アサルトリリィ × 私立ルドビコ女学院 vol.2「シュベスターの秘密」


満足度
公演時期 2016/9/16→25
会場 サンモールスタジオ
原案 尾花沢軒栄
脚本・演出 桜木さやか
楽曲 谷ナオキ
ダンス振付 藤堂光結
アクション振付 加藤学

あらすじ
近未来の地球、
人類はヒュージと呼ばれる謎の巨大生物の出現で破滅の危機にあった。
全世界が対ヒュージという一事に団結し、科学と魔法の力を結集した
「CHARM」と呼ばれる可変型特殊兵装の開発に成功する。
CHARMは比較的女性に高いシンクロを示すことが多く、
CHARMを扱う女性は、「リリィ」と呼ばれ英雄視されるようになる。
世界各地にリリィの養成機関である
ガーデンが設立され対ヒュージ戦の拠点として、人々を守り導く存在となっていった。
これはそんなガーデンでの、立派なリリィを目指して戦う少女たちの物語...

繰り返されるヒュージとの戦い。
上級生と下級生との間で結ばれる疑似姉妹関係「シュベスター」も佳境に入る。
そんなおり、ある人物が彼女たちの前に現れる。
それは、死んだと思われていた来夢の姉である未来であった・・・

※一部公式サイトより引用
観劇感想
原作は全く存じあげません。
前回公演があり、今回はその続きのお話。

アイドル系の舞台ですが、
女優の実力はありありなので、舞台として観るには全くもって問題無し。
基本、ストレートプレイの舞台。

正直、脚本が面白くない。

前回は第一弾ということで、
話の内容も新鮮で、初めての戦闘、個性あふれる初登場の仲間もあってか、
期待ワクワクの中で進行されました。
今回はその続きの話。
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で言えば第2作。
一番面白くて当然なところ。
ところが、こちらの2作目は起伏が少ない。
目新しさに欠ける。
ワクワク感は、断然前回の方が上。

話の流れ的には「来夢の姉、未来が生きていた」ということと、
上級生と下級生との間で結ばれる疑似姉妹関係「シュベスター」が、
誰と誰が契約した、というエピソードだけ。
話しの浮き沈みが小さく、変化が少ない。。
こういう内容の原作だからこその、脚本だから仕方がないのかもしれないが。

舞台を観ればすぐにわかるが、
戦闘シーンが多い。
戦闘して、学園生活に戻り、また戦闘シーンの繰り返し。
飽きる。
プロジェクションマッピング(?)の戦闘シーン、
殺陣を頑張っているのは重々承知なのだけれど、舞台の流れとしてはつらい。

そして、上級生と下級生との疑似姉妹関係「シュベスター」ということで、
二人芝居が多い。
それぞれの契約のシーンをピックアップするため、シーン自体が止まる。
一応、今回の主役は来夢こと前田美里なのだけれど、主役主役していない。
ほぼメインキャスト全員に美味しい部分が用意され、ピックアップされている。
その弊害が出てしまった。
二人芝居が多いということは、そのメンバーだけで稽古ができるので、
そういうことだな~とは思いますが、舞台の流れとしては止まる。

通常の学園でのシーンで、事件が少ないのも起伏が感じられない要員のひとつ。
宝城・モニカ・朝妃、立花・テレジア・渚が登場するものの、物足りない。
宝城・モニカ・朝妃と鳴海・クララ・優子が私闘はするけれど、
それほど大きな出来事でもない。

単純な「悪」というわけではないけれど、
サスペンス的なミステリアスな部分がほしかった。

前もあった演出だが、舞台前面に数人のキャスト、後方に数人のキャスト。
スポットライトを当てた部分で物語の進行。
スポットを変え、同時進行で物語を進行させるやり方。
これは嫌いではないので観やすい。

気になった役者は・・・
今回の脚本は残念だったが、出演している女優は一流。
どんな脚本でも、それを光り輝かせるために頑張っている。

前田美里 岸本・ルチア・来夢
前回に引き続いての主演ではあるが、今回はそこまで主人公キャラではない。
他のメンバーにけっこうスポットライトが当たるため、
要所要所での主人公といったところ。

