公演時期 | 2014年4月26日(土)〜5月11日(日) |
会場 | 青山劇場 |
演出 | ジョエル・ビショッフ |
演出補 | 伊藤明子 |
翻訳・訳詞 | 瀬戸千也子/伊藤明子 |
振付 | ボビー吉野 |
音楽監督・編曲 | 神尾修 |
歌唱指導 | 青木さおり |
訳詞 | 片桐和子 |
タップ振付 | 藤井真梨子 |
美術デザイン | ピーター・ウルフ |
照明デザイン | 沢田祐二 |
舞台監督 | 長沼仁 |
ミュージカル『アニー』の原作者 | |
脚本 | トーマス・ミーハン |
作曲 | チャールズ・ストラウス |
作詞 | マーティン・チャーニン |
あらすじ |
1933年、ニューヨーク。 孤児院で暮らす、赤毛の少女アニー。 孤児院には父親や母親を亡くした子供たちが、たくさんいます。 ただ、アニーの両親だけは、まだわかりません。 『すぐに引き取りにまいります』という、 自分が赤ん坊の頃に書かれた両親の手紙・・・・・ その言葉を信じて、アニーは11年間支えにしてきました。 しかし、いつまでたっても両親は迎えに来てくれません。 ついに、アニーは孤児院を出る決心をします・・・・・ |
観劇感想 |
ジョエル氏、14年目の演出。 今回は今までの演出とは変わった部分が多数ありました。 大人キャストも入れ代わり、 新鮮味を増すための意味合いがあったのかもしれません。 浅香唯、三田村邦彦、生田智子等、新しい配役になり、 まず私が思ったことは、ミュージカル系ではなく、 ストレートプレイに近い舞台だな〜と思いました。 もちろん、三田村邦彦氏も歌うので、ミュージカルなのですが、 全体的に受ける印象がストレートプレイ。 演技メインに感じました。 新しい演出としては、 最初のジュライとペパーの言い合い。 ここはけっこう新鮮。 新しいセリフも増えて、子役も嬉しいのでは? ハニガンとグレース、仲良く二人が机に腰掛ける場面。 グレースが茶目っ気たっぷりという感じかな? ウォーバックスが、アニーのためにペンダントを送る前のソロ。 ここは削られました。 後述していますが、歌が得意であれば入れたかも。 政治家と一緒にアニーが机の上で歌う場面。 これはこれでいいと思う。 特にこの時代、聖人君主じゃ、やっていけないもの。 漫画「天」でもあったけれど、 暴力団のトップである原田克美がアカギに諭される。 トップであるがゆえにがんじがらめ。 庭の草むらに裸足で歩くことすらできない。 恥ずかしい。子供じみている。場違い。 そんなことすらできない、自分にふと気づく。 それとこの政治家たちは似ている気がする・・・なんて私は思いました。 世界恐慌の破天荒な時代、だからこそ常識外の行動として、 アニーとともに机の上に立ったことも、至極納得。 一番最後のルーズベルト大統領とアニーズたちの会話。 (ハニガンは永久に・・・、学校の勉強等) ここの三段落ちは素直に面白かったです。 今後も続けてほしい演出。 観客受けも良かった。 後述しますが、両アニーともに素晴らしい出来ばえ。 私は大満足。 二人とも子役として、かなり完成されている。 今後、18、19、20歳になり、 子役から完全に脱却した時の演技も観てみたい。 そう思える二人。 子役としてではなく、大人の女優として観てみたい感覚に陥りました。 個性が違うので、どんな女優になっていくのか、 成長過程も楽しみ。 ダフィがモリーたちを抱えて回転するダンスは、 S組、T組ともにスピード感があり見応えありました。 見せ場ですし、スピード感あった方が楽しい。 ストリートチャイルドは、 二人とも柔らかな柔軟性のある前転をしていました。 ただ、他の印象度合いは少ない。 新しい演出としては、 エンピツだけでなく、他の物も売ることになりました。 「I Don't Need Anything But You Servants’ Annie」 のミュージカルナンバー。 あくまで私の印象度なのだけれど、 いつもよりテンポをゆっくりめにしたかな? 少し脱線しますが、 今さらながらミシシッピー。 アメリカで、かくれんぽ等で数を数える時、 1ミシシッピー、2ミシシッピー、 というふうに数えると、完璧ではないけれど、 1秒、2秒と、秒の間隔が合うからなんですね。 最近知りました。 