Score produce「Ordinary Days 〜なにげない日々〜」

満足度
◆公演時期   2013/10/17(木)→22(火)
◆会場 上野ストアハウス
◆演出・訳詞 藤倉梓
◆作詩・作曲 Adam Gwon
◆企画・制作 Score
◆プロデューサー 由佐憲靖

あらすじ
誰もが一度は悩む問題…
大切な人の事、将来の夢の事。
大都会ニューヨークの片隅でも、同じことを悩む人がいる…
(公式サイトより抜粋)

観劇感想
オフブロードウェイのミュージカル作品。
日本初演。
ほぼ歌メイン、歌い続けるミュージカル。
ダンスはありません。
英語の歌詞を日本語に訳すのだけでも大変。
ニュアンスとか、いろいろありますからね。
それだけ日本初演としての意気込みが伝わってきます。

私が観た配役は、クレア、木村花代。ジェイソン、松原剛志。
デイブ、北川理恵。ウォレン、染谷洸太。

まず思ったことは、ピアノの村井一帆が素晴らしい。
ほぼ歌メインで90分、ずっとピアノを弾いてます。
私はピアノを弾けないので、本当に尊敬してしまう。

歌メインで、表情もつけて、抑揚もつけて、歌いあげる。
しかも生ピアノ。
尋常ではない。
生ピアノで歌うことがどれだけ大変なことか、
わかる人には本当にわかる。
しかも今回、かけあいもありますからね。
ダンスはしないけれど、歌だけでも、相当体力は消耗するでしょう。

ただ、あくまで私の感じたことですけど、
歌だけだと、物語としての間や静けさ、メリハリが難しいと感じました。
もちろん、アップテンポの曲とか、バラードっぽい曲とか、
曲調は変わるんですけど。
セリフを歌で歌いあげるということは、
歌詞がセリフだから、それを観客も理解して聞かないといけない。
独唱の場合だと、セリフをずっと聞き続けることになる。
いわば、歌手が入れ代わり立ち代わり、
歌謡ショーをやっているよう。
もちろん、それがこのミュージカルの肝なのですが、
私としては、ついていくのがやっとでした。

通常のストレートプレイであれば、
セリフのひとつひとつが入ってきて落ち着いて観られるのだけれど、
こちらはそうはいかない。
歌メインという舞台は、好き嫌いが別れるな〜と素直に感じました。
ここにまた、ダンスが入ってくると話しは別になるのかもしれませんが。

客層も若いし、みな、頭の回転が速いのだと思う。
コメディチックなところも、若い人が気づいてよく笑う。
私にはテンポが早く、舞台の流れに置いていかれてしまう。
このカンパニーのファンなのか、出演者のファンなのか、
そういったミュージカル、舞台への目が肥えている観客が多い気もします。
特に舞台好きでもミュージカル好きでもない人が、
この舞台を観た時には、異なった印象をもつでしょうね。
全体的に敷居が高く感じました。

話の内容的には、
デイブが大学に提出する卒業論文(?)を無くしてしまい、
それをウォレンが見つけ二人が出会うという流れと、
クレアとジェイソンというカップルのゴタゴタ話のふたつ。

ウォレンの真っ直ぐな清々しさもいいし、
デイブの神経質でありながら、コミカルな雰囲気もいい。
そして二人が出会うことによってデイブの中で何かが変わり始める・・・
とはいえ、恋愛ではなく、ウォレンはゲイなんですけど。
女性とゲイの友情、アメリカはこういうパターンが最近多い。

クレアにはかつて恋人がいたが今は別れていて、
ジェイソンが今の彼氏。
でもチグハグな関係。
そんな中、ビルの屋上からビラがまかれる光景を見かける。
それは、まるで「9.11」のよう・・・
クレアの元恋人は、その時に亡くなっていたんですね。
まさか、そこに持ってくるとは予想外でした。
アメリカらしいといえば、アメリカらしい。

そして、じつはこのビラ(正確にはメッセージ付のビラ)をまいたのは、
ウォレン。
街でビラをひとつも受け取ってくれないことで、
ついにビルの屋上から。
そのいきなりの展開に唖然とするデイブだったが、
ウォレンの気持ちにふれ、ついには自分も屋上からビラをまくことに。