演技はさらにできるようになった。
目を配らせるシーンも印象的。
姉との関わり、感情の高ぶりもいい!
彼女は観るたびに成長しているのがわかるので楽しい。

別件の話しだけれど、彼女はアイドルというくくりとしても素晴らしい。
天然でやっているのか、素でやっているか、じつは計算でやっているかはわからないが、
ファンに対する行動力はズバ抜けている。
私、別に前田美里のファンではないけれど、
もし私が中高生でアイドルのファンになりたいとしたら、
間違いなく前田美里でしょうね。
他の子とは全然違う(個性が違うから当然ではあるけれど)
アイドルなので、騙されて元々なんだけれど、
それでも騙されてみたい・・・そう思わす、惑わす雰囲気を彼女は持っている。
逆な意味での魔性の女。

こういうタイプもいれば、ド天然ほんわか系のアイドルもいる。
ただ、いかんせん本当に天然すぎて気づかない。
今はその天然ぶりにファンもついていくかもしれないが、離れていく人も多いだろう。
天然の子は、なぜ離れるのか気づかない。
こういう場合はアイドルとしての自覚、
武器を使って積極的にアピールすることが重要なのだが、気づかなすぎるのは困りもの。
したがって前田美里のアイドル力の高さに、私は敬意を評する。

栞菜 一之宮・ミカエラ・日葵役。
彼女も前回から。
普通に演技はうまいので、大きな変化がなくても安心して観られる女優。
前回とほとんど変わらないという、その安心感は大きい。
真面目だけれど、ちょっぴりお茶目な部分も見える。
そのギャップに萌える感じ(笑)
私的な意見を言わせてもらうと、美人でテレビ映えもいいから、どんどん経験を積んで、
テレビ等、メディアでも大活躍してほしいところ。

中村裕香里 福山・ジャンヌ・幸恵役
彼女も特に言うことないな~
演技力抜群だもの。
表情も、セリフも、何をやるにしてもカッコイイ。
戦闘シーンではない、学園での生活としては前回よりもトゲトゲしさがなく、
俗にいう、ほんわかな福山幸恵的雰囲気が漂っていた。
彼女は演技だけでなく、ダンスシーンも本当に魅力的。
今回新しいオリジナル曲ができたようだが、
その出だしで歌うのが彼女。
いかに中村裕香里の存在が大きいのかがわかる。
ルド女を背負っているものがある。

星守紗凪 雨宮・ソフィア・聖恋
彼女は初めて観ました。
前回は、緒方ももが演じた役柄。
違和感ないわ~
少年っぽい雰囲気も抜群。
表情付けもよく、ややつり目の威嚇するような瞳も効果的。
それがいつもではないから、そのギャップがいい。
本当に凛々しい。
セリフ回しも全く問題ないレベル。
聞き取りづらいと感じることはありませんでした。
ただ者ではないですね、彼女は。
今回はショートカットでしたが、
ロングの髪形では雰囲気がガラッと変わる。
今後ルド女が推したくなるのもわかる。

ひとつだけ。
星守紗凪という名前、というか芸名。
間違いなく中二病。
私が聖橋流を名乗っているのと同じ。
そんな思考回路だな、お互いに。

江藤彩也香 宝城・モニカ・朝妃
なるほど、元なんとかいというグループ出身の子か。
私はそちら系は全く知らないので、色眼鏡抜きで観ます。

まず表情がいいと思った。
凛としたたたずまい、芯がしっかりしたクールな視線が印象的。
髪形的には栞菜にも似ているが、見間違えるようなことはない。
キャラの性格的にも似ているのだが、それも差別化されている。
宝城・モニカ・朝妃という役を、彼女の個性で再構築している感じ。
再構築された宝城・モニカ・朝妃が、舞台上で思う存分発揮されている。
演技的にも、セリフ的にも、とりたてて違和感はない。
正直、私も彼女の演技に引き込まれそうになりました。
良い演技をする。
舞台女優としても非常に魅力を感じる。
推したくなりそうだ。
今後ひじょうに期待できる女優のひとり。
面白い。

白河優菜 立花・テレジア・渚役。
彼女はフカンショウジョから2回目の観劇。
ルックスは本当に美少女。
立っているだけで可愛い。

ただ、あくまで私の感想で申し訳ないが、普通の美少女。
普通というしかない。
前回もそうでした。
セリフはよどみなく出てくるのだけれど、イマイチ感情がない。
伝わってこない。
元々がそういう声質なのだろうか?
他のルド女に出演しているメンバーと比べても、
セリフは単調のように思える。
ただ、それが彼女の個性だと言えば仕方がないが。
私は気になるな~申し訳ない。

