ミュージカル「オオカミ王ロボ」

満足度 5点満点
◆公演時期 2011年3月26日〜4月3日
◆会場 全労済ホール スペースゼロ
◆原案 今泉吉晴
◆脚本・演出 源井和仁
◆音楽 神村茂三・五十嵐歩
◆振付 松岡優子
◆美術 齋藤浩樹

あらすじ
少年・翔(かける)の10歳の誕生日にプレゼントされたのは、ボロボロの一冊の本。
「ありえないっつーの! シューティングゲームは? 最新フィギュアは? どうしちゃったんだよぉ」
ふてくされて寝転んでしまった翔。
ところがその耳元に、『動物記』と書かれた古びた表紙の向こうから、
かすかな歌声が響いてきます。
「われらは森の王者 森生まれしときより ともにあり 戦い…」
おそるおそるページをめくると、なんとなかから飛び出してきたのは、
誇り高き森の王者"オオカミ王ロボ"。
ロボは翔に、森で生きる勇敢で知恵のある動物たちの話をはじめます。

(公式サイトより引用)
観劇感想

東日本大震災の影響で、舞台公演も通常通りおこなったり、
延期をするなど、判断が別れました。
公演を行うにおいて、いろいろな事情があるんですよね。

オープニングは各キャラクターが順繰りに登場します。
暗転、また暗転という感じだったので、
カラフルな照明はいっさい無し。
もしかしたら節電、照明の関係もあるかな〜?と思いました。
ただ、元々このような演出だったのかもしれません。
真相は不明。

内容的に、本当に昔のアルゴのよう。
最初はイマドキ、都会の動物たちの話→そこから人間世界。
→翔が父から誕生日プレゼントをもらう。
→ゲーム等を期待していた翔だったが、シートン動物記でガッカリ。
読む気力もなく、そのまま就寝。
→ところが、どこからか動物の鳴き声が。
動物アレルギーの翔は驚いて飛び上がり、
あたりを見渡しますが、なんの気配もない。
仕方なく再び寝床に入ろうとするが、そこにオオカミの姿が・・・
→シートン動物記のページをめくると、部屋が森の中に。
さらにページをめくると、いろいろな動物たちが登場。
→各動物たちの話へ。動物の特徴も説明。
→ハンターの話。
→そして、最後にロボの話しに・・・

こんな流れです。
なんて童話のような、じつにアルゴっぽい。
アルゴ・ミュージカルをたくさん見ている人にはわかります。
アルゴ王道のツカミがいいです。

今回は舞台の中心から客席へ、せりだし舞台がありました。
これは観やすいです。
後方の観客もすごく近くに感じますね。
レースシーンや、ウサギの母が子に特徴を教えるシーンは、
ここが多用されました。

演出も過去のアルゴ手法が見え隠れしているし、
キャストの演技力もすばらしいし、クオリティーがものすごく高い。
シートン動物記を題材にしていることで、
動物の特徴を教える場面も多数。
知識も身につきます。
アルゴっぽい、楽器を使う演出もあります。
若いキャストゆえの、パワーも伝わってきます。
なにより、各動物、各キャスト自身のナンバーがあるのは嬉しいでしょうね。
言い方は変ですが、目立たない役、脇役はいません。

ものすごく楽しい舞台。
1幕なんて、気がついたらあっと言う間に終わったという感じ。
おそらくリピーターも多かったでしょうね。
1度観ればわかりますが、飽きない。
だれる部分がない。
そこがファミリーミュージカル仕立てということでしょう。

ミュージカルナンバーは
ロボとブランカ、
犬、カラス、マスタング、雷鳥、
ウサギの母子、熊、ハンター、森の天使、翔、
ほぼ全員ありました。

人間目線、じつのところハンターなんですよね。
あとはみんな動物目線。
だからこそ今、この時期。
原発の問題で、放射能汚染のことを考えてしまいました。
今、原発の回りでは、犬の首輪がはずされ、放し飼いになっています。
牛もそう。
動物から、自然から見れば、人間のせいで・・・ということになるでしょう。
心が痛いです。

最後の場面・・・
これは泣けますよ。
翔役の石川新太も、他のキャストも泣いています。
演技というより、その舞台に感情移入してのことかな。
本当に泣けますからね、この話は。

気になった役者は・・・
みなさんプロなので、言うことありませんが、
気になった部分だけ。

翔役の石川新太の演技は秀逸。
というか、この役にピッタリ。
さらに歌唱力。
彼のナンバーもありましたが、本当にすばらしい。
子役としての経歴もありますが、なんというかな、
ただ単にかっこいいというだけでなく、ドロくささも感じる演技。
この舞台が大成功した要因のひとつであることは間違いないです。
ロボにも感情移入しますが、
やはり、翔役の演技力に惹かれる。
これは仕方ないもの。
本当にいい演技。

ネコ派?イヌ派?ではなく無党派っていうのは笑いました。
おもしろい。

ゴミを投げてゴミ箱に捨てるところは、
入るか入らないかの、ある意味アドリブですよね?
「ミュージカルアニー」のハニガン先生が人形を後方に投げて、
後ろにあるハンガーに引っかかるかどうかのような感じ。

