MEMORY班
公演時期 |
2017/12/16 →21 |
会場 |
六行会ホール |
企画 |
小川里菜、住川京香、福田千里 |
演出 |
平戸麻衣 |
あらすじ
キャンベルはトゥルーマン高校のチアリーディング・スクワッドのキャプテン。
しかし、彼女は突然ジャクソン高校に転入することになる。
チアに青春をかけるキャンベルは、
ヒップホップクルーのクイーン、ダニエルを味方につけスクワッドを作ろうとするが?
(公式サイトより引用)
観劇感想
「Seiren Musical Project」は
「FAME」、
「シンデレラストーリー」、
「42nd Street」、
「LITTLE WOMEN ~若草物語~」、
『The Wedding Singer』続いて、今回で6回目の観劇。
過去にも記載していますが、本当にレベルの高い舞台。
MEMORY班とGLORY班の二組ありますが、
MEMORY班のみの観劇。
パンフレット
まず思ったのは、男性の笑顔。
歯を見せている笑顔。
女性は簡単かもしれないけれど、
男性は本当に苦手。
勇気がいる。
私なんてまずしませんから。
それを考えると、歯を見せての笑顔の写真は素直に素敵だと思う。
基本、ダンスがメインの舞台
物語的な流れとして、
トゥルーマン高校のチアリーディング・スクワッドのキャプテンだったキャンベルが、
荒れたジャクソン高校へ突然の編入。
その高校にはスクワッドがなく、ヒップホップクルーが中心。
トゥルーマン高校でお荷物キャラであったブリジットを加え、
ヒップホップリーダーであるダニエルとの確執を越え、
なんとか共に大会へ進んでいくことに・・・
こんな感じですね。
チア、ヒップホップ、
メインキャストだけでなく、アンサンブルを含め全員が鍛えられている。
これは間違いない。
というか、ひとりだけ鍛えてないとかありえないでしょ?
恥ずかしいでしょ?
ひとりひとりの気合が伝わる。
熱意、パッションが伝わってくる。
どこぞの話しではありませんが、
口パクなのに、ダンスで倒れるなんてお話しならない。
まず第一に筋肉が違う。
ひと目みればわかる。
上腕筋も、腹筋も。他もろもろ。
明らかに鍛えるもの。
体が細いのに激しいダンス、さらに歌なんて、よほどの人でないと無理。
筋肉があってこその歌とダンスのが両立と言える。
テレビだけものと、舞台として生で受け取るものの圧倒的な違いがここにある。
オープニングでの個々のキャラクター紹介もいい。
ちょっとラップ調なので、聞き取りづらい部分もありましたが。
個々のミュージカルナンバーも凄く多い。
主役のキャンベルは当然として、メインキャストのソロナンバーも多く、
役者のモチベーションも高まっていたことでしょう。
また、ダンスメインな舞台でもあるので、
歌が得意な人、ダンスが得意な人、それぞれに見せ場があるのも嬉しいところ。
ミュージカルナンバーが多いこともあり、進行はスムーズに進んでいく。
ちょっとした停滞、飽きる部分等もありませんでした。
舞台観劇に集中できます。
ひとつだけ気になるとしたら、
ヒップホップ系のダンスは見栄えの派手さが強く印象に残るため、
こういうのやらせておけば観客にインパクトを与えるだろう、
という安直な考えだけは気をつけたいところ。
というのも、劇団SETも、若手はだいたいこういうヒップホップ系なダンスがメイン。
派手さはあるんですけどね。
何かやらされている感もある(汗)
ここは観客の年齢層が高いので、若い人のダンスを見せたいというのもあるとは思いますが。
この六行会ホール照明の特殊性かはわかりませんが、
照明は抜群に素晴らしい。
そこまで詳しくないけれど、
ある程度の照明のテンプレートが設定されているのかな?
