満足度 B組
満足度 M組
公演時期 |
2017/4/22→5/8 |
会場 |
新国立劇場 中劇場 |
脚本 |
トーマス・ミーハン |
作曲 |
チャールズ・ストラウス |
作詩 |
マーティン・チャーニン |
翻訳 |
平田綾子 |
演出 |
山田和也 |
音楽監督 |
佐藤俊彦 |
振付・ステージング |
広崎うらん |
美術 |
二村周作 |
照明 |
高見和義 |
音響 |
山本浩一 |
衣装 |
朝月真次郎 |
あらすじ
1933年、ニューヨーク。
孤児院で暮らす、赤毛の少女アニー。
孤児院には父親や母親を亡くした子供たちが、たくさんいます。
ただ、アニーの両親だけは、まだわかりません。
『すぐに引き取りにまいります』という、
自分が赤ん坊の頃に書かれた両親の手紙・・・・・
その言葉を信じて、アニーは11年間支えにしてきました。
しかし、いつまでたっても両親は迎えに来てくれません。
ついに、アニーは孤児院を出る決心をします・・・・・
観劇感想
新演出
前任のジョエル氏から山田和也へ変わり、かなりの変更。
私の場合は、篠崎光正氏の時代も観ているので、3人目の演出家。
(
過去のミュージカルアニーの観劇感想を、
時間があればお読みください)
懐古主義だと過去を美化してしまいがちになるのは至極当然。
それでも私としては、新しく良いものは良いものとして受け止めたい。
その先例というわけではないけれど、
「森は生きている」という物語。
森は生きている 1995年
この時は劇団仲間での観劇でしたが、民謡に近い、地味な舞台でした。
昔話を聞いている感覚。
それが、違う演出家だと大きく変化し、エンターテイメントに。
森は生きている 2004年
それだけ、同じ物語でも演出によって変わっていきます。
このアニーも、新しい演出家で、新しい魅力が出てきました。
また新体制になったこともあり、プログラムの記載に、
音楽監督、振付、翻訳、美術、衣装担当の方のインタビュー記事も掲載されています。
ここは読みごたえがありました。
テンポ
最初のオーケストラの演奏が、いつもよりテンポが早い。
舞台全体の音楽もテンポが早くなるのかな~?と予想しましたが、
そのとおりの結果に。
これが、私はとても新鮮で好印象。
全体的な公演時間も、1幕1時間10分、2幕50分とコンパクト。
重厚感あふれるように、じっくり長くという演出もあるけれど、
今回のこのテンポの良さは、私には心地いい。
何回も観ていると「ここの部分長いな~」とか、
だれるように感じる部分があったのは事実。
みんな見て見ぬ振りをしていたし、これでいいと思っていた。
それをあえてスパッと削ったことは、とても勇気がいることだと思う。
「重きをおいて、噛みしめるようにゆっくりと見られる場面が削られて残念」
と思う人もいることでしょう。
これは演出家の決断ですからね。
衣装
ほぼ、すべてのキャストの衣装が変わったと聞きます。
私的には、ハニガンの衣装やウォーバックスのガウンが印象的。
ハニガンは胸元、足元と、セクシーな衣装。
ウォーバックスのガウンはド派手。
アニーの舞台が、衣装でここまで印象が変わるというのには驚き。
これは良い変化だと思う。
セットと舞台装置
セットは、どちらかと言うと簡素になった部分もある。
ただ、私はそれほど違和感は感じませんでした。
ウォーバックス邸は黒とゴールドを貴重にして、派手さを強調。
グラスを載せる台車のようなものも、ゴールドでしたし。
ある意味、トランプ氏が好きな色かな(笑)
それに関連しての舞台装置の変更。
今までは大がかりな変更で、回転式だったり、下から上にせり上がるものもありました。
今回はあっても左右の入れ代わりだけ。
これはとても新鮮!
