森は生きている 2009 12月公演

◆公演時期   2009年12月22日(火)〜27日(日)
◆会場 シアター1010
◆演出・作詩 安崎 求
◆振付 名倉 加代子
◆作曲・編曲・歌唱指導 脇田 崚多郎
◆作詞 堀 美千子
◆脚本・プロデューサー 川崎 登
◆原作 サムイル・マルシャーク
◆翻訳 湯浅芳子

あらすじ
日は12月最後の日、
新しい年がもうそこまできている、夕方のことでした。
雪の降りしきる森の中を、ひとりの娘が、
たきぎを積んだ小さなそりをひいて家に帰ってきました。
みなしごが寒さにふるえがら家に辿り着くと、継母が言いました。
『もう一度森へ行って、マツユキソウをつんでおいで。
女王様のおふれが出たんだから・・・』
女王様の言葉は絶対・・・
しかもマツユキソウは春に育つもので、冬にあるはずがありません。
そうとわかっていながらも、娘は、かごを持って森へでかけました。

もう日は暮れて外は吹雪です。
娘は激しい寒さでこごえてしまいそうになります。
とその時、森の奥の方にたき火の火が見えました。
それは、12の月の精たちが、1年に1度の集まりのために、焚いていたのです・・・

観劇感想

2004年2005年2006年2007年 2009年1月公演に続いての観劇です。
詳細は上記を参照していただけると幸いです。

流れは、
一幕で、娘と老兵の出会い→女王のマツユキ草捜索命令
→娘と継母、義姉(マツユキ草探し)
→娘と12月との出会い→再び娘と継母、義姉(指輪盗られる)
二幕で、女王と継母、義姉のマツユキ草を見つけた経緯報告
→娘、女王とともに12月と出会う
こんな感じです。

今回は演出が多分に変更されました。
まず第一に大人キャストが減り、子役が抜擢、
役も多岐にわたることから早着替えも必須でした。

そのこともあってか、上演時間がコンパクトになって、1時間+1時間の2時間。
あくまで私の印象としては、これはこれで非常に観やすくなりました。
伝えるべきシーン、重要なシーンは当然残していますから、
あまり違和感は感じません。
観客としては、とにかく観やすかったです。

今回は3チーム体制。
チームA、Bのみ観劇。
ど〜してもチームCは観劇することができませんでした。残念。

大人メンバーが減ったことにより、
女官、月、民衆、森の精など4役もやる方は物凄く大変だったことでしょう。
練習や稽古もさることながら、早着替えは必須。
とはいえ、出演する場面が増えますから、頑張るしかないです。
前回は有名な方ですらリスやウサギ。
それが今回は大人キャストが少ないことよって、月にも割り当てられています。
これは運がいいとしかいいようがないですね。
その時の状況によって、いろいろ変わりますから。
今回の子役出演者はラッキーでしょう。

ただ、そのラッキーと簡単に片づけられないほど、
子役のレベルは物凄く高い。
特にダンスは下手な子、ひとりもいません。
「アルゴ」や「ココスマイル」
「アニー」「葉っぱのフレディ」と比べて同レベルと言っても過言ではない。
「森は生きている」のオーディションが熾烈だったことも、想像に難くありません。
いやっ、ほんとにレベルが高い。

演出面が変わったことで、気付いた部分をいくつか。
まず、4月の歌のナンバーが増えました。
娘に指輪を渡し終え、帰ろうとするところ。
ここはなかなかいいですね。
今回は昔にもあった、4月がちょっと娘に恋心を抱く演出もありました。
淡いロマンス。
それゆえのナンバーかな〜と深読みすると面白い。
なにより、4月役の松原剛志の歌唱力がハンパありません。
物凄い声量に歌声。
これがあるからこそ、今回の新しいナンバーも映えるんですよね。
演技面より、歌の印象が物凄く強いです。
今回の舞台が引き締まった要因のひとつでもある。

4月が娘に対して指輪を渡すシーンで歌う場面があるのですが、
ここで突然3月のサントス・アンナが前に出て歌いだすんですよね。
ここは正直違和感ありました。
ワンフレーズ歌い終えると、後ろの12月たちの輪の中に戻り、
4月がその続きを歌う。
最初から4月だけでいいのに・・・と思いました。
ま〜いろいろ裏事情があるのでしょう。
それから、後ろに戻って輪に戻る演出、
二回目の公演では戻らずにその場にいました。
こちらの方が違和感は少ないです。

1月から12月の季節が一度に現われる場面、
今回、不思議と地震のシーンが印象に残りました。
なんでだろう?
演じている役者がうまかったせいかな?

