劇団スーパー・エキセントリック・シアター 第50回記念本公演「上海ローズ」

満足度
◆公演時期   2012年11月1日(木)〜18日(日)
◆会場 池袋 サンシャイン劇場
◆原案 大沢直行
◆演出 三宅裕司
◆上演台本 野坂実
◆出演 三宅裕司 小倉久寛
    劇団スーパー・エキセントリック・シアター 他

あらすじ
売れないバンド「ザ・ズートルビート」のトミー(三宅裕司)とマミー(小倉久寛)は、
ある日、元メンバーのチャッピーと遭遇。
正体不明の紙袋を渡される。その直後、チャッピーは交通事故に遭い、意識不明に…。
一方、音楽業界の雄「アーベイグループ」CEOの梅浦大輔は、
韓流歌手グループ「カメレオンズ」と日本人バックダンサーのコラボで世界的なヒットを狙い、
そのヒット曲を生み出すことができるという「上海ローズのレコード」を探していた。
手がかりをたどった梅浦はトミーとマミーに接触、アーベイグループへの移籍を持ちかける。
同じ頃、演歌界の大御所・木綱興業(キヅナコウギョウ)の鳳凰院明(ホウオウインアキラ)も、
そのレコードを探しにトミーとマミーのもとを訪ねてきた。
一枚のレコードを巡る音楽界を巻き込んだ争奪戦は、やがて思わぬ事実を導き出していく…。 .
(公式サイトより引用)
観劇感想

韓国オーディション合格者
クォン・ヨンミン

国内オーディション合格者
中條圭祐 園田力意 中川絵梨香 高宮彩

ダブルキャスト
<キャストA>
滝川   おぐちえりこ
バンドマンC   中川絵梨香
陸海   安田裕
いと   三谷悦代
ムーちゃん   良田麻美
<キャストB>
滝川   三谷悦代
バンドマンC   高宮彩
陸海   出口哲也
いと   おぐちえりこ
ムーちゃん   平林靖子

私が観た回は「キャストA」

去年、三宅氏の体調が理由で休演のため、
本公演は2年ぶり。
元気そうで良かったです。
なんといっても、アクションというか、殺陣もありますから。
あれだけ動けるなら、今後も大丈夫。
これにはひと安心。

話の内容的には、あらすじにも書いてあるとおり、
トミー(三宅裕司)とマミー(小倉久寛)のふたりが中心となる、
王道路線。
本公演でも、たまに脇役っぽい感じになりますが、
今回の公演は50回記念公演ですから、この二人で問題無し。

SET王道のミュージカルによる、歌もあり、ダンスもあり、
アクションである、殺陣もたくさん、
そしてコメディも。
今まで見ているSETファンにしてみれば、王道中も王道。
まず間違いなく満足できるバランス。

その中でも、今回は若手のダンスが凄かった。
ビックリするくらい。
たしかにSETの若手はダンスうまいことは言うまでもないけれど、
それにしても、今回はいつにも増して凄かった。
あくまで私の印象としては。

場面場面、いろいろと皮肉というか、
ちょっと音楽業界を面白おかしくする場面があります。
古きアメリカの曲が、じつは日本の過去の歌謡曲にそっくりだとか。
今の人に言わせると、何小節か似るのは仕方のないことのようですが。
ま、まるパクリはさすがにダメですけど。
意味合いとしては、嘉門達夫が昔からしている、
曲を弾いていて、突然似ている曲に変わる、みたいな感じです。

それから、ドレミファソラシドの音階で、
音階を二つ使わない作曲等、初めて知りました。
詳細はネットで調べてください。
山ほど出てきます。
それを逆手に、ひとつの音階で・・・って作曲も面白かったです。
しかもそれが賞を取りますからね。