これが無いということは、まず舞台進行がスムーズ。
舞台のテンポが止まらない。
もうひとつ。
大がかりな舞台装置でセットを変更する場合、
薄い舞台幕を降ろし、舞台の一番手前でミュージカルナンバーを踊っていました。
しっかりしたミュージカルナンバーにもかかわらず、印象としては薄くなります。
観ている方としては、どうしてもおざなりになる。
それが今回、派手な舞台装置を使わなくなったぶん、舞台を奥に大きく使うことができました。
これは大きな変化。
奥行きが感じられますからね。
特に「Easy Street」の部分は印象的。
ウォーバックス邸の入り口も舞台奥に変わります。
そこから登場するアニーはとても新鮮。
今まではたしか、左右の舞台袖から登場していたと思います。
さらには階段が2回移動。
これも新鮮でした。
また、ルースターたちが化けていたマッジ夫妻の登場シーン。
これも右から登場。
今までは左から登場していました。
ここも方向性としては大きな変化。
「スポンサードリンク」
照明
特に印象深いのは、一番最初の二段ベッド。
アニーズたちにスポットライトが浴びせていて、
徐々に変化させている。ここはとても良かったです。
細かい変化
いろいろあげるときりがないのですが、
最初の「maybe メイビー」でアニーが舞台上を左右に動く。
(これは印象深い。今まで立ったままですからね)
グレースがドジッ子。
(面白いし、彩乃かなみさんグレースに合っている)
アニーを選ぶ時に他の孤児たちがいる。
(アニーひとりだけを選択肢にするのではなく、孤児たちから選ぶ)
アニーがサンディを呼ぶしぐさの変更。
(これも新鮮)
アニーとサンディが出会うシーンに通行人。
(これも驚き。最初は違和感があったけれど、二回目を見るとそうでもない)
アニーズの出番が増加。
(孤児院の場面等、けっこう多いと思う)
ハニガンが歌う「リトルガール」で孤児たちがダンスと変顔。
(ハリウッド版?に似ている。これは孤児がいてもいなくてもどちらでいいかな?)
ラジオのプロデューサーの存在。
(現実的な感覚かな?)
二幕前の拍手の練習。
(子供重視、ファミリーミュージカルを意識しているようにも感じる。
観客も盛り上がったいました。)
バートヒーリーの声のトーン。
(私だけかもしれないけれど、けっこう変わった印象)
ウォーバックスとグレースのジェスチャー。
「ひいらぎかざろう」が長め。ウォーバックスも続けて歌う。
ハニガンがアニーのお尻を叩かない。
(昨今の虐待関連に配慮?かつてトム・ソーヤの冒険のアニメもお尻を叩いていたけど、
今は変えるでしょうね。原作重視か、改変がいいのかは難しいところ)
飲み物は造物。
(私的には今までの、アニーがグラスを置いた時に飛び散るしぶき、
それを拭くメイドの動きも楽しめる演出の一部でしたが。)
モリーによる「お薬を飲まなくちゃ」「地獄送りにしてやる」
「ノーモア・ドロドロ」
(二人のモリーともにカツゼツがよく、ここはとても楽しい場面だと思う)
エンディング登場時のハニガン、ルースター、リリーの衣装が天使。
(今までは囚人服。天使ということは・・・)
大統領府でのアニーの背中。
(背中で演技をするアニー。渋い演出だと思う)
大統領府でのコメディッチックなハロルド。
(子供向けの楽しさだけれど、観客の受けもよかった。私は続けていいと思う)
歯磨きの広告に怒るウォーバックス。
(これは新しい。今までは広告があって当然というウォーバックスの態度でした。
よく考えると、ウォーバックスは一企業のお偉いさんであるから、
自分が広告に利用されるのは嫌でしょうね。そういう演出家の意図もあるかな?)
