◆  森は生きている 2004年

◆公演時期   2004年8月21日〜29日
◆会場 東京 アートスフィア
◆演出・作詞 忠の仁
◆振付 名倉 加代子
◆作曲 脇田 岐多郎
◆歌唱指導 岡崎 芳子
◆音響 戸田 雄樹
◆美術 斎藤 浩樹
◆照明 柏倉 淳一
◆衣装 宇野 善子
◆舞台監督 神林 悟
◆脚本・プロデューサー 川崎 登
◆原作 サムイル・マルシャーク
◆翻訳 湯浅 芳子

あらすじ

日は12月最後の日、
新しい年がもうそこまできている、夕方のことでした。
雪の降りしきる森の中を、ひとりの娘が、
たきぎを積んだ小さなそりをひいて家に帰ってきました。
みなしごが寒さにふるえがら家に辿り着くと、おばさんが言いました。
『もう一度森へ行って、マツユキソウをつんでおいで、
女王様のおふれが出たんだから・・・』
女王様の言葉は絶対・・・
しかもマツユキソウは春に育つもので、
冬にあるはずがありません。
そうとわかっていながらも、
娘は、かごを持って森へでかけました。

もう日は暮れて外は吹雪です。
娘は激しい寒さでこごえてしまいそうになります。
とその時、森の奥の方にたき火の火が見えました。
それは、12の月の精たちが、
1年に1度の集まりのために、たいていたのです・・・・・


観劇感想

1995年、劇団仲間の「森は生きている」を私は観劇しています。
諸事情もあり、Mバージョンのみの感想です。
ご了承ください。
できたらもっと見たかったです!(涙)

今回の舞台ですが、
ハッキリ言って、今夏の中でも一番の舞台でしょう!!
断言できます!
大人と子供、両方が楽しめる舞台、まさしくそれが今回の舞台です!
あまり褒めすぎると、他の舞台に出た知り合いに怒られるのですが(爆)
そこは目をつぶって、素直な感想を書きます。

一幕最初のシーン。
娘役の遠藤久美子さんと老兵役の沢木順さんの、
ストレートプレイのような演技が続くのですが、ここがなかなか味わい深いです。
二人の演技のぶつかり合いのような感じで、見応えありました。
この導入部分で、『森生き』に引き込まれる感じがしました。

ダンスシーンは、けっこうたくさんありますが、自分の中で印象的なのは、
一幕最後の城下町(?)で、街の人が集まっているところが好きです!
さらには、ここで娘の悲しいシーンがフラッシュバックのように切り換えされるのですが、
この演出も良かったです!
マツユキ草を見つけることができれば金貨がもらえるという喜びにわく市民と、
指輪を無くし、もう二度と1〜12月の精に会うことができないことの悲しみを歌う娘。
この対比が、とても印象的でした。

照明的には、『転がれ〜転がれ〜指輪よ〜!』のところがいいですね!
さらには、継母と義姉が女王の前で、嘘の話をする時のナンバーでの照明。
たしか赤の照明でしたが、ここもとても良かったです!

ミュージカルナンバーが非常に多く、
通常はセリフのみのところが、かなり歌に変わっていました。
子供たちが飽きない理由のひとつはここにあるかもしれません。
淡々と演技が続く場面もありますが、そこはそこで面白く、
メリハリが効いていると思います。

ミュージカルナンバーは素敵な曲がたくさんなのですが、
私的には、継母の今陽子さんと義姉の鳴海じゅんさんのナンバーが印象深いです。
この二人は、娘役の遠藤久美子さんをいじめる役なので、ある意味悪役なのですが、
今回の演出ではかなりコミカルに演じられていて、嫌味がありませんでした。
演技は完璧、さらには歌声も抜群なんです!
声のとおる二人が歌うナンバー、悪いわけがありません。
神戸さんの歌もいいのですが、この二人のナンバーは秀逸でしょう!

