ミュージカル「GANG〜がんばれタイガー!」2011

満足度
◆公演時期 2011年12月10日〜11日
◆会場 成城ホール
◆脚本 福田陽一郎
◆音楽 玉麻尚一
◆制作総指揮 郡司行雄

あらすじ
1933年シカゴ。
ギャング同士の争いに巻き込まれて父を失ったビル。
クラブに集まった仲間たちは、なんとかビルを慰めようとします。
『新しく、自分たちの手でクラブを経営しよう!』
みんなの意見が一致します。
しかし、そう考えたのも束の間、
クラブ経営を狙うギャングのボス、ドン・ワルサーが現れ、
仲間たちは落胆の色を隠せません。

そして、ビルたちは大人たちとの対決を決意することになります。
(公式サイトより引用)
観劇感想
過去に何度も観た作品で、
歌詞なんてほとんど覚えていて歌えるくらいです。
初演なんて、物凄いキャスト。
私は観劇できず、再演からでした。

ただ、最近は見る機会がなく、
この作品に関しては久々の観劇。
なにもかも懐かしく感じます。
自分で観劇感想を調べてみたら、2006年以来ですね。
この時もランランが絹川麗でした。
舞台の内容についてはそちらを参照してください。

とにかく、まず一番思ったことは、
このミュージカル「GANG」という作品の完成度。
やっぱりすごい。
導入部分のOPの華やかさ、
演劇、ミュージカルナンバー、
しっとりとした曲もあり、コメディチックな曲もあり、
舞台もテンポよく進む。
子供やご高齢の方が見ても飽きることがないと思う。
ファミリーミュージカルとして、完成されている作品と言っていい。
久々に観て、それをあらためて感じました。

この舞台の脚本家である、福田陽一郎氏、
そして、OPナレーションの野沢那智氏、
いずれも亡くなられていることを聞くと、
とても感慨深くなりますね。

歌に関しては男性陣が圧倒的に弱い。
前からか最近からはわかりませんが、
男性の歌の部分はかぶせなんですね。
どこぞのアイドルグループもあるようですが、
ま〜仕方のない部分なのかな。

それから、初舞台の人もいるし、緊張していたせいもあるけれど、
表彰が固い役者が多かった。
経験を積まないと、柔軟に笑顔を作るなんて難しいけれど。

タップのところは5人体制だったか、6人体制だったか。
けっこう増えたんですね。
相原えみりがセンターで、前野千尋や春菜ゆりか、
(あと忘れて申し訳ない)
頑張ってました。
タップが華やかだと楽しい。

気になった役者は・・・
ダブルキャストでないぶん、
意外とキャストが多く、誰が誰やら、ちょっと把握できない人も数人。
パンフレットの写真と、実物との兼ね合いも難しいご時世。

で、先に言っておきますと、
ビル役の上村海成がつらい。
覇気がないし、気合が足りない。
声も小さめ。
なんというか、
「最近の子供は固めの食生活ではなく、
柔らかいものばかりだから、口が大きく開かずに、
子供の時から声が低い」
という話を何かで聞いたことがありますが、
そんなことを思い出すほどの声質。

初舞台とはいえ、演技は我慢して観られるとしても、
歌がね・・・
ビルは特にソロもあるし、リリーとのハモリもあるしで、
じつのところ歌唱力はかなり重要。
それがつらいと、OPもガッカリしてしまうし、
リリー役の相馬毬花のハモリのプラスアルファが逆にマイナスになるほど。
クライマックスの場面がアレだとつらい。

演技うんぬん以前に、もうひとつ気になったのが、
アゴが上がるところ。
ここは修正していってほしい。

ルックスいいし、
ちょっとなよなよした草食系なビルはいいんですけど。
まっ、それがなぜビルを演じることになったかは、
「ところがどっこい、
夢じゃありません。
現実です!
これが現実!」
カイジの一条のようなコメントもしたくなります。

観客はもとより、本人も自覚しているでしょうし、
舞台にかける熱い誇りを持っているキャストたちとの稽古を積んでいれば、
自分のやるべきことが見つかっていることは言わずもがな。
とりあえず私は二度も同じことを言いたくはないのでここまで。

ただ、そんなビルでも
主役がう〜んでも、
舞台はけっこうどうにかなるもの。
逆に、他のキャスト陣の
「自分がやらなきゃ!」
という意思が強く芽生えたのかもしれません。

