◆ 甘梨 AMARI


◆公演時期   2009年3月28日〜29日
◆会場 アイピット目白
◆created SEIJI★KOBACHI(J)
◆主催 (株)S.A.B Compny

あらすじ
遊眠舎主催の「対人関係克服セミナー」は、
離れ小島にあるペンションを貸し切って泊まり込みで行われる。
ペンションに存在するのは、講師と7人の参加者のみ。
一週間の共同生活の中で他人との関わり方を見つめ直すはずであった。
初めての夜に、殺人事件が起こるまでは・・・
犯人はいったい誰なのか?
警察を待つ間、残った7人の心に疑心暗鬼の闇が覆う。
(パンフレットより一部抜粋)
観劇感想
よしもとザ・ブロードキャストショウ東京
新人セクション&1期生旗揚げ公演「我愛尓 War I Need」に続いての観劇。
ザ.ブロードキャストショウ東京 2nd Party

まず、公演場所であるアイピット目白という場所が初めてでした。
目白駅近くで、回りは完全に民家。
その中にひっそりと存在します。
地下に降りると・・・けっこう広くてビックリ!!
客席も150ぐらいあるでしょうか?意外と広い!
舞台もほどほどに広い。さらには奥行きがあります。
それにプラスして照明の設備もしっかりしている。
これは驚きの劇場。
客席から舞台を見上げるのではなく、見下ろすので、ひじょうに観やすい。
こんなすばらしいところがあるなんて初めて知りました。

さらに観客が満席!
すごい・・・
というのも大学生やら20代前半の若い人がひじょうに多い。
なんとなく耳に入ってくる声を総合すると、
同じように劇団に所属している人もいるようですね。
もちろん、友人関係も多い。

今回はサスペンス。
サスペンス、けっこう好きなんですよね〜
小学生の頃に江戸川乱歩シリーズをほぼ読破してますし、
アガサクリスティ、シャーロックホームズ等、
小説もほどほどに読んでいるつもりです(忘れているエピソードは多数)
ちなみに映画の「シックスセンス」も最初でネタバレ読めました(笑)

さて本編。
いきなり講師が殺されたところから始まります。
しかも7人が参加しているセミナーなのに、今いる人数は8人!
まさにマンガの「11人いる!」ですね。
(10人のはずなのに11人いる。
けっこう他のドラマや映画やマンガにもオマージュされています)

ここで暗転。
オープニングの映像が入ります。
最近はオープニングやエンディングで映像が入るのが多いです。
暗転して舞台。
舞台に光が当たるとさらに4人死んでいます(爆)
生きているのが早くもわずか4人。

正直この舞台、大丈夫かな?と思いました。
あまりに突拍子もないことをやっていくと、最後にまとめるのが大変ですから。
ちょっと嫌な予感が走りました。

と、また暗転。
そこで映像として時間がスライドとして掲示されます。
20時30分・・・
つまりは、時系列をどんどん変えていく手法。
殺人が起こった後に、少し前の時間に戻ります。
逆に未来の出来事になったりもします。
未来の最終系は裁判の行方まで一気に飛び、
過去の最初の部分は、たしか六カ月前の話まで出てきます。
なかなか奥深い。
わかる人にはわかりますが、お年寄りはちょっとついていくのが大変かも。

閉鎖された空間。
8人のメンバー全員が「この中に犯人がいるかもしれない」
そんな疑心暗鬼が心の中にうずまきます。
そして、最終的にはある人物に疑いがかかり、他の人の賛同を得ながら殺害・・・
ベルトでの絞殺ですが、う〜ん、意外と窒息は復活することがあるんですけどね。
殺したと思って、じつは気絶していただけなんてよくあります。
できたら、やはりナイフの方が確実性はあるかな?
もちろんナイフも、場所によっては致命傷になりませんが。

サスペンスということもあり、時系列を変える以外にもトリックがありました。
そのひとつとして携帯電話。
舞台の上手に兄、下手に妹が登場しお互いに電話をしている・・・
と思いきや!
兄が電話を切った後も、妹は話しを続けています。
じつは妹が電話をかけていた相手は兄ではなかったんですよね。
その話しが終わった後、お兄さんに電話をかけるところで暗転。
ここの演出はうまい。私も騙されました。

細かい部分としては、喫茶店での演出。
二組の客がいて、一方は影で見えません。
ひと組の客のやりとりがメイン。
で、後に裏表逆になり、もういっぽうの客のやりとりがメインになります。
この手法は、映画やドラマ、最近ではCMもありました。
さすがにこれは私も読めました。
向こうが誰の話し相手かまではわかりませんでしたが。

この場面にウェイトレス役として、
池下奈奈が登場するのですが、ここだけ。
「我愛尓 War I Need」ではメインキャラであっただけに残念。
なにか伏線くるかな〜と思いきや、全くありませんでした。
ちなみに、ここで客とのやりとり。
俗にいうファミレス用語のツッコミ。
「○○のほう」とか、「○○になります」とか。
尊敬語、謙譲語、ていねい語。ここの日本語はけっこう難しいです。
正しくは、「○○でございます」かな?

