シアターシュリンプ 第二回公演「ガールズビジネスサテライト」


満足度
公演時期 2016/3/17→21
会場 東京グローブ座
脚本・演出 土屋亮一

あらすじ
とあるファミリーレストラン。
吉村円香と伊藤皐月が、
学校では禁止されているファミリーレストランに初入店。
ドリンク飲み放題という驚きのシステムに感動し豪遊。
まさに至福の時。
ところが、いざ財布を見てみると、お金が無い。
皐月が銀行でお金を降ろした時、ATMに置き忘れたようだ。
学校で禁止されているファミレスに寄っているので、
親に助けを求めることができない。
小心者の二人。

友達もいないし・・・と思いきや、
ファミレス内をよく見てみると同級生の園部ふみがいる。
じつは学生でありながら漫画家らしい。
彼女に助けを求めようとするが、
ファミレス常連、上から目線の園部に対し、皐月はご立腹。
自分としては弱みを見せたくないところ。
そこで二人は、あるアイデアを繰り広げ、
ファミレス内でお金を集めようと画策する。

そこへ、
忘れっぽく、舌足らずでたどたどしい言葉遣いのファミレスの店員、安田優菜、
漫画編集者の木下朱美、
なぜか事件の匂いを嗅ぎつけた警官、平崎柚葉、
自信過剰の売名女優、山田あずさ、
その山田あずさと付き合っている元ゲーム名人、浅見、
スクープ記事を狙い、ファミレス店員に成り済ました栗山美紀と加藤。
様々な思惑が錯綜し、ファミレス内でビジネスが展開される。
観劇感想
ネタバレ有りです。

私自身、いろいろな舞台を観てきているので、
アイドルの舞台であろうとなかろうと、私なりの解釈で観させてもらいます。

アイドル系だと、
モーニング娘。『リボンの騎士 ザ・ミュージカル』
ゲキハロ第13回公演 「我らジャンヌ~少女聖戦歌劇~」
スマイルファンタジー2014はハロプロ、
ミュージカルピーターパンはホリプロ、
ということで、たまには他の事務所も見てみようと思い、
スターダストを選択。
本当は、ももいろクローバーZの
舞台「幕が上がる」を観劇したかったのですが、
予定が合わず。
妹分(?)の私立恵比寿中学に。
彼女たちの方が年齢も若いので、
未完成の面白さがあるかな~という期待もありました。

まず観劇の前にパンフレット。
1500円だったかな?
それはいいとして、文字のフォントが変。
「し」とか。
狙ってやっているのかな?
出来上がったらこうなっていたのかはわからないけれど、
私は嫌い。

私立恵比寿中学はメンバーに番号を振り分けられているのですが、
その番号が間違えて印刷されており訂正の紙がありました。

さらには文末で、
「さやわか」という評論家の人が文章を書いているのだけれど、
3段に別れていて異様に読みづらい。
これもどうにかならなかったのか?
校正はどうなっているのかと。
ハッキリ言うけど「下の下」
メンバーが可哀相。
何もチェックしてないってこと。
出来上がった後の想像力がはたらかない。
全くもってお粗末。

あえて、パンフレットの良い部分をあげるとすれば、
松野莉奈が美人っていうのと、
小林歌穂が前田希美っぽい、いう感じかな?。

さて、本編。
基本、ストレートプレイで、80~90分の休憩無し。
歌やダンス等も無し。
終わった後も、ライブ系はありませんでした。
ここまで、演技に徹していたというのは驚き。
正直よくやっていたと想う。
さすがにマイク設備はあったけれど、私自身ここまでやってくれれば十分。
セリフもたくさんだし、長セリフもあるし、出番も多い。
それだけメンバーや制作者サイドも、「演劇」に集中させていたのだと想う。

各事務所からアイドルが集まっての舞台ではなく、
事務所内のアイドルグループによる舞台。
「個」を主張するのではなく、アイドルグループの「和」を重点においている。
上記にあげているように、ハロプロだと、アイドルアイドルしてなくて、
けっこう重めなテーマも題材にします。
事務所によっても方向性が違うのでしょう。
私立恵比寿中学のファンにはコメディを、と言ったところ。

自然な流れの演技というよりかは、
「コメディするぞ!コメディするぞ!」という主張が先行している舞台。
観客を笑わせようというのがメイン。
歴史やら、社会風刺やら、家族、恋人、生と死、
重苦しいものは無しで、とにかく、笑い重視。
おそらく、コンサートやライブの延長の舞台に思える。
それでも、人を笑わせるというのは難しいので、
今できる彼女のたちの全力を使ってのコメディ。
心の揺れ動きとか、葛藤とか、そういうものはない。
おそらく、観劇する人たちが基本ライブのファンなので、
そういうものを求めていないというのもあるだろう。

