満足度
公演時期 |
2017/3/24→26 |
会場 |
シアターグリーンBOX in BOX THEATER |
作・演出 |
犬石隆 |
あらすじ
アメリカの田舎町の劇団ボアベールでは、
春の公演「夏の夜の夢」に向けて稽古の真っ最中。
日本からの新入りの劇団員・サクラは過去の記憶を失っていたが、
劇団には日本で幼いころからの友人・アンナがいて、リーダーとして活躍していた。
さまざまな過去を持つ劇団員たち。
サクラは次第に記憶を取り戻し、
自分が記憶から消し去った、ある出来事を思い出す。
そして・・・
(公式サイトより引用)
観劇感想
ミュージカルではなく、ストレートプレイ。
ダンスも少し。
自分の頭の中でミュージカル系だと思っていたので、
ちょっと拍子抜け。
観劇感想泣かせ。
正直言って、感想が難しい。
まずそもそも最初の時点で「小山侑紀」本人の役。
その後、これから稽古をしようとする舞台「春の夜の夢」で、
サクラ役を演じることになる。
このサクラは劇団ボアベールに所属しているメンバーのひとり。
(ちなみにこの劇団は
「ミュージカル マリアと緑のプリンセス」に登場するもの)
ややこしいのだが、劇団ボアベールの次回公演が「夏の夜の夢」
そこで「小山侑紀」演じる「サクラ」は登場人物の「ヘレナ」を演じることになる。
等身大?の「小山侑紀」がいて、舞台の「サクラ」がいて、劇中劇の「ヘレナ」がいる。
舞台を観る見方としては難しい。
それはそれとして。
この劇団ボアベールの公演が「夏の夜の夢」
シェイクスピアの有名な作品。
(真夏の夜の夢とも言われることがある)
その劇中劇だけではなく、
新入り劇団員サクラの記憶がところどころ失われていることもあり、
そこもフラッシュバックのように、ボヤッ~と思い起こされる描写もある。
私、自慢するわけでもなんでもありませんが、
最初の時点で登場人物アンナは幽霊ではないか?と予想していました。
サクラ関係で自殺したのではないか?という疑いも。
ただ、予想していたとはいえ、どういう結末、終わりにするのか、心配な部分もありました。
そして、まさかの「夢落ち」
全部夢か~
ま~仕方ありません。
そのネタバレで舞台は一度進行が止まるのですが、
一応「夏の夜の夢」の舞台としては、全てを進行させ終幕します。
そして、再び現実?の「小山侑紀」へ。
今いるこの時代のこと、台本?真っ黒に塗りつぶされる?
過去の黒歴史みたいなことを言っているのかわからないけれど、
ちょっと複雑なテーマが入ります。
現代の生活、社会、環境、いろいろなことが述べられます。
ちょっと社会風刺。
それとも「小山侑紀」本人の心の揺れ動き?
あくまで私の憶測だけれど、ここの部分の脚本は、
「小山侑紀」本人と、演出である犬石隆先生との会話から生まれたものではないか?
なんて考えたりもします。
大まかな流れはあるけれど、基本は「小山侑紀」のストーリーとも言える。
ちなみに、私はハルカ役の岡田カレンも、幽霊かと思いました。
サクラが「こんな子いたっけ?」というセリフがあったこともあり、
「パック」役だからこそ、幽霊という設定もありですから。
ただ、こちらはハズレました。
劇中劇を演じるへたうま
さて、そもそもこの舞台の観劇感想が難しいことのひとつに、
劇団ボアベールに所属している役があり、
その役の子が「夏の夜の夢」の役を演じる、ということがあります。
つまりは、仮にその役があまり演技ができないメンバーだとしたら、
「夏の夜の夢」でも、その役をあえてうまく演じないという、演技が必要だからです。
言い方は変ですが、へたうま?という感じでしょうか?