などなど。
グレースがアニーを選ぼうとする時、
ハニガンがアニー以外を選ばせようと他の孤児たちを呼び戻します。
そこでも、グレースはアニーを選択。
そういった「選択肢」をもたせたところは良かった。
あえて残念なところを言うと、
羽ペンでのフェンシングや、
かつては重要なシーンであったペンダントの受け渡しシーンが、
そこまで重要視されてない感じでしょうか?(あくまで今まで比べて)
アンサンブルと、グレースの衣装はもう少し棲み分けがあっていいと思う。
雰囲気も、みんな高貴な印象が強く、グレースとかぶりすぎ。
ここは今後修正がほしいかな?
もうひとつ気になるのは未来のスターの坂口杏奈。
前回は北川理恵。
比べてしまうのは申し訳ないのだけれど、
レベルが違いすぎる。
見た目、ゴスペルにでもいるような肺活量高めな印象で、
「glee/グリー」のメルセデスのような歌唱力を期待していたのだけれど、
期待度が高過ぎました・・・
テシーからダフィへ。フリードレスのソロの変化
今回、アニーズの中で際立って目立つのがダフィ。
なぜかな~?と考えると、一番は「フリードレス」
アニーのラジオが終わり、
アニーズたちがそれを聞いていて続けざまに歌うナンバー。
最初に「か~わいいお嬢さん」とソロがくるのが、通常であればテシー。
ここでテシーが目立つし、一番おいしい場面。
過去の観劇感想でも書いていますが、ほぼテシーは歌唱力のある子が配役されています。
だからこそ印象に残る。
ところが今回はこれが両組ともにダフィ。
どういう理由でダフィに変わったのかはわかりませんが、
そのぶん、テシーの影が薄くなり、ダフィの印象度、存在感が強くなりました。
ダンスキッズの存在
これは言わざるをえない。
あってもなくてもいい存在。
今まで存在したタップキッズの出番と同じぐらいであれば、
私も納得いきます。
本来はアニーが映画の1シーンとして観るため、尺が長くとれました。
ところが今回はテンポ良く舞台を進めるためか、
「N・Y・C」の流れで出てきてしまいます。
しかも、あっというま間に終わる。
印象度は物凄く低い。
来年はどうなるかはわかりませんが、
ここだけは今後の課題、改善の余地がある。
オーディションに合格した人も、
まさかここまで出番が無いとは思わなかったことでしょう。
少なくとも前回のタップキッズの出番と同じぐらいは考えていたと思います。
それから、あまり言いたくないけれど、私が観た回は切れが不安定でした。
やるならやるでキッチリ、止まるところは止めてほしい。
観客がドギマギしてしまう、ダンスキッズって何?
「子役だから」って言い訳は、少なくともこの舞台では通用しない。
民主党と共和党
アメリカは大まかにいってこの二大政党。
今回はここを強くアピールしていました。
海外ドラマでもよくありますが、
親友でもこの話題になると、相手を自分の陣営にひきこもうとするんですよね。
民主党はエリート意識が高く鼻持ちならないとか(笑)
ウォーバックスは共和党支持者。
ルーズベルト大統領は民主党。
本来は好きではないものの、アメリカの一大事である今の現状を考えれば、
手助けをするという感じ。
それ色濃く出しています。
また、今回ミュージカルナンバーで「フーバービル」が復活しました。
ようは、前大統領であるハーバート・フーバーを皮肉った歌。
私は政治色を強く感じました。
トランプ大統領になったこともあるのかな?
