公演時期 | 2016年4月23日(土)→5月9日(日) |
会場 | 新国立劇場 中劇場 |
演出 | ジョエル・ビショッフ |
演出補 | 伊藤明子 |
翻訳・訳詞 | 瀬戸千也子/伊藤明子 |
振付 | ボビー吉野 |
音楽監督・編曲 | 神尾修 |
歌唱指導 | 青木さおり |
訳詞 | 片桐和子 |
タップ振付 | 藤井真梨子 |
美術デザイン | ピーター・ウルフ |
照明デザイン | 沢田祐二 |
舞台監督 | 長沼仁 |
ミュージカル『アニー』の原作者 | |
脚本 | トーマス・ミーハン |
作曲 | チャールズ・ストラウス |
作詞 | マーティン・チャーニン |
あらすじ |
1933年、ニューヨーク。 孤児院で暮らす、赤毛の少女アニー。 孤児院には父親や母親を亡くした子供たちが、たくさんいます。 ただ、アニーの両親だけは、まだわかりません。 『すぐに引き取りにまいります』という、 自分が赤ん坊の頃に書かれた両親の手紙・・・・・ その言葉を信じて、アニーは11年間支えにしてきました。 しかし、いつまでたっても両親は迎えに来てくれません。 ついに、アニーは孤児院を出る決心をします・・・・・ |
観劇感想 |
ジョエル氏、16年目の演出。 そして最後の演出。 あらすじ等は、ほぼ全く同じなので過去の観劇感想を参照。 私が観劇した日は平日だったのですが満席でビックリ。 このご時世この動員数は凄いと思う。 あいかわらずプログラムは2000円。 やむを得ない。 まず思ったことは、キャスティングが謎。 リリー役の野呂佳代は歌もダンスもおざなりで、 なぜそこでミュージカルナンバーになるのか? ダンスをするのか? 理解して踊っているのだろうか? 何か「ミュージカルアニー」に出演したという、 経歴、「箔」がつくためのリリー役に成り下がっている。 セリフも気持ちがこもっていない。 特にアニーに初めて会った時のセリフ、 「見て、私たちのアニーだよ」 このセリフはダメでしょ。 初めてわが子に会ったのに、あの感情の無さ。 (アニーの母親役を演技していることを差し引いても納得がいかない) そうでないなら逆に誇張した方がいい。あからさまに溺愛した方が。 なぜこの配役になったのか、全くの謎。 大人の世界というものか、時代への歩みよりというものか。 ※ちなみに日にちを改めて観劇しましたが、 この回よりも違和感が減りました。 そして、ハニガン役の遼河はるひ。 背も高く、特に気になるのか、背筋がピンと立っている立ち姿。 一般的な舞台であれば、猫背なんて御法度。 背筋をしっかり伸ばすことが大事ではある。 ただ、このハニガン役に関してはあまりの背筋の良さは気になった。 背筋がダメなら、せめて首を少し落とすとかしてほしかった。 なんと言うか、品の良さ、育ちの良さが出てしまっている。 その品の良さはファレルだもの。 ハニガンの過去の生活の成長過程において、養ってきたものとは思えない。 (劇中、落ちぶれたというセリフもあることから、 一時期は裕福で家庭環境も良く、しつけをされていたのかもしれないが) 家庭環境の良いお嬢様ファレル、 その真逆の生活を送ってきたハニガン、 その対比としての雰囲気が、背筋を含め立ち振る舞いが似過ぎるのは違和感。 背の高さもあってバンドルズより高いので、 恋愛っぽい会話もイマイチに思えてしまう。 それから彼女は美人すぎる。 ハニガンの汚さが表情ににじみ出ていない。 よく清楚で美人な女優が「ハニガン役をやってみたい」ということを聞く。 女優としていろんな役をこなしたいというのは当然のこと。 ただ、現実問題、美人すぎると舞台の演技的には違和感を感じてしまう。 だからこそ演出家も配役に苦労する。 元宝塚。 歌も、演技も、ダンスも、セリフ回しもいい。 ただ、私としては、彼女の品の良さがハニガンから感じ取ってしまい、 違和感を感じました。 本当の性格を知るよしもないけれど、 パッと見の第一印象でのドス黒さを感じない。 ちょっと対比が変だけれど、 私が好きな海外ドラマの「Glee」で、 スー先生を演じているのがジェーン・リンチ。 彼女がハニガン役を演じていますが、 見た目のインパクトだけで怖い。 こんな孤児院、大人の私でも行きたくない。 そういう印象もハニガンには必要だと思う。 遼河はるひは、何か「良い人」オーラが見えてしまう。 毎年毎年、舞台前のオーバーチェアは微妙にアレンジをしています。 今回は、トランペットなのかなんなのかわかりませんが、 吹奏楽の部分がメインだと思います。 