このビラ、というかチラシをまく演出も、そうとう練習したでしょう。
いかに綺麗にまくかと。
そしてチラシ自体の色合いも、計算していた気がしますね。
カラーバランスも良かった。

気になった役者は・・・

出演者は、みなさんプロなので、
私が言うことは全くありません。
「森は生きている」等、
たくさんの舞台に出演している松原剛志が出ているだけで、
「松原さんカッケー!!」と、能年玲奈の「あまちゃん」なみに、
叫んでしまうほど。

ウォレン役の染谷洸太は初めて観ましたが、
声質が大江千里に似ている。
歌唱力も当たり前のことながら抜群。
そして、このウォレン役も、ひじょうに合っている。
毎日毎日繰り返すビラ配り。そして、その真の思い。
ちょっと抜けている部分もあるけれど、それがまた繊細でピュア。
たしかにデイブが、会った瞬間に変な奴と思うのは当然として、
なんとなく会っているうちに、
彼の不思議な魅力に惹かれるのもわかります。
恋愛感情抜きに面白い人として。
彼のルックスもこの役になじんでいた気がします。
私は凄く良かった。

デイブ役の北川理恵は、私が言う必要もないのだけれど、
若手のミュージカル女優としては、最高レベルのひとり。
たいした賞ではありませんが、
2010年の第9回エターナルファンタジー演劇大賞のMVPに推したほど。
「ミュージカル プリンセス・バレンタイン」は素晴らしすぎました。
最近ですと、Seiren Musical Project 29th 「FAME」にも、
セリーナ役で出演していましたが、
あの役よりも、今回のデイブ役の方がかわいい感じ。
少し静かな役よりも、変人チックな方が彼女の魅力を私は感じます。
歌メインなんですけど、ま〜小芝居がうまい。
ズタボラな性格のデイブなのだけれど、
なんとなく姉さん女房的な部分もあり、
ウォレンだけでなく、物語自体をもグングン引っ張っていく。
ただ歌うだけでなく、タイミングとか、抑揚とか、歌い方の表現力も多彩。
アイドル的な「華」とはまた違う、
本格的なミュージカル女優としてのオーラ、パワーの持ち主。

ミュージカルとしての、歌、ダンス、演技、
少なくともこの3つのバランスが完璧な若手女優は、
間違いなく彼女が突出している。
ある意味、化け物。
完璧超人。
素人の観劇感想を書いている私にしてれみれば、
言葉すらない。

だからこそ、彼女に憧れる同世代や若い女優も多いのだろうな〜と思う。
「あんなふうになれたらな〜」という思い、理想が、まさに北川理恵だもの。
そうは思っても、到底その領域に踏み込むことはかなり難しいのだけれど。
あくまで自分の理想としてのミュージカル女優像を、
若手や子役は彼女に投影しているのかもしれない・・・
なんて、私の妄想。

クレア役の木村花代は元劇団四季の方なんですね。
印象的なのは体の線の細さ。
特に今回はパンツルックもあったせいか、かなり細い。
あくまで見た目だと、腕の線も細いし、
この体型で激しいダンスとかもするのでしょうか?
そこだけ凄く気になりました。

総括
この舞台は、生ピアノに生歌という、超絶豪華なお芝居。
と同時に、歌メインの舞台は、
歌で表現することが事務的作業になりかねないという、
デメリットの部分があることも感じました。
生ピアノではあるものの、流れは全て自分次第。
完璧にやればやるほど、それが事務的作業に陥りやすくなる恐れがある。
この怖さを感じます。
無論、この舞台は4人ともプロなので、そんなことは微塵も感じないのですが、
そうなりかねない怖さ、
諸刃の剣にも似たギリギリのところでお芝居をしているのだな〜と、
改めて舞台の奥深さを強く感じました。

歌の意味が、感情が、お客様に伝わっているのか?
受け取る側の観客も、全身で受け取らないといけません。
歌メインの舞台は、好き嫌い、本当に別れる。

(敬称略)
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