青春バスケットボールミュージカル「FAB FIVE THE MUSICAL」〜2番目の気持ち〜

満足度
公演時期 2013年11月28日〜12月1日
会場 六行会ホール
プロデューサー 関野祐智
演出 菅野一人
音楽 桐ヶ谷ボビー/具島直子
振付 JASON/KELLY
ゲスト振付 HIDEBOH
脚本 齊気和明

あらすじ
全日本チームで天才と呼ばれた父親を持つ三崎歩。
同じチームで親友かつ幼なじみの新城空は、
神童と呼ばれるほどバスケットの腕が上達していた。
ある試合の最中、不甲斐ない内容に空はメンバーたちを批判し、
よりレベルの高い学校へと転校してしまう。
そのことにより、歩たちのバスケットチームもバラバラになってしまう。

観劇感想

一部ダブルキャストのようですが、
詳細がわからず、そのあたりは割愛いたします。
パンフレット、役名と写真を確認しながらチェックてきなかったのもので。

若い新進気鋭の男性がたくさんいる舞台を見るのは久しぶりかな?
子役系ミュージカルだと男子が少ないので、
成人男性の勢いあるパワーを観るのはとても新鮮。

物語の流れ的には、
とあるバスケットの試合後、不甲斐ない内容に空はメンバーたちを批判し、
よりレベルの高い学校へと転校。
→残った歩たちのバスケットチームは解散。荒くれた日々へ。
→なんとかバスケットチームを復活させようと、
歩に密かな思いを持つ恵海、歩の父の教え子であった高遠が奔走。
→そんなことも知らず、歩はにかほと出会い、心惹かれる・・・
→その矢先、高遠が死亡。
→バスケットのメンバーが再び集まってくる。
→チアはチアで、転校してきた左京楓に真剣さが足りないと酷評。
→こちらもバラバラになりそうになるが、なんとかまとまっていく。
→ついに空が転校したチームとのバスケ対決へ・・・

こんな感じです。

あくまでどちらかと言うとだけれど、演技とダンスがメインでしょうか?
歌唱力がある人もいるので、
けっこう区分けされているのかもしれません。
ヒップホップ系が多いので、
そちらのダンスが好きな人にはもってこいのミュージカルかも。

バスケットボールの試合のシーンも多い。
体力的にも、本当は疲れているでしょう。
そういえば、かつてSETでパジャマ・ワーカーズ ON LINEがありましたが、
この時はバスケットのシーンがかなり長く、
力を使い果たしてしまい、
後半の舞台がかなり大変だったこともありました。
舞台の途中でスポーツを入れるのは、本当に大変。
今回の舞台の年齢層は低いですからね。
そんなことは全くありません。

学校の教室でのシーン。
今の時代だと、本当はスマホ使いまくりでしょう。
他にもいろんな場面でスマホが登場しそうだけれど、
舞台でそれをやりすぎるのは、
物語の内容としてテンポが悪くなる恐れがありますから。

バスケットボールだけでなく、チアリーディングもメインのお話なので、
率直に言ってミニスカは嬉しい。
若い舞台ですし、色気があるのは集客力として重要。
制服もミニスカ。
しかしみんな足が細い。

そのチアリーディングも見応えありました。
どれだけ練習したことか。
キレキレのダンスシーン、
チアの話しですと、私の場合中野ブロンディーズを思い出してしまいますが。

物語の流れとして、途中でいきなり高遠が「死亡」するのにはビックリ。
最初、何事かと思いました。
「誰が死んだの?」って、私も数秒放心状態。
ぞくに言う、死亡フラグ、伏線、全くありませんでしたから。
唐突すぎるほど唐突。
これはこれでアリだとは思うけれど、
ネタフリとして「フラグ」があってもいいかな?とは思います。

