公演時期 | 2013年12月26日→29日 |
会場 | @ART THEATERかもめ座 |
作・演出 | 滝 一也 |
あらすじ |
森の奥深く、木々に溶け込むように建っている一軒の家。 ある夜、7人の少女が光に集まる虫のようにアリスの部屋に集まった。 (公式サイトより引用) |
観劇感想 |
まず思ったことは、 大人が演じるべき脚本をよく子供たちだけで演じきれたな〜ということ。 観客対象としても、子ども向けではありませんから。 ひとりひとりの個性、一人芝居、自分の力を観客に伝えるには、 相当な努力が必要。 エンターテイメントの舞台ではないので、相当なチャレンジ作品だと思います。 役者たちの意気込みは感じる。 オープニングであるオーバーチェアはありました。 ただ本編での音楽はほとんどなく、効果音のみ。 完全にセリフのみのストレートプレイ。 話しの流れ的には、 水滴の音、もしくは、何かの因果に導かれ、 7人の少女たちが森の中にたたずむとある家に集まっていく。 →家には、最近まで人が暮らしていた雰囲気が漂う。 →写真立てがあり、この家の住人らしき人物、アリスという名の少女。 →とある場所から、次々と本が見つかる。 →その本の内容は、まるで今の7人の出来事を案じているかのよう。 →謎めいた本は何章かにわかれており、とにかくいろいろと探すことに。 →そんな最中、外を探索していたガーネットが、獣の罠に引っ掛かり負傷。 しかも毒が塗られていた。 →シスターであるルナの機転で、薬草により何とか安静を保つ。 →とある小箱を見つけ、手さぐりで開けようとするシュリ。 →再びガーネットの痛みが再発。その時、シュリの手元には銃が・・・ こんな感じです。 なぜ?何のために7人が集まったのか? サスペンスかつ、ミステリーな雰囲気。 私的には、現実的なサスペンスの方が良かったのですが、 結果としてはSFでした。 未来の時間軸。 じつは全員、未来のアリスと何かしらの関係をもっていた、 というのは、SFとしては予定調和すぎる気がしないでもない。 ただ、「鍵」=「銃」という部分は良かった。 駆け引きが面白く、引き立ちます。 散々いろいろ言っておきながら、 SFでもなんでもなく、システィーナの自演でも面白かったと思う。 ここはみんなの夢の中で、銃を撃てばみんな目覚める・・・ と思っていたのに、普通に死んでしまう。 「あんたが撃てばいいっていったじゃん!」 「貴方のせいよ!」 なんて、争いがあっても良かった。 これはちょっと私のひねくれた意見。 真面目に分析してみると、 今行われている最初で最後のパーティーはループなのか? 銃で消えて、現実世界でも記憶は残ってうまく対応できるのだろうか? 結局のところ本当に覚えている保証は全くない。 システィーナもどうやらアリスの母親のようだが、じつはアリス本人でもあるよう。 どこかの部分でシンクロしたのだろうか? 母の体を借りて、アリスが発言している部分があるのかもしれない。 第○章という本を書き綴ったのも、じつは彼女自身かもしれない。 そもそも、そうなるとアリスの父親は誰なのか? それも謎である。 薬を飲んで自殺しようとしていたシスティーナ。 なぜ自殺をしようとしたのか? それが答えに通じるかもしれない。 この舞台、意外と男性が入ってこない。 誰かの父親の話しぐらい。 アリスの父親もキーワードのひとつで、 そこも謎。 アリスはどの時点(年齢)で、この現象、この空間を作り出そうと考えたのだろうか? ある程度の知能、知識レベルがないとできない。 20〜30歳ぐらい? 彼女の特殊な能力というのもは、 結局のところ具体的にはどういったものなのだろうか? 今回、7人のメンバーを合わせることによる、 最初で最後のパーティー。 それは彼女にとって最後の能力だったのではないだろうか? 生命を削り、最後の力でこの特殊能力を発現し、 7人のメンバーを誘導させ、この家に導き、 ここで起きる本屋小箱や罠等、様々な事柄、現象をイベントとして作り上げたのかもしれない。 とすると、ドア近くから最後の本が落ちてきたのは、 霊界?もしくは時空間の狭間でアリス自身が直接送られた「第八章」なのではないだろうか? なんて思います。 このパーティーの後の結果として、 いくつかの断片的な予知はできたとして、 何が起こるか全てのことはアリスにもわからなかったことでしょう。 最後の本の言葉、 「生きたい」 それはアリスの言葉なのだろうか? この場に留まることを選択したシスティーナの言葉なのだろうか? そしてそれは何を意味するのか? 中絶のことなのか、先天性のことなのかはわからない。 それをそのまま受け入れるのか、拒否するのか、 その判断が正しいのか、正しくないのかすら千差万別の意見。 銀河英雄伝説における「劣悪遺伝子排除法」のことを思い出しました。 