これが申し訳ないのですが、違和感ありました。 オーケストラに私は全く詳しくないので、これが正常であれば仕方ありません。 ただ、素人の私の耳には違和感がありました。 大統領府での政府要人の発言で、 「国民が税金を払えば、国も潤う」 みたいなセリフがありますが、最近だとパナマ文書が公開され、 税金対策で高所得者、会社が裏でペーパーカンパニーを作って、 国の税金逃れをしているという報道をみると、せつなくなります。 私的な印象として、タップキッズの男子もいい。 何か凄くキビキビ動いている。 完全にミュージカルとは別件だが、 プログラムの後ろの広告を見ると、 ふりかけをご飯にかけて子供たちが食べている。 それはわかる。 ただ、今の時代、お茶漬けも子供たちと一緒に食べるんですね。 小さな子供たちと家族でお茶漬けか〜いろいろと深い。 パン食が多い昨今、お米を食べることを推奨するのは良いこと。 気になった役者は・・・ T(トゥモロー組) 池田葵 アニー役 すでにメイキングを見ていましたが、私の予想通りのアニーで、 しかも私の好きなタイプのアニーなので非常に素晴らしかったです。 優しく、ほんわかした感じのアニー。 演技的には富田麻帆で、ルックスは武田めぐみ。 表情付けも素晴らしく、セリフ回しも全く問題無し。 ただ、おそらく頭の回転が早いせいかセリフが先行することもある。 「こういう言い回しで喋ろう」と思っていると、 そのセリフが突然早口になる。そこに注意かな? 歌唱力に関しては、子役としては十分なレベル。 私は文句ないほど素晴らしいと思う。 表情付けに関しては、 特に「ハードノックライフ」のナンバーは素晴らしかった。 じつはひとつ特に気になったことがある。 調子が悪かったのかもしれないので断定はできないが、 あくまで私の見た目。 体の動きが非常に気になる。 特に後半。 体全体が重い。 元々なら仕方がないけれど。 それで「ハッ!」と思い出したのだけれど、 彼女は歩き方が独特。 それがメイキングで見えていた。 そのまんまの歩き方。 少し体が斜めになってドタバタ走る。 私のイメージとしてはあまり良くなかった。 体調不良であるとしたら申し訳ない。 それも加味されたのかどうかわからないが、 「I Don't Need Anything But You」のミュージカルナンバー。 かなりグタグタでチグハグ。 テンポもおかしい。 さらにアクシデントも発生。 アニーとウォーバックスが、机の上で、ペンでフェンシングの真似をして、 アニーが電話の受話器でフェイントを入れるところ。 ここが完全にスタッフのミスなのだが、電話に受話器が置かれていなかった。 アニーがとっさに取ることができず、タイミングが大きくずれてしまった。 これに動揺したのか、二人の感情、動き、歌も不安になっていく。 コメディチックなミュージカルナンバーなのに、面白さが半減してしまった。 ここはすごく残念。 池下リリコ モリー役。 これといって大きな印象は残らないが無難な感じ。 アニーが手紙を読んでいるところは、凄くペンダントをにぎにぎしていた。 田中樹音 ケイト役 まだ落ち着きがなく、瞳の挙動も怪しかった。 荒削りな感じなので、今後修正してくると思う。 若いんだからこれから。 池田遙花 テシー役 眉毛が下がった時の困った表情が面白い女の子。 この困ってている表情がなんとも言えずかわいい。 正直なところ大抜擢だと思う。 全体的なバランスとして、それほどうまくはない。 現時点では未完の大器ではないか、と言ったところ(永遠に未完だと困るが) 独特な個性があって、面白い存在ではある。 ただ、非常に残念なのが「You're Never Fully Dressed Without A Smile 」 近年テシーで、歌が下手ってのはあまり聞いたことがない。 毎年安定。テシー=歌唱力がある子という認識すらあって、 当たり前の話しすぎて、私もスルーするぐらい。 それがまさかの個性的な歌唱力(調子が悪かったら申し訳ない) 二幕は、アニー、ウォーバックスたちのラジオの場面から始まり、孤児院へ。 その冒頭がこれ。 一番盛り上げる必要がある場面なのに、この歌は気になるな〜 おそらく今回のオーディション、テシー役に関しては歌ではなく、 彼女の演技的な雰囲気とか個性で選んだのかもしれない。 それだけ彼女の個性が魅力的であったとうこと、だと私は理解する。 表情の変化とか、たしかに面白いもの。 