たしかに1、2、3、と自分で間をあけて数えるより、 1ミシシッピー、2ミシシッピーと数えた方が秒数がやや正確。 ちなみに、もうひとつの方法としては、 自分の脈でやや正確な秒数は計れます。 S組、T組、比べてしまって申し訳ないけれど、 アニーとしては、現時点として、わずかに國分亜沙妃の方が上。 本当にわずかで、あくまで演技、ダンス、歌のバランスとして。 ただ、吉井乃歌の吸い込まれるような瞳は尋常ではない。 アニーズとしては、T組のジュライとペパーが効いていて、 この点を加味して、両組ともに同じ満足度の4と評価。 気になった役者は・・・ 激戦のオーディションで選ばれる子役たち。 下手な子なんていません。 あくまで私が気になった人だけ。 S(スマイル組) 國分亜沙妃 アニー役。 2012年のミュージカルアニーではテシー役。 ミュージカル 葉っぱのフレディ〜いのちの旅〜2013ではフレディ役。 私が観た回は完璧。 完璧超人。 子役ミュージカル女優としては、 ほぼ完成しているように思えてしまうほど。 演技力抜群、セリフ回しもいいし、表情の変化も楽しい。 過去のアニーと比較するのは申し訳ないが、 冨田麻帆のような表情付けのアニー。 三日月瞳の笑顔になるところも似ている。 もっと王道系かと思ったけれど、 服部杏奈にも似た面白いアニーでした。 その面白いアニーが演技演技しているのではなく、 じつに自然な演技。 流れるよう。 子供としての解放感、はしゃいだ雰囲気がじつに楽しい。 ひとつ気になったのは、フーバービルでの会話。 「寝ながら新聞が読めるじゃない」等のところ。 ここの大人との受け答えのやりとりが、 かなり間をとっている。 通常1テンポぐらいなのが、3テンポ、4テンポぐらいある。 一瞬、セリフ忘れたのか?なんて思ってしまうほど。 彼女なりの間合いなのだろうか? 特筆すべきは歌唱力。 私が観たアニーの観劇日は公演の後半でしたが、 セリフ、歌声ともに全く問題無し。 ここまで体調や声の調子を維持するのは、 並大抵では無かったことでしょう。 それを考えるとここまでの完璧さに驚く。 歌声は本当に聞き惚れる。 いつまでも聞いていたい感じ。 全てにおいて最高レベルのアニーなので、 観客は圧倒されていたでしょうね。 口パクが多いこのご時世、生歌で圧倒的な歌唱力ですから。 言うことないので、後は声変わりの時に気をつけてほしい。 ほんとそこだけ。 古市夏鈴 モリー役 かなり幼いので、特に言うことはないのだけれど、 ちょっとセリフが聞き取りづらかったのが残念かな? 奈良風香のペパーは発声しっかり。 渡邉花菜のケイト役は、瞳が大きいせいもあるけれど、 華があって非常に目立つ。 タップダンスの時も目立つ。 笑顔もアイドルなみ。 今後どういった路線に行くのかも興味ある。 漆原志優のテシーは、 あくまで私が観るかぎり、表情に気合が入っている。 特にダンスの時とか。 もちろん、みんな表情に力をいれて、 笑顔を保っているのは当然なのだけれど、 常に安定した表情を作っていたように私は思えました。 木元美月のジュライは、イメージピッタリ。 違和感無し。 腹話術の時のソロのナンバーもいいし、ダンスも綺麗。 舞台上の雰囲気からしかわかりませんが、 穏やかでほんのりしている感じ? アイドルルックスですし、人気でるでしょう。 森田真希のダフィは声質がかわいい。 大きな体をして、声が子供っぽくかわいいというのは、 アニーの伝統なのか? T(トゥモロー組) 吉井乃歌 アニー役。 彼女はまず瞳。 この印象が物凄く強い。 吸い込まれる瞳、 この目の使い方で、おそらく一緒に演じている大人の俳優、 女優たちも、より一層気合が入っていたことでしょう。 彼女の演技の威圧感が、観ているこちらにも伝わってくるほど。 ベテランの風格があって、大人でもドキドキ緊張していたかも。 その瞳の使い方で一番印象に残るのが、 冒頭の「歯をへし折られたいのかい?」 と意気込むシーン。 あの時のガンの飛ばし方が、只事ではなく怖い。 歴代トップクラスの怖さ。マジ半端ない。 吉井半端ないって。 子役なのに瞳の使い方、めっちゃドキマギするもん。 そんなんの出来ひんやん、普通。 そこまで言いたい気分。 演技もじつに丁寧で、落ち着いた雰囲気。 自分のペースを保つタイプ。 