ちなみにジョエル氏の前の演出家、
篠崎光正氏でのフーバービルの大人のダンスは凄かったです。
大人のダンスの見せ場という感じでした。
自主性に任せる?アニー、アニーズ
私が思ったのは、アニー、アニーズともに、
今までの固定された、型にはまった役ではなく、
各々個人でその役を昇華させようとしている気がします。
自分で考えて、自分で役を作っていく。
それが、オーディションでもあったように、ワークショップの一因でもある。
もちろん、おおまかな性格付けはありますが。
特に印象に残った場面
ウォーバックスとアニーの「Something Was Missing」
最後の抱擁するシーンはとても感動的でした。
アドリブ
私は前半と中盤に観劇しましたが、
中盤ではかなりアドリブが多用され、役者の余裕が感じられました。
マルシアさんのプログラムのコメントを読むと、
「本番をとおして役を育てる」というのがあります。
そういった意味合いなのかはわかりませんが、
最初に見た舞台とはまた違った雰囲気が味わえる感じ。
これは演出家によっても異なるでしょうね。
ガチガチに台本どおりにするというものと、
役者に任せて自由に演技させるものと。
私がよく観劇するSETの舞台、
三宅裕司さんと小倉久寛さんの面白おかしくかけあいをします。
一見するとアドリブのかけあいなのですが、ガッツリ台本どおりなんですよね。
あれには驚きました。
(セリフのミスからわざとそのことについてアドリブを入れることはありますが)
私が観てきたアニーは、ほぼ台本どおりだと思います。
ここまでアドリブが多いアニーは初めて。
山田和也演出による部分が大きい。
「スポンサードリンク」
気になった役者は・・・
M(チーム モップ)
会百花 アニー役
まずとにかく笑顔がかわいい。
透明感があって、何をやっても許される雰囲気を持つアニー。
無骨なウォーバックスだけれど、
笑顔を振りまきながら、面白おかしく対応してくるアニーであれば、
心を開くというのは至極うなずける。
それだけ、会百花の透明感あるルックスと笑顔は特筆もの。
これは彼女が生まれもったものだから、誰にも真似はできない。
もうひとつ魅力的なものが、自然体な演技。
演技演技しておらず、あるがまま、自分の中のアニーを昇華させている。
会百花=アニーというように、そのまんま。
王道なアニーでも、変化球なアニーでもなく、
会百花のアニーという感じ。
そもそも型にはまったアニーというものをとっぱらった、
ワークショップからのアニーだと思う。
カツゼツとか、セリフ回しとか、
おそらく普通のレベルなのだろうけれど、
いちいちやることがかわいいから、ほとんど気にならない。
おそらく、男性と女性の見方とでは違ってくる。
歌唱力はまずまずかな?ただ、そんなに伸びはない方かな?
自分としては、前半おさえめで後半に力をためていた印象。
ウォーバックスとのダンスシーンもたどたどしい。
だがしかし!!
彼女の場合は、歌も、たどたどしいダンスも、
観客としては微笑ましく愛着的に変わってくる。
それが彼女の魅力。
他の子と比べた場合「ズルイ」ということにもなるけれど、
それは彼女の生まれもった素質だから、それは非難できない。
その資質があっての「芸能」だもの。
ちなみに首が長いから、ぜひ鍛えてほしいな。
運動をするのに首は重要。
今村貴空 モリー役
後述しますが、今回は両モリーとも目立つ。
まず喋りがいい。
カツゼツも良くて、とても聞き取りやすい。
コメディチックな演技もいい。
私は好きですね、このモリー。
ダンスはあまりチェックでできず、申し訳ない。
ただ、とても印象には残りました。
今後に期待大。
年友紗良 ケイト役
久慈愛 テシー役
年友紗良は笑顔の可愛さ、
久慈愛はクリクリッとした瞳でのマスコット的存在。
(マスコット的存在はモリーじゃない?と言われても今回はテシー)
ふたりとも華があるのに、印象に残らない。
凄くもったいない。
個々のアピール力がないと、観客に与える印象度としては厳しいのかな?
夏もあるので私の感想なんてひるがえしてほしい。
ケイトとテシーは、両組ともに印象が薄く申し訳ない。
吉田天音 ペパー役
ペパーのクセがすごい。
これは良い意味で。
このチームは特にモリー、ペパー、ダフィが良く目立つ。
その中でも、このペパーは目立つ。
ペパーらしいという言い方は変だけれど、
皮肉屋の表情付けは抜群。
この表情付けに関しては目をみはるものがある。
やることなすこと、いちいち面白い。
ムカツクペパーだな~、
と、観客に思わせるのがいい。
演技力もあり、セリフのカツゼツもよく、
あくまでペパー役に関しては文句のつけようがない。
素直に素晴らしかった。
後述するジュライとの関係だが、
おしむらくはバケツチームの、
笠井日向ジュライと演技での攻防、対決が観たかった。
おそらくは相当凄いことになったと思う。
ただそうなるともうひとつのチームが二人とも弱くなる・・・
と考えると、配役的には分けて良かったのかもしれない。
吉田天音対笠井日向は、あくまで夢の対決みたいな感じかな?