正直なところ、この出だしの部分では私も座席でズッコケました。 なんとかペパーで持ち直したけれど、 全体的にはグタグタなナンバーになってしまったことは否めない。 アニーズのチームの「和」が大丈夫なのかな? と私が心配になってしまうほど。 まっ、それもまた個性なので改善、修正していけばいい。 特に長期の公演なので、それを修正するのが女優だもの。 もしかしたら、歌唱力があるテシー役の候補がいたかもしれないけれど、 その歌唱力よりも、 演出家は彼女の個性的な雰囲気、演技に魅力を感じたということ。 それに自信をもってやればいい。 さらに公演中に修正してきたら、他を見返せるもの。 井福杏寿 ペパー役 きつい性格。 喋りはしっかりしていて聞き取りやすい。 歌唱力もありながら、ダンスもできる。 体も柔らかく、後ろに足を大きく上げていた。 なかなかやるね。 山口のん ジュライ役 今回のアニーズの中でナンバーワンと言いたくなるぐらい目立つ。 パッと見のルックスだけでなく、目力もあるし、喋りもいい。 表情も知的。 それでいて熱いものを持っていて、あのペパーと張り合う度量を兼ね備える。 歌もよく頑張っているし、ダンスの部分では特にタップの時の雰囲気が良い。 この時の笑顔も超抜群。 今後の活躍が非常に興味深い。 舞台を客観的に観たい私ですら、推したい気持ちに駆り立てる。 T組は、彼女がかなりキーポイント。 阿部日菜子 ダフィ役 今までのダフィ役の子のように、長身でありながら声がかわいい。 2人を抱えての回転ダンスはまずまずかな? 斎藤日南 ストリートチャイルド役 印象無く、申し訳ない。 S(スマイル組) 河内桃子 アニー役。 ルックス的には水野貴以に似ている。 派手な印象はなく、どこにでもいる自然な雰囲気のアニー。 歌唱力は普通だと思う。 荒々しさとは無縁で、無難なアニー。 ややお嬢様的なタイプかな? テンションも低め。 セリフ回しは特に誇張することもないけれど、若干、早いかな? それが舞台進行、ペースが早く感じる時もある。 気のせいかもしれませんが。 それからセリフに重みが無い。 素なのか、天然なのかわかりませんが、 意外と淡白でサバサバ受け答えしている印象。 演技演技しておらず誇張していないぶん、 自然に淡白なセリフ回しなのかもしれない。 桑原愛佳 モリー役。 近年には無い、まれに見る、素晴らしいモリー。 畑すみれのモリーも面白かったのだけれど、私的にはそれをも上回る。 富田麻帆、皆本麻帆のモリーに匹敵・・・かも。 まずルックスがかわいい。 表情もじつに豊か。 アニーが手紙を読んでいる時、ペンダントをにぎにぎしながら、 アニーを覗き込むように見つめる目の動きもいい。 特に「フリードレス」でダフィに抱えられて回される時。 スピードもさることながら、回転が真横になる。 つまりは平行。普通に客席から見たら棒線になるぐらい。 私のたとえが変で申し訳ないが、 「キン肉マン」に出てくる悪魔将軍というキャラの必殺技が「地獄の断頭台」 それを発動する過程において、 相手をダブルアームスープレックス状態にしておいて円のように高速回転する。 「サンシャインのパワー」 それを思い起こすほど。 このままいくと「ザ・忍者のテクニック」が発動され、 縦に持ち上げられてしまうのでは?と思ってしまう。 これはダフィの力だけではなく、桑原愛佳の身体能力の高さも影響している。 喋り方もかわいいし、ダンスもしっかりしている。 さらには相手の足につかまってクルクル回転するところも素晴らしい。 スマイル組はモリーの力による部分が大きい。 モリーを見ているとめちゃくちゃ楽しい。 あくまで私的な考えだと、凄くプロ意識を感じる。 年齢は低いのだけれど、女優としての「やる気」が伝わってくる。 私が事務所の社長だったら、すぐに引き抜きたいレベル。 無論、子役レベルの上手さではあるけれど、 とりあえず成長性重視で引き抜きたい。 そう思える逸材。 竹田雛乃 ケイト役 おめめパッチリでかわいいのだけれど、 まだ緊張していて、時々鉄仮面になる時がある。 凄くもったいない。 笑顔が無いわけじゃないけれど、まだまだ物足りない。 松山結香 テシー役 表情の変化は楽しい。 「You're Never Fully Dressed Without A Smile 」の出だしもまずまず。 高橋舞音 ペパー役 意外と背が低いペパー。 見た感じでのムカツク嫌なペパーではなく、 優しい雰囲気が感じられるタイプ。 