その筆頭と言っていいかどうかわかりませんが、
プラム役の相原えみり
違うんですよ、彼女は。
舞台にかける意気込み
気合覚悟精根決意
生半可な入れ込みようじゃありません。
それがビシビシ客席に伝わってきます。
おそらくは憎まれ役をかってまでも、
この舞台を成功させようと叱咤激励し、
意気込んでいたのでしょう。
相原えみりのそういった部分は、
初舞台が多いキャスト陣は見習うべき。
チケット代を払って観に来ていただいているお客様に対する、
プロ意識。
もともと姐御肌的な役柄がプラム。
普段は、もうちょっとコメディチックな部分もあるのだろうけど、
今回はみんなを引っ張るイメージがかなり強かったです。
ダンスナンバーも、タップのシーンも、
じつにみんなを引っ張っていたと思う。
影の功労者。

ヒロイン、リリー役の相馬毬花
2006年のアルゴミュージカルの時から観劇していますが、
実力のある女の子。
ついにリリー役とは本当に驚きます。
ただ、正直、実力ある女の子であることはわかっていましたが、
リリー役としての色気とか華がどうなるのか、
こちらについてはかなり気になっていました。
もちろんある程度の演技や歌はほしいけれど、
観客が感情移入できる「華」がないと、
リリー役は観ていてつらいものがあるのが現実。

じつのところ、私は物事を悲観的にとらえるタイプなので、
かつて茨木亜由美が、リリー役を演じるにあたって、
「本当に大丈夫かな〜?」と思っていましたが、
いざ舞台が始まってみると、全く問題ありませんでしたからね。
他人が心配する以上に、役者は決まった役を無難にこなしていくもの。

相馬毬花もそれにならい、全く問題の無いリリー役でした。
あいかわらず表情はコロコロ変わり、
柔軟性があってかわいい。
セリフづかいもうまいし、
ある意味ベテランなので、演技力も十分。
彼女の演技はクセがない自然な感じ。
これがいいのか悪いのかは人それぞれ。
四季の稽古や、他の養成所とかですと、
また違った演技を身につけますから。
相馬毬花の演技は超自然体という感じです。
正直、リリーはちょっと悪女的な感じもあるのですが、
ま〜性格が出るのか真面目な印象。
色恋沙汰で計算高いリリーではなく、
全くもって悪気がない赤ん坊のような感じ。

で、その「華」の件ですが、なんとか頑張りました。
衣装がピンクなので、じつのところ肌の露出した衣装よりも、
着ていた時のほうが可愛らしい。
というのも、別に彼女に限りませんが、
最近の女の子はめちゃくちゃ痩せているんですよね。
もうじゅうぶんだよ・・・と思っても、
まだ痩せたい、なんていう人もいるぐらいですから。
男性から見る視点と、女性から見る視点が違うのは前からですが。
かなり体の線が細いというのも、難しいところ。
役によっては、その細さがいいこともあります。

その細い体でのダンスは文句なし。
脚も上がるし、後ろにも伸びる。
柔軟性高いですよ。
歌唱力もあり、本人のソロ、ローズとのナンバー、ビルとのナンバー、
無難にこなしていたと思います。
ビルの子がもっと歌唱力あれば、さらに倍加されたことと思いますが。

気になる点といえば、あくまで私の印象だと、
まだ全体的にジュニアの域かなと思う。
特に歌。
普通にうまいけれど、まだまだ物足りない。
おそらく他の同世代の子たちは、
さらに上を目指して頑張っているし、稽古も積んでいることでしょう。
のびしろがたくさんあるので、まだまだ先を期待したい。
ヒロインを演じることができる、というその一点だけでも個性ですから。
誰でもできる役ではありません。

メアリ−役の間瀬富未子は物凄く若い印象。
いままでのメアリー役よりも一段と若い感じ。
衣装チェンジなんてありましたっけ?
あの華やかな衣装はかなり目立ちました。

久々にワルサ−役の郡司行雄先生も拝見しましたが、
おべっか使うわけでもなく、全然変わりない。
素直にすごいと思いました。
めっちゃ若い。

ロ−ズ役の押川バアナ紗慧は初めて観ましたが、
なかなかよくやっています。
ローズ役にはピッタリな感じ。
ハキハキしていていて、セリフ遣いもいい。
やはり一番の見どころは、ソロと、リリーとのミュージカルナンバー。
「あなたが見つけてくれたから」
毎回GANGの舞台の話しになると、
ここのナンバーが重要だと言ってきましたが、
押川バアナ紗慧もよくやっています。
ものすごく難しい曲ですから。
ローズ最強説ですと毎回のことで申し訳ありませんが、加藤あすか
この人は段違いにうまかったです。
彼女に追いつけ・・・というのは難しいと思いますが、
そこまでいたらなくても、このナンバー良くやっていました。