じつに鮮やかで、ソロのナンバーの照明の当たりも素晴らしかった。
こんなに素敵な照明だと、舞台に立っている人も高揚感増すでしょうね。
小劇団の舞台で照明なんて、とても対抗できない。
白人文化、黒人文化という差別的な部分も見え隠れしています。
ダニエルのバイトの部分とかがそうでしょうね。
白人が登場して難癖、嫌味を言うあたりは。
外見上の黒人にはしていないため、わかりづらいとは思うけれど、
あえてそうしなかったのはわかります。
主役キャンベル役の飯嶋あやめのミュージカルナンバーが多く、
当然セリフも多いので声質、のどの調子が気になるところですが、
そういった違和感は感じませんでした。
のどのケアは全く問題無し。
物語として仕方ありませんが、あれだけ反発していたダニエルが、
けっこう意外と簡単にキャンベルに心を開き、
他のメンバーもヒップホップからチアに参加してしまうのは、ご愛嬌かな?
物語のテンポが良く、私的にはとてもスムーズに観ることができました。
全く飽きません。
この点は、ミュージカルナンバーが多数、個性的なキャラクターが際立つことから、
楽しみながら観られた理由のひとつかも。
ほんとに個性豊かで、キャラクターが楽しかった。
スカイラー、カイラーのコンビは、
トゥルーマン高校のチアを掌握・・・というわけでもなく、
なぁなぁとして生きていく姿は逆に今風でいい。
ド新人で、はかなげに登場したエヴァ。
失敗、失敗の繰り返しの中でも、その未完の輝きを感じ、
キャンベルが優しくよりそってあげる・・・が、それが逆に裏目に出るのは面白い。
エヴァ役の端正なルックスの伊藤友恵の顔つきが、
極端に変わるのは非常に面白かった。
ここの意外性はとてもいい。
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気になった役者は
飯嶋あやめ キャンベル役
彼女とは全く知り合いではないのだけれど、なぜか観劇している(笑)
『GANG2005』ではポピーか。
いつから観ているのかと。
これはさすがにほとんど覚えていませんが。
「ドラゴンファンタジー」(2006年)のスワン役からの印象が強い。
ここからけっこう観てますね。
一番最近だと
Seiren Musical Project「42nd Street」のアニー役。
ま~可愛かった。
ただ、この時の印象は子役あがりだな~というのがとても印象に残っています。
大人の本格的な女優ではない。
そうは言っても、正直、子役で演劇をやめて普通の会社員になる人もいるし、
そのまま演劇を続ける人もいる。
少なくとも飯嶋あやめはまだ舞台を続けている。
だからこその成長を今回楽しみにしていました。
2014年とは明らかに違う。
大人の声質になった。雰囲気は全然大人。
すぐに違うのがわかるレベル。
今回のキャンベルという役。
私的には飯嶋あやめのイメージにピッタリ。
無論、彼女の本当の性格を知るよしもありませんが、
雰囲気としては合っている。
基本真面目、純粋、一本筋がとおっている。
純粋がゆえに、他人ことを気にせず知らずに傷つけてしまうことも。
Seirenだと、過去に北川理恵や佐藤まりあを観ているので、
ここと比較してしまうのは本当に申し訳ない。
あの二人、マジでヤバイレベルですから。
二人と比べると、声の張り、歌、セリフ回しは物足りない。
セリフの軽さ、歌の重厚感の無さ、これは率直に感じました。
ただ、観ているとそれがだんだん彼女の個性になっていく。
観ている私も、「人は人、これが飯嶋あやめの個性なんだ」というのがわかってくる。
なにより彼女の個性は「華」これを持っているもの。
そしてもうひとつ、ふわっとした、ほんわかした「優しさと笑顔」がある。
だからずっと観ていられる。
楽しい。
飯嶋あやめは北川理恵でも佐藤まりあでもないんだから、
自分の個を磨けばいい、なんて偉そうに思ったりもする(笑)
ソロのミュージカルナンバーが多く、声のいたわりは重要。
大変だったと思う。
その中で、ミュージカルナンバーはわからないけれど、「せつな」の言葉が出てくるナンバー。
ここのソロが一番素敵だった。
飯嶋あやめの魅力が全開だった。
今回の舞台はダンスがメインということで、
彼女自身もチアやヒップホップやロボットダンス等、
相当鍛えているのがわかる。
それで演技も歌もですから。
体が悲鳴をあげているだろうことは間違いない。
それでも彼女の笑顔と真っ直ぐな瞳は観客を引きつける。
そこは凄い。
あえて駄目だしを言うのであれば、恋愛の部分かな?
