姫君vol.3「Freak box -RE:turns-」

満足度
公演時期 2013年6月26日〜30日
会場 池袋 シアターグリーン
BASE THEATER
脚本・演出 高瀬友規奈
振付・構成・劇中劇脚本・殺陣 後藤健流
振付 青井美文
照明 川口丞
音響 矢木歩美
メイク MIKI
衣装 四柳寛斗

あらすじ
外の世界では生きては行けないフリークスたちの集う,
「Freak box」
今日も彼らはショーの本番に向けてリハーサルを行う。
それぞれの問題を抱えながら、
誰かの為になろうとしながら、
見えない「何か」に支配されながら。
(パンフレットより抜粋)
観劇感想
私的にいろいろツッコミがあって面白い舞台。
と言うのも、出演者やら演出家が懐かしく思えてしまい、
少しノスタルジックになってしまう。

エリザベス・マリーが出演していることから、
ダンスは入れてくるかな?と思いましたが、
予想以上の激しいダンスにビックリ。

今回の舞台、雰囲気的には、
Sound Horizon(サウンドホライズン)に近い。
独特な雰囲気で、ホラー的要素も多い。
ところどころバランスをつけるために、コメディもあります。

話の流れとしては、
外の世界では生きては行けないフリークスたちが、
「Freak box」に集まる。
→そこで「ショー」を見せることにより生計をたて、
自分たちの存在意義を確かめる意味合いにもなる。
→メンバーたちは、それぞれ自分のショーに向けて練習を始める。
→タムだけは、いつも失敗ばかりで自分の存在意義が見いだせない。
→タムはとある光景を目にし、源左衛門に相談をするのだが・・・
こんな感じです。

そもそも「外の世界では生きては行けないフリークス」
この解釈が観客によって異なるかもしれない。
パッと見は、ヴァンパイアであり、フランケンであり、オオカミ男であり、
ちょっと妖怪じみた存在の集まり。
ただ、ツインズの存在からして考えると、
昔の「見せ物小屋」のようにも思える。
一般の人には触れてはいけないもの。
それを面白半分で見せる。
もちろんそれはそれで、仕事としてある意味生計を立てることにもなるし、
自分たちの生きるすべ、それを見いだせる場所がここである。
そうフリークスたちは納得しないといけない。
精神的に自我が強くないといけませんが。

最初は和気あいあいとして、
ショーの練習に取り組みますが、
いつも失敗ばかりで自分に自信がもてないタムが、
五十鈴姫とサムライのとある光景を目にしたことから、
物語が確変していきます。

フランケンのウォルターは本当は力が強いのに、
臆病なので、それをうまく発揮できない。
ヴァンパイアのエマも人間の血を飲みたいのに、我慢をしている。
みんなそれぞれ悩んでいる部分がある。
それを君(タム)が解放、きっかけを与える・・・
それが存在意義・・・
そう源左衛門にさとされ、タムはメンバーたちを変えていくことになる。
それは崩壊への序曲であり、
それによって、「Freak box」で行われるショーが、
凄惨かつ最大の出し物となることが、源左衛門の狙いであった。

この流れを見て思ったことは、
これって、妖怪の抑制された部分だけでなく、
私たち人間の抑制された部分と同じことではないか?と思いました。

人間、誰もが完璧ではなく、コンプレックスの固まり。
そして自分の言いたいこと、心の中で思っていることを我慢している。
それが歯止めであり、調和。
そのたかが外れた時、人は暴走してしまう。
そんな印象を受けました。

自分の考え、意思をあえて抑えていたにもかかわらず、
それを解放することにより、本来の自我が目覚める。
ただし、それは大きなリスクを伴う。

たとえば、あの人は、勉強ができない、運動ができない、
仕事ができない等、いろいろ言いたいことはある。
それをあえて言わないからこそ、安定、調和、平和に繋がっている。
しかしでも言うべき部分もある、その葛藤。
それを揶揄しているのかもしれませんね。
最近の民族主義的な考え方はその一因でもある。

