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真夏の夜の夢 LOVE2012 感想

満足度星星星半星空星
公演時期 2012年7月19日(土)~21日(土)
会場 ムーブ町屋ホール
原作 ウィリアム・シェイクスピア
制作総指揮・演出・振付 郡司行雄
音楽 玉麻尚一/片野真吾
脚本 風の男
制作 大木香枝

あらすじ

ハーミアは親の反対を押しきり、ライサンダーと駆け落ち。 そこへ、ハーミアの婚約者であるディミトリアス、 ディミトリアスに片思いをしているヘレナが現われる。 その様子を見た妖精王オベロンはヘレナの思いを成就させてやろうと、 妖精パックに恋の媚薬をとりに行かせるのだが・・・

感想

夢組のみの感想。 「真夏の夜の夢」の舞台は過去に2~3回見た覚えがあります。 テレビで放送されたものもあるかも。 話の流れはあらすじ通り。 そこに一般人のボトムと、妖精の女王タイテーニアの恋愛が加わります。 原作ではボトムはロバの化け物になるのですが、こちらは河童。 また、職人たちの劇中劇は「金色夜叉」 ちょっと日本向けに脚色されています。 全体的な内容としては、なかなか面白かったです。 初見と、何回か観た人では印象が違うかもしれません。 職人たちが出てくるところなんて、普通に考えると違和感ありありですから。 それを二幕で面白くする、という感じ。

これが特に効いているのが、 河童になったボトムとタイテーニアの面白おかしいミュージカルナンバー。 ここは素晴らしい。 ここだけに関しては、パックを上回るほどのボトムの美味しさ全開。 ボトム役として最高でしょ。 見ている方も思わず笑ってしまう。 一幕で違和感あったことも、 二幕開始時のこのミュージカルナンバーで全て解消します。 本当に楽しい。 一番好きかも。

この物語の肝心要の役と言えば、妖精パック。 主役ではないのだけれど、 パックがダメだと、全て舞台の流れに響くほどの大役。 それが私には痛いほどわかる。 ど~してもパック役に関しては厳しくなるので、申し訳ない。

私が観た回のパック役は、近藤愛澄。 演技力、表情付け、ダンス、歌唱力、そして声量。 申し分ない。 生意気なパックとして、十二分にこなしています。 ただひとつ、気になるのはセリフ回し。 何か物足りない。 もっと弾けても良かったかな? 表情付けがすごくうまいのに、セリフ回しが追いついていない感じ。 ここがとても惜しかった。 決して下手ではなく、十二分にうまい。 あくまで私が気になっただけ。

今回、この妖精パックの影ということで、 ローラという、小さなパック的な役があるのですが、 この役を演じた富田明里がひじょうに面白い。 セリフ回しだけであれば、近藤愛澄のパックよりもパックらしい。 もちろん、演技やダンス、 他の部分は圧倒的に近藤愛澄の方が上なのだけれど、 このセリフ回しはパックそのもので、富田明里の方がいい。 だからこその、ふたりでひとりの「妖精パック」ということも言えますが。 いずれは彼女単独でのパックも演じられるかもしれませんね。 私はとても素晴らしい逸材だと思う。

久々に郡司企画の舞台を拝見しましたが、 男性陣が見事。 私が観た回はライサンダーに小南竜平。 ディミトリアスに今井康揮。 二人ともかっこいいし、演技もできる。 特に小南竜平は歌唱力もあって、 ハーミア役の梨本明日香とのミュージカルナンバーは素晴らしかった。 ボトム役の瀧田蘭丸、クインズ役の石川昌照をはじめとした、 職人たちグループも、物語の流れとしては異質で、 難しい舞台土壌ではあるけれど、とてもよくやっていたと思う。 しかし、ボトム役は美味しい役でした。

ハーミア役には梨本明日香

彼女は美人。 演技もしっかりしているし、スラッとした佇まいと雰囲気は、 清楚なハーミアにピッタリ。 歌唱力、ダンス力もある。 特にライサンダー役の小南竜平とのミュージカルナンバーは、 本当に素晴らしかったです。 それから、ライサンダーとの恋。 恋愛。 本当に恋している・・・という雰囲気が、かもしだされています。 「恋愛してないのがバレバレ」 という演技が見えてしまうことも、他の舞台ではたまにあります。 ライサンダーの小南竜平とハーミアの梨本明日香には、 いつも厳しく見てしまう私の感想としても、ふたりの愛を感じました。 私が言うのもおこがましいですが。

髪の毛ボウボウ、ゴワゴワの野生的なヘレナ。 ディミトリアスに一心不乱に夢中なヘレナ。 彼女は登場シーンからして、女優オーラが全開。 ものすごく演技がうまいし、アニメ声っぽい感じではあるものの、 口調はハッキリ。 いったい誰? と、チラシを見たら妹川華。 至極納得。 ミュージカルアニー2005ではダフィ役、 葉っぱのフレディ2006ではアン役でした。 どうりでうまいはず。

ヘレナは舞台上でひとりでいるシーンが多く、 ある意味ひとり芝居。 観客を自分ひとりで受け止め、魅了しなければならない。 それを妹川華はやってしまう。 すばらしい。 彼女は独特のワールドがありますね。 ディミトリアスに一心不乱な部分とか、 パックのいたずらで、 ライサンダーとディミトリアスのふたりから求婚され、 ちょっと面白おかしく「フニャ~」みたいに照れるところとか、 表情は見ていて楽しい。 この舞台だと、パックやローラはもちろんコメディチックなのだけれど、 ヘレナもコメディに近い。

演技力もさることながら、歌唱力、ダンス力もある。 途中なんて、早着替えで、豹(?)にも変身していましたから。 他の人も久々に妹川華の演技を見たら驚くでしょう。 正直この舞台でピカ一だと思う。

それから地味にアンサンブルのダンスシーンが多い。 大日向裕実ともうひとり、名前がわからず申し訳ないが、 この二人がキーポイントだと思う。 ふたりとも筋肉質ですからね。 すぐにわかる。 ダンスの質が違う。 わかる人はすぐにわかる。 ハーミアの梨本明日香やヘレナの妹川華も、 アンサンブルでのダンスシーンが多いです。

あとは・・・出演者多いのですが、 しましま役の山口恋生がずっと笑顔で可愛かった。 このぐらいですかね? 演技うんぬんではなく、このぐらいの年齢であれば、 ずっと笑顔でいるって大切なこと。 ぶっきらぼうで歌っても、観客に伝わってきませんから。 そう考えると、よく笑顔でいたと思います。

総括

舞台の華やかさとして、衣装もすばらしい。 色がカラフルだし、トゲとか尻尾とかクモとか、 役の名前のわりに、各々の衣装が派手でカッコイイのも印象的でした。 ここはかなり力入ってます。 もともと「真夏の夜の夢」は、各パートごとにわかれるので、 稽古はしやすく、集中的にできる環境。 その中で異質的な存在の職人たちの部分も、 劇中劇である「金色夜叉」をよくやっていました。 流れ的に本当に難しいんですよね。

ライサンダー小南竜平とハーミア梨本明日香の恋愛感情、 妹川華の独特なヘレナワールド。 パック近藤愛澄をも上回りかねない、ローラ富田明里のセリフ回し。 部分部分にも見応えがあり、 私自身、新鮮な気持で舞台を観劇することができました。 やっぱり、男性陣がしっかりしていると舞台が締まります。

※敬称略
キャスト表