とつぜんミュージカル口調になるところも面白い。
そもそも、3人のアイドルユニットである「バリューム」?でしたっけ?
これが良かった。
元ネタのパフュームの挨拶に似た、
「バーちゃんです」って白土直子。まだまだ頑張れますよ。
「リューちゃん」でいいのかな?河本千明もかわいい。
普通にアイドル的ですし。
そしてムーちゃんは良田麻美でした。
『東京メッツ』から見ていますが、ま〜かわいい。
SETの中だと、もう中堅クラスなのでしょうか?
かわいいだけじゃなく、演技も歌もダンスも、やっぱりうまい。
SETとしては推したいところ。
魚屋さんネタが懐かしく思ってしまう。
良田麻美を見ると、私はホッとしてしまう。
そんな安心感。

ちなみにダブルキャスト、平林靖子なんですよね。
こちらの回も観たかった。
アルゴ『山に抱かれて 新・子猿物語』 2003年や、
葉っぱのフレディ−2005年から、けっこう見ていますから。
ダブルキャストのムーちゃんは見られませんでしたが、
ダンスは物凄かったです。
若手はここまでダンスができないといけないんだろうな〜と思うぐらい。
次回は平林靖子の演技を観たい。

アーベイグループCEOの梅浦大輔役には大関真
彼は「ザ・マッドドッグ・レジェンド 妄邪妄邪八犬電」 2005年ぐらいから、
ずっと期待していました。
過去の舞台歴は忘れましたが、こんな大役ありました?
悪者ってわけではないけれど、CEOの雰囲気がじつによくでている。
やり手の若手社長的な感じ。
冷静かつ、理論的に物事をすすめる感じ。
実際に同じ年齢ぐらいでたくさんいますよね、ネット関係だと特に。
この役的には私はすごく好きだな。

大竹浩一はオカマの振付師。
いかにもいそうな感じで、そのまんまでしょ?
演技以上に、ダンスは物凄かった。
これはハマリ役。

それから、必ず触れなければならないこととして、
韓国オーディション合格者のクォン・ヨンミン
物凄くよくやっていたと思う。
この最初はタイトルが「上海ローズ」なので、
中国人関係かな?と思ったのですが、それはそれで別の話しでした。
このご時世に、日本の舞台、そして何より日本の歌、
しかもポップスとか、ロックではなく、日本の演歌に近い童謡的な歌。
それを日本語で歌いあげる。
正直、本人はいろいろ葛藤もあるでしょう。
舞台の客席は日本人ですから。
逆に考えると本当にすごいですよ。
今この時期に、韓国の劇団の舞台で、日本人が出演して韓国の歌を歌う、
みたいなものですから。
本人のみならず、他のところでいろいろあることでしょう。
そう考えると、私はすごく立派だと思う。

アメリカかぶれの曲、似たような曲、それでもヒットすればいい、という会社、
そして、そんなアメリカかぶれの曲ではなく、日本人の心に響く曲を!と考える会社、
見た目単純ですけど、いろいろと奥が深い。
そして、そもそも戦争の最中、
日本人がアメリカ人を大熱狂させたという歌手、上海ローズ。
その歌にはじつは秘密が・・・というのも、私は予想外でした。
ちょっとせつないお話。

そしてレコードにもあるバラ。
日本はバラの自生地として世界的に有名。
そして、品種改良でじつにいろいろとこだわっているんですよね。
世界に輸出もしているぐらい。
そういうニュースで放送していたことも、今回の舞台で思い出しました。

総括
50回記念ということで、
とにかくミュージカル・アクション・コメディの王道をやった感じ。
これが目指す方向、初心を忘れるな、みたいな。
観ている観客もたしかに、同じように年をとっていきます。
その観客を満足させつつ、さらに若い観客を劇場に足を運んでもらう、
そのバランスでしょうね。
だからこそのダブルキャスト、新人の起用だと思います。

今回は老若男女、誰でも無難に見られる舞台でした。
あえてひとつツッコミを入れるとしたら、
コメディ的要素が、イマイチ私に伝わらなかった部分が多くなってきたでしょうか?
三宅さんと小倉さんのかけあいも面白いのだけれど、
SETを長年観続けている人と、若い人の客層という部分では、
受け入れ方が違うかもしれない。
もう少しコメディ要素が何かほしいな、と感じます。
(敬称略)
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