ガールズ、ビジネス、サテライト。
という言葉通り、基本どこかしらにビジネス、お金が絡むお話。
個性的なキャラクターたちの勘違いが、どんどん増えていくストーリーとも言える。

女子高生だか中学生だかが、ファミレスでお金を忘れてしまい、
どうにかこの場でお金を得ようと考える仕事、
漫画家の仕事、
あまり知られていない女優ゆえの売名行為という仕事、
その女優たちのスクープ記事を狙う記者の仕事、
レストランの仕事、
警察官の仕事、
いろいろなビジネスの形を表現している。

ファミリーレストランという店内において、
いかに資金を増やしていくか?というアイデアはじつに面白い。
ファミレスで頼んだ食べ物をさらに相手に高値で売りつけるとか、
物語のアイデアを出す変わりに現金を支払えとか、
事件のことを知っているから現金を支払えとか、
最後には、やむをえず、お金の為に浅見の愛人になったりとか。
このコンセプトは凄く面白かったです。

気になった役者は・・・

まず予想以上に印象に残ったのが、女子学生役の中山莉子(伊藤皐月役)
そこまでメンバーのことは詳しく知らないので、最初は柏木ひなたかと思った。
普段は変人でたどたどしい子のようだけれど、舞台上だと違う。
キャラ付けは濃いのだけれど、演技もセリフもしっかりしている。
表情の付け方も抜群。
この舞台の中では一番キーポイントの役。
というか、基本、彼女が主役だと思う。

学校の規則では寄ってはいけないファミレスに初めて入店し、
お金があるからという理由でドリンクバー等を豪遊していたにもかわわらず、
よく財布を見るとお金が無い。どうする?
この舞台の物語の発端が彼女。
そして落ちも彼女。

厳密に言えば、女優としての演技やカツゼツはまだまだだけれど、
非常に将来性を感じる演技。
怖い表情とか、罵声を浴びせるところとか、Sキャラ的な表情は素晴らしい。
私は怖いキャラがあまり好きではないのだけれど、
中山莉子の怖いSキャラは許せる。
もしかしたら、20歳後半、30歳代でブレイクするかもしれない。
本気で女優を目指すのであれば、だけれど。

もうひとりピックアップしたいのは、
小林歌穂(園部ふみ役)
学生と漫画家を両立している役。
中山莉子と双璧と思えるほど、素晴らしい演技、
とまではいかないとしても、将来性は無性に感じる。
彼女は普通は天然不思議系キャラのようだが、舞台上だと見栄えがいい。
すごく映える。
表情付けも良く、いろいろ変化することができて楽しい。

中山莉子演じる皐月とやりあうことが多いが、
そのやりとりも面白い。
アイデアを聞き取る姿もいい。

パンフレットの写真からもわかるけれど、
彼女は成長すると大化けする気がする。何か爆発しそう。
本人も、メンバーも、事務所側も気づかないうちに。
玄人好みの女優になりそうだ。

真山りか 木下朱美役。
漫画の編集者。
最初は真面目な編集マンで、小林歌穂(園部ふみ役)にダメ出しをする。
きつく冷たいことばかり言うが、後半は自分の人生のダメダメな部分に落胆し、
感情が激しくなる。

彼女は声優をやったり、単独で歌ってもいる。
メンバーの中でも、一番最初からいる。
ということで、もしかしたら芸歴が長いということもあってか、
他のメンバーより自分は演技がうまいと思っているのかもしれない。
そのためかどうかはわからないが、
私から見ると、演技演技しているのがわかりすぎて、型にハマリすぎている。
決して演技が下手なのではなく、他のメンバーの個性が荒々しく強いため、
彼女の演技が普通に思えてしまう(後半は落胆したりする演技になるが)
他のメンバーの個性が弾けすぎて、彼女の役柄がこじんまりしてしまった所以か。
次回は彼女の個性が活かせる、また違った役柄が見たいところ。

星名美怜 平崎柚葉役
何か事件あると思い込んだ(もしくは自分でそう望んでいる)妄想癖が強い警察官。

彼女の演技も真山と同じような感覚を抱きました。
自分は演技がうまい、そう思い込んでいるかのよう。
演技演技していて、自分に酔っている。
もちろん、そう思い込んでいる警察官だとは思うのだけれど、
私には違和感ありまくりでイマイチ面白くありませんでした。
あえて言うなら、後半の「未遂事件」で逮捕される仕様が面白かったかな?
彼女の違う役を見てみたい。
それでもまた同じ感じだと困ってしまうが。