面白いな〜と思ったのは、女王がマツユキ草をカゴからみんなに分け与える場面。
マツユキ草が全員に渡されることが最重要なのですが、
女王が喋りながらひとりひとりに渡すため、
ひとりに2本渡してしまうアクシデントや、
小道具の時点でマツユキ草の数を間違えたりしないのか?
などという、不吉なことを私は考えていました(笑)
でも、きっと、女王役の神戸さんも喋りながら手渡しするので、
緊張していたことと思います。
自分が観た回では、全員にきちんとマツユキ草が配られました。

途中で『自己責任』というセリフが出てきます。
これが深い意味をもちますね〜!
言うまでもなく、あの事件のことをふまえての言葉でしょう。

一幕からカラス役の芝崎健太さんがいました。
最初は何の役なのか全くわからなかったため、
影のような語り部かな〜と思ったのですが、
舞台中で動物たちからカラスだということを伝えられ、
私たち観客もようやく理解しました。
この彼が、ひじょうに良く効いていました。
すごく気になるというわけでもなく、いたりいなかったりするので、
娘役の遠藤久美子さんの存在を脅かすことなく、
動物的立場、カラスとして物語を見つめている感じです。
柔らかなダンスも魅力的でした!

エンディング。
老兵役の沢木さんのソロです。
普通に考えると、地味な終わり方だな〜と思うのですが、
これがまた、その逆。
沢木さんがの素晴らしい低音の歌声がバッチリなんです!
幻想的な雪が吹き込まれ、よりいっそう、重厚感あふれる雰囲気が漂います。
この演出は、そうとう練りましたね。

気になった役者さんは…

娘役の遠藤久美子さん。
主役という大役ですが、良く頑張っていたと思います。
見た感じ、彼女のほほが、かなりこけていました。
相当練習したことだと思います。
とても弱々しい演技はうまくできていたし、
独特(?)な笑い声も良かったです。
長ゼリフもよく覚えていたし、口調もハッキリしていました。
演技に関しては文句のつけようがないです。
ただのアイドルではありませんね。

ミュージカルということで、ソロもたくさんありました。
「すっごい声量!」
とまではいかないまでも聞きごたえある歌声でした。
決して下手ではありませんから。
この声を出すまでにも、努力したことでしょう。
歌唱力というよりも、私は彼女の歌っている表情が気になりました。
すごく気持ちのこもった良い表情をするんです!
完全な舞台女優です。すばらしい!

過去には、内田有紀さん、牧瀬里穂さんなどが、
アイドルから舞台女優へと目覚めたことがありますが、
遠藤久美子さんも、その流れにのるのでしょうか?
ぜひとも、舞台女優として頑張ってほしいです!
大期待ですよ!

女王役の神戸みゆきさん。
『ミュージカル・セーラームーン』の月野うさぎ役で、舞台は経験済です。
今回は女王役。
生意気な女王役ということで、役柄的には難しい役ではありません。
……ところが、その役柄的にはわかりやすい役を完璧にこなしました!
凄すぎです!
他のキャスト、みなさん素晴らしいのですが、一番印象に残ったのは彼女ですね。

女王の演技は完璧というしかありません。
見た目が可愛らしいものの、すっごいわがまま、世間知らず、傍若無人という、
意地悪な女王の王道の演技は非のうちどころがないです。
神戸みゆきという人物が、まさしく女王に思えました。

彼女は意外と早口だと思います。
ところが、その早口がすごく聞き取りやすい口調なのです。
何を喋っているのか、すぐ頭で理解できるんですよね。
発声練習等、努力の賜物でしょう。
ちなみに、自分が観た回では全く噛みませんでした。
たまたま自分の回では、ROLLYがセリフを噛んだのですが、
それに対して、女王の振る舞いで『なぁにぃ〜?!」と、
迫力満点のセリフで聞き返していました。
このへんは舞台度胸満点です。

さらには歌唱力。
これがまたすごい!
声量もあるし、抜群の歌声。
私にとってはすごく好きな歌声で、べた惚れです(笑)
いずれ、「ミス・サイゴン」や「レ・ミゼラブル」にも、
何かのきっかけがあれば起用されるでしょう。

博士役のROLLYさん。
彼は、かなりミュージカル経験があるので、安心して観ることができました。
演技的には申し分ないですね。
セリフもしっかりしているし、歌唱力も抜群!
ギターの場面もあったりで、かなり美味しい役でした。
声量あふれる低音も、すごく魅力的です。

4月の精の役の白川裕二朗さん。
特撮ヒーローのハリケンジャーのカブトライジャーをやっていた方です。
まずまず良かったと思います。
このキャストの中では一番筋肉美がありましたね(笑)
演技もまずまずかな?
歌もまずまず頑張っていたと思います。

