SET「土九六村(どくろむら)へようこそ」2016年


満足度
公演時期 2016年10月21日→11月6日
会場 池袋サンシャイン劇場
演出 三宅裕司
脚本 福田哲平
出演 三宅裕司 小倉久寛
大竹浩一 西郷みゆき
劇団スーパー・エキセントリック・シアター

あらすじ
東京から離れた土九六村では、村立30周年のお祭りが催されていた。
村長である吉蔵(三宅裕司)の一人娘・お龍(西郷みゆき)が中心となり、
歌と踊りで盛り上がり、今年の豊作を「ドクロ様」に祈る村民一同。
「ドクロ様」は村の広場にある鉄の扉のむこうにいると信じられているが、
村の若者たちは「ドクロ様」「村のしきたり」に違和感を覚え、
親世代の村民たちとぶつかっている。

その急先鋒がお龍だった。秘密を抱え、“本当のことが言えない”村長や家長たちは、
若者たちに対して説得力に欠ける行動や言動が多くなってしまう。
30年間“秘密の任務”をしていた村長からの提案で、
彼らは密かに“ある人物”と連絡を取り合うことにした。

そんな村に移動型ミュージカル劇団「放浪座」がやってくる。
団長兼演出家のヒロ(小倉久寛)とメインボーカルで息子のアツシ(大竹浩一)は、
土九六村に巨大な鉄らしき反応があるという情報を得ていた。
「村民たちは何かを隠しているー」彼らもまた、単なるミュージカル劇団ではなかった。
(公式サイトより引用)
観劇感想
劇団スーパー・エキセントリック・シアター第54回本公演。

大きな流れとしては、
土九六村に、神様と崇められているドクロ様がいる。
→村の広場にある鉄の扉の向こうにいると信じられているが誰も入ったことがない。
→ドクロ様信仰に対する若者の不信感もあり、村民の代表が高齢者に助言を求める。
→長年守り続けていた老人たちは認知症のようなボケが始まっており、話にならない。
→村民たちの代表が村長に相談をし、やもえなく村長も政府と連絡をとる。
→そんな村に、移動型ミュージカル劇団「放浪座」がやってくる。
→じつは彼らはトレジャーハンターであり、村にあるお宝を狙っていた。
→ミュージカルで村民たちを虜にし、その隙に鉄の扉の奥へと忍び込んでいく劇団員。
→鉄の扉から出てきた劇団員は、悶絶した後に絶命する。
→中にあるものと関係があるのか?

SETは「昨日たちの旋律」~イエスタデイズ・メロディー(1998年)から観ています。

申し訳ないけれど、最初の時点でネタバレが予想できてしまった。
村、秘密、地下、政府が関与、
これがそろった時点で私は最初に思い浮かべたのは、
産業廃棄物、核廃棄物の保管施設ではないのか?と。

政府が最初のネタバレとして「油田」と言っていたので、
それを逆手にとって、まさか核の廃棄物だと当たり前すぎるから、
さらに違うものかな~?と考えてはいたのですが、そのまんまでした。

この脚本のネタ、高校演劇であった、
「翔べ!原子力ロボむつ」に似ています。
(青森県の高校。と言えば、そう、六ヶ所村)
この話しは、核のゴミを町長が無害になるのを見届けるため、
何千年、何万年、何十万年と、コールドスリープしながら見守っていく話。
しかしいっこうに変わらない現実。いつしか人間もいなくなり・・・
こんな内容です。

話の内容は違いますが、言っていることは一緒。
このこともあって、私は面白く感じませんでした。

話の内容もテンポも今回は悪い。
もしかしたら、今までSETを見た中で一番脚本が面白くないかもしれない。
話しが単調すぎて、大きな変化もなく、裏の裏の裏もなく、
私は面白さを感じませんでした。
歌とか、ダンスシーンはいいんですけどね。
物語の内容は全然ダメ。
ちょっと原子力政策、政府を皮肉ってますよ感を出しているのはわかりますが、
物語として面白くない。

SETが今さらながらこのネタをもってくる?というのが率直な印象。
今さら感が強い。
もちろん、重要な事案であることはわかるけれど、
それでも二転三転する物語が欲しかった。
何も解決しないもの。
突拍子もないアイデアを出すのが脚本だと思うけれど。

さらに気になるのは暗転。
タイミングとか、切れもわるい。
何かしり切れトンボ。
この暗転になるタイミングのセリフの内容も、イマイチ納得がいかない。
暗転するセリフにも、次へとつなぐ重要なセリフやら、落ちやら、
意味深い言葉があるとは思うけれど、それが全くない。
何か凄く違和感を感じました。

オープニング。
毎日、とある数値を記載する役目の村民。
いつもはだいたい同じ程度の数字だが、
ときたま大きく増えることもあるという。
その数値の秘密がわかる後半にかけては、
それがいかに危険な数値であるか、驚くこととなる。
この秘密はまずまず良かったかな?

