◆ リトルプリンス


◆公演時期   2009年1月16日〜18日
◆会場 東京芸術劇場 小ホール2
◆監修・振付 中川久美
◆脚本・演出 犬石隆
◆音楽監督・作曲 金子貢
◆演出助手・作曲 網代ひろみ
◆音楽監督助手 杉野真理子
◆振付 久保田元子

あらすじ
4人の少女がアントワーヌの飛行機に乗りこみ空へ。
ところが突然エンジンが故障。サハラ砂漠に不時着。
救援は来るのか?
4人は呆然自失、アントワーヌは修理に没頭。
そこに突然王子さまが現れて・・・
観劇感想
サン=テグジュペリの名作「星の王子さま」をモチーフとした作品。
私は小説を読んでいます。
さらには連続物のアニメも見ています。
ちなみにこの主題歌、いまでも普通に歌えます。
子供の時の記憶力はすごい。
小説は意外と難しい話しなんですよね。
結局なんだったのか、今読んでも理解できません。
ま〜理解できなくて良いのかもしれませんが。

「星の王子さま」をモチーフとしたミュージカルで、
基本は、王子さまが自分の星からどうやってサハラ砂漠に到着したのか、
その過程の話しです。
王子さまが各惑星(?)や国や町(?)で奇妙な人(?)と出会う。
その出来事を、
ひとつひとつミュージカルナンバーとしてつないでいく感じ。

ミュージカル形式なので、エンターテイメント性は強くなっています。
場面場面の盛り上がりはとても楽しいです。
王子さまと出会う主要人物となる子役の実力が、ものすっごく高いですから。
それは見応えあります。
ただ、やはり本編の「星の王子さま」は文学性には優れますが、
内容的には静かなものなので、
「すっごく面白い!」「勉強になる!」「感動した!」
というところまでは、私はいきませんでした。
けっこうクールな視線で見ていました。

最終的にヘビに噛まれて死ぬことで、自分の惑星に戻るということは、
王子さまって、死の世界の住人なのか、異世界の人間なのか、
よくわからないんですよね。
子供の時もわかりませんし、今でもよくわかりません。
というか、私の記憶が曖昧なのですが、たしか私が読んだ本には、
直接蛇に噛まれたかどうかは記載されていなかった思います。
「正解」というものは無いのでしょう。
私の中ではこのエンディングはスルーされています・・・

今回、意外と照明の印象が強いです。
飛行機に4人+アントワーヌが乗ったところの点滅している照明。
サハラ砂漠のラセンの模様のような照明。
ヘビを表現した黄色い照明。
照明班も気合入っています。

ちなみにこの少女4人は友達ですよね?
たしか姉妹では無かったと思います。
「お姉ちゃん」みたいな発言は無かったと記憶しています。
だとしたら、4姉妹の方が良かったかも。
4人の個性がイマイチわかりづらく、
4姉妹として個性をつけた方が面白かったかもしれません。
「若草物語」のパロディっぽくしても良かったかな〜?

キャバレーの話しが出てきますが、
これはミュージカルプリンセス・バレンタインでも登場。
何か意図するものがあったのでしょうか?
セクシーさを強調するのは嫌いではないので全くOKなのですが、
前回に続いての登場にちょっとビックリしました。

気になった役者は・・・
王子さま役の矢野七海
2008年の葉っぱのフレディ〜いのちの旅〜でのダニエル役も好演。
彼女の演技の実力は申し分ありません。本当にうまいです。
ただ、この王子さま役は難しいと思う。
なんとなくフワフワ〜とした感じで、
つかみどころの無い王子さま役ですから。
主役でありながら派手さが無いので、印象度が低いのは仕方ありません。
矢野七海ほどの実力者でここまでですから、
他の人がやっていたらもっと厳しいでしょう。

主役でセリフが膨大なこともあるとは思いますが、
歌のパワーをあまり感じなかったのは残念。
私の過大評価かな?
矢野七海の歌唱力はもっとあったと思うのですが。
声が少しかすれていたのも気になりました。

彼女のこの王子様の雰囲気、
どこかで見た記憶があるな〜と思いましたが、
アルゴ・ミュージカル 『パパ・アイ・ラブ・ユー!』の王子さまでした。
ちなみにこの時の脚本・演出も犬石氏。
この時演じたのは檜山恵理子。
全く別件として、柳志乃にも雰囲気が似てるな〜と思いました。

