ミュージカル「きみにとどけ・・・〜この愛永遠に時をこえて〜」

満足度
◆公演時期 2011年2月12日〜13日
◆会場 伊勢崎市境総合文化センター
◆脚本・作詞 田村綾子
◆演出・統括・作曲 石橋俊二
◆統括助手 田村綾子
◆振付 田村花恋
◆舞台監督 小林裕子

あらすじ
突然、この世を去ることになった中原重兵衛は、
少女ミーシャに導かれて天国へ向かう。
そんな中、地上への行き来を一週間だけ許された中原は、
唯一の親友との別れの時を迎える。

(パンフレットより引用)
観劇感想

基本は地域密着型の市民ミュージカル。
ただ、メインキャストに劇団四季出身者の石橋俊二氏をはじめとして、
数人のプロの役者も参加しています。

意味合い的に、
収益のことは考えず、慈善事業に近いかもしれません。
地域貢献。

パンフレットもとても豪華。
オールカラー。
これだけ立派なパンフレットは、
市民ミュージカルでは見たことありません。

開演前の客席は、
地方のミュージカルとしては異例と思えるほど満席。
開演前の会場アナウンスは田村花恋でしょうか?
幕が上がってのオーバーチェア的なものは無し。
少し間をおいてもいいので、個人的には全員登場の群舞は欲しかったところ。
市民ミュージカルだからこそ、私的には華やかさがほしい。
ダンスレベルはそう簡単にあがるものではないから、難しいけれど、
観客の導入部分においての盛り上がりは、もっとほしかったです。

脚本が、女性だな〜と思いました。
特に、真理子と建志のところ。
女性の恋心。
友人から、「頻繁に女性から電話がかかっている」と言われても、
動じない。
建志を信じている。
結果、やはり建志は自分のことを愛していたとわかる。
普通は、ちょっと二転三転する可能性もありますが、
ここはストレートに誤解であることがすぐ解消されます。
やはり、女性の内面、願望、理想が表れていると思います。

今回気になったのはマイク。
よくある頭の付近につけるマイク。
あれって、けっこう高性能ですよね?
普通の市民ミュージカルではできないと思います。
詳細な値段設定は存じあげませんが、
コストかかっているな〜と思いました。

ミュージカルナンバーの「君にとどけ」
舞台終了後も、観客と一緒に歌いあげました。
私は歌うことが好きなので、一緒に歌うことは大歓迎。
「ミュージカル・アニーのクリスマスコンサート」は、
何でやめてしまったのでしょうか?
観客と一体になるのが嫌なんでしょうか?
それはともかく、メインテーマとしてかかげるぐらい、趣のある良い曲。

ミュージカルナンバーの「その一歩」は、
ちょっとココスマっぽい。
ここだけ俗にいう、ファミリーミュージカルのような雰囲気でした。
明るく楽しい曲がこれぐらいなのは寂しいところですが。

ミュージカルとして、伝えるべきもの、メッセージ性があるもの、
特にないもの、いろいろあります。
私としては、まず、一番に思ったことは、
血のつながりが無い者同士の家族の絆。
これだと思います。
一番のポイント。
姉の娘を家族として迎えた妹。
そしてその妹と結婚をする予定の男性。
3人とも、直接的な血のつながりはない。
でも、家族としての絆を大切にする。
これじゃないでしょうか?
というか、実の父親も母親もいずに、
ここまで明るく元気に素直に育った栗原光もすごいですが。

上演時間は途中休憩15分をはさんでの2時間30分。
正直ちょっと長いと思います。
私は、観劇大好き人間なので、
何時間でも観られます。
ただ、市民ミュージカルの場合ですと、
そこまで観劇に慣れてない方もたくさんいますし、
お年寄りの方も、年齢の低い子もいて、
腰が痛くなったり、椅子の座り心地が悪くなったり、
飽きが生まれることも考えられます。
市民キャストの出演シーンの問題もあるとは思いますが、
やっぱりもうちょい削っていい部分はあります。
難しいところなんですけどね。

