだけ気になったのは、ネタバレの部分があり、
その後マシューの歌になりますが、舞台のテンポ的に長いような気がしました。
なぜかというと、前回は本当に涙が出そうになったですが、今回は泣けなかった。
ここの部分のテンポのせいなのか、宝田明さんの熟練した演技のせいなのか、
最後の最後で登場するプリンセスたちの場所が舞台斜めではなく中央になったせいか、
いろいろな理由が考えられますが、泣くタイミングとしては逸したと思います。
気になった役者は
加藤梨里香 マリア役
2015年も素晴らしかったけれど、さらに進化した。
文句のつけようがないほど素晴らしい。
完璧超人。
演技が素晴らしいのは当たり前すぎるほど当たり前なのだけれど、
セリフ回しも抜群。
ひとつひとつ、噛みしめて伝える。
思いが伝わる喋り方。少なくとも私には凄くわかる。
そして歌唱力。これも言うことないでしょ?
さらにプラスして、ダンス。
半端ない。
一挙手一投足のダンスだけで伝わってくる。
筋肉のつき方も素晴らしい。
ただダンスがうまい!ってだけじゃないんだよね、加藤梨里香は。
同世代の子と比べて、
気合が違う!気迫が違う!
この、あらゆるミュージカル的要素のバランスを、
全て兼ね備えているのが加藤梨里香。
気迫を見せ、力を入れればいいってわけじゃない、
もっと力を抜いた自然な演技でもいいんじゃない、
演技の考え方は多数あるけれど、
私は加藤梨里香の現時点での演技スタイルは素敵なだと思う。
マリアのとらえ方は人それぞれ。
2016年は岩田華怜がマリア役を演じました。
柔和で少しコメディチックな部分もある雰囲気。
加藤梨里香は、マジメ系でストイックで集中度が高めな印象。
観劇できなかった人は、おそらくDVD等も発売されると思うので、
ぜひ観てほしい。
遠藤まりん プリンセス役
セリフ回しは、ひとつひとつ丁寧に喋る感じ。
たどたどしい感じにもとらえられる。
個人的にはもっともっと笑顔がほしいし、楽しんでほしい。
意外と淡々とした表情に感じました。
はたから観れば笑顔なのだけれど、私には物足りない。
表情付けの演技が、まだまだ発展途上な感じ。
歌はこれからかな~?
緑の星の世界で、4人の仲間とのやりとりの場面は小芝居チック。
ちょっと異空間な気がした。
遠藤まりんワールドが無いので、これから積み重ねてほしいところ。
ちなみにプリンセス役ではないアンサンブルの時の方が、
表情が生き生きしていた。
もしかしたら、お嬢様系統よりも元気系の方が得意なのかもしれない。
リチャード恵莉 プリンセス役
雰囲気、笑顔、たたずまいからしてお嬢様。
まったりとした貴婦人のよう。
ある意味マダムのよう(笑)
歌は頑張っていたと思う。
セリフ回しはまずまずかな?ちょっと気になるところもあるが。
彼女の目つきは時に穏やかに、時にきつく映ることもある。
そこは要注意だと思う。
普通にしていれば可愛いけれど、
今後成長するにしたがってどうなるかな?
両プリンセスともに思うことは、あまり「個」は感じなかった。
子役だから仕方がないのだけれど、
過去のプリンセス役には「個」の強さを感じる子もいたので、
その比較をしてしまう。
横井結衣 ソフィー役
ダブルキャストが多い中、彼女はシングルキャスト。
それもうなずける実力。
おそらく、現時点では対抗する人がいなかったのかもしれない。
元花やしき少女歌劇団で、
ミュージカル ドラゴンファンタジー2009ではペンギン役、
メリッサのゆりかご ジルの監獄ではココア役、
と、けっこう実力ある女の子として私の記憶の中では認識していました。
それから数年。
さらに実力をつけてきた。
ソフィーはマリアに対するライバル(ガラスの仮面における、マヤと亜弓の構図)で、
彼女が光らないとマリアも光らない。
お互いに切磋琢磨しないといけない。
マリア役の加藤梨里香が光輝いたのは、
間違いなく横井結衣ソフィーであるからこそ。
それを忘れてはいけない。
ソフィーの嫌味的な態度、表情付けもいいし、
歌唱力も抜群。ここまで歌えるようになっていたとは思ってもみなかった。
すごいよ、横井結衣。
なにより、加藤梨里香のダンスに張り合うところが素晴らしい。
ここが下手くそだと「ソフィー何言ってるの?マリアの方がうまいじゃん」
ってことになってしまう。
張り合うからには、マリアと同等の実力を示さないと。
それを横井結衣を実践してくれました。
ダンスシーンは熱かった。
藤井ゆりあ キャシー役
私的な意見として彼女を観ていると、
どうしても姉、藤沢玲花の影がつきまとう。
姉のイメージが強い。偉大すぎる。レジェンドすぎる。
おそらく、観客としての私でさえそう思っているのだから、
本人もあらゆるところで比較されて大変だったことと思う。
だがしかし!