安藤玲奈内藤大希のミュージカルナンバー
ハモリがあるのだけれど、
安藤玲奈が低いキーで、内藤大希が高いキーなんですね。
安藤玲奈の高いキーでの歌声も聞きたかった。
それから、これはキャラクターなので仕方がないのだけれど、
髪形のパーマはね〜
普段のストレートロングの方が断然いいんですけどね、安藤玲奈は。
都会の動物の時は違和感ないので、そちらを楽しむべきか。

安藤玲奈はタップありましたが、
他のメンバーもタップをできる子多いので、増やしてもアリかな。

マスタング役の齋藤ヤスカ
かっこいい役。
ローラースケートではなく、ローラーブレードですよね?
疾走感がいい!
舞台のみならず、客席と客席の間にあるセンターの通路も疾走。
座席が後方の人も、これはとても嬉しい。
競争するシーンは、他のキャストも通っていきますから。

ヴィクセン役の後藤夢乃
2003年のアルゴ、それ以前からも見ていますが、本当に大きくなりました。
表情の豊かさはあいかわらず。
もともと明るい雰囲気なので、正直、都会の動物のほうがいい感じ。
ヴィクセンの衣装は顔以外、本当に全部隠れてしまいますから。
演技力抜群。
なんとなく雰囲気が近藤久美絵に似てきたな〜と思いました。

ラグ役の平松來馬はミュージカル初出演ですか。
ハッキリ言って演技はまだうまいわけではない。
でも、ぎこちない子供ウサギの役はピッタリ。
子供だもの、この演技で十分。
この初々しさがいいんですよ。
瞳パッチリで、今後化けていくかもしれませんね。

モリー役の服部杏奈は、本当にいろいろな演技ができる。
アニーやら、もっくんやら、ルピルやら。
そして今回はついに母親役ですからね。驚きます。
役者として、「あたり役」があるのは嬉しい。
ハズレはないもの。
ただ、その役以外の性格の役をどうこなすか、本当に難しいところ。
服部杏奈に関しては、固定した役だけでなく、どんな役でもこなすんですよね。
言うことないでしょ、彼女に関しては。
ほんとはコメディチックの方が断然楽しいのだけれど。
舞台上でも、ちょいちょいコメディ部分を見せてくれます。

ラグ役の平松來馬と、ウサギの特徴を教えるところ、
ミュージカルナンバーはじつに微笑ましい。
今までとは違った服部杏奈像が観られました。

内藤大希はもっと男っぽい雰囲気のゴツゴツした感じかと思ったら、
けっこう優しい雰囲気の役柄でビックリ。
じつのところ、もっと男っぽい演技も観てみたかった。

シルバースポットの佑太は、カラスの編隊が見どころ。
ここのナンバーは子供も楽しい。
カラスの鳴き声、意外と難しいと思う。

ワーブ役の大至は巨大な熊。
ある意味、そのまま。
今回は歌もあって、私としては嬉しい。
やっぱり、大至さんの歌は聞きたいですから。

ビンゴ役の小野田龍之介も葉っぱのフレディのマーク役より、
本当にかっこよくなった。
細かいコメディもしているし、アドリブっぽいこともしている。

ブランカ役の栂野理紗子は、国民的美少女コンテスト出身なんですね。
初めて知りました。
ルックス映えますよ。衣装が可愛い可愛いこともありますが。
とりあえず歌はまずまずかな?
ソロというか、大山真志とのナンバーはありましたが。
美人ですね。

主役であるロボ役の大山真志は文句ないでしょ。
凛々しい雰囲気満点。
衣装がオオカミ役なので、かなり重そうでした。
それでも頑張ってる。
「5時に夢中」で、マツコデラックスともある意味共演したのだから、
観に来てくれなかったのかな?
観劇できなかったのであれば、DVDを送りつけたいですね。
こんなに素晴らしい舞台だったんだから、これを観て批評してほしいな。

総括

舞台公演終了後、キャスト挨拶。
私の回は、縄田晋。
(うろ覚えで申し訳ありません)
役者は舞台が仕事。
自分がやるべき場所で、やれることをやる。
それだけ。

阪神淡路大震災の時も公演をしたとのこと。
そこでできるかどうかわからないまま、
舞台の幕があく。
観客席は満席でした。
そして中には位牌を持ったまま、観劇をした人がいたとのこと。
その話しに、他の出演者も感極まり、泣いている方も多数いました。
今回この公演の幕をあけるにあたり、
尽力してくださった各関係者に感謝の意を述べていました。
そして、観客の方にも。

私ができること。
億の単位で義援金を払うこともできず、
振込無料の日本赤十字に少しだけ支払うこと、
物資も役所に届けることぐらい。

そして、もうひとつは、
節電、自粛の影響で、舞台公演が大変なこの時期に、
舞台観劇を勧めることしかできません。
「ミュージカル・オオカミ王ロボ」
本当にすばらしい舞台でした。

原発の問題もあり、未来が暗くなるニュースばかり。
大人も不安で、子供たちもそんな大人たちを見てさらに不安になります。
だからこそ、違った角度、視点による心のケアが必要。
それこそが舞台、観劇だと思います。
私もこの公演から元気をもらいました。
偽善と言われようと、かまいません。
観劇を通じての心のケア、大人にも子供にも必要だと思います。

(敬称略)

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