たとえば、演技が下手な子の役だから、セリフも棒読み、みたいな。
ということで、観劇感想は凄く難しい。
単純に「夏の夜の夢」の舞台であれば、いろいろ感想を書けるのですが、
劇中劇での感想は難しい。
劇団ボアベールの「夏の夜の夢」の練習風景
決まっていた役が、いろいろな事情があり変わっていきます。
小さい女の子が親父役とか、演出家としてみると面白おかしく配役させたいですからね。
チャーリーと、ハルカの会話も不思議。
ハルカはチャーリーのことが好きだが、
なんとチャーリーには過去に亡くなった姉がいるとのこと。
しかも姉になりたいとまで言う。
LGBD関連を、ここに持ってくるのは新鮮。
サボテンを持っている、自閉症気味なチュンリー。
「真夏のシンデレラ館で」で、
たしか井上碧が演じていた手のひらを上にかざす、独特の子を思い出す。
別件ですが、最初に桜の木。
この時点で、私は
「放課後のトワイライトシュート」を思い出しました。
脚本、演出が犬石先生。
「聖奈知ってる?桜の木の下には、死んだ人がい~っぱい埋められてるんだって。だから桜って、こ~んなに綺麗に咲いてるんだって」
まだこのセリフ覚えていますから、私。
ミュージカルナンバーの「トワイライト・プリンセス」は、今考えると凄く深い。
若くして旅立ってしまった少女たち。
それとこのミュージカルナンバーが、凄く重なる。
「あなたに会えて少しだけど、強くなれた気がする。心ひらいて、逃げたりしないで、生きてく」
気になった役者は
前述していますが、現実としての本人の役があり、
舞台、劇団ボアベールで演じる役があり、その役で「夏の夜の夢」を演じています。
劇団の役の演技を経由しての「夏の夜の夢」の各役なので、
複雑な感想になることはご容赦ください。
小山侑紀 サクラ、ヘレナ役
2007年
「葉っぱのフレディ ~いのちの旅~」では主役のフレディ、
2008年
「葉っぱのフレディ ~いのちの旅~」メアリー役、
他に風のウェンディ役でも出演。
2015年
ミュージカル マリアと緑のプリンセスでは主役のマリア役、
子役としてはそうそうたる経歴。
本当の小山侑紀の性格を知っているわけでもないので、
舞台上で演じられる「小山侑紀」がそのままなのか、
演技上の「小山侑紀」なのかはわかりません。
あくまで舞台上の「小山侑紀」は物事を深く考える、
落ち着いた感じの女の子なのかな?
想像力豊かで、尖った部分とか、弾けた部分がない。
今どきだったら、スマホをガンガン活用すると思うのだけれど、それもない。
舞台をやっているのだけれど、どこか少しすれた、
時代の波にそれとなく流れていることを、自分なりに気にしている少女。
舞台としてはサクラ役、部分的な記憶喪失という役だけれど、
このサクラと「小山侑紀」との境目が難しい。
どっちも彼女のように思えてしまう。
どちらかというと、やや消極的な役柄とは思うけれど、大差は感じられませんでした。
劇中劇におけるヘレナ役。
「夏の夜の夢」におけるヘレナ役は、メインキャストで重要な役どころのひとつ。
自由奔放なパックもひとり芝居が多いけれど、このヘレナもひとり芝居が多い。
だからこそ、役者としての実力が試させられる。
ディミートリアスに一途な、気の強いヘレナ。
さすがに演技の実力、華も兼ね備えているので、彼女に集中できる。
ただ、私としては、もっと盲目的、狂気的な愛も欲しかった。
ディミートリアスにぶたれても、蹴られても、M的な感覚でそれを良い方向にとらえるヘレナ。
この部分がソフトな感じ。
とはいえ、今回の場合はサクラという役者がヘレナを演じているので、
それが「小山侑紀」の演技なのか?と言われると直結することはできない。
私的に
「夏の夜の夢」は、過去に何度か観劇していますが、
特に印象的なのは、妹川華。
このヘレナが凄過ぎた。彼女のひとり芝居には吸い込まれました。
印象度が強かったです。
高野妃加里 アンナ ハーミア役
主役、「小山侑紀」に対する相方的存在。
子役がほとんどの中、唯一の大人。
友人で対等なのだけれど、意味合いとしては、
サクラが光であって、アンナが影のような存在。
演技的にも安心して観られました。
岡田カレン ハルカ パック役
「夏の夜の夢」でパックがキーポイントなのは、衆知の事実。
演技的には普通かな~?
そもそも、ハルカがパックを演じているので、
両方を加味しないといけないのが難しい。
本来はもっと弾けていいと思うけれど、ハルカのパックなので、
こういった演技なのだ思う。
小貫菜々 ネリー 妖精役
背の高さに加えてのスレンダーの印象。これが一番強い。
神元心花 ドロシー ボトム→妖精
劇団ボアベールではドロシー役。
ボトムは、ロバの顔をした人間になるという、
けっこう美味しい役になるはずが、途中交代で妖精へ。
あくまで劇団ボアベールでの出来事。
ま~私でも、ボトムという親父キャラを、
一番小さくお茶目なドロシーにやらせたい気持ちにはなる。
でも、結局配役からはずれますが(笑)
神元心花は
「ミュージカル マリアと緑のプリンセス」でもドロシー役。
それをそのまま演じているのが興味深い。
お茶目で、素のような演技は面白い。
吉倉美月 ソフィー ティターニア
色気が必要なティターニアですが、私は頑張っていたと思う。
ロバ人間になったボトムとティターニアのかけあいも良かった。
清水那奈 エポ 妖精役
この子は、笑顔がいい。パンフレットの写真よりいい。
そこだけで申し訳ないが、印象には残りました。
総括
「小山侑紀」を追ったストーリー。
彼女の全編におけるサイドストーリーにも思える。
そもそもパンフレットにも記載されているように、
今を生きているこの現実と、舞台、さらには劇中劇、
それらを含めての「春の夜の夢」なのであろうか?
それはそれとして、劇団ボアベールでの「夏の夜の夢」としては、
素人っぽい雰囲気をかもしだしながら行われる舞台、という感じ?
立ち上げ公演、新人公演のようにも感じました。
(敬称略)