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HMCと劇団ぼるぼっちょ 音楽劇「パンピスの森」

満足度 星星星空星空星
公演時期 2019/5/22→6/2
会場 浅草九劇
脚本・演出・作詞・作曲・振付 安倍康律
作曲・編曲 杉田未央
振付 碓井菜央

あらすじ

パンピスの森が伐採され無くなってしまう。
それを聞いた木こりの娘ベルーカは、
自分に好意を持っているインフェル男爵を利用して存続させようとしていた。
一方、インフェル男爵に好意をもつグリッサーノも、
ポカポレウスや妖精たちのサポートでパンピスの森を守ることを条件に、
彼の心を自分に振り向かせようとしていた。

愛夏の夜の夢

そう。誰もが観ればわかるが、
演目はシェイクスピアの「真夏の夜の夢」を彷彿させるというか、
インスパイアしている。
そこにHMC(Hyashi Musical Club)のリーダーである林愛夏の愛夏を引っかけている。
「愛夏の夜の夢」
と、私は勝手に解釈している。
演出、脚本家の愛なのだろう。
ここまでお膳立てしてくれるなんて、なかなかない。

浅草の舞台

何度か浅草で舞台観劇をしているが、
客層が結構独特。
この舞台を予約して観劇する人もいるが、
フラッと入る人もたくさん。
本当に「粋」な感じ。
そういった人たちをいかに引き込むかが集客のカギになるとは思う。

特にピッピ役の原田薫は、
それを意識しているのかしていないのかはわからないが、
粋でいなせなセリフ口調と雰囲気が抜群だった。
浅草独自の雰囲気(こういう喋り方が好きそうな客層)を意識した演技だったのかな~
なんて思ったりもする。
意味合いとしては、妖精パックに近い。
ちなみに彼女の独特のモヒカンみたいな髪形、
「殺人を無罪にする方法」の女性上司に似ている。

全体的な印象

音楽劇と銘打っているが、まさに「THE音楽劇」そのものだと思う。
シェイクスピアの古典演劇をモチーフに、演技演技していいと思う。
自然な演技というよりかは、コテコテに誇張した濃い~芝居。
そのコテコテな部分がコメディとして笑える部分もある。

正直、台本はまだまだ荒削り。
いろいろ試行錯誤する部分はたくさんある。
林愛夏がHMCとして初めてプロジェクトに参加するものであることも否めない。
まだ個々の力が強い感じ。
みんなプロですからね。
これが柔和してくるといいかも。

物語の内容として


パンピスの森を存続させるため、
ベルーカとインフェル男爵をくっつけさせるか、
グリッサーノとインフェル男爵をくっつけさせるか、のドタバタ劇。
後半はさらに相手を好きになってしまう天使の矢(だっけかな?)を巡る騒動に。

流れとして飽きる部分はありませんでした。
要所要所にコメディが入っているし、
しっかり見せたい部分もあるし、
ミュージカルナンバーもある。
物語自体の流れとしても、
特に辻褄が合わない部分とか違和感は感じませんでした。
まぁコメディですからね。
楽しめればいい。

ピッピとロロンのやりとりは、けっこう独特な間合い。
ここは舞台玄人でないと面白さが難しい。
さらに言うと、バークレンがブルーカに思いを寄せる場面は、
舞台のテンポから言うと、ちょっと重い。
元々がフワッと流れる舞台だから、重さが残る。

商業演劇として

今後はもっと商業演劇として、お金を取る舞台を考えなくてはいけない。
エンターテイメントとしても。
それゆえの物販とか、チェキとかサインとか、いろいろなことを考えないと、本来は。
なんて興行的な発想にもなる。

旗揚げ公演なのだから


失礼千万は承知の上、私的な意見としては若さもほしい。
コロスでふたり出演していたが、このふたりをもっと活用してほしい。
旗揚げ公演は完璧さは求めない、これからの成長に期待をしたい、
そういう観客も多いと思う。
俗に言う、みんなで育てるというもの。
そういったものがあるといいな。


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ピックアップ

  • 生演奏なので、それがプラスしてのミュージカルナンバーは素晴らしい。
  • コテコテ演劇はいいけれど、もう少しエンターテイメントにして、少し子供向けにしてもいいかも。
  • ベルーカの兄ダルドンの活かし方がもうひとひねりほしいところ。他のキャストととのからみも少ないし。ちょっともったいない。ここはもっとふくらませられる。
  • バークレンのベルーカ好きな部分は、もう少し大げさでも良かったかな?引っ込み思案しすぎる気もする。

気になった役者は・・・

みなさんプロなので、私が感じた部分だけ。

林愛夏 ベルーカ役。
直近だと、「クラブ シャーリー」を観劇しています。
この時とはまた雰囲気が違いますね。
セリフもカツゼツもさらに良くなっている。
何より歌がいい。
それがすぐにわかる。
まだ23歳か。やりたいこと何でもできる。

目元パッチリ。
か弱い清楚な役はハマリ役。
さらにドジッ子とか、ボケな感じだとより面白くなる。

主役プラス、今回は前述しているとおり、
HMC(Hyashi Musical Club)のリーダーで旗揚げ公演としての位置づけ。
お客様に対しての思いは今まで以上のものがあったと思う。
稽古も相当積んだことでしょう。
私が観るかぎり、セリフ間違いはいっさいありませんでした。
ソロのミュージカルナンバーもとてもいい。