安藤遥 黒木・フランシスカ・百合亜
前回は未浜杏梨が演じた役を安藤遥が担当。
前に演じた役者のイメージがあるので、
バトンを渡された方は大変だったことでしょう。
同じすぎても自分の個性が失われてしまうし、
かといって別な性格にするわけにもいきませんから。

正直、最初は未浜杏梨が演じているのかと錯覚しました。
演技の雰囲気、少し変えたかな?ぐらいな感覚。
だがハッ!と我に返ってパンフレットを見返すと安藤遥の文字が。
演じ方が違うのもうなずける。

ただ単に冷たい感じという演技ではなく、
彼女の身に起こった現実がありつつの表情とセリフ回しなので、
演技の表現力がとても問われる役。
私はとても評価してあげたい。
冷たい表情の演技の中で、セリフで温かいもの見せてくれました。

ちなみにダンスでは、けっこうクールな印象が強いけれど、
笑顔のダンスを見せてくれました。
ダンスシーンはキャラ付設定抜きで、笑顔のダンスの方がいいと思う。
女優活動、大変だけれど頑張ってほしいな。
安藤遥はまだまだ伸びる。

緒方有里沙 松永・ブリジッタ・佳世役
前回、武器(チャーム)を持った時と通常の生活の時とでの変化が、
私はちょっと気になったことがあったので観劇感想に書きました。
そこから、どう変化したか?
う~む、少し変えてきたと思う(なんとなく)
武器を持った時の方がもっと激しくなった。
ギャップの差、変化が感じられる演技。
私は前回と比べるとはるかに良かったと思う。

華々しいメンバーの中でも、
三つ編みでメガネ姿という地味な印象を際立たせる役柄だが、
だからこそ彼女に負う役割は大きい。
元々演技はうまいし、声はでかいし、舞台女優としては実力ある女の子。
私的には、彼女の違う役を観てみたい衝動にかられる。
メガネ有りでも、メガネ無しでもかわいい。

藤堂光結 佐野・マチルダ・こころ役
今回も振付ご苦労さま。
ダンスシーンは言うことないでしょ。
見応えあります。
演技的にも安定していて、特に言うことないな~
緒方有里沙の松永・ブリジッタ・佳世役と二人のシーンは長い。
ここは見どころのひとつ。
お馬鹿な時代錯誤的な喋りを、違和感なく舞台に溶け込ます。
さすが藤堂光結といったところ。良い演技をする。

さいとう雅子 鳴海・クララ・優子
あいかわらずアイドルチックでかわいいルックスの持ち主だ。
「かわいいは正義」って、彼女のためにある言葉では?
なんて思ってしまうほど。
可愛くて演技ができるから、批判もしづらい。
でも、気になることがあったら私は書いてしまいますが。

江藤彩也香が演じる宝城・モニカ・朝妃との私闘の結末は意外だった。
ここのやりとりは楽しい。
しかもぬいぐるみがさらに重くなっていたり、細かいところもいい。
イマイチわかりづらいのが、現時点での彼女の実力。
1年ではナンバーワンの実力者なのか?
みんながみんな実力をつけてきたから、強さのレベルがわかりづらい。

4人の1年生はマンガ「男塾」における「富樫と虎丸」のような、
実況と解説のような役割を担っている。
逆にいうと、説明的セリフだからこそ、
発声、セリフ回し、カツゼツ、観客への理解度を要求される。

小菅怜衣 佐伯・ジュリア・花蓮
前回も出演していましたが、ずいぶん雰囲気が変わった。
髪形やメイクのせいもあるかな?
ダンスは得意なので、キビキビしたダンスはとても印象的。
彼女は演技もできるので、ポイントポイントで登場してもひじょうに印象に残る。

池内理紗 仁科・エリザベス・音羽役。
見た目以上にベテランな雰囲気が漂う。
ダンスが個性的。
演技達者で、表情の変化も楽しい。

松尾絵瑠夢 矢神・カタリナ・真尋役。
瞳パッチリで、見た目は凄く幼い。体の線も凄く細い。
まだまだこれからな女優だからこそ、
そのあまり何も考えていない雰囲気が逆にいい。
ルックスが可愛いので、ファンが作り上げて、見守っていく感じかな?
今はド新人だけれど、自分が年齢を重ねて新しい若手が入ってくると、
またやる気スイッチが加速するだろう。