たしか歩の姉と付き合ってたような感じですが、
姉の落胆とか悲しみは全く気づきませんでした。
演技をしてたのか、私が見過ごしただけか。

冒頭の、にかほと伶の病室のシーン。
この導入が過去のシーンなのか、
じつは死んでいたフラグとか、さらなる重要なシーンとか、
いろいろ想像したのですが、じつは病気ではあるけれど、
そこまで固執するシーンでもない。
なにより、このにかほの意味合いが難しい。
歩がバスケをもう一度しようとする「きっかけ」にはなるものの、
にかほ自身は歩のことが好きでも振られてしまう。
めっちゃ可哀相。
恵海にとられてしまいますから。
自分が元気づけてあげたのに。
それでもって、特に誰かとまた付き合うわけでもありません。
ひとりぼっち。
彼女のことを考えると、つれないな、と。

後半どんどんみんな彼女ができていくという、ザ・青春物語(笑)
他の舞台だと、残念な人もいるんですけどね。
ひとりだけ妹とのやりとりがいますけど。

特に網代鉄也に彼女ができたのは意外。
左京楓は鉄也のどこが好きになったのか、全くの謎。
接点もどこにあったのかと。

裏切ったり、怖い人がいたり、嫌な人がいたりと、
いろいろ反目することもあるのだけれど、
最後はまとまるストーリー。
性善説的な感じも拭いきれないが、
最後は明るい結末なので、良しとしましょう。
アメリカ的なノリ、ということで。

対決軸としては、相手のバスケチーム、ストリートバスケのチーム、
チアでは、左京楓との確執も。
出演者が多いこともあり、ちょっとしたピックアップ部分を作るためにも、
それぞれに小さなエピソードが散りばめてあります。
バスケという基本軸だけでなく、チアの流れもある。
チアも、バスケも、ヒップホップも、歌も見せたいですから。
風呂敷を広げ過ぎなかんも否めませんが、このぐらいはアリかな。

男性陣それぞれの個性はもうちょいほしいところ。
風祭隼人の秀才でありながら、
バスケもできる文武両道さは個性としてしっかりしていましたが、
その他の個性がもう少しほしい。
網代鉄也の怖さ、力強さ、ヤンキー系のところはもっとあっていいと思う。
鈴鹿陵平はかつては補欠で、空がいなくなってからのレギュラー。
気分的にそこまで軽い感じはしない。
体の線がやや細いぐらいでしょうか?
ここのキャラ設定はもう少しアクが強くてもいい。
神田一松は、背が高く、ちょっとのほほんとした感じでしたが、
妹とのからみがあって、じつのところ一番安心して観ていられる。
妹とのやりとりが、至極微笑ましいというのもありますが。

一番気になるのは、主役の三崎歩と、そのライバルである新城空。
この二人のキャラ設定が意外とかぶる。
ふたりとも同じタイプ。
いきがるところとか、言葉でぶつかりあうところとか、雰囲気とか。
ここは舞台映え、観客にもわかりやすく、極端に変えてもいいと思う。
歩はあのままでいいとして、空はもっと天才的に、
「今まで我慢していたが、やはりお前らと俺とではレベルが違う」
という、かなり上から目線の天才っぷりがいいと思う。
それでいて幼なじみであり、恵海にもじつは思いを寄せていた、という過去設定もいきる。

ひとりひとりのエピソードもあるし、女性陣との関係もあるので、
観ている方としては素直に楽しめましたが、まだまださらに改善していけるはず。
男性陣、女性陣ともに、若くて魅力的ですからね。
うまくいけば、男性ファン、女性ファン、両方を集客できます。
これが初演ですから、これからが楽しみ。

男性陣の歌声は、ちょっと忘れました・・・

気になった役者は・・・
若いと言っても、舞台経験を積んでいる方も多く、
演技はみなさん一通りできているので、あくまで私が感じた印象。

敦賀恵海役、大胡愛恵
私の中での至高は。
リトルプリンス 2009年のアントワーヌ役。
今でも鮮明に覚えています。
ミュージカル 葉っぱのフレディ〜いのちの旅〜 2010でのウェンディ役も完璧。
これも凄かった。
でもって、
ミュージカル プリンセス・バレンタイン2 ROCK! PRINCESSでは、
主役のプリンセス・シスター役。