どこか他のタレントも言っていましたが、
彼女ほどピュアで真面目な子はまずいない。
そう言い切れる。
とはいえ、そんな子が芸能界で生き残れるか?という部分もある。
自分アピールをしないと無理な世界ですから。

一番思ったことは、
言葉遣いも、声も仕種も、出会った時と全く変わっていない。
本当にピュアそのもの。
すごいことだ。
ただ、このままだと可愛く清楚な子役のイメージのままの女優。
いつかは大人の女優を演じることになる。
その時、この雰囲気自体を無くさないと、脱却しないといけない。
断然たる覚悟が必要になる。
急に変わることはできないから、ゆっくりと。
その変化にファンがついていくかどうかだ。
アイドルから女優の道へと行くと言うことは、そういうこと。
そこをどう乗り越えるか興味がある。

NHKの朝ドラ。
最近はオーディションをやめて事務所の忖度になってしまったけれど、
過去には元アルゴミュージカル出身の佐藤夕美子が主役になった経緯もあるし、
サプライズを起こしてほしいものだ。
今は相当難しいけれど。

神田恭兵 バークレン役
昨年「High Fidelity」を観劇したが、その雰囲気とはまた違った感じ。
印象がまるで違う。
役者なので、当たり前といえば当たり前なのだけれど、
ハマリ役とかできるとそれのイメージが先行しますからね。
観客の方が固定観念で観てしまう。
それを変えられる役者こそプロなんだな~とつくづく思う。
歌唱力は言うことありません。
しかも生演奏ですし、とても贅沢。
木村花代とのミュージカルナンバー特に。
そりゃ、矢を探す時、パートナーはこの二人にしますよね(笑)

木村花代 ロロン役
ミュージカルアニーではファレルを、
「Ordinary Days~なにげない日々~」ではクレアを観劇。
有名どころすぎてお話しになりません。
私が批評するなんておこがましい。
でも感想書きますけど。

お茶目で可愛らしい役、本当にご苦労さまです。
おそらくこういう変化球の役、すごく楽しんでいたのではないかな?
ハイテンションで、いたずら好きで、幼稚園生のような知能、というか言葉づかい。
ま~妖精さんですからね。
屈託のない子供のような笑顔はとても素敵だな。
歌に関しては言うことないでしょ。
前述しているように、神田恭兵とのミュージカルナンバーは絶品。
聞かせていただけるだけで感謝。

林勇輔 インフェル男爵
ある意味というか、率直に言うと裏でも何でもなく、
彼が主役だと言っていい。
彼がいなかったらコメディでも何でもないもの。
他のメンバーだけだと、面白さが伝わらないでしょ?
舞台で笑いをとるって難しいこと。
特に私みたいな気難しい人がいる舞台で、笑いをとるなんて、
並大抵の苦労ではない。
そういう観客を笑わせるというのは、本当に大変なこと。

普段のルックスはトレンディエンジェルの斎藤さんに近いが、
子供の時のイメージは、ロバート秋山が演じる子役タレント上杉みちのよう。

碓井菜央 グリッサーノ
率直に言って、とても魅力的な女性だと思う。
ベルーカの魅力と互角ぐらい。
表情の変化が楽しいし、目つきもいい。
子供時代も非常にいい。
何かゾクゾクするものがある。
奇妙奇天烈なインフェルの男爵に恋する娘グリッサーノだが、
とても心を奪われた。
コメディの中でも彼女はせつない演技。
これがまたいいんだ。
主役を食いそうなぐらい。
ちなみに彼女は振付も担当。

用松亮 ポカポレウス
素直に面白かった。
基本ボケなのだけれど、最後のツッコミは客席一同代表しての気持ちだな。
そりゃ~ベルーカ推しになりますよ。
彼と林勇輔がコメディの肝ですからね。
この二人は本当に重要。
ここがこけたら何も面白くなくなる。

寄川未結 風・コロス役
彼女は背が高く、笑顔も目立つ。
もしかしたら林愛夏よりも目立つかもしれない。
それだけ素敵な笑顔だった。
笑顔だけでなく表情もとても豊か。
座っていてもよく目立つ。
ダンスシーンもとても見応えがありました。
地味ではないので本当に良く目立つ。
あまり目立ちすぎないよう、抑えた感じもある。

佐野舞香 風・コロス役。
もうひとりのコロス。
彼女はクールビューティー系かな?
清々しい雰囲気が漂う。
アルゴ・ミュージカルネタで申し訳ないが、
雰囲気的には中村桃花(現・中村百花)に似ている。

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総括


HMC(Hyashi Musical Club)の旗揚げ公演。
コテコテな音楽劇なので、とっつきにくい部分はある。
コメディがメインなのだけれど、林勇輔の個性が無いと面白さは半減してしまう。
舞台のテンポもまだまだ改善の余地があると思う。
ただ、今回が旗揚げ公演。
次回公演の成長がまた期待できるとも言える。

※敬称略
キャスト表