歌唱力は高いと思う。 河賀陽菜 ジュライ役 タップの時の笑顔がかわいい。 T組ジュライと比べると、より優しいタイプのジュライ。 歌は腹話術しながらだけど、まずまずかな? 影山実奈 ダフィ役 ダフィでの印象は薄かった。申し訳ない。 ただ、プログラムでも書いているとおり、 フリドのタイタニック(あ〜そういうんですね。初めて知った) モリーをぶん回すところは凄かった。 影山実奈が悪魔将軍に思えるほどの高速回転。 あのパワーなら、モリーを逆立ちさせて回せますね。 たしかにそこは見どころ満点でした。 これだけで、影山実奈という名前が知れ渡った。 五十嵐陽菜 ストリートチャイルド役。 けっこう小さい。 そのぐらいしか印象がなく、申し訳ない。 三田村邦彦 オリバー・ウォーバックス役 前回、前々回と比べてそれほど特に大きく変わったこともない。 今さらながらで申し訳ないが、 「Something Was Missing」のナンバーで、 「お前の他には・・・」って歌うんですね。 前は「君の他には・・・」って歌っていた気がする。 別件ですが、ヴァイオニストの高嶋ちさ子が、 旦那に「お前」って言われてぶち切れたことを思い出しました。 「お前」という表現は、私も好きではない。 木村花代 グレース・ファレル役。 スタイル抜群で、華のある美しさ。 大満足としか言いようがない。 このファレル、嫌いな人がいるのかと。 笑顔が素敵って、まさにこの人のこと。 大口兼悟 ルースター・ハニガン役。 初めて観劇しましたが、ややセリフ先行かな? 慣れればたいしたことはない。 アニーの父親に化けた時の言葉のイントネーションが、 いつものパターンとは違うため新鮮。 園岡新太郎 ルーズベルト大統領役。 どこかで観たことあるな〜と思いましたら、 銀河英雄伝説でブラウンシュヴァイク公の方でしたか。 銀英伝の中での悪役としては一番おいしい役。 ルーズベルト大統領役も全く違和感無し。 大統領府でのやりとりは、コメディチックで楽しかった。 岩瀬光世 コニーボイラン役。 申し訳ない。プログラムで初めて気づきました。 過去に、アルゴ、アニーにも出演。 何がいいって、スピード。体が軽い。 私が観た回は調子が良かったのか、物凄くスピーディーでした。 普段、私は時計もせず、できるだけ軽装。 自分自身が素早く動けることを心がけている。 スピードは重要。 だからこそ、同じようにスピーディーに動く彼女を見ると親近感がわく。 ボイランシスターズではまさかの低音担当。 これは意外でした。相当頑張ったと思う。 ちなみにこの3人の動きのシンクロ率は半端なかった。 左右に顔を向けるところとかバッチシ。 止めるところは止める。静と動、緩急が素晴らしい。 私的にウォーバックス邸の時は、 岩瀬の動きが気になってしまうほど物凄く良かった。 長江愛実 タップのスター役 知的な美人で、見た感じの雰囲気だと聡明感、透明感を感じる。 タップの演出が、後半が幻想的な演出に変わりました。 おそらく、彼女をイメージしての演出だと思います。 大人向けで、色っぽい感じ。 そういう人の為の要素かな?他の舞台でもよくある。 子供向けのテレビ番組なのに、大人向けを入れる感じ。 今回に限っては、あまり好きではない。 総括 T(トゥモロー組)は、 特に後半のミュージカルナンバーのタイミングがずれてしまい、 それがひきづり、少し残念でした。 アニーの演技、歌は素晴らしかったんですけど。 ジュライが救いかな? 対してS(スマイル組)は、 アニーがけっこう淡白。 それを補うのがモリーの桑原愛佳。 これがかなり効いて持ち直した感じ。 配役で気になる部分はあるのだけれど、 それが「大人の社会」というのを割り切って見る。 大人としての配慮と妥協。 (敬称略) ミュージカルアニー過去の観劇感想 1993 1994 1995 1996 1997 2000クリスマスコンサート 2001 クリスマスコンサート 2002年1回目 2回目 東京千秋楽 クリスマスコンサート 2003 クリスマスコンサート 2004 クリスマスコンサート 2005 クリスマスコンサート 2006 クリスマスコンサート 2007 クリスマスコンサート 2008 クリスマスコンサート 2009 クリスマスコンサート 2010 クリスマスコンサート 2011 2012 2013 2014 2015 |
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