アントワーヌ役の大胡愛恵
サブ主役という感じですが、ハッキリ言って素晴らしいと思う。
元々ダンスには定評のある女の子でしたが、
ここまで演技力、さらには歌唱力があるとは思いませんでした。
男性役ですが、バッチリ合ってます。かっこいい。
声質はすごくハッキリしていて聞き取りやすく、カツゼツはバッチリ。
アントワーヌの真面目でありながら、
ちょっぴりお茶目部分もある雰囲気、いい味だしています。
演技力でも驚きましたが、やっぱり歌唱力かな〜?
矢野七海の歌を期待していたのに、大胡愛恵の歌に魅了されるなんて。
本当にすばらしい歌声。
これからいい女優になるでしょう。私も太鼓判を押します。
大胡愛恵の晴れ舞台と言っても過言ではない。

ジャクリーン役の持田紗希は元々演技力ありますからね。
私がどうこういうレベルの話しではないと思う。
ベテランですし、普通にうまいもの。
ジャクリーンは今どきの女の子っぽい感じの性格で、
違和感なく素直に見られました。

アデール役の宮島小百合
「アルゴミュージカル」や「葉っぱのフレディ」にも出演している女の子。
久々に観たせいか、ずいぶん体の線が細く思えました。
前からこんなに痩せてたかな?
どちらかというとダンスの方が印象深い。
けっこう普通な性格の役なので、
もうちょい変な個性がついた役も見てみたい。

ロザリー役の工藤万実
ミュージカルプリンセス・バレンタインではサンディ役を好演。
葉っぱのフレディ〜いのちの旅〜 2008ではペティ役と、
私から見ても評価の高い実力のある女の子。
ただ、サンディはイマイチ出番が少ないのと、
葉っぱの方はペティということで私からしてみると印象は薄くなってしまい、
2008年の演劇大賞には候補にも入っていません。
ただ、実力はものすごくあります。
今回のロザリー役はメインキャラということもあってか、
彼女の魅力が全開。
表情のつけ方は抜群だし、ダンス力もあるし、カツゼツもしっかりしています。
今回はそうとう目立ってました。
ちなみに彼女は緑の服を着てきましたが、「緑」似合いますね。

エミリー役の角田萌夏
彼女は初見。
どちらかと言うとダンス系でしょうか?
ダンスショーの2部でも登場しますが、そこでのダンスも印象深いです。
エミリー役の演技的には、無難にこなしていたと思います。
ただ、正直、メインキャラの一番小さい女の子としてみると、
大変申し訳ないのですがもっと「華」がほしい。
つんけんしている生意気な性格であればともかく、
マスコット的な存在なので、ブリッコ(死語)な雰囲気でもいいから、
もっと華やかさ全開でも良かったかな?なんて思います。
配役的に、もしかしたら石井千夏と迷ったかも。

キツネ役の伊宮理恵
彼女の演技は久々でしたが、言うこと無しにすばらしい。
そうそうたる経歴の持ち主で、
特に葉っぱのフレディ 〜いのちの旅〜2007のベン役は当たり役でした。
キツネと王子のナンバー、ここ長いですよね?
それだけここのナンバーに力が入っていたのではないか?と思います。
伊宮理恵の歌声は抜群。
透明感ある歌声ではないが、地に響く歌声。
いい声だな〜すばらしい。
前に私が観た時よりも体が引き締まって、
アゴのラインもシャープになっています。
彼女のキツネ役も当たり役となるぐらい素晴らしい。
この配役は絶妙としかいいようがない。
2部のダンスショーもすばらしいです。

パメラ役の佐藤まりあ
佐藤まりあは瞳パッチリの女の子。
いきなり最初の民衆での登場がメイド服。
ちょっと待って。
たしか、ミュージカルプリンセス・バレンタインでも同じ服装だった気が・・
そこからつながっているわけではないと思いますが、ちょっと驚き。
キャバレーのシーンでも登場。
ここでは青い衣装。
この青が映えるんですよ、彼女。
キャバレーシーンだけに限っては、一番彼女が印象に残っています。
それほど魅力的でした。ダンスの実力もありますしね。
ここは抜群に可愛いと思う。
ミュージカルプリンセス・バレンタインでもキャバレーシーンがありましたが、
まだ恥ずかしさが抜けていない感じでした。
今回は恥ずかしさを全く感じさせず、
自分の色気を出していた・・・ような気がします。

さて本命のパメラ役。
赤いカツラ、赤い衣装に身をまとうバラのパメラ。
私が見ていたアニメにそっくりの衣装でした。あのまんま。
パメラの性格は、今でいうツンデレ系ですね。
生意気な口調で意地悪をしたりするのですが、
じつは王子様が好きという感じ。
佐藤まりあのツンデレ演技もなかなかいい。
ただ、赤の印象が強過ぎるせいか、カツラがイマイチなせいか、
佐藤まりあの魅力があまり伝わってこないな〜
演技はもちろんうまいのですが、あくまで外見の印象として。
ただやはり、その外見をも上回るパワーの演技を見せないといけないかも。
佐藤まりあの次の課題かな?
ど〜でもいい話ですが、彼女は赤よりも青とか紺が似合う気がします。
瞳がパッチリすぎる女の子は、赤い服装だと強く感じてしまうのかな?

