ミュージカル サウンド オブ ミュージック

◆公演時期   2008年8月5日〜10日
◆会場 東京芸術劇場
◆作曲 リチャード・ロジャース
◆作詞 オスカー・ハマースタイン二世
◆脚本 ハワード・リンゼイ ラッセル・クラウス
◆演出・日本語台本 西田直木
◆訳詞 西田直木・劇団文芸部
◆ドレミの歌 作詞 ペギー葉山
◆音楽監督 天野一平
◆振付 吉田潔
◆翻訳 吉田要士
◆美術 さわたりちひろ
◆企画・制作 劇団スイセイ・ミュージカル

あらすじ
オーストリア、ザルツブルクのノンベルク修道院。
歌うことが大好きな見習い修道女マリアは天真爛漫な女性。
そんなマリアの素行を持て余す修道院は、
彼女に退役軍人トラップ大佐の7人の子ども達の家庭教師になることを命じます。
トラップ家の子どもたちは、ひとくせもふたくせもある子供たちでした・・・
(パンフレットより一部引用)


観劇感想
スイセイ・ミュージカルさんの舞台は初めての観劇となります。
一度は観てみたいな〜と常々思っていました。
基本は完全に大人の舞台なので、気になった点を少しだけ。

ダブルキャストですが、私が観た時の配役は
リーズル 金子昌代
ロルフ 上山竜司
シュミット 佐藤志穂
ルイザ 吉村美喜子
クルト 影山樹生弥
ブリギッタ 西原杏佳
マルタ 澤登ひほり
グレーテル 加藤実祐紀
となります。

ハッキリ言ってすごい。
めっさ面白い。
チケット代金うんぬんはあまり言いたくはないのですが、
それにふさわしい内容で大満足。
あまりミュージカルに興味が無い人でも、十分に満足できることと思います。

オーケスラトピットもあり、さらには張り出し舞台。
後方からでも、じつによく見えます。これは嬉しい。

修道院、トラップ家、テラス、公演会場、大きな場面転換はこの4カ所でしょうか?
美術も素晴らしいです。
照明の使い方も綺麗で、とても見応えありました。

最初はいきなりシスターたちの合唱、賛美歌かな?
ちょっとビックリ。

トラップ大佐が何をするにも笛を使うことで、嫌な雰囲気がかもし出されるのはいいですね!
観ているこちらも本当に不快でした。
それがマリアにも、笛に対する拒否反応が生まれるのは至極当然の結果。
マリアの心理描写としての演技、全体の演出、ここはとてもうまく表現されていました。

トラップ家の7兄弟、けっこう出番が多いんですね。
もっと少ないのかと思ったのですが、場面場面に数多く登場していました。
ダブルキャスト、トリプルキャストまでありますが、出演するだけでも凄いことでしょう。

ナチスの蛮行もよく表現されています。
もうすこし明るい舞台だと思ったのですが、最後の方はシリアス。
このメリハリな演出もグッド!

長女のリーズルの出番が多いのは、ロルフとの淡いロマンスがあるから当然として、
ブリギッタの出番が多くてビックリ。
けっこう重要な役どころなんですね。
マリアとの接点も多く、セリフもかなり多いです。
子役は、いずれはこの役をゲットすることが目的になるのかもしれません。

ミュージカルナンバーで好きなものは、
「ドレミの歌」「私の好きなもの」「もうすぐ17才」「さようなら ごきげんよう」かな?
ドレミのナンバーではみなさんバランスが大変でした。
というのも、ずっと片足で立ったままでのナンバー。
この振付はけっこう好きです。
「さようなら ごきげんよう」の、ひとりひとり消えていくナンバーも面白い。

最後の舞台挨拶、子供たちは時間の関係上、出演できず。
このへんはね・・・
私もブログで話しましたが、お偉いさんたちも少し配慮してほしいところ。
遊びで遅くなるわけではないですし、無理やり働かせているわけでもないし、
条例の改正を求めたい・・・

辺見マリのエルザもなかなか恋愛の悲哀が出ていて面白いです。
複雑な乙女心(汗)
この舞台、マリアとトラップ大佐の恋や、リーズルとロルフの恋もあり、
意外と恋愛関係が多いです。
ファミリーミュージカルではあるものの、
彼氏、彼女とのデートとしても、なかなかいいかも。
お互いにその後の感想戦として、談義に華が咲くかもしれません。

しかし、エルザはけっこう悲しく寂しい役だ(涙)
辺見マリの歌い方には癖があります。
ここは好き嫌い別れるかもしれません。

パンフレットは2000円とやや割高ですが、内容はしっかりしているし、紙の質もいいし、
DVDもついていて、けっこうお得感あります。

気になった役者は・・・

やはり主役、マリア役の中村香織
すごいでしょ、これは。
はんぱなく凄い。
前夜祭で一応は観ていたのですが、その時は「すばらしいな〜」という印象はあったものの、
まだマリア役の凄さはわからずじまいでした。