人数が減って、ひとりが多数の役をすることにより、
特に気になった部分が三つ。
最初の「雪の森」から「女王の間」に移り変わるところ。
本来であれば、「女王の間」に移り変わった時に、
きらびやかなセット、女王、そして女官たちの豪華な衣装と、
殺風景な雰囲気から一転、豪華な雰囲気に変わります。
この対比が観客の心に響くんですよね。
「アッ!」と驚く感じ。
今回、役者が月、ウサギ、女官を兼ねていることもあり、
「女王の間」での女官が間に合いません。
ということで、幕があがると最初にいるのは女王と博士のみ。
仕方のないこととはいえ、やっぱり寂しい・・・

もうひとつは、
一幕最後の継母と義姉が、マツユキ草を持って城へ出掛けるシーン。
民衆がもっと欲しいな〜と思います。
華やかさがもっともっとほしい。
ちょっと寂しかった。

さらに物語終幕、
娘が「みなさん、ありがとう」と12月に対して感謝を述べるのですが、
月が4人しかいません。
せめてこのセリフを言う時には、演出面でなんとかうまくごまかして、
12月全員を舞台に出してほしかった。

気になった役者は・・・
ほとんどプロの役者なので、簡単な感想。

私の一番のおすすめは、娘役の辛島小恵
すごかった・・・ものすごい。
今年の1月に引き続いての出演ですが、1月公演以上の出来ばえ。
同じ舞台を見続けている観客からしてみると、
ど〜しても過去を美化しまいがちになります。
「前のあの人が良かった〜」や「今回はあの人に比べたらイマイチだな〜」とか。
そういう過去を消し去るほど、今回の娘の演技はすごい。
完璧と言っていい。
100点満点中、99点あげられる。(残り1点は自分を満足させない向上心のため)
他の方に失礼ながら私が観劇した「娘」役の中で、一番すばらしい。

はかなげな歌唱力も全品だし、
継母や義姉からひどい仕打ちをされる、痛々しい演技も秀逸。
女王役の仲代奈緒の演技が光ることもあるが、
最後の娘と女王が心通いあうシーンは鳥肌もの。
ほとんど感動することのない私でさえ、ちょっとウルウル感動。
ふたりの演技に心揺さぶられました。

女王役、仲代奈緒
仲代達矢氏の娘さんですか。
観る前からとても楽しみにしていました。
私は七光とか全く関係なく感想を書きますけど。
どちらかというと、雰囲気、黒木マリナ的な女王ですね。
ややアニメ声でもある。
歌手であることから、歌も当然のことながらうまい。
ただ、ミュージカル女優の声量としては並の上といったところかな?
私としてはまだまだのびしろがあると思う。
ここは、ど〜しても神戸みゆきの女王役の歌が印象に残っているので申し訳ない。
ただ、私は歌よりも演技の方が強く印象に残りました。
無名塾出身ということもあり、じつにしっかりしている。
抜群にうまいでしょ。
女王のヤンチャさ、ツンケンした雰囲気、可愛らしさ、甘えた表情、
よく表現されています。
女王役としての「華」もあるしで、私はとても満足。
前述していますが、娘の辛島小恵に対する謝罪のシーンはじつに見事。

4月役の松原剛志
前述していますが、とにかく歌唱力は抜群。
声量が物凄い。
ソロナンバーも多いしで、聞き応えあります
歌に関して言えば、4月最強でしょう。

博士役の山本芳樹
今回の役の中で、じつは一番難しい配役だな〜と思いました。
昨今ですと年配の方が演じていて、重厚感かつ、コメディな博士役が印象的。
ここを若手が演じるというのは、かなり難しいんですよね。
その中で、山本芳樹はよく頑張ってると思う。
雰囲気的には、過去に観たROLLYにも似ている。
かわいらしくお茶目な博士。

6月、オオカミ役の奥山寛は特にオオカミ役が印象的。
若いながらにオオカミの遠吠えもしっかりしているし、仕草もいい。
腕のひねり方等、よく研究していると思う。
体も相当な筋肉質。
私はかなり強く印象に残りました。