違う時間軸にいたアリスが、 これほどまでに特殊な能力を引き起こすとなると、 そりゃ、軍は放ってはおけないですね。 ある意味正しい。 これが暴走したら、大変なことになる可能性すらある。 ただ、それを不憫に思ったルイージが彼女を連れ出して、 この家に匿うことにした、という気持ちも、もうひとつの考え方ではある。 ちなみに、写真がたくさん出てきての撮影者のくだりは、 私は途中で気づきました。 登場していない彼女だろうなと。 シュリが途中、銃を持ち出して発砲するシーンは気づきませんでした。 直前のシスターの独演会と思える告白シーンに目を奪われてしまいました。 この演出は正解。 気になった役者は・・・ ◇組 シュリ役の前田瀬奈は、「メリッサのゆりかご ジルの監獄」等にも出演していましたが、 私は印象に残っておらず、今回が初めてという意味合い。 けっこう目立つポジションながら、地味な印象。 まっ、もともとおとなしい役柄なので、そこまで印象づける必要もないけれど。 普通〜な感じかな? マルシア役の小林ひな実は有名どころ。 あいかわらず、雰囲気も喋り方もかわいい。 雰囲気も昔と比べても全く変わってない。 ドラゴンファンタジー2013ではダブルキャストで、どうしても観られなかったため、 ようやく観ることができ、率直に嬉しいかぎり。 役どころは、落ち着いてはかなげな雰囲気。 彼女にピッタリ。 このマルシアという女性の性格をよくとらえている。 ただ、非凡な才能をもつ彼女でさえ、 この舞台での一人芝居は厳しい。 この脚本で観客を引き込む芝居をするのには、相当な力がいる。 頑張ってますけどね。 シャルネ役の上之薗花奈。 あとから配役を確認したので、まさかこの役を上之薗花奈がやっていたことに驚き。 子役で長いこと演じていますが、ミュージカル 葉っぱのフレディ〜いのちの旅〜 2010で、 メアリー役が特に印象深い。 が、そのメアリー役の印象は全く無く、もう完全に大人の雰囲気。 さらに演技も上手くなっているし「いい女優になった」と素直に思います。 クセがあって、本人独特の小芝居染みた個性。 やや鼻につく演技かもしれませんが、 異彩を放っていて今回のシャルネ役はかなりいい。 颯爽たる異端という感じ。 斜にかまえて、格好をつける、違和感アリアリなところが逆にいい。 回りのメンバーが自然すぎるので、 特に一人芝居を演じるところはかなり強めに違和感が残ってしまうものの、 それはそれでいい。気にする必要はない。 目配りもじつにうまい。間の取り方、セリフ回し、発声、物凄く素晴らしい。 女性としての「艶」感も出てきて、ますます脂にのってきた感じ。 主演はもちろんつとまるだろうけれど、 彼女は脇役だと物凄く光るタイプ。 言い方変ですが、20代後半でも女優を続けていると、 円熟味が増してくる予感が今からします。 ルイージ役、佐藤里緒。 ちょっと古いですが、エターナルファンタジー演劇大賞 2006年では、 最優秀助演女優賞をとっています。 もともと彼女は瞳パッチリで、かわいらしい女の子のイメージ。 ただ、今回はかなり男っぽいキャラ。 がさつで、ニヒルで、大雑把。 かなり頑張っているのは認めますが、少女らしさがどうしてもかいま見えてしまう。 元々顔が小さく、瞳パッチリで小動物のように可愛らしいので、 男っぽい役柄は、観ている方からしてみると、ちょっと違和感ありました。 私個人の彼女のイメージが強いので、違和感が見えてしまって申し訳ない。 ガーネット役 吉原怜那 「メリッサのゆりかご ジルの監獄」でのマルコ役は印象に残っています。 今回の役はどちらかというと地味な役柄。 傷を負って、痛がるシーンが中心。 叫びや仕種で痛がる痛覚は、観客に伝わっていたと思います。 ルナ役、 藤井真世 一人芝居、独演会とも思えるシーンはなかなかの迫力。 彼女のイメージ的に、柔らかで穏やかで、まったりのほほんとした印象が強いのだけれど、 今回の役はそれとは全く違う役柄。 狂気染みた世界観、私は良かったと思う。 藤井真世の今までの役柄を全て観ているわけではないけれど、 こういう役、こんな演技もできるんだ、というのを見せつけてくれた。 シスターという役の時点で、単なるシスターではないだろうなと予想はしていましたが、 ここまで変化するとは予想外。 藤井真世の真骨頂だと思う。 システィーナ役、堤もえ ミュージカル「プリンセス・バレンタイン」2010年ではドロシー役でしたが、 あまり印象に残らず申し訳ない。 あら、かわいい。 ルックス抜群の美少女。 前半は大人しく無口なまま。黙っている演技。 こういった演技は、じつのところ難しい演技なのだけれど、 意外とよくやっています。印象深い。 喋りだしてからの、自分の意志、頭に響く声、 少し夢遊病患者にも似た部分も良く演じている。 ☆組 マルシア役 黒坂麻結 「メリッサのゆりかご ジルの監獄」でラーラ役でしたが、 物凄く印象に残っています。 この時も言っていますが、服部杏奈に雰囲気が良く似ている。 しかもさらに美人度が増しました。 目の配り方もひじょうにうまい。 演技やセリフ回しはまだまだこれからだけど、 「華」があるので、それを十分にカバーできる。 こじんまりして清楚で落ち着いていて、小林ひな美とはまた違ったマルシア役。 当時と比べても、非常に面白い女優に育ってきた印象。 シャルネ役、速見里菜 彼女は、子役出身ではあるけれど、ある意味もう大人。 いろんな役を演じているけれど、今回のシャルネのような役もできるのかという、 新発見の驚きが強い。 最近ですとドラゴンファンタジー2013ではフェンディ役をコメディッチックに演じていました。 その対比も面白い。 今回の役は、知的かつ、冷静に物事をとらえながら行動する女性。。 その雰囲気はまるで女性捜査官のうようにも思える。 全体的にもシャープになったし、色気もますます出てきて、 ひじょうに見応えありました。 やっぱうまいよ、速見里菜。 ルイージ役の小峰里緒 かなり独特な雰囲気。 彼女の特有の小芝居的な演技をしているのだけれど、 それが空回りしている感も否めない。 かなりの格好づけで、自分に酔うタイプの演技。 見え見えすぎるところは、私はちょっと引いてしまう。 感情移入して涙を流すまでするのはわかるのだけれど、 この組のメンバー全体のバランスとして、先行しすぎている。 今後はバランスでしょうね。 おそらく、もっと年齢が若ければ子役として逆に目立つのだけれど、 大人になって同じやり方だと通用しなくなる顕著な例。 今後は自分の個性をだしつつ、回りの空気を読む演技を期待。 ドラゴンファンタジー2013のピノ役なんて、私、絶賛してますから。 演技が下手ってわけじゃない。 今が一番化けやすい年頃。 ガーネット役、小堤優佳 初めて観ましたが、意外といい。 じつに真っ直ぐで、自然で、ストレートな女の子。 素朴な雰囲気がいい。 同じガーネット役の吉原怜那とは全くタイプが違う。 爽やかな清涼感をともなうルックス。 現時点で、毒気がな無いように思えるゆえんかもしれない。 演技はまだまだだけれど、その存在感は面白い。 ルナ役、村田実紗 この大人の脚本の中で、唯一狂気を演じられた女優。 ま〜彼女はうまい。 「ラブリーズ3〜きみの迷い道〜」やミュージカル 葉っぱのフレディ〜いのちの旅〜でも、 異彩を放っていましたが、今回も素晴らしい。 アリスに今の現状を訴えかける大独演会とも思えるシーン。 ここは圧巻。 彼女の独壇場でしょう。 瞳の強さもあるし、発声バッチリですし、セリフ回しもカツゼツも、言葉の重みも、 文句のつけようがない素晴らしさ。 その全てが重なり調和することで、観客の視線も彼女に釘付け。 まさに引き込まれる演技。 ダブルキャストである同じルナ役の藤井真世も抜群の演技力なのだけれど、 このルナ役に関しては村田実紗に私は心奪われた。 冷静かつあの狂気感をともなった独白は、 この舞台そのものを決定づける印象的なシーン。 システィーナ役、鹿目こころ 「メリッサのゆりかご ジルの監獄」ではイブ役で、かなり小さかった印象。 その時から背が伸びたという、当たり前な印象が強く申し訳ない。 彼女は目の配り方が独特。 これを良い方に活かしてほしいな。 全体的な演技はまだまだこれからだけれど、 後半のシスティーナが独白してくるシーンは、はかなげでいい。 総括 この舞台に限ったことではありませんが、 多少のセリフの噛みが気になります。 やっぱりテンポは止まりますから。 最近は大人の舞台を見ることが多い為だとは思いますが、 プロは完璧にこなす。 一字一句間違えないし、カツゼツも完璧。 なによりセリフ自体が擬音ととしてとらえられている舞台もあり、 そういった舞台だとセリフ自体が舞台のテンポそのものに繋がる。 子役に完璧さを求めることはないけれど、 やはり、本物の舞台女優を目指すのであればそういった部分も気をつけてほしい。 違う目的の為の通過点ととらえる人であっても、求めるレベルは高くあってほしい。 今回の舞台は完全に大人の脚本。 子供が演じることは、かなり難しかった。 作品の奥深い内容も、子供たちに本当に理解できていたのかも不明。 それを☆組の場合は、 ルナ役、村田実紗の迫力ある演技でカバーしている。 申し訳ないけれど、彼女がいるといないとでは大違い。 それだけ観客をひきつける役者がいないと、この脚本をいかすことは難しく思える。 あくまでチャレンジ精神あふれる舞台と言える。 ここから次につながっていくことでしょう。 (敬称略) |
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