最初の彼氏も、二番目の彼氏も、そんなに恋愛っぽいイメージはない。
そこまで好きなのかな~?まっ、バカップルみたいなノリか。
けっこう軽い。
それでもキスシーンは頑張っていると思う。
普通の人だと、ど~でもないシーンだが、
飯嶋あやめがやるとなると、私としては印象度は高くなる。
何より、この若さあふれる、熱意ある舞台の主役。
彼女だけでなく、全員が作り上げた舞台であることは間違いないのだけれど、
何か、現時点で彼女の集大成を観た気がする。
仮にここから10年、20年先に演劇を続けていたとしても、
この年齢でできる輝きは今この瞬間だけ。
それに立ち会えて、観ることができて、私はとても幸せな気分になる。
頼もしくなったものだ。
子役当時はマスコットキャラ的存在だった。
それが今はみんなを引っ張っている。
彼女とは知り合いでもなんでもないけれど、
子役から、そして大学生への成長過程を見ることとなった。
変な言い方だが、プロレスの歴史、抗争を観ている一連の流れ、
それと似た感覚でもある。
「幸せ」「幸福」「喜び」どういう表現が正しいかはわからないが、
自分の人生において、ささやかな満足感を得た瞬間だと思う。
それが脳内麻薬「ドーパミン」をも引き起こす。
おそらくこれは、知人、友人、家族、親戚の方が舞台を観た時も、
似たような感覚を引き起こすであろう現象かもしれない。
ささやかな「満足」だけれど、とても幸せな気分になる。
それが積み重なって、自分の人生の有意義な思い出のひとつになるのかな。
宗像美伶 ブリジット役
3枚目キャラで面白い。
飯嶋あやめキャンベルとの組み合わせもいい。
このキャラは小芝居が必要ですからね。
観客の目を引く、奇異な部分も重要。
背が低い、という部分をうまく加味して3枚目としてキャラを演じてくれました。
スクワッドをやりたいけれど、常に着ぐるみの人・・・
という残念な心の胸の内がわかる演技もいい。
セリフ回しや、歌もなかなか。
ドタドタしてる、キャンベルとの対比として重要なキャラを演じてくれました。
藤原良 スティーヴン役
ま~ナンバーワンのイケメン役だから大変だ。
セリフ回しはこれからだな。
伊藤友惠 エヴァ役
ルックスはとしても可愛らしい。気品ある雰囲気もいい。
最初はおどおどして、おしとやかで地味、本当にダメダメな感じ。
両足もX脚でガタガタ震えている。
ド素人新人という部分をよくかもしだしていた。
それがじょじょに変わっていき、ついには高圧的な態度、
じつはもとからあった上から目線の性格に変わっていくのが面白い。
可愛らしいルックスなのに、悪代官、越後屋のような人相へと極端に変わるのもいい。
ただ、セリフ回しは残念なところ。
この部分はこれから。
声量があるのはわかるけれど、それに比例することなく、歌唱力はこれからの人。
ルックス重視の配役ではあるけれど、演技はまずまず頑張ってくれた。
蛇足ながら、けっこうジャンプ力はあると思う。
古屋明日華 スカイラー役
海外ドラマ『glee/グリー』のクインみたいなキャラかと思いきや、
じつのところ、そこまでリーダーに固執するわけでもなく、
マイペースに自分の存在感が認知していればOKなキャラ。
自分オンリー、『glee/グリー』のブリトニーっぽい。
だからこそ演じる個性が意外と難しかったと思う。
そこまでの派手さはないけれど、普通かな?
そこまで強くない。
歌はこれからかな~?