この時の小道具のコップも印象的。
オセロの黒と白のデザイン。
細かいところですが、こういうところで観客に不安感を与えるのかも。

時系列で過去に戻りますが、話の伏線があるのは3人だけ。
時間の都合もあるとは思いますが、
他のメンバーもどうしてこのセミナーに参加することになったのか?
そこを知りたかったです。

部屋の電話が突然通じなくなったこともあり、
2階にある電話が通じるか確認をしに行きたいのですが、
犯人が8人の中にいるということで、部屋から勝手に外出することもできず、
簡易的なビンゴの道具で決めることとなります。
当たったビンゴの番号は4番。
滝沢路子がビンゴと言って部屋から退出しますが、じつはビンゴしたのは他の人。
ここは私も読めました。
当たった人がひとりで行くのが怖いので、
善意で代わりに行ってあげる・・・そんな感じですね。
その善意の行動が逆に・・・という伏線。

開ける前の缶に毒を入れる・・・
正直、ここは無理があるかな〜?
毒殺される心配がないからこそ、缶入りの飲み物を頼みますから。
開ける前の缶に工作するのはかなり至難の技。
やや開けやすいビン、またはペットボトルという選択肢であれば、話しは通じます。

そもそもなぜこんなにも怪しいセミナーに参加したのか?
まとめる大人がひとりしかおらず、
しかも男がひとりも配置されていないという管理体制はどうなのか?
「対人関係克服セミナー」に参加するということは、
それだけでも心に病を持ち、
精神的にも不安定なメンバーが来ることが予想できます。
であれば、緊急事態は想定していないとね。

この舞台では死体がたくさん出ることもあり、
現場の証拠として数人が携帯で写真を淡々と撮ります。
その時のシャッター音が各々様々。
緊張している中での、場にそぐわない携帯の無神経な明るく面白いシャッター音。
観客に笑いも起こりますが、明らかに現代社会への皮肉のひとつでしょうね。
突然、死体が4体も増えるという、
通常の生活では起こることがない、ありえない現実。
それによる精神感覚の麻痺。
このあたりも面白い。

でもって、一番最後が初めの殺人となる、講師への殺害全内容。
ここの演出はすばらしい。
しかもあそこに・・・・・・さすがにネタバレはできませんが、とにかくうまい演出。
最大のトリックは、私も予想だにできませんでした。
ただそれはさておき、犯人があの人とは・・・
いくらなんでも、講師がドジすぎたとしか言いようがありません。
銃や飛び道具、毒等ならともかく、直接攻撃であるナイフで刺されるって・・・
ほどほどには防御できたとは思うのですが、ま〜お話しですから仕方ありません。

とはいえ、この舞台。
ただのお話しですむ話しではありません。
秋葉原の連続通り魔事件。
殺人事件が起こり、人が生死をさまよっている状態での、回りの集団心理。
携帯でパシャパシャ殺害現場を撮る感覚。
事件を伝えるアナウンサーの後ろでせせら笑い、ピースサインをする人々。
自分が報道記者と思っているかのように、現場の中継をする者。
そういったことに対しての皮肉が数々散りばめられています。

せっかくなので、私も現代社会について一言。
独断と偏見で言わせていただきます。
率直に言って、まず携帯が悪い。
あまりにも簡単にネットや電話ができる。
私なんて、ワープロのパソコン通信のモデム「ガーガーピーピー」する時代をへて、
インターネットでも、
ウィルスやブラクラに何度もあいながら色々勉強をしてここまでやっているのに、
携帯は簡単すぎますから。

誰でも使いやすくするのが当然。
それはわかります。
ただ、使いやすく進化していくことが、果たして本当にすばらしいことでしょうか?
思い起こされる話。
手塚治虫原作の「火の鳥 未来編」
全人類が滅亡し、たったひとり生き残った青年。
何の因果か火の鳥の力を与えられ、永遠の命を授かります。
老人のままでの永遠の命。
人類の滅亡、新しい生命の誕生、
その繰り返しを永遠に見つめることになる苦痛。

ひとつの時代。
人類は滅びますが、やがて新しい生命が誕生。
それが「ナメクジ」
ナメクジが二足歩行をはじめ、どんどん進化をしていき、文明を持ち始めます。
車を作り、ビルを建設し、人間と同じ進化をとげていきます。
ところが、結局人間と同じことを繰り返し滅亡。
最後の最後に死んでいくナメクジが話しかけます。
「なぜ、わたしたちの先祖は、かしこくなろうと思ったのでしょうな。
もとのままの下等動物でいれば、もっと楽に生きられ、
死ねただろうに・・・進化したおかげで・・・」
この言葉はあらゆる意味において深い・・・
私もいろいろ考えさせられました。
なんて、たまには哲学的な意見も取り入れてみました。
たまにはね。
やや哲学的なサスペンスでしたので・・・
乱筆乱文、ご容赦ください。