これも後述するのだけれど、
バケツチームのペパーとは全く違う。
ここまで違うってなかなか珍しい。
おそらくは、これも自主性に関連していると思う。
オーディションでのワークショップのような、
本人の自主性に任せて、本人自身で役を作りあげていく。
だからこそ、あまり演出家は口出ししなかったように思える。
それもあって、こういった極端な対比になったのかもしれない。
本人の自主性に任せると、良い結果だと特徴ある役になるのだけれど、
それが別方向にいってしまうこともある。
なんて、私なりの解釈。
相澤絵里菜 ジュライ役
おとなしい役であることは重々承知だけれど、
敵対?する吉田天音ペパーに対しては弱すぎた。
(向こうが強過ぎるってこともあるけれど)
吉田天音ペパーに、いくらなんでも押され過ぎ。
ジュライは大人しいなりにも自我が強く、
言いたいことはキッチリ言うタイプのような気がする。
おそらくジュライ役はソロがあったはずなのに、
私はその時に、吉田天音ペパーがモリーをいじくっている方を観たほど。
それほど印象が薄い。
表情からしか受け取ることができないけれど、
おっとり素直で優しいタイプなんだろうな~と思う。
相手のペパーが強過ぎた、というのは言い訳になってしまうのかな?
それはそれで可哀相ではあるけれど。
野村愛梨 ダフィ
2014年のストリートチャイルド役ですが、
ほとんど覚えていません。
初めて観たといっても過言ではない。
アイドル的で、ルックスが可愛い。
それに加えての表情付けが抜群。
ものすごく楽しい。
セリフ回しもいいし、コメディチックなところも凄くいい。
前述しているとおり、テシーのソロが無くなった分、
ダフィのソロに。
こちらも素晴らしい。
今までダフィは孤児の中でも年長者、ぐらいな印象しかなかったのだけれど、
ほんと今回のダフィは容赦なく目立つ。
ダフィ役は相手チームも目立つのだけれど、
なんというか、今後の芸能界にむけて、
ダフィ役クラスの人材をアピールする狙いもあるのかな?
B(チーム バケツ)
野村里桜 アニー役
2014年はモリー役。
セリフ回しはやや早いかな?
歌唱力は私の予想よりも普通な感じ。
もっとできると、ちょっとハードルを上げて観たせいかもしれない。
これは本当に申し訳ない。
メイキングの歌声がとても印象深く、
「彼女ならこのぐらいできるだろう」という思いが強過ぎた。
気になるのは、何か常に緊張している印象。
何か焦りを感じる。
それも重なってか、いまいちテンポがよくない。
面白い時は面白いのだけれど、一瞬の表情付けのテンポがずれる。
急に表情を変化させる感じ。
相手のセリフがきた瞬間にスイッチが入る。
そんな印象を受けました。
ダンスは得意なようだけれど、
ウォーバックスとのダンスはイマイチ。
私はたどたどしく思えてしまった。
何か心底楽しいというものが伝わってこない。
サンディがよく吠えていたので、
集中力を持続させるのが大変だったのかもしれない。
演技よりも精神的なものがあるかも。
「大丈夫かな~?」という、