二宮響子 朝比奈・アグネス・風花役
音羽とよくつるんでいるイメージ。
ルド女では新人だけれど、セリフ回しは悪くないと思う。
彼女も体の線が細い。

森本未来 岸本・マリア・未来
彼女も初めて観劇。
ハスキーヴォイスなんですね。
来夢の姉がどんな人なのか?
初めて見た印象としては、ごついワイルドな感じでビックリ。
あくまで私の印象としては清廉された感じで、
北斗の拳におけるトキのように清流のような攻撃、
可憐で俊敏性の高い、スピードを重視した方かと思っていました。
そのイメージと比べると、重厚的なリリィ。
「強化」されているので、その意味合いもあるのかな?
精神的なセリフの会話は後半がメインで、
基本は殺陣が多かったように思えます。

長橋有沙 長谷川・ガブリエラ・つぐみ役
前回、少し気になったので感想に書かせてもらったが、
今回見るとダンスレベルが成長しているのがわかる。
とても良かった。
もちろん、他のダンスがうまい子と比べたらまだまだだけれど、
ちゃんとレベルが上がっているのは観客にも伝わる。
彼女は、はにかんだ笑顔が本当に素敵。
さらに良い声質、セリフ回し、ここまでできるようになったかという努力がわかる。
意外と声質がしっかりしていることには驚き。
それが特に顕著にでたのは、
緒方有里沙の松永・ブリジッタ・佳世役との二人のシーン。
地味ながら、真面目で素直な長谷川・ガブリエラ・つぐみ役を演じていた。
彼女の真骨頂ともいえる良いシーン。
彼女の声って、ホッとする声質。
そして八重歯の笑顔を見せられると、たまらなく可愛い。

なにより、今回は出番がかなり多かった。
2014年の私立ルドビコ女学院開校記念公演「最凶ガール」から彼女は出演していて、
私もそれからずっと彼女を観ている(偶然だが)
わが子を観るようだ(遠い目)
それを考えると、今回の脚本、ルド女における、
「長橋有沙 成長物語」である。
もちろん、偶然だろうけれど、
2014年から長橋有沙を観てきた者にしてみると、
いかに彼女がここまで頑張ってきたか、積み上げてきたか、
その成果とも言える。
ようやく今回、舞台としても開花したと言える。
始まりとしての開花。
初期からのファンにしてみれば、地味~な活動がようやく実を結んだとも言えるので、
本当に嬉しいことだろう。

私が思うに、アニメ「アタックナンバーワン」における白河てるこ
原作とは違い、
アニメでは地味なキャラながら中学生時代から高校生時代まで網羅するキャラ。
主役、鮎原こずえといろいろな部分で交流し成長するキャラクターである。
アニメスタッフの愛を感じる。
それと同じように、長橋有沙も切磋琢磨して成長してきた舞台女優。
ひじょうにリンクするものがある。
今回の長谷川・ガブリエラ・つぐみ役そのものが、
まさに彼女の成長と言っても過言ではない。

今吉めぐみ、木村若菜は、今回はスルーで申し訳ない。

総括
あくまで私の印象としては、脚本はイマイチでした。
「来夢の姉が生きていた」ことと、
個々の役者にスポットを与える「シュベスター」の契約だけ。
ミステリーチックな謎解き要素もなく、
観る側は、ボォ~ッと与えられた情報を鵜呑みにしていく感じ。
それはそれで楽でいいんですけど、私は物足りなかった。

ただ、女優陣は美人ぞろい、さらに演技もできて言うこと無しです。
今回は本当に殺陣が多かった。
その取り組みは素晴らしい。
若い女優が殺陣を経験するのはとても良いことだと思う。

前述しているように、私の中では今回の舞台、
「長橋有沙 成長物語」であった。
ルド女を過去から観ていたものにすれば、別な意味での感動もある。

舞台を長年観ていると、舞台そのものと役者の歴史が記憶に刻まれていく。
ちょっと変な言い方ですが、プロレスの抗争を歴史の年表のように覚える感じ。
その意味において、長橋有沙の成長をとても興味深く鑑賞することができました。
舞台の内容もさることながら、今回に限ってはこの印象が強い。

(敬称略)
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