まずは演技。
文句ない。無さすぎる。
ほとんど完璧といっても過言ではありません。
すごいよ、彼女は。
マリアの明るく人なつっこい雰囲気、ドタボタなボケ、何をとっても素晴らしい。
小芝居的には、
ケーキで口がいっぱいにふくらみ、喋ることができずにパントマイムでエルザと話すところ。
面白い。本当に面白い。
ただ演技ができて、歌がうまいってだけの女優ではないことが、ここでわかります。

早口でたたみかける場面では、
物凄い早口なのに、カツゼツが良いために全く聞き取りづらくありません!
ここもすごい!
普通でしたら、あそこまで早口の場合は絶対聞き取りづらいですから。
練習の賜物でしょう。

歌唱力は、もちろん言うまでもなく抜群。
そりゃ、聞き惚れますよ。のびが全然違います。

で、じつはこっそり、本人とお話ししたのですが(爆)
意外と普通の人でビックリ!
いやっ、けっこうつんけんした感じで、ピリピリした人かな〜なんて思ったのですが、
全くそんなことはありませんでした。
もちろん対応の仕方もありますが、
なんとなく私は相手の性格を読めてしまうんですよね、いろいろ・・・
これからも当然のことながら活躍していくことでしょう。間違いありません。

トラップ大佐の辰巳琢郎は、笛の使い方をひじょうに良く練習したと思います。
みんな違う音(子供たちひとりひとりを呼ぶ音)なので演技よりも、難しかったかもしれません。
歌は、もちろん本職ではないので大変だったかもしれませんが、そちらは演技でカバー
どっしりとした落ち着いたトラップ大佐の演技は、さすがですね。
というか、これだけ素晴らしいミュージカルであるのだから、出演して本当に楽しかったと思います。

修道院長役のペギー葉山は、元々演技もできるし、歌手としてのMC力もあるので、
全く違和感ありませんでした。
歌は完全にプロですから。

マックス役の吉田要士は抜群にうまい。三枚目役は完璧。
小芝居は最高だし、緊張感あるこの舞台の中の一服の清涼剤。
「真夏の夜の夢」にたとえるならパック的存在。
じつに素晴らしかったです。

ロルフ役の上山竜司
男性ユニット、RUN&GUNのリーダーでもあります。
とりあえず無難な感じだと思います。
「もうすぐ17才」のナンバーは、まだまだこれから。
ドキマギしている雰囲気よりも、後半の厳しく冷たい雰囲気の方が好きかな?
ちなみに彼は、柔軟性ある性格で雰囲気も凄く明るく、笑いがたえない感じです。
その場その場に応じての適応能力、頭の回転は早いな〜なんて思いました(謎)

リーズル役の金子昌代は安定して観られる長女役。
ただ、私的には華がもう少しほしい。
ロルフとの恋愛関係のところは、猛烈にアピールしているものの、
もう少し少女らしさ、可愛らしさがほしい。

フリードリッヒ役の杉中未樹は少年役という難しい役ですが、
全く問題なくうまいです。
どちらかと言えば地味な役柄ではあるけれど、
安定した演技やダンスができるからこその、7兄弟の影の主役。

クルト役の影山樹生弥
初めて観ましたが、とぼけた感じの雰囲気、演技がなかなかいいですね!
もちろんできたら、いろいろな役ができた方がいいのですが、
今の時点では、この特徴を活かした演技の方が良い気がします。
私的にはすごく好きな役者。

ブリギッタ役の西原杏佳は、笑顔がとっても素敵な可愛らしい女の子。
出番の多いブリキッタ役も、無難にこなしていました。
演技力は見るべきものがあります。
ただ、少しつんけんして、表情が強く出るところもあるので、しつこすぎるのは危険。
逆にいやらしく思えてしまう。
ここは気をつけたいところかな?

グレーテル役の加藤実祐紀
う〜ん、とりたてて何か気にかけるものはありませんでした。
普通に子役として頑張った感じです。

マルタ役の澤登ひほりですが、うん。意外といい。
正直、前夜祭は、その雰囲気が初めてのせいか、表情がイマイチだったのですが、
さすがに本番では、つくりあげてきましたね。
回りがうまい方ばかりですから、
セリフ回し、しっかりとした演技を見せないと悪い意味で目立ちますから。
私が見る限り、カツゼツもなかなか良かったと思います。
無難にこなしている感じで、観ているこちらとしてもひと安心。

総括
とても満足のいくミュージカルでした。
本当に全体的なレベルが高く、子供からお年寄りまで楽しめる、
まさにファミリーミュージカル。
特に主役の中村香織の演技力、そして歌唱力は圧巻。
今後、さらなる活躍が期待されます。
「楽しかった!」
本当にその一言。

(敬称略)


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