シリアス展開もありながら、中盤あたりは、
劇も入れたい!ということで劇中劇もありました。
ここは完全にコメディ。
マンガやらアニメのパロディ満載。
このぐらい息抜き、楽しめる部分があっていいと思う。
ずっと重い展開はつらいですし。

さすがにこの劇中劇脚本は、高瀬友規奈ではなく、
後藤健流。
ジャンルが違い過ぎますから。

この舞台、音響もすごくしっかりしています。
SEやM、ダンスナンバーの曲もいい。
開演前のオルゴールのようなループ曲も印象的。

ヴァンパイアのマツゲの異常な長さ、
ゾンビである、コープスバレリーナのメイクも怖かった。

最後のきっかけとして、五十鈴姫が目覚める場面。
じつは彼女が魔女であり、総元締めで、
化け物、妖怪たちを操っていた・・・みたいな感じかな?

気になった役者は・・・
みなさんプロなので、気になった部分だけ。
ちなみに、じつは透明人間?幽霊?として、
ジョージがいます。

基本、主役はキャット、タム役のエリザベス・マリー
kiddy2001に観劇。
古いな〜
役者としては、ココスマイル3(2003年)の印象から。
で、まず思ったことは、おそらくだけれど、
天然な雰囲気、性格は、この時から全く変わっていない。
良い意味で全く成長していない(笑)
あのまんますぎてビックリする。
もちろん、人それぞれの受取り方やら、対応があるので、
ケースバイケースではありますが。

このタムという役。
けなげに一所懸命に頑張るものの、失敗してしまう。
この雰囲気、役柄がエリザベス・マリーにピッタリ。
まー演出家が高瀬友規奈ですからね。
彼女のことを理解しての配役でしょう。
エリザベス・マリーファンは、観ていて楽しいと思う。
「みんな頑張っているのに、私だけダメ」
「なんとかしなくちゃ。頑張る!」
みたいな、けなげな姿が本当にかわいい。
あの困ったような笑顔の表情付けには、男はやられてしまう・・・

今回ダンスも披露していましたが、
ま〜凄い。
ダンスのレベル的にどういうものなのか、
私はわかりませんので割愛しますが、
激しさ+柔軟さは印象に残っています。
今回は歌が無かったのだけが残念かな。

日本人形(五十鈴姫)役の音河亜里奈(外山亜里奈)
これからは音河亜里奈が芸名になるのかな?
彼女の演技を見たのは、
アルゴミュージカル『あんず』2000年ですね。
他にも見たことありましたが、ちょっと忘れました。
舞台というか、発表会かな?
かつて、NHK教育テレビ「おどろんぱ」のアリシオンですからね。

まずこの役の雰囲気に驚く。
威風堂々として、「Freak box」を仕切る、古株のおかみという感じ。
この役だからだけれど、目つきも鋭いし、嫌味な雰囲気もあるし、
全身から発するピリピリした大御所オーラがすごい。

今回、声のトーンを役柄によって変えたようで、高く設定。
この役は特殊で、二重人格というわけではありませんが、
もうひとつの人格があり、そちらが通常の声質なのかな?
正直言うと、ここの変化がイマイチわかりづらかった。
もうちょっと声質の変化、雰囲気の変化があって良かったかもしれない。

ただ、彼女の気合を感じる場面がある。
この役はゼンマイ仕掛けという設定で、
背中のネジが切れると止まってしまう。
そのネジが切れた時、客席に顔向けて床に倒れます。
機械仕掛けの人形が止まっている・・・
ということで、彼女の瞳も見開いたまま。
まばたきひとつしない。
まさに人形そのもの。
2分、いや、もっとあったでしょうか?
私、ずっと見てましたからね。相当なもの。
気合入りまくりでしょ。

かつて、桃のプリンセス 1996年で、
桜井智が人形を演じていたことを思い出しました。
この時はほぼ出ずっぱりなので、機械仕掛けということで、
定期的にまばたきをする人形という解釈で、
数十秒ごとにあえてパッチリと、
観客がわかるようにまばたきをしていました。
それでも間隔は短かったですが。