彼女なりの間、自分の世界を持っていて、 子供じみたアニーではなく、大人へと背伸びをしている感じ。 演技うんぬんよりも、仮に一人芝居をやらせたとして、 観客を自分へ集中させることができる気がします。 それだけの雰囲気をもっている。 今からアクの強い女優になる予感。 セリフ回しや発声部分は、 國分亜沙妃と比べるとまだまだな部分はある気がするけれど、 そこまで違和感はない。 歌唱力はひとつひとつゆっくり聞き比べたわけではないけれど、 互角じゃないかな〜? 歌い方、高音の伸ばし方等、微妙に違いはあるけれど、 私としては素晴らしい歌声の一言。 大満足のアニー。 ちなみに蛇足として、パンフレットの普段の写真ではなく、 アニーのストレートヘアでのカツラ、 ルックスが誰かに似ているな〜と思ったら、 思い出しました。 眼力の強い大橋のぞみだ。 野村里桜 モリー役。 幼いので、特に言うことはないのだけれど、 彼女は声が聞き取りやすかった。 西村実莉 ペパー役 この子はかなりうまいと思う。 じつに演技がしっかりしている怖いペパー。 何者だ?只者ではないでしょ? いきり立っている感が凄くいい。 それが無理しているものではなく、自然な演技だもの。 ジュライと言い争うところから、ウォーバックスの椅子に座るところまで。 それに加えて彼女の蹴り足。 ここも素晴らしい。 ハイキック力も凄い。 さらに言えば歌唱力もある。 フリードレスの短いソロだけれど。 このペパー役はかなり効きました。 ジョエル氏は好きでしょ、このペパー。 私もわかる(笑) 石川凛々子 テシー役。 フリードレスのソロのナンバーでの歌が印象的。 ぬいぐるみを持ってオドオドしている表情も良かった。 小栗万優子 ジュライ役。 ミュージカルアニー2011では、ペパー役。 ペパー役からジュライ役って、性格も雰囲気も違うし、 そこからオーディションで選ばれるってことは、相当でしょう? ちなみに前回は気になる部分があり、 私としても非常に興味深く拝見しました。 というか、かなりじっくり観ました。 表情付けは、常に安定。 ダンス、タップダンスのところも安定していて、 不安な部分は1ミリグラムもない。 ジュライ役ということもあり、柔らかな印象ではあるものの、 どちらかというと、言いたいことは言う、勝気なジュライでもある。 元々アイドル的ルックスなので、笑顔も可愛いし、観ていて華がある。 彼女は歌唱力もあって、モリーとの腹話術のところのソロも抜群。 めちゃくちゃ成長したでしょ? どれだけ努力をしてきたかがわかる。 自分の弱点を改善してきた女優は強いよ。 大谷奈央のダフィ役、彼女はセリフ回しが印象深い。 タップキッズ。 タップのことは詳しくないので印象度だけ。 鈴木純奈や森憩斗、見知った名前もある中で、 遠山莉央の表情が私は印象に残りました。 パンフレットの写真よりも、実物の方が素敵。 これは実際にその雰囲気を観た人でないとわからない。 三田村邦彦 オリバー・ウォーバックス役 テレビドラマ等で活躍していることから、演技は問題ないとして、 歌はどうなるかな〜?と気になりましたが杞憂に終わりました。 うまい!というわけではないけれど、 あれだけ歌えれば十分でしょう。 ミュージカル独特の歌声ではないけれど、 あそこまで歌ってくれれば私は十分。 そこまで違和感はありません。 ただ、おそらく今まであったウォーバックスのソロが無くなったのは、 演出上いらないから削ったのではなく、 主要な出番を減らしてでも、 三田村氏側から不必要と言われたのではないか?と妄想。 歌が得意でなければ、ソロは削るでしょう。 逆に得意であればそのままだったと思います。 過去のウォーバックス役のイメージがかなり強い為、 それを維持していくのか、彼なりにアレンジいくのか気になりましたが、 非常に自然なウォーバックスとなりました。 怖い、威圧感がある、という迫力あるウォーバックスではないものの、 理路整然とした穏やかでスマートなウォーバックスとなりました。 今までと違うウォーバックス像ですが、 全く違和感がありません。 長年アニーを観ている私としても、自然に受け入れることができました。 不思議。 ここはやはり、三田村邦彦の演劇経験でしょう。 羽ペンでアニーとフェンシングの真似をする前の、 机に向かってのジャンプ。 ここも軽やかで早い。 