今回のキャシー役で、その姉のイメージは完全払拭された。
2016年はイライザ役だったけれど、そこまで感じ取れなかったものが、
今回は凄く感じました。
藤井ゆりあの個性が、このキャシー役で開花されたのだと思う。
ほんわかして天然系なキャシーという役柄。
これがじつに藤井ゆりあと合っていた。
じつにのびのびと演じている。
違う組での風のウェンディのような妖精の役もご苦労さま。
私が言うのは恐れ多いけれど、
もう姉の幻影に振り回されることはない。
今中千尋 キャシー役
2016年も同じキャシー役。
まず気になったのが、衣装がピンク。
異常に目立つ。
そしてなおかつ可愛い。
ど~考えても犬石先生、今中千尋、大好きでしょ(笑)
それはそれとして、彼女のルックスは本当に目立つ。
違う組での風のウェンディのような妖精の役でも目立ってしまうほど。
観客の視線がそこに向かうすぎるのも、舞台の演出としては難しいところ。
ただ、可愛いだけでキャシー役になれるわけがない。
今中千尋のじつに自然な演技、セリフ回し、歌唱力、ダンスと、
そこかしこに安定した力を持っている女優。
彼女の場合は、ルックスと加味して声のトーンもかわいいから余計に印象に残る。
ここから主役級クラスにいくだろう成長度合いが、今からとても楽しみ。
後藤妃那 イライザ役
なんと言うか、彼女の場合は勢い。
思いのまま動くイライザ。
見た目はほんわかしていて、
ソフィーの仲間というよりも、取り巻きのひとりとして、なんとなくいる。
後輩のような感じ。
小野有希 イライザ役
彼女のイライザは、見た目の雰囲気もソフィーよりで派手。
一緒に悪巧みをする感じ。ヤンキー系。
セリフ回しは強い口調でもなめらか。
子役の舞台の中では、少しきつい雰囲気を持つ子は少ないから重宝はされると思う。
野呂桃花 ルイーザ
2015年ではキャシー役。
それからルイーザへ。
しかもシングルキャスト。
この舞台の中でも三枚目キャラとしては、かなり難しい役柄。
おそらくは、ダブルキャストも考えられたとは思う。
だけれども、彼女と同等な域にいかなかったのかもしれない(あくまで私の予想)
本当の彼女の性格を知るよしもないけれど、
3枚目役、お笑い芸人を目指すルイーザの性格を物凄くよく研究したと思う。
ある意味、自分を捨てて(笑)コメディチックに面白く演じきった。
この舞台の中でも特殊なキャラなので、立ち位置が本当に難しい。
それができるのが野呂桃花なのだろう。
合間合間で観客を笑わせる。
ドタバタな、おちゃらけた演技。
難しい役を本当によく演じきっている。
それだけでなく、彼女は歌もダンスも素晴らしく、見応え十分。
ちなみに衣装が赤でしたが、
「ミュージカル ぼくのグリーンペッパー」のアカネ役のように、
野呂桃花には赤が似合う。
ダンスシーンでの笑顔、なんて素敵な笑顔なのかと毎回思う。
神元心花 ドロシー役
2016年もドロシー役。
大きな変化はないけれど、歌が前よりもうまくなったかな?
長島海音 ドロシー役
シアターボアベール『春の夜の夢』でオリビア役ですが、
さすがに覚えていません。
申し訳ない。
The・子役という感じでまだまだ未完成の子。
これからだな~
結城里桜 アースリーフ役
澤口遥名 アースリーフ役
アースリーフのふたりに関しては、お互いに少年っぽい印象で、
とりたてて印象に残るシーンはないかな?
それだけ自然で、違和感がなかったとも言える。
白岩亜深 ジェニファー役
ひとつだけ気になったのは、看護婦の時。
劇団にいる時と口調、セリフ回しを変えているのかな?
小副川優衣 ライトリーフ役
セリフ回しがやや舌なめずりな感じかな?
ちょっと聞き取りづらい部分もある。
表情付けがさらにあると良かったかな?