小水紗良 カイラー役
トゥルーマン高校のチアリーディング・スクワッドでは、
スカイラーの次、二番手役。
いつもニコニコ笑顔。
これって簡単そうだけど難しい。
すごく印象に残っています。
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小林優里 ダニエル役
飯嶋あやめキャンベルに対抗できるのは、この小林優里ダニエル。
間違いない。
基本、ダンスの人だと思う。
ヒップホップ系のダンスは半端ない。
ダンスレベルがどれだけ凄いのか、素人の私には全く持って検討もつかないが、
腹筋や筋肉、そしてそのダンスをみればいかに仕上がっているのかがわかる。
彼女はダンスだけでなく、基本ミュージカル的に全てのものについて安定している。
激しいダンスをしながらのソロナンバー。歌唱力も素晴らしい。
息切れしそうだけれど、そういったものはいっさい聞こえない。
演技もじつにしっかりしている。
クールで不良っぽさが残る斜めにかまえたダニエル役は好印象。
台詞回しも非常に巧妙だし、それを加味しての表情付けもいい。
いぶかしげな表情とか。
飯嶋あやめと小林優里の1対1のやりあいは、観客も集中できるできる。
特に舞台後半はこの二人がキモでしたから。
本当に見事。
海外ドラマをよく見る私としては、
こういうキャラはクールな黒人キャラの警察官でよくいるタイプ。
その印象が強い。
彼女がいると舞台が締まる。
はずせない。
舞台を作り上げる上でも、こういうキャラは必然となるな~
彼女のせいではないけれど、
キャンベルと敵対していたのに、すぐに仲良くなってしまうのが、
ご都合主義的なところが気にならないこともない。
まっ、これはダニエルのハートの部分が成せるものだと理解しておこう。
見た目はクールで冷たい人かと思いきや、じつは根っこの部分は超優しいというギャップ。
当たり役という言い方は役をせばめてしまうけれど、影があるクールなこの役は抜群でした。
杉田ゆめの ナウティカ役
ダニエルのダンスも凄いのだけれど、
もしかしたらダンスにかけては彼女が一番うまいのかもしれない(素人目線)
それだけものすごくインパクトがありました。
ただ歌はこれから。
ミュージカルナンバーもありましたが、やっぱり歌よりもダンスに目がいく。
望月澪七 ランダル役
メガネをかけた雰囲気は、声優の小野友樹、森山未来っぽい感じかな?
演技力も歌唱力もある。
キャンベルの最初の彼氏よりも、新しい彼氏であるランダル役になったのもうなずける。
地味で・・・という控えめな演技がとても好感をもてました。
飯嶋あやめも望月澪七となら、演技はやりやすかったでしょう。
心のどこかで感情移入しないといけませんから。
やはり演技力はないと。
根岸耀太朗 ラ・シエネガ役
予想以上に素晴らしい。
ゲイと言っていいのか、女装家と言っていいのか、なかなか言い方が難しい。
雰囲気的にはミッツ・マングローブ。
声質や喋り型もよく似ている。
研究したのかな?
セリフ回しもいいし、演技力もある。
ミュージカルナンバーも、歌唱力があるのでとても印象に残る。
このキャラはかなり出来ばえが良かったです。
仕上げてるな~という感じ。
アンサンブル
アンサンブル的には、 川上さやかが面白いところ。
表情の変化、瞳の動かし方、なかなか面白い。今後に注目
神林遥は本当はおでこ全開は苦手だったとは思うけれど(私なりの解釈)
印象に残りました。
ダンスは武石怜奈かな?
美形キャラも何人かいるのですが、名前と顔があまり一致できないので申し訳ない。
総括
演技的に個々の部分としてはまだまだなところはある。
台本の読み合わせがどのくらい行われたか、気にはなります。
だがしかし!
とにかく、若いパワーに圧倒される。
ヒップホップ系のダンスが得意な若者は多いので、
やりやすかったかもしれません。
ここでクラシックダンスとかだと、まだ違う感覚になりますから。
私の満足度は舞台構成の点においては、5点満点中の3.5。
今回は、長年見続けた飯嶋あやめの集大成(と勝手に思っている)と、
出演メンバーによる圧倒的な熱さが伝わってきたことで、プラス0.5の4点。
派手なダンスをすればいい、熱い舞台でないといけないのか?
という考え方もあるけれど、出来上がった舞台に難癖をつけるのは私事なので、
その点はご了承ください。
とにかく後半の盛り上がりは素晴らしかった。
ちなみにパンフレットに書かれていた「あなたがかけている、この一瞬は?」
私だと「45度のお風呂に入る時」ですね。
いきなりの45度はめちゃくちゃ熱いですが、それを通り越す快感があります。
(健康には良くないので、一般的には低い温度を推奨)
(敬称略)
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