一番印象に残るシーンは、
田村花恋、田村芽実、石橋俊二、3人の場面。
ここは素晴らしいですよ、役者として実力者同士のぶつかりあいですから。
ものすごく惹かれるし、引き込まれます。

物語のクライマックス、ひで爺が時空のはざま?に飲み込まれて、
どうなるのかわからなくなります。
が、結果的には無事に脱出。
私としては、自分のことはいいから、アレだけは渡す・・・
という脚本も考えられますが、
市民ミュージカルなのでハッピーエンドの方がいいでしょう。
市民ミュージカルで暗いエンディングはまずいですから。

久々の市民ミュージカルの観劇。
初舞台の方もたくさん出演されていましたが、
半年以上の稽古を経ての舞台。
努力した結果の成果、そのパワーを感じました。

気になった役者は・・・

ミーシャ役の田村花恋
魔法使いサリー、そしてラブリーズと観劇して、
彼女の舞台を観るのは3回目。

彼女は受験真っ最中。
にもかかわらず、ほぼ主役級。
さらには、役者という立場だけでなく、
宣伝媒体、告知、裏方等、スタッフの仕事もこなしています。
それだけこの舞台にかけているのでしょう。
このミュージカルを成功させるために費やした彼女の熱い思いが、
いろいろと伝わってきます。

ミーシャ役は18歳なのですが、
ずいぶん誇張した演技。
演技演技している。
コテコテな感じ。
かなりあくの強い演技で、誇張しているようにも思えます。
なぜかな〜と思いつつ観ていましたが、
なるほど、後半になってわかりますが(ネタバレになりますが)
本当の年齢はかなり上のようですね。
つまりは、イメージとして18歳の姿ということで、
濃い〜演技だったわけです。
私の中では、本当の年齢は人生の中堅どころだけれど、
18歳の姿なのでウキウキしている、みたいな感じ。
そこまで考えて計算した演技だとしたら奥が深い。
「奥さまは魔女」のサマンサっぽい華やかさで、
演技的には、よくいる隣のおばさん、
冨士眞奈美、塩沢ときっぽい感じ。

演技もさることながら、歌もものすごくうまくなっています。
驚き。
これは相当ヴォイストレーニングを積んでいるでしょ。
じつに魅力的な歌い方。
しかも母親の立場としての歌ですから、
歌い方としても難しい。
さらには、このナンバーの作詞、作曲のことを考えると、
感情移入、気持の伝え方、尋常ではない心情。
それが痛いほどよくわかる。

「歌う」ということは、
作詞家、作曲家の代弁者。
今回の場合はまた特別。
同じように歌いあげないと・・・と思っても、
やはり別の意識が自然に出てくるでしょうね。
気持伝わってきますよ、ものすごく。

歌声的に、どちらかと言えば低音でしょうか?
そこまで高音ではなかった気がします。
子役のイメージですと高音の女の子が多いけれど、
大人の低音で聞かせるタイプですね。重きを感じます。

何より今回の舞台で思ったことは、
田村花恋の人を引き寄せる力。
「華」はもともとある方でしたが、
今回の「華」は物凄かった。
彼女の一挙手一投足に、観客がひきこまれます。
ひとり舞台ではないけれど、
彼女ひとりの演技に魅了される。
まだ15歳ですからね。
それでここまでできるのは、すごい。
ただ演技がうまいだけでは、
観客に伝わらないことが確かにあることを改めて認識。
子役レベルならまだいいですが、
大人の女優になるためには、
彼女のような雰囲気をかもしださないと今後がつらいかもしれません。
もちろん、人それぞれの個性ですが、
「華」に関しては田村花恋の演技はたしかに魅了されます。

出演、裏方を含め、まだ15歳でここまでやるということは、
今後も彼女にとって、何らかのきっかけにはなるでしょう。
AKB48なんて「屁のつっぱり」
本物がここにいますよ。