2月役の及川心太
ソロのナンバーありますが、歌唱力あります。
回りが歌唱力のあるメンバーばかりなので隠れがちですが、
なかなか聞き応えありました。

3月役のサントス・アンナ
かなり楽しみにしていました。
アニーズから、アイドルユニット、舞台と、幅広い活躍。
ルックスは意外と瞳パッチリで驚き。
パンフレットにも写真がありますが、童顔なんですね。
3月の時よりも女官の時の方が表情の変化が楽しめます。
表情付けもすばらしい。じつに豊か。
ソロのナンバー、けっこう歌い方は独特ですね。
アイドル系ユニット・ヴォーカルの名残があるのかな?
この3月は、女王役、娘役への試金石でもあるので、
今後の動向に注目。

1月の大至はじつに見事。
歌唱力、声量抜群ですしね。
観劇を終わった他の観客からも、1月の感想が耳に入りました。
初めて観た人には驚きでしょう。
「やっぱ、すごいわ〜」と素直に思う。

継母役、林勇輔 義姉役、篠田仁志
この二つの役を男が演じることも、かなり定着しました。
今までの感覚よりも、今回はやや男性的な雰囲気。
特に林勇輔の継母は迫力がありすぎてかなり怖かったです。

12月役のあぜち守、総理役の河内喜一朗、女官長役の花山佳子
カラスの宮本竜圭、老兵役の沢木順
ベテランは言うこと無しです。

前述しているとおり、子役のダンスレベルはものすごく高いので、
気になった方を幾人か。

中村優芽井上優美、なかなか華があって光るものがあると思う。
ふたりともに美少女キャラ。
そこに立っているだけでも「華」がある。
松崎玲海も顔だちわかりやすいので、ダンスシーンでは印象深い。
稲葉愛夢は、ダンス、表情付け、意外と強く印象に残りました。
・・・と思ったら2010アニーのペパー役ですか。
これはすごく納得。
セリフの発声まではわかりませんが、来年のペパー役、要注目でしょう。

大八木千遥近藤真由は過去に観劇した、
2007年のリトルツインズコンビ。
二人とも大きくなりました。
顔を一度観たことがあるせいか、印象に残ってます。
大八木は表情豊かだし、近藤は瞳パッチリ。
ふたりともにダンスうまいですよ。

7月役は相馬毬花内藤もゆの
ふたりともに子役ながらベテラン。
何度も観劇しているのでちょっと印象度が強過ぎる感もありますが。
相馬毬花は透明感とダンス。
体の線もあいかわらず細い。
ただ、それ以上に細いのが内藤もゆの。
どれだけ節制しているのかと。
リス役でも登場するのですが、ものすごく小さいし細い。
彼女よりもおそらく年齢が低い子も出演していると思いますが、
その子たちよりも小さく感じました。
これだけ細いとダンスは?なんてことになるのですが、
ダンスも素晴らしいんですよ。

8月は飯嶋あやめ金子海音
この二人もベテラン子役と言っていい。
飯嶋あやめの雰囲気はあまり変わっていない。
前々から笑顔がとても印象的。
金子海音は久々に観劇したせいかもしれないが、
背丈がかなり成長した印象が強い。
体の成長とともに見合ったダンスが今後どうなるか注目。

9月の石毛美帆と10月の今野愛もベテラン子役といっていいのかな?
もうほぼ大人に近い。
ダンスにかけてはふたりともうまいので言うことないです。
石毛美帆は、あいかわらず体の線が細い。
今野愛は久々に観ましたが、体がかなり女性的な雰囲気になりました。
子役時から大人に成長することで、
ダンス時の雰囲気が難しくなるんですよね。
女性はけっこう大変かもしれない。
セクシー的な雰囲気をかもしだすダンスであれば、また別の話しになりますが。

見知った名前だと、乗本萌、江見ひかるを観劇できなかったことは本当に残念。

総括
今回のこの「森は生きている」の舞台はかなり素晴らしかったです。
過去に観劇している中でもトップクラス。
人数を減らしたゆえのコンパクトさが、逆に観やすくなりました。
新しい演出面も,4月のナンバーも秀逸。
もちろん、気になる部分もありますが、そこは今後の課題。
ほぼ完璧な、娘役の辛島小恵 女王役の仲代奈緒
ふたりの演技、物凄く素晴らしかったです。
今回の舞台は過去に小川亜美の赤毛のアンを観たほどの、
伝説の舞台になる・・・かもしれません。
私は超大満足。
あ〜チームCを観られなかったことだけが、本当に心残り。

(敬称略)


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