ランラン役の絹川麗を観るのは二度目ですが、
意外と淡白で、淡々としたランランなんですね。
みんなとの一体感というよりも、
私についてくれば大丈夫的な感じを受けました。
髪形も・・・なんというか、あんなワンレンな感じでしたっけ?
最近は観ていないので、ちょっとビックリしました。
演技、歌はま〜普通かな〜と思いますが、
「ジャイオ・ラオフー」の舞台劇。
ここもかなり淡々とした感じ。
私の中では、凛々しくてはかないイメージがあるのですが、
こちらは冷淡で怖い感じ。
襲い来る敵を華麗に滑らかに「スパッ」と切るのではなく、
重苦しく「ズブッ」と刺す感じ。
殺陣の連携の部分も、私が観た回がたまたまだったのかもしれませんが、
ちょっと荒さが目立っていたので、清廉してほしい。
華やかは華やかなんですけどね。
ランラン役は、ど〜しても瀧川瞳の印象が強く、申し訳ありませんが。

チ−タ役の長谷川和輝
申し訳ないけれど、やっぱりチータがしっかりしないと。
タップも彼かな?
大変だったろうけど、
チータ役として物凄くよくやったと思う。
あとは、もう少し若さがあるとね。

私的に男性の中では、ラビット役の塙海斗が印象的。
ちょっとおどけた感じとか、意外と難しい役。
ポーカーのところのセリフとか、私は好きですね。

アマリス役の田辺恵都は、発声が印象的。
彼女もハキハキしている。
すみません、ダンスはそこまチェックできなかった。

チェリ−役の入澤楓華はおいしい役。
表情付けもしっかりしているし、
次期プラムのような、姐御肌な雰囲気もある。
ただ、私的にひとつだけ残念なのは、セリフの、
「チェリーわからない」ってところ。
あそこは音楽とのからみで、どうしても早口になってしまうんですけどね。
もうちょっとカツゼツしっかりして、うまく調整できたらなお良かった。

ピ−チ役の中村優芽
彼女は「森は生きている」等、舞台歴もあって、
とてもうまい。
主要キャラクター以外の中では、ナンバーワンの出来ばえだと思う。
まずとにかく表情付。
コロコロ変わって、とてもかわいい。
存在感も抜群。
すぐにどこにいるのかわかるもの。
演技もしっかりしているし、ダンスもできる。
今回はピーチ役だったけれど、
今後は上位の役が必ず来るでしょうね。
予言ではなく、必然。
間違いなく伸びていく。

マーガレットの花田美和と、
パンジーの辻端優里は化粧が似ているせいかもしれないけれど、
雰囲気も似ていて見分けがつきませんでした。
2回観れば、背の高さ等で判断できたかもしれませんが、
1回だと難しい・・・
二人とも切れ長の瞳が可愛いんですけど。

フリージア役の春菜ゆりかはタップを頑張ってた印象が強い。
あとは表情付かな?
せっかくかわいらしいルックスなのに、
もっといろいろな表情をできた方がいいと思う。
私的に凄くもったいない。
演技、歌、ダンスももちろん大事だけれど、
表情の作り方も重要。

ベル役の竜愛美
初ミュージカル?
にしては、意外と舞台度胸があった気がします。
ルックスかわいいし、スタイルいいし、今後人気でる予感。

デイジ−役の古川未結
意外とルックスとか雰囲気が相馬毬花に似ている。
笑顔が魅力的。
この子もルックス可愛いので、人気出そう。

アンサンブルだったけれど、
スイートピーの濱田蓮江は、表情を良く作っていた。
彼女の笑顔も魅力的。
私はちゃんと観るとこ観ますから。

小さい子のメンバーは、正直特にどうこういう人はいないのだけれど、
コスモス役の影山実奈は印象に残りました。
表情がいいのもそうだけれど、ダンスもいい。
NEWSエンターですか。
逸材を見つけてきますね。
レッスンは他でもやっているかもしれませんが。
来年、再来年あたり出てきそうな感じ。

総括
ファミリーミュージカルとして、ほぼ完成された作品。
そこに見合うキャスト陣を、いかに配役するかが肝。
普通にキャスティングをすればハズレのない作品で、
観劇初心者の方を含め、誰もが楽しめると思います。
メッセージ性もあり、ダンスシーンもあり、ソロのナンバーもあり、
全てにテンポ良くバランスがとれていて、
観客を飽きさせない秀逸な作品。

相馬毬花のリリーはかなり心配したけれど、
予想以上に良かったです。
それよりもなによりも、やっぱり相原えみりの気迫。
これが、初舞台の人にも伝わっていることを願う。
(敬称略)
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