栗原光役の田村芽実は、
ま〜うまい。
ココスマイルの主役のココですし、
私がエターナルファンタジー演劇大賞2010の最優秀女優賞に選んだほど。
心臓病ではあるけれど、かなり元気いっぱい。
正直、雰囲気的にはココとあまり変わらない(汗)
というか、こういう役柄は得意でしょうね。
すごく合っている。
お笑いっぽいところも。
おそらく、ご老人がこの舞台を見た時に、
こういう孫がいたらいいな〜と思う感じ。
孫の対象として見ると、田村芽実は抜群。
元気で明るく素直で、老人にも優しい。
そして、母親への愛情を伝える部分は・・・熱い。
感情こもりますよ。さすが。
客席からも、鼻をすする音と、すすり泣く声、かなり聞こえました。

歌唱力的には、もちろん、姉には到底及びませんが、
普通にうまいもの。
ダンスもすごく綺麗。
ひとりだけうまいというのも、
全体的なバランスとしては寂しいものがありますが。

全体的なバランスから言えば、
中原重兵衛役の石橋俊二が主役。
プロですからね。特に言うことはありません。
私としては、イマジンミュージカル アルプスの少女ハイジ 2003年での、
おんじ役が印象的。
老人の時よりも、やっぱり若返った時の方がいいな〜
ギター弾きも見応え、聞き応えありました。

佐々木美加役の野美緒は良い演技をする。
と思ったら初舞台のようです。ビックリ。
すごくこの役にハマッてました。
ルックスはとてもかわいらしい、華がある美少女。
と思いましたら、21歳なんですね。
ど〜りで演技がうまいと思いました。
ただ、田村芽実とあんまり変わらないので、
普通に同い年にも見えます。
年齢よりも幼い演技、すばらしかったです。
年齢を書いていなければ、全くわからないでしょう。

私的に栗原真理子役、須藤晶代も雰囲気があっていい。
意外とヒットでしょ。
ほんわか感がある。
この配役はバッチリでしたね。

他の子役は素人レベルとは思いますが、
私はふたりピックアップ。

花咲さくら役の遠藤文夏
この子は王道的に、ひじょうにしっかりしています。
表情もだらけることなくしっかりしているし、
見映えもいいし、ダンスもよくやっている方。
けっこう目立ちました。

もうひとりは、高橋はる役の飯山実穂
彼女はうまいのだけれど、
どちらかと言うと独特な個性。
物腰、振る舞い、ちょっと他の子役とは違う雰囲気でした。
そこが面白い。
セリフも多く、彼女に期待を寄せている感もありました。
化けるかもしれませんね。

総括

私のイメージからして、
小川亜美が主役を演じた『赤毛のアン』 2002年 劇団ひまわりに続くほどの、
伝説の舞台となりえます。
それほど素晴らしい。
一生に一度しか観ることができない舞台かもしれない。
その舞台を観ることができて、本当に幸せでした。

下は5歳から上は70代までもが半年間、
全てを優先してこの舞台にかけてきました。
2時間半の舞台いっぱいに詰め込まれた愛を感じに来てください。
4公演で最高2400人はいる劇場・・・

2400人はすごい人数だと思いますが、
この素晴らしい舞台をみられるのはそのたった2400人だけです。
{幸せの定員}だと私は思います

いいこと言いますね、 田村花恋は。
ブログの文章や書き方だけでも、
彼女の精神的な一部分をかいま見ることができます。

市民ミュージカル、チケットの値段設定。
ほぼ、慈善事業に近いでしょう。
そこに、田村花恋、田村芽実、石橋俊二、小田切俊一、と、豪華すぎるメンバー。
普通に4、5000円は払える舞台。
これだけのレベル、クオリティの舞台を観られるなんて、そうそうありません。
地域の活性化につながると本当に嬉しい。

(敬称略)

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