気になった役者は・・・

今回の舞台は、パンフレットにもキャスト表がありません。
出演者の名前のみ。
舞台自体も、たしか名前を出しているのは2、3人だったと思います。
なので、パンフレットの顔で判断するしかありませんが、
間違っていたらごめんなさい。

まず一番の驚きは滝沢路子の変貌。
ビックリ〜〜〜!!!
2004年のNEWSエンターテイメントスクール自主公演から、
『東京メッツ』2004
BEST DREAM 04 2004年
NEWSエンターテイメントスクール第5回自主公演 2006年
『フレンズ ガラクタ怪獣のなみだ』2006年
「我愛尓 War I Need」 と、
ま〜ほどほどに観てきたのですが、モデル系の超美人になっていてビックリ!
どこの美少女タレントかと思いました。
さらには、もともとそんなに太っていませんでしたが、そうとうしぼりました。
体型、スタイルがまるで違う。
舞台に登場した時、客演の人かと思ったぐらいですから。
普通にモデルとして通用するでしょ。
宣材写真、まるで違うもの(爆)
化粧や衣装で女性は化けますが(汗)
いい舞台女優になったな〜と感慨深いです。

今回の役は、気の強い役柄。ロックシンガー的な雰囲気。
ある意味ピッタシ(爆)
とにかく舞台に現れた時点で、他の出演者とは雰囲気が違います。
ま〜他の出演メンバーが「対人関係克服セミナー」用のジャンバーを着ていて、
彼女は着てないせいもありますが。

声の張り、すごいんですけど。めっちゃうまくなってます。
やや低音ヴォイスで、セリフ回しもうまい。
気の強い役柄ということもあり、観客にもわかりやすいし、
演じる方としてもやりやすい部類。
それを差し引いてもうまい。
前回観た、「我愛尓 War I Need」 の演技とはまるで違います。
驚きの女優になりました。これはまいった。
2009年現在、19歳。
小学生から舞台をやっているわけでもなく、本格的始動は中学生ぐらい。
それでこの実力。
幼稚園、小学生、中学生、高校生、大学生、社会人、
本格的な演技に目覚める年齢は、人それぞれでしょうね。

彼女の路線としては、同年齢の演劇集団でしょう。
子役とからむ舞台とは違います。
子役ばかりのファミリー系の雰囲気とは違う学生の雰囲気が、
観客からも漂ってきました。

栗原梢は、「我愛尓 War I Need」でもかなり印象残っています。
滝沢路子同様に気の強い女性役。
性格がかぶっているわけではありませんが、ややイマイチかな?
気の強いふりをしていて、本当は強がっているだけ・・・
と、私は予想していましたが特に何もありませんでした。
言うなら言うで、もっと心から突き放すセリフがほしい。
イマイチ、うわべだけのセリフに感じられる。
そもそもこんなにハッキリ自分の意見を言える気の強い子が、
なぜ「対人関係克服セミナー」に来たのかが謎。
そのあたりも本当は詳しく知りたかった。

斉藤千夏はなかなかうまいです。
「我愛尓 War I Need」にも出演していましたが、
こちらはやや印象が薄い。
今回はどちらかというとリーダー的で、
常識人っぽい性格なので目立ったためかもしれません。
ある意味、サブ主役に近い。
表情のつけ方もいいし、セリフ回しもいい。
目の力強さが印象的。

田中麻友
天然系、不思議ちゃんのような性格。
声もやや声優っぽい、かわいらしい声質。
彼女の演技は微妙だな〜
演技なのか、元々がそういう雰囲気なのか、判断が難しい。
ま〜ハキハキ喋る役ではないので、それはそれでアリでしょうか。
ただ、電話で話すシーンもありますし、
おっとりした中でも演技は頑張っていました。

水谷真利子
最初に謝っておきます。ごめんなさい。
じつは・・・・・ずっと舞台観劇中男の人だと思ってました(爆)
男の子が女の言葉を使う、いわゆる性同一障害かな〜と思って観てました。
だからこそ「対人関係克服セミナー」にも通じる・・・と理解していのですが、
返ってパンフレットを見ると、男がひとり足りない(汗)
良くみると女性でした・・・・・

総括
一番の心配は、妄想、夢落ち、超能力、
SF等でごまかされるのだけは勘弁してほしかったのですが、
現実の世界での話しで安心しました。

閉鎖された空間での、若者たちのせまい思考、疑心暗鬼、それゆえの悲劇。
今の社会に対する疑問を投げかけるものもあり、
私としては受け入れることができるサスペンスでした。
トリックもひじょうに痛快。

(敬称略)


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