とにかく彼女は声がしっかりしている。
とおるだけでなく、ビシッと相手に伝わるセリフ遣い。
これは今まで積み重ねた努力の賜物でしょう。
ひとつひとつの言葉の発声がじつに丁寧。
そして重く、観客の脳内に入り込み、なじむ。
数々の舞台でこなしてきた経験値の高さが伺えます。

たまたまNHKの「あさイチ」プレミアムトークのゲストが岸谷五朗で、
「似たような役を毎回演じると、それに固執してしまう。
いろいろな役を演じることによって発見、深みが出る」
みたいな発言がありましたが、大胡愛恵はまさにそれだと思う。
ミュージカル プリンセス・バレンタイン2 ROCK! PRINCESSで、
とんでもないヤンキーシスター役を演じましたが、
(私はSキャラ、怖いのが苦手なので申し訳ない)
これがあるからこそ、今回の役も光るのだな〜とつくづく思いました。
いろんな役を演じたからこその敦賀恵海役の演技。
演技だけでなく、彼女はダンスも素晴らしい。
今回はチアやヒップホップ系でしたが、優雅なダンスもできますから。
笑顔も素敵。
プリンセス・シスターの笑顔より、敦賀恵海の笑顔の方が断然かわいい。
今回の役は強気な役だけれど、
女性的な雰囲気は十分に残しています。
歩を追ってばかりなのは、一途過ぎて困りものではありますが。
そこまでヒロイン・ヒロインしている役ではありませんが、
役者としての印象度は物凄く高い。
この物語を演技として引っ張っているの中心は彼女。
そう思えるぐらいの存在感。
率直に言って見事だと思う。
舞台上では凄く芯がしっかりしている女の子。

男性陣としては主役である歩役の古越健人
大役、頑張ってました。
自分たちのバスケットチームの力不足で空を失い、
失意でバスケを放置状態。
とりたてて清廉された感じでもなく、まだ荒削りな感じ。
意固地でありながら、のらりくらりとしたあの態度は、
ルックスは違うものの、俳優の中尾明慶の雰囲気に似ている気がします。

空役の安藤慶一、いい味出していますが、
前述しているように、キャラ設定が歩とちょっとかぶるんですよね。
あれだけ切れて、他の学校に行ったのに、
結局心では通じている、みたいな。
優しいんだかなんだか、よくわからない性格でもある。
役者としても、演じ方が難しかったかもしれません。

私としては生徒会の甲斐大和役、柳原凛
少しなよなよっとしていながら、言う時は強く言う感じがいい。

文武両道、風祭隼人役の橋本ルーカス宏幸の演技も好きだな〜
ま、一番わかりやすいと言えばわかりやすいけれど、
真面目な感じとバスケとのメリハリがいい。

宮前にかほ役、優希
可愛さとしては、群を抜いて抜群にかわいい。
ミュージカル アニーのケイト役当時から、ほとんど変わっていない。
リトルツインズ 2007でも、華がありました。
アイドル的ルックス・・・というか、アイドルですからね。
他のアイドルと比べても、彼女の方が断然に可愛いと、
客観的に見ても思う。
「美人」の定義は人それぞれなので、ここまで。

お肌もピチピチ(死語)
肌のケアも相当している。
まっさらだもの。
ただ、じつのところ気になるところはある。

にかほという役自体、つかみどころが難しい。
かつて病気を患っていたが、すでに治っているはずなのに、
それが不安で太陽光があるところには出ないまま。
バスケ好きなのはわかるけれど、
かつてDVDプレイヤーで見ていたものは、歩のバスケの試合なの、
はたまた歩の父親の試合なのか。
なんだかんだで、歩を好きになる過程がイマイチよくわかりませんでした。
前から試合を見ていて、気になっていたのでしょうか?
ただ試合を見ていただけで、そこまで好きになるのかな?
ま〜恋愛だけはどう転ぶのかさっぱりわかりません。
あの「銀河英雄伝説」のキルヒアイスでさえ、
凛とした頭の回転が早い貴婦人が悪人を好きになってしまう、
ということに関しては理解できませんでしたから。
ちょっと脱線。
しかし、歩もにかほをよく振る気になったものだ・・・
美人の女の子から告白されても、恵海をとるわけですから。