清水那奈 ライトリーフ役
シアターボアベール『春の夜の夢』ではエポ 妖精役。
私としてはルックスだけ印象に残っており、
今回のライトリーフ役も楽しみにしていました。
5ヶ月ぐらいしか経っていませんが、身長が伸びた気がします。
あくまでそんな気。
で、セリフ回しが独特。
しかもけっこうなアニメ声。
突拍子もない雰囲気。
独特だな~ほんと独特。
まっ、これを個性として、
彼女特有の「ザ・ワールド」を進化させていくかもしれない。
表情豊かで面白いといえば面白いので、逆にこれから化ける可能性もある。
化けない可能性もある(笑)
どっちに行くか楽しみな部分もありますね。
ただ、演出家は大変だ(汗)
後藤いくり ハニー役
とりたてて、そんな印象には残らなかったけれど、
逆にアンサンブルでの方が表情が変化していて楽しかった。
後述する吉田明花音もそうだけれど、
役とか、衣装とか、被りものがあると印象が変わります。
吉田明花音 ハニー役
ミュージカルアニー2015ではモリー役。
クリクリッとした瞳は、今も健在。
ハッキリ言って、相当な美少女。
何をやるにしてもかわいい。
アンサンブルの時の元気の良さ、表情付け、ダンス、
やることなすこと目立つ。
「華」をもった女の子だと思う。
ただ、ハニー役だと、前述しているように衣装や被りもののせいか、
そのオーラが激減。
彼女でさえ無くなる。
不思議だ。
冨澤ひより モル役
澄んだ瞳がパッチリ。
口も大きく、見た目の印象度も高い。
今さらながらに思ったのですが、
モルはいつも両手を斜め下に角度をもって維持しています。
けっこう大変。
小林紗希 モル役
2016年に続いてのモル役。
モル役を2連続って珍しい。
私としては、かなりの実力ある女の子として印象深い。
セリフ回し、カツゼツの良さは秀でている。
笑顔は抜群。
表情付けは本当に素晴らしい。
次はもうひとランク上の役を観てみたい。
というか、やるでしょ、彼女なら。
中村鴈治郎 マシュー役
有名な歌舞伎役者なので、特に言うことはありません。
プロですからね。
歌唱力が予想以上にあってビックリ。
ミュージカル初挑戦とのことですが、全く違和感がありません。
彼が出演することもあって、おそらくミュージカルナンバーも増えました。
日本舞踊、扇子、といった趣向も。
「葉っぱのフレディ」の舞台から今までずっと
宝田明氏が演じてきた役なので、
どうしても比較してしまうのはご容赦願いたい。
おんとし83歳。
その年齢をふまえての演技、セリフ回し、雰囲気、歌。
当時は特に気にならなかったものの、
演者が変わると、いかにその趣が重かったのかを再認識することとなる。
特にマリアと母親のシーンでのマシューの言葉。
気持ちが高ぶる。
年齢を重ねた人の重みが、今ようやくにしてわかる。
小野田龍之介 ビリー役
2015年もビリー役。
2年前と今回を観劇した私だから言えますが、ミュージカルナンバーのひとつ、
「ターキー・ジョン」が素晴らしすぎる!
2年前も素晴らしかったのですが、今回はさらに素晴らしい。
どれだけ経験を積み、成長をしているのかがわかる。
ただ歌がうまいというだけではなく、
ひとり芝居に近いミュージカルナンバーなので、観客を引き込む芝居をしないといけない。
2年間の彼の成長を観客全員が知るよしもないが、私はすごくわかる。
わかってしまう。
「いや~素晴らしいな~」と感慨深く思ってしまう。
歌もさらにうまくなったし、演技、セリフの重厚度が増したように思える。
ちなみにですけど、本当にちなみにですけど、
ここのミュージカルナンバーだけでなく、
他の場面でも素晴らしい歌唱力を見せつけてくれます。
演技も歌も、ちょっと見せ場は少ないですがダンスも。
「葉っぱのフレディ」2004-春
「葉っぱのフレディ」2005年8月
ミュージカル「オオカミ王ロボ」
と、他にも長年いろいろな場面で観てきましたが、
今回は現時点でのベストオブベスト(他の舞台は観ていませんが)
おそらくは、さらに成長するでしょうね。
これで満足するわけがない。
吉川麻美 ケイト役
大きなお世話だけれど、前よりも綺麗になったかな?
母親の出演シーンも増え、歌うシーンも増えた気がする。
いつもよりも印象度が高い。
山田悠介 トニー役
トニー役は
2016年から大きく変更。
脚本見習いの大人キャストに。
ミュージカル系は初めてのようですが、
コメディチックな演技はしっかりしているので特に違和感は感じませんでした。
ただ、この「大人」のトニー役のあつかい方が、
まだまだ発展途上で、さらに掘り下げられるものがあると思う。
アンサンブルのメンバーも、ほんとに素晴らしい。
特に表情付けは、誰を見てもにこやかな笑顔。
観ている方が、心洗われる。
おそらく全員、誰かしらのアンダー(代役)だと思う。
なかでも
飯塚あみの穏やかな微笑みかたは印象的。
ちなみにひとり、ツインテールの子で、
メチャクチャ元気なダンスをしている子がいたが名前はわからず。
ちょっと独特な子でしたが、面白い。
総括
何はともあれ、加藤梨里香が素晴らしい。
小野田龍之介の成長も素晴らしく、「ターキー・ジョン」のナンバーは絶品。
そして何より、今まで観た来た私としては、
宝田明氏の存在がいかに大きかったことかを実感。
新たな人物、新たな演出を加えたことによるチャレンジ、進化を続ける舞台。
これを今後いかに精査、昇華させていくかが課題。
新たな配役での深みを増していく期間なのかもしれない。
それにしても、歌える人が多いというのは強みだ。
当たり前のことなのだけれど、観客の心に残る印象度は高い。
(敬称略)