また、高齢者たちが健康のために飲んでいたサプリメントが、
じつは認知症を進行させるための薬であったというのも、意外だった。
そして、そんな認知症を患っていても、
昔の一部の記憶は忘れてない歌詞を伏線に使っていたのは良かった。
何気ない言葉が、じつは意味があるというのはなんとなく理解していましたが。

物語の内容にいつもながらのコメディ要素も入れてくるのだけれど、
今回、私には全く合いませんでした。
あくまで私の分析として、笑いのツボの年齢層がどんどん高くなっているのではないか?
と考えてしまう。
だからこそ、年配の方は笑えるけれど、若い層はかなり厳しい。
三宅さんと小倉さんのアドリブっぽい二人芝居のところは、
毎回毎回楽しみではあるけれど、あくまで昔から観ている人の楽しみであって、
新規客の開拓にはつながらない。

だからこそ、これも毎回毎回言うのだけれど、
SETは初期古参メンバーと新人メンバーだらけで、
中堅がほとんどいないのが痛い。
上が詰まっているため、なかなか若手が続かない。
この致命的なバランスの悪さが今回の舞台、如実に現れてしまった。
その典型が、ヒロインを演じた新人、西郷みゆきの起用。

新規客を取り組むために、ヒロインに若手新人の西郷みゆき
ルックスは普通かな~?
ただ、そもそもの時点で気になるのは、セリフ回しや、演技力。
緊張もあるだろうけど、正直観ていてつらい。
いや、普通に観れば問題はないんだろうけど、
他の若手の舞台と見比べると、レベルの差がハッキリしてしまう。
私が観劇している子役や大学生の役者の方が遥かに上だもの。

新人を起用するの痛いほどよくわかるのだけれど、
それでもなぜ彼女なのか、私は気になりました。
これでも新人の中で一番の実力者なのかな?
それとも雰囲気で選ばれたのか?
ひじょうに謎。

それと気になるのは歌唱力。
本編でも、そんなにうまくないということで、
ネタにされてはいたが、そもそも本当にあまりうまくないのか?
それともじつはうまくて、そう演じているだけなのか?
そこがわからない。

最後に白土直子、丸山優子と3人で歌うシーンがあるが、
3人一緒に歌ってしまうので、本当にうまいのかは判断できない。
私的には、最後にひとりでソロを歌ってほしかったな。
本気モードで。

舞台の最後の方で、小倉が三宅に向かって、
「また会えますよ」
という言葉を何回も念入りに発言していました。
さらにもうひとひねり、どんでん返しがあるのかな~?とか、
未来の話しがあるのかな~?と思いましたが、
全く何もなくエンディング。
何コレ?
これだけ思わせぶりにしておいて、何もない。
これにはガッカリ。

前に観劇した、藤原竜也、小栗旬が出演した「ムサシ」
脚本が超有名な井上ひさしさん。
3時間30分という長丁場の舞台でしたが、飽きることのないお話しでした。
ただ、ひとつだけ残念なのはエンディングの内容がグタグタ。
台本が遅れることが有名な井上ひさしさんなので、
適当だったことがうかがえます(笑)

そのこともあり、今回のこの舞台も脚本の人が遅延で、
最後の結末が置いてけぼりにしたのではないか?と感じました。
何も解決せずに終了。
いくらなんでも、観客に放り投げすぎ。
この「落ち」はハッキリ言って嫌いです。

ダンスはとても見応えがありました。
そこが一番かな?
物語の内容よりも、こちらの方がいい。
小倉久寛さんも頑張ったけれど、そこをアピールせざるをえないのが、
SET本公演のつらいところ。
まっ、三宅さんと小倉さんの二人がメインだから仕方ありませんが。

白土直子丸山優子の歌が素晴らしいの当然だけれど、
二人のスタイルも尋常じゃないでしょ?
すごく細くて驚きます。
今回の舞台は若手を前面に押し出しているため、
出番が少なめでもったいない。

そんな中でも、大竹浩一の熱い演技はいい。
伝わってるくるんですよ、彼の演技は。
つぶらな瞳というのは言い過ぎだけれど、
たいしたことないはずなのに力を感じる。
アツシの熱い演技と、
「嘘を言ってはいけない。偽ってはいけない」
と他人に諭しながら、自分はカツラ・・・という矛盾は素直に面白かったです。

西海健二郎も、中堅どころとして、
いつも地味だけれど印象に残る役を演じている。
今回もとぼけた感じが本当に良かった。
舞台のアクセントとしては本当に重要なキャラ。

申し訳ない。
SETの中で、良田麻美が一推し。
東京メッツ(2003年)時代からの流れなので、申し訳ない。
色気もあるし、歌の実力もあるし、表情豊かだし
観てるだけで楽しい。
もう中堅メンバーだが、舞台上では若さ全開。
今回の役は美味しいところもあるけれど、私としてはまだまだ物足りない。
新人起用するのは痛いほどよくわかる。
でも、だとしたらもっと前に良田麻美や池辺愛をドンドン前に押し出して欲しかった。
タイミングが遅いな~

総括
前述していますが、歴代の中でも一番話がつまらない。
『パジャマ・ワーカーズ ON LINE』もつまらなかったけれど、
それよりひどいレベル。
核廃棄物処理の話を題材にするのであれば、
私のような演劇評論家に予想されないような台本を作ってほしい。
面白おかしく解決してくれるのが脚本家でしょ?
何より結論を観客に放り投げるのは、政府が年金対策や消費税、
議員定数削減等を後回し、次世代の人に任せようと考えているのと同じ。
「翔べ!原子力ロボむつ」は、さらにその先をいっていたのに。

笑いについては、私は全くついていけませんでした。
面白さがわからない。
自分でもヤバイな~と思う。
私の感性がダメなのだろうか?
笑いたいのだけれど、なかなか笑うタイミングがない。

舞台でも話されていましたが、
主要キャストの年齢が高齢化し、三宅裕司が65歳、小倉久寛が62歳。
その舞台を観る観客層。

いろいろとターニングポイントのような気がします。

(敬称略)
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