冒頭のふたりのシーン。2人芝居で時間も長かったこともありますが、
まだまだ観ていてつらい。
そもそも雰囲気が軽い。
さらには元々の声質がけっこう高音なので、
ひとつひとつの言葉が軽く思えてしまう。
悪く言えば、表向き、表面上の言葉で嘘に思えてしまう。

自然な演技というよりかは、全部計算され尽くした演技。
ルックスがべらぼうに可愛いぶん、演技との違和感を感じてしまう。
何か騙されているのではないか?と。
私みたいな変人は、何か見透かされている感じがわかってしまう。
女の子にたぶらかされている、利用されている、手玉にのせられている。
きつい言い方をすると、男性に媚びているようにも思える。
そう思われない演技を次回は期待したいかな。
もちろん、騙されているのをわかって観ている人にしてみればそれでいいけれど。
私は気になるだけ。
テレビドラマの場合は需要が異なりますが、舞台だと声の強さは必要。

氷見純名役の吉野有美は出番も多くけっこう印象的。
アフタートークがありましたが、意外とほわ〜んとした子でビックリ。
舞台では厳しい表情とか、厳しい態度をとっていましたからね。
メインキャラで演技もしっかり。
このギャップがいい。

二階堂絵美里役、おそらく私が観た回は岡元愛里
大胡愛恵、吉野有美、
そして杉山真梨佳が女性としてこの舞台の軸を引っ張っている感じ。
彼女のは演技、発声、歌、ダンスとか、マルチ的にバランスがいい。
どれも見応えあるけれど、歌唱力が意外と印象的かな?

左京楓役の杉山真梨佳
あとから転校してきて、ちょっと皮肉な役柄でしたが、
雰囲気はバッチリでした。
ビッグマウスなぶん、他のメンバーと比べてどれだけチアがうまいか?
という比較のダンスみたいなものはありませんでしたが、
チアリーディング、そしてぶっきらぼうな表情から笑顔に変わるところは良かった。

伊那嶺早織役の松並佳歩も印象度が高い。
チアのダンスもキレキレだったのだけれど、
プロフを見ると元々は歌の人なのでしょうか?
だとしたら、練習量相当なものでしょうね。
表情も良かった。

神田千波役、山内優花
ルックス的な可愛らしさと言ったら、
優希の次に可愛いと思う。
コケティッシュな可愛らしさ。
神田一松の妹ということから、
妹キャラ的な部分も表現しています。
その小さな体の可愛らしさだけでなく、
演技もしっかりしているし、歌も、ダンスも、バランスがいい。
チアも頑張っていました。
これからさらに人気が出る予感。
私はピンとくるものがある。

三崎萩花役の神野千奈は、
モデルかつ、新体操もできるようですね。
だからあんなに柔らかなダンスだったのか。
ただ、演技はおまけでしょうね。
これから頑張ってほしい。

総括
序盤は登場人物、物語の流れに集中できず大変でしたが、
二幕からは舞台に集中することができました。
物語の方向性が、あっちゃこっちゃ行く感じで、
けっこう大変なんですよね。
チア、バスケ、ストリートバスケと。
にかほとのからみも、突拍子感があります。
頑張って集中してみれば、なんとか観られますが。
観客層的には、若い人向けでしょうね。
高齢者の方だと、ちょっとついていけない部分もある。

結局のところ、副題の2番目の気持ち、
ここはあまり響いてこなかった。
ただ、初演ですし、若さがあるし、
次に期待できます。
なにより、ダンス、チアリーディング、歌は見応えありますから。

(敬称略)
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