松野莉奈 山田あずさ
誰もが自分を知っていると思っている女優。
そのためには売名も進んでおこなう。自分大好き人間。

今回の舞台では、そこまでメインキャストというわけではなく、
中盤あたりからチョコチョコ登場する感じ。
ま~美人。スタイルも抜群。
声も昔は低めだったが、
舞台上での声質的にはほとんど違和感を感じません。
完全にどっちらけな女優で、とんでもない役柄ではあるが、
彼女なりに演じてくれたと思う。
変にこったところとか、自分アピールで見つめ合ったりとか面白かったです。
やりすぎ感ができるから、逆にやりやすかったのかもしれない。
「センテンス スプリング」も入れてくることから、
気をてらいすぎた気がしないでもない。

アイドルの舞台でこのワードがとりあげられるのであれば、
他の舞台でも間違いなく取り上げられてると考えられる。
ということで、今年の「流行語大賞」は一般的にはこれで決まりでしょう。
主宰する会社や、選出する人によって、拒否されるでしょうけど。
だから、私は「流行語大賞」は嫌い。
去年なんてNHKが報道していたぐらいですから。
さらに今年のサラリーマン川柳まで7時のニュースで放送していました。
完全に広告。
物事には必ずベクトルがかかっているということ。
それを忘れてはならない。

安本彩花 吉村円香役
中山莉子(伊藤皐月役)の友人。
お金があると思ってファミレスを豪遊していたが、無いことに気づき、
皐月と一緒にお金を得るために店内を奔走する。

普段の雰囲気どおりの役柄。
ほんわかして、ゆっくりで、天然。
淡々としたマイペースな役柄そのまんまなので、
演技なのか、そのままなのかよくわからないけれど、
役には合っていました。
皐月を抑えるという、抑え的存在。
他のメンバーが破天荒な役柄が多いので、彼女がいると少しホッとする。
安定した演技。
だが時にはとんでもない無茶ぶりも。
そのギャップが面白く、
今回のコメディメインの舞台にはハマッテいました。

廣田あいか 安田優菜役
ファミリーレストランの店員。
だが、舌なめずりで、たどたどしく、超天然で物事をすぐ忘れてしまう。
店員として役にたたない困った女の子。

廣田あいかがこういう役をやったら、絶対にハマルのではないか?
という、まさにその役柄。
かん高い子供のような甘ったるい声で、
この演技をするというのは、たまらない人にはたまらないだろう。
ある意味、ファンにとっての理想の廣田あいか像なのではないだろうか?
理想と現実は違うものの、舞台でそれを演出家が表現してくれた。
そう思えるキャラクター設定。
それを廣田あいかも十分理解して演じている。
普通の人がこの役を演じれば難しい演技に思えるのだが、
彼女にとっては、やりやすい演技だったと思う。
廣田あいかのための役。
正直、評価は凄く難しい。
俗に言う「可愛いからOK!」という感じ。

柏木ひなた 栗山美紀役。
とある女優のスクープ記事を撮るために、
ファミレスの店員に変装している記者。

今回の舞台の役柄の中では一番真面目。
他のメンバーが超個性的すぎるので、
ひとり真面目でまとめなツッコミ役を入れておこうと思ったの彼女だと思う。
全てのツッコミ役。
「おそ松さん」で言うところのチョロ松。
皮肉屋的存在なので、観客としては面白味にかけるのは仕方ない。
だって、他のメンバーがどんどんボケ続け、
ボケにボケをかぶせる始末。
それでも笑いが取れる。
彼女がツッコミを入れなくても、
ボケキャラがボケツッコミを入れるので、どんどん進行できる。
ちょっと可哀相な役柄。

そんな淡々とした皮肉屋役を柏木ひなたよく演じていたと思う。
そこまで目立つ役ではないからね。
淡々とした普通の演技こそ難しいもの。
ただ、予想の範囲内の演技ではあった。
次回観る機会があれば、もっと個性的で弾けた役も見てみたい。

総括

コメディをこれでもかと連続で詰め込んでいく舞台。
アイドルだけれど、ストレートプレイで90分間、演じ続けてくれます。
笑いのセンスは人それぞれなので、かなり戸惑う部分もありましたが。
私はそこまで笑えなかったかな?
若い人、ファン向けかもしれない。

美味しい役という意味合いもあったが、
中山莉子、小林歌穂は、個性的な演技が弾けていた。
今できる自分たちの個性を十二分に発揮してくれた。

今すぐにではないけれど、
スターダストも、CDが売れなくなる昨今、ライブ重視のアイドルだけでなく、
2.5次元ミュージカル全盛のように、
舞台系の製作に取り組んでいる準備段階なのかもしれない。
今後有名な舞台とのコラボも十分にありうる。

そうなるとそれはそれで子供の目標が、
まずアイドル→歌も舞台もできる事務所へ→事務所がらみの舞台へ。
と、ますます舞台女優への流れが変わりそうで、私としては複雑。

(敬称略)
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