不安が常に付きまとっている感じ。
比べるのは失礼だけれど、会百花と比べると現時点で華は少ない。
だからこそ、それを補うための演技、歌、セリフ回し、ダンス等、
何か秀でたものが必要になる。
残念ながら野村里桜には、大きく目立つ得意なものが見当たらない。
バランスはいいのだけれど、何か「これ!」という特別なものがない。
またまた比較して申し訳ないけれど、
2016年アニーの池田葵。
彼女はパッと見は地味な存在(失礼)
ところが、アニーになると演技、ダンス、表情、存在感、すべてが光り輝く。
地味さがふっ飛ぶ。
特にアニー本編よりも、
アニーのクリスマスコンサート2016は素晴らしかった。
彼女の表情を観ていると、楽しさが観客に伝わってきますからね。
いわゆる「この子は華がある」なんて表現をするけれど、
それがあろうが無かろうが、池田葵はそんなものを吹き飛ばす力をもっている。
人の印象なんてそんなもの。
何かのきっかけで大きく変化する。
だからこそ夏にむけて、いろいろな部分を磨いてほしいと思う。
子役だからこそ、短い期間で一気に成長するもの。
小金花奈 モリー役
目がパッチリで、コメディチックでお茶目なモリー。
いたずら心満載。
「地獄」「お薬」両方とも面白い。
今村貴空と比べても、ほとんど遜色のないカツゼツの良さ。
セリフが聞き取りやすいモリーは、記憶に残る印象度合いが違うもの。
今回は両モリーとも、本当に素晴らしい。
林咲樂 ケイト役
井上碧 テシー役
こちらのチームもケイト、テシーの印象が薄く申し訳ない。
そういえばひとつ。
か弱いテシーなのだけれど、
ハニガンの笛で、一気にベッドから飛び出して一番最初に並んでいました。
意外と計算高いテシー。
小池佑奈 ペパー役
アイドルチックなルックスで、はにかんだ笑顔も魅力的。
ただペパーとしては、気の強さをあまり感じない。
普通の孤児よりも、少しだけ口数が多いという感じかな?
後述する笠井日向ジュライの演技の圧が強いので、
ペパーの方が圧倒的に押されている。
本当はもっと押し返してほしいのだけれど、そこまではしない。
ジュライが恐いのか、口だけ番長のようにも感じる。
自然な気の強いペパーを演じているのだとは思うけれど、
舞台の場合は少し誇張してもいいと思う。
笠井日向 ジュライ役
ミュージカル マリアと緑のプリンセス 2015ではプリンセス役、
アルプスの少女ハイジ2016では主役のハイジ役と、
急成長を遂げている女優のひとり。
今回のジュライ役もとても素晴らしい。
たちふるまいからジュライ。
ベッドでゆっくりメガネを取るところが丁寧だし、
階段に座る姿も清楚。
お辞儀をするところは、
おそらく孤児の中ではただひとり足を交差して品をだしている。
(プリンセスのお辞儀のよう)
落ち着いていて、ハッキリとした口調。
清楚というよりかは、生徒会の委員長のような知的でお高い感じ。
「フリードレス」ではソロもあり、抜群の歌唱力。
声の伸びも素晴らしい。
短いソロだけれど、もしかしたら他のアニーより上手いのでは?