見た目よりも、意外と運動力ありますね。 浅香唯のミス・ハニガン役。 どういうハニガンを演じるのか、期待と不安がありました。 発声的に舞台声はまだまだ。 稽古は積んでいるとは思いますが。 迫力が無いのはつらい。 声が軽い。 おそらく、初めて観るアニーであれば、 このハニガンでも納得するとは思いますが、 何度も観劇している人にしてみると物足りない。 パワー不足の感も否めない。 ミュージカルナンバーは、元歌手ということはあり下手ではない。 ただ、ミュージカル特有の歌声ではなく、 「アイドル歌手 浅香唯」になる。というか戻る。 アイドル時代のあのままの歌い方。 これは好き嫌い別れるかも。 二回観劇すると、彼女のハニガンにも慣れましたが。 私としては、セリフの迫力がもっとあってほしかった。 生田智子 グレース・ファレル役。 演技ができるので、大きな違和感はありませんでした。 立ち振る舞いとか、もっと誇張してもいいかな? 凛とした姿はグレース役にピッタリなのだけれど。 過去のグレース役と比べて、歌唱力が劣るのは仕方のないところ。 そもそもそこに重点をおくのであれば、他の方を配役していたでしょうし。 長年観ている人にしてみると見劣りするけれど、 初めて観る人にとっては、そこまで気にならないかも。 ただ、これが王道のミュージカルの歌声だと思われてしまうと、 つらいところがありますが。 松田賢二 ルースター・ハニガン役。 2012年のミュージカルアニーに続いての2回目。 私的に好きな役者なので、出ているだけで私は満足。 今回は前回のマッジ夫妻の雰囲気を変えました。 どちらかというと、古畑任三郎チック。 「斬鬼さんカッコイイ」って、ずっと言われるのは仕方のないところ。 甲斐まり恵のリリー役。 そもそもどのくらい演技等ができる人なのか、 テレビドラマでしか知りませんでしたが、 私としては特に違和感のないリリーでした。 笑顔もかわいいし、色気もあるし、演技もダンスも十分。 おそらく、もっとダンスができるのであれば、 「NYC」のナンバーのところでも、 ニューヨーカーとして登場していたのだと思う。 そこがないのが残念かな? 春海四方 ルーズベルト大統領役。 新しい方なので、 どういうルーズベルト大統領になるのか気になりましたが、 今までの方と比べてもほとんど違和感のない大統領。 大きく変わり過ぎては困りますから。 歌も、逆にぎこちない歌い方の方が大統領らしくていい。 総括 今回は配役を大幅に変更したこともあり、 ミュージカルの印象よりも、 ストレートプレイの部分に強い印象を受けました。 また、演出も変更した部分が多く、目新しさがいっぱいで、 長年観ていた人にも新鮮な気持ちで楽しめる内容になっています。 なにより両アニーが本当に素晴らしく、 批評するのがおこがましくなるほどの出来ばえ。 大人の事情うんぬんで大変だったとは思うけれど、 そんなの子供には関係ない。 ガンガン舞台上で大人キャストと張り合ってほしい。 今の年齢でしかできない、澄んだ心のミュージカルだもの。 思いっきり楽しんでほしい。 さて、来年のアニーは新しい劇場になると思いますが、 青山劇場でなくなるとなると、賃貸料やら、照明代やら、 いろいろな資金が気になるところ。 裏事情を知っているわけでもなんでもないけれど、 子供の育成面ということもあって、 青山劇場であれば、政府援助とかあったのでしょか? もともと少し安めの設定だったりとか? それが無くなるとなると、当然のことながら使用料は増える。 それの行き着く先は、巡り巡ってチケット代へ。 お金の話しはしたくないけれど、観客動員等のことも考えると、 企業としては現実問題として考えざるをえない。 さて、どうなるか。 (敬称略) ミュージカルアニー過去の観劇感想 1993 1994 1995 1996 1997 2000クリスマスコンサート 2001 クリスマスコンサート 2002年1回目 2回目 東京千秋楽 クリスマスコンサート 2003 クリスマスコンサート 2004 クリスマスコンサート 2005 クリスマスコンサート 2006 クリスマスコンサート 2007 クリスマスコンサート 2008 クリスマスコンサート 2009 クリスマスコンサート 2010 クリスマスコンサート 2011 2012 2013 |