ピエール役の長田那奈子
う〜ん、まいった。かなりいい。
このピエール役に関しては驚異的にすばらしい。
男性的な凛々しい雰囲気もいいし、表情付けもいいし、歌もいい。
ダンス力も本当にすばらしいんですよ。
ピッチリ止まるところは止まる。
静止からの動き。動きからの止め。
けっこうカクカクしたダンスですが目立ちました。
いやっ、今回のこのピエール役をやったことで、
長田那奈子の評価はグン!と高くなりました。

行商人の宮島麻利菜
なるほど、これが宮島小百合の姉、宮島麻利菜ですか。
私は初見。
フードのようなものを被っているため、
表情が見にくいのは仕方ありません。
ただ、声での演技は頑張ってました。
ダミ声にして、大人らしさをうまく表現していたと思います。
最後の方、全員で出演していることにもフードを被っていたのには残念かな。
せっかく可愛い顔なのに、表情がうまく伝わってこなくて残念。

王様役の石井千夏
ひとりしかいない星(惑星?国?)で、傲慢なひとりよがりな王様という役。
これが他の子であれば、
「小さいのに、たくさんのセリフを覚えて、王様役、良く頑張りました〜!」
と言えるのですが、石井千夏ということでそうもいきません。
なんだかイマイチ感が漂うんですよね・・・
セリフもしっかりしているし、演技もよくやっているのですが、
あくまでも私の印象としては、長セリフをなんとか覚え、
ぶっきらぼうにただ喋っているだけのように感じてしまいます。
王様の演技としてやっているようには感じませんでした。
もしかしたら意図的にそういう演技をしているのかもしれませんが。
私はあまり好きではありません。

だいいち、他のアンサンブルの時や、
花の格好をしたダンスシーンの方がはるかに笑顔だし、印象深い。
本人すごく楽しそうだもの(ぶっきらぼうな王様が楽しんではいけませんが)
「あの窓の向こう」の野原すみれ役の方も本人に似ている感じで、
すごく印象深かったのですが、
今回の役に限っては私はちょっと・・・という感じです。
一応、第6回エターナルファンタジー演劇大賞 2008年で、
飛躍賞に選んだこともあり、
選んだからにはそれだけの実力を見せてくれないと、
という意味合いも含まれています。

2部は発表会をかねたダンスショー。
宮島麻利菜は初めて見たのですが、
うん、ダンス力ありますね。
特にターンする時の首を回転は綺麗。
表情の変化もあるし、なかなか楽しいダンスをする。

工藤万実も1部の舞台に出演しながらの2部。
彼女のダンスの力もすばらしい。
小柄ということもありますが、良く目立つ。

大胡愛恵は、1部の舞台では衣装であまり気づきませんが、
2部ですとピッチリの衣装のため、ウエストの細さが際立ちます。
けっこうスレンダー系なんだ〜という驚きとともに、
ダンス力の高さに目を奪われる。
ダンスの切れ、そしてスピード感がすごい。
同世代、後輩から羨望の眼差しで見られるのも至極納得。

長田那奈子のダンスは、相変わらず見応えあります。すごいね。
橋野香綾乃は、もうちょい表情の変化、笑顔等に気をつけると、
さらによくなると思う。
緊張していたとは思うけれど、ここを注意してしていくと面白い存在になる。

総括
最初のツカミはアントワーヌと4人の少女の話。
王子様が登場してからは、王子様ひとり対各惑星、各国の代表の話。
アントワーヌと4人の少女が、
王子様の話しに役者として一応は登場することになるのですが、
話のからみはありません。
基本は王子さまと他の登場人物ひとりなので、
話のふくらみ、面白みが少ない。
ひとつの場面が終わってから王子様とアントワーヌ+4人の少女で、
いろいろ議論しても面白かったと思う。
時間の制約があったかもしれませんが。
「星の王子様」にエンターテイメントをプラスしていますが、
もう少し話しの膨らましがほしい気がしました。

(敬称略)


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