3月の精の役の森ひろこさん。
かなり頑張っていたと思います。
ルックスは可愛らしいし、歌い方も優しい歌い方です。
イエローキャブは、演技や歌もひじょうに訓練されていますね。

2月の精の役の山咲あいさん。
彼女もイエローキャブです。
そして『雅』のメンバー。
8月の『雅』は、たくさんのイベントがありましたが、
山咲あいさんは出演されませんでした。もちろん『森生き』の稽古のためです。
この舞台を見せられれば、しかたないでしょう。
『雅』との両立は完全に無理ですから。
今回は歌が印象的。
『雅』の時とは歌い方が違うでしょうか?
少しオペラ調・・・のような気がしました。
声量ありますね!

10月の精の役の冨岡真理央ちゃん。
彼女を観るのは、『リボンの騎士』以来です。
男性チックで、ややぶっきらぼうな感じの役ですね。
こういった演技はうまい(爆)
ややツンとした表情は付けは存在感あります。
歌唱力も、なかなか良かったです。

1月の精の役の松岡英明さん。
ココスマ3の荻野役とは全く違いました(笑)
歌い方もそれとは全然違いました。
荻野役はけっこう特徴ありすぎでしたが、
今回の1月の精は、すごく洗練された感じだったと思います。
演技力も抜群でした。

7月精の役の熊谷知花ちゃん。
昔と全く変わってない、透明感あふれる女の子です。
歌、演技、ともに良かったです!
後述する、西島来美ちゃんと同じ感想なのですが、
歌いながら、振付をする場面が非常に印象に残っています。

6月の精の役の西島来美ちゃん。
ひじょうにしっかりとした言葉遣いです。
演技は凛として、精霊の雰囲気が漂います。
歌もうまいですね。たくさん歌う場面があるわけではありませんが、
彼女の歌声は印象に残りやすいです。
前述した熊谷知花ちゃん同様、歌っている時の手振りが幻想的でした。

リス役のグース万里紗ちゃん。
表情がとても可愛らしかったです。

リス役の清宮愛結花ちゃん。
出番的にはそれほど多くはありませんが、とても可愛らしいリスを演じてくれました。
肩をクネクネと左右に動かすダンスが印象的です。
セリフもありました!
『凍え死んじゃうよ〜!』
と、もうひとつ。
とにかくも、彼女はこの舞台出て、とても勉強になったでしょうね。
いろんなことを吸収して、自分の糧にしてほしいです。

リス役の鈴木満梨奈ちゃん。
この子はひじょうに目立ちます。
ダンスがキビキビしていて切れがあるせいか、
どこにいても彼女の動向に視線が向きます。
可愛らしいルックスですし、これからもっと人気が出るでしょう。
2003年のアニーのテシー役として有名ですが、
もっともっとステップアップしていく予感がします。

ウサギ役の神岡実羅乃ちゃん。
ダンスは言うまでもなくうまいです。
歌も少しありますが、抜群の歌唱力を発揮してくれました。
ただ、やはり出番が少ないので、彼女の本来の持ち味は発揮できません。
東京メッツでの活躍、期待しています。

ウサギ役の小林夏実ちゃん。
ミュージカル『フレンズ』にも出演していました。
う〜ん、ルックスはすごく可愛いのだけれど、
私としては、あまり印象に残りませんでした。
ひとつ問題なのは、彼女が出る時は、
愛結花ちゃんや実羅乃ちゃん、満梨奈ちゃんがいっぺんに出るので、
彼女の動向まで視線が向きませんでした。ごめんなさい。

若者役で、小出由華さん(ウゴウゴ・ルーガ等で活躍)も出ていたようですが、
全く気づきませんでした。すみません。
さらには、森の精役で出演した大澤恵さん。
ミュージカル『GANg』のランラン役で出演されていたんですね!
しかも茨木あゆみちゃんの時!
全く気づきませんでした。すみません。

総括

これだけ面白いのにもかかわらず、広報的にはどうだったでしょうか?
あまり大きな告知はなかったように思えます。
(マスコミに何度かは取り上げられましたが…)
こんなにも素晴らしい出来なのですから、もっともっとアピールがほしかったです。
お客さんも、もっと来ていたかもしれません。
次回は、ぜひ地方公演も目指してほしいです。
(キャストが豪華すぎて、ちょっと難しいですけど……)
それだけ、素晴らしい内容でした。


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