物凄い女優になりましたね。
今度は、もう少し普通の役とか、通常の声のトーンを聞きたい。

ツインズ(ガルシア/デイジー) 後藤健流/後藤紗亜弥
このふたりは、本当の兄妹で、パフォーマーでもあるようですね。
ダンスの切れは物凄い。
タップダンスも披露してました。

この役は本当に独特。
言い方に誤解があったら申し訳ない。
彼らは生まれた時から腕がつながっています。
兄の左手と妹の右手。
だから、いつも一緒にいることになる。
それゆえの「Freak box」。
かなり深い。

途中、夢の世界?ということで、
二人とも手を離して、自由にダンス。
言葉には出さないけれど、
それぞれの思いがあることでしょう。

後藤健流の口調や雰囲気、どこかで観たような・・・と思いましたら、
キャラメルボックスの岡田達也に似ていますね。
「また逢おうと竜馬は言った」の本郷役の雰囲気そっくり。
声質も凄く似ている。

基本、ツッコミの人。
面白い。特に劇中劇でのツッコミは、客席の代弁者でもある。
アニメ「銀魂」の銀さんみたいなツッコミだな〜とも思いました。
このぐらい歯切れのいいツッコミがないと、
舞台の雰囲気がよどんで重くなってしまますから。
彼のツッコミは物凄く重要。
このツッコミを含めての劇中劇。

後藤紗亜弥は少し舌なめずりなセリフ口調。
たぶん、普通に聞いているぶんにはほとんど違和感がないレベル。
あくまで私が思うに、相当な発声、滑舌の練習をしたでしょうね。

フランケン(ウォルター)役の加賀谷真聡
Kiddy2003 不思議なアメ玉以来か(汗)
ちなみに兄は加賀谷一肇。

久々すぎるほど久々なので、でかくなった印象が強い。
新・国立劇場小劇場前の池で遊んでいたことなんて、
本人記憶にすらないでしょうね。
それはそれとして。
まさか、フランケンのタップが観られるとは思いませんでした。
演技的にも、気の弱い部分のフランケンはイメージピッタリ。
惜しむらくは、今回はみなさん化粧が濃い役なので、
素顔のカッコイイ姿も見たかったな。

今回の脚本、演出の高瀬友規奈
主役は役者なので、演出家のことには触れないのが当然なのですが、
一回だけ。
GANg(1997年8月)の観劇ですが、
申し訳ないけれど、このパンジー役は後から気づいたので、
当時は全く覚えていません。
申し訳ない。
ハッキリ覚えているのは、ココスマイル(1999年再演)のカラス役から。
ここから、ココスマイルシリーズ等、けっこう観ています。
で、彼女も昔とちっとも変わらないことに、まず驚き。
特に驚きなのが全体のスタイル。
前述した1999年当時の体型とほとんど同じかも。
どこのモデルかと思ったぐらい。
本人言わないだろうけど、相当毎日鍛えているでしょうね。

子役として女優をしているものの、
当時から彼女は他の人は違う雰囲気を持っていました。
どちちかと言えばファッション的なものとか、知的な部分とか。
それが脚本、演出まで手がけるようになると思いませんでしたが。

現時点で、女優もやっているので、
野球で言う、プレイング・マネージャーでしょうね。
三谷幸喜みたいな感じでもある。
あの人は出たがりなだけですが。
今回のこの舞台を観て、正直興味を持ちました。
とても楽しい舞台だと思います。

それにしても美人すぎる脚本・演出家兼女優。

総括
子役の時のイメージから、どれだけ変わったか、
高瀬友規奈がどんな舞台を作り上げるか、
そういった部分で興味がわいた舞台でしたが、
予想以上に激しいダンス、
そして独特な世界観をかもしだしていて驚きました。
素直に高瀬友規奈の才能に惹かれます。
次回作があるとしたら、本当に気になる。
私的にはものすごくオオスメな舞台。
私もこれからできるだけ注視していきたい。

ちなみにこの舞台チラシのイラスト、幻想的でとてもすばらしい。
舞台を見終わった後に、このチラシを観るだけで思い出が蘇る。
いい仕事してます。
(敬称略)
トップ   観劇一覧   キャスト