なんて考えてしまうほど魅力的な歌声。
あくまで一部分ですが。
「流石にハイジやプリンセスをやっただけのことはある」
とうなずける、力量、ポテンシャルの高さ。
舞台上では本当に輝く。今後に期待大の女優だと思う。
おしむらくは、前述しているように、
ペパーとジュライの言い争いの時、ペパーの演技が弱いので、
ジュライが強く感じてしまう。
子役とはいえ、演技と演技のぶつかり合い。
相手の演技を受け止め、それに答える演技を返すべき。
笠井日向ジュライにしてみれば、ペパーにもっときてほしいところであろう。
ここが相手の組の吉田天音ペパーであれば、
お互いの相乗効果でさらに磨かれた舞台が作り上げられたかもしれない。
ちなみに側転だけがイマイチだったので、そこだけは気になった。
宍野凜々子 ダフィ役
こちらのダフィもよく目立ちました。
アイドルっぽい笑顔に、コメディチックな表情。
テシーに変わってのソロですが、十分な歌唱力。
年長者のダフィだけれど、しっかり者というよりかは、
お茶目でほんわかした印象。
藤本隆宏 オリバー・ウォーバックス役
藤本隆宏氏は実力がある方とは聞いていたものの、私は初観劇。
若いけれど、全く問題ないウォーバックス。
質実剛健。
でかくてごつい。
どちらかというと恐いウォーバックスだけれど、
お茶目な部分もある。
特にアニーと出会ってから。
アニーと波長が合う。そんな感じ。
歌唱力的には、伸びはあまりないかもしれないけれど、私には十分。
「真田丸」の印象とは全く違うので、新鮮な印象がありました。
「渡辺謙」の若い時をイメージさせる。
私は好きですね、このウォーバックス。
マルシア ハニガン役
マルシア氏は本当に自然体。
そのまんまのハニガン。
昔の観劇だと、
モーニング娘。『リボンの騎士 ザ・ミュージカル』 2006年
この時、主役はモーニング娘。の高橋愛でしたが、
彼女のファンを奪いとるような演技、気迫は今でも覚えています。
歌唱力は当然として、やはりプログラムにも書かれているとおり、
ハニガンの悲哀を感じる。
自分を支えてくれる人が欲しいのに、巡りあえない。
回りはうるさい子供たちばかり。
そんな時に弟のルースターがうまい話しをもちかける。
人生の歯車のかけ違い。
そんなことを感じました。
ウォーバックスを騙した後にアニーをどうするか?
ハニガンがルースターに聞いたところ、飛び出しナイフをだす。
その一瞬、あのハニガンでさえ困惑の表情を見せる。
本当に一瞬。
あそこがハニガンマルシアにとっても、一番力の入れている部分かもしれない。
なんて、私は思いました。
大統領であることを知った後の、最後の口を開けっ放し、
あれはもしかしたら、演出家の指示ではなく、
マルシアさんからの提案かな?
前述しましたが、ハニガン、ルースター、リリーの「Easy Street」は、
奥行きができたこともあるけれど、
本当に見応えあります。
彩乃かなみ グレース・ファレル役
今回のグレースは、やや天然ボケキャラで、おっちょこちょい。
それでいて優しい。
凛として何事にも完璧な秘書、というわけではなく、
足りない部分もあるというグレースがとても新鮮でした。
完璧さを求めない。誰しも何かが欠けている。
それを意図しているかはわかりませんが、
そんなダメな部分も魅力的に映るグレース。
演技や歌の実力は十分。
ほんわかした優しいグレースを演じてくれました。
とにかく優しくほがらかな印象。
青柳塁斗 ルースター役
初めて観劇しましたが、予想以上にいい。
まず若さがあふれだす。
この「アニー」の舞台に新鮮な空気を入れている感じ。
演技、歌、ダンスと、安定していて、特に言うことがない。
「Easy Street」での歌とダンスは本当に見応えあります。
ハニガン、ルースター、リリーの3人の魅力が凝縮している。
じつに楽しいナンバーになりました。
山本紗也加 リリー役
足あげをアピール。
意外と存在感が強い。
パンフレットの本人コメントと同じく、
ただルースターにくっついているのではなく、
したたかさを持っていることが、舞台上からでも感じることができます。
「Easy Street」での、歌、ダンスも素晴らしかった。
総括
ハリウッド版のミュージカルアニー、
(ハニガンのソロの時に子供たちがいるとか、アニーのソバージュの髪形とか)
または、海外ドラマの『glee/グリー』の影響を多大に感じました。
舞台を観劇するたびに、アドリブも増えていきます。
ガチガチの台本ではなく、キャストに任せる柔軟性。
これが新しい演出の真骨頂でしょうか?
グレースがなぜアニーを選んだのか?
そして、ウォーバックスはアニーのどこを気に入ったのか?
それがわかる演出のように私は思えました。
ミュージカルミュージカルしていない。
テンポ良く、とにかく自然体。
生まれ変わった「新・ミュージカル アニー」として申し分のない出来ばえでした。
(敬称略)
「スポンサードリンク」