青春舞台2009の感想

      2015/02/20

久々に見ました。

神奈川県立 大船高等学校
音楽劇「アニータ・ローベルのじゃがいもかあさん」

原作:アニータ・ローベル「じゃがいもかあさん」
訳:今江 祥智 より
作:土田 峰人
潤色・音楽:のまさとる

 

ナチスドイツに迫害された、ユダヤ人とポーランド人は、劇場の地下に隠れて生活していた。13才のアニーカは、幸せな物語を創作するのが好きだった。それは、命をつなぐ「じゃがいも」を育てるかあさんの物語。しかし幸せなはずだった物語も、やがて戦争の渦に巻き込まれていく。

 

現実と空想、現在と過去が混在しながら、ダイナミックに展開する作品。出演者50人によるミュージカル仕立ての舞台が話題を呼んだ。

 
能舞台のある視聴覚室とは凄い学校だ・・・

 

舞台のセットが、パパアイラブユーに似てました。
完全にエンターテイメントのミュージカル。
オープニングでいきなりキャスト全員登場ですから。

 

これはうまい。
流れ、間、展開が早い。
カツゼツ、みんなうますぎる。すごいなおい。
ただ、子供やお年寄りはついていけるだろうか?
早すぎる印象もある。
商業演劇でお金をもらう時は、もっと口調をゆっくりで、
展開を遅くさせた方がいいかも。

 

音楽劇ということで、歌もダンスもある。
歌はとりあえず普通かな?下手ではない。
とにかく超絶的にカンゼツがうまい。
商業演劇で似たような年齢の子の舞台も良く見ますが、
比べても抜群にうまい。

 

なるほど、出演者が50人というのも珍しいし、
これだけのミュージカル的な演出も珍しい。
それが審査員の印象に残ったのかもしれない。
私も少なからず高校演劇のテレビを観ていますが、
ここまで大人数、大々的なミュージカルはありませんでした。
あっても少人数で、こじんまりした感じ。
魅せる演出は少なかった。
それに比べると完全にエンターテイメント。
ボディランゲージもすごく多い。
セリフを言うたびに動くもの。

 

主役のアニータ役の子、なかなか演技がうまい。
じゃがいもかあさんのもうひとりの主役である、
おかあさん役もうまい。
高校生にはとても思えない。
アンナ役は美少女キャラとして、かわいい子だった。

 

主役のアニータはまぁ~妄想家というか、小説家、脚本家ということかな?
彼女が書く物語が劇中劇として描かれています。
じゃがいもおかあさんの息子、イグナシオ、クリストフがそれぞれ、
東、そして西の兵になり、
メキメキ頭角を現していき、ついには・・・という感じ。

 

長い戦争による貧困で食料が減り、
暴動が起きる。
なるほど、「銀河英雄伝説」で銀河帝国軍のローエングラム侯が、
自由惑星同盟の補給を絶つために、
あえて、帝国に属する惑星の食料を奪っていったみたいなものか。

 

殺陣か・・・高校演劇では珍しい。

 

塀は作らなかった・・・
平和・・・
ひっかけか!

 

ネタバレとして、結局、収容所から出てきたのが、
結局アニータひとりだけ。
他の役者メンバーは誰も生き残らなかったという・・・

 

えっ・・・マイク無し?
ミュージカル系で!
これはすごい。
それだけ個人個人の声量がすごいし、
歌唱指導、毎日やっていたようです。
ミュージカル系だから、音響スタッフも物凄く大変だな~と思いました。

 

前半早過ぎる展開でしたが、後半は見入ることができました。
面白い。

青森県立青森中央高等学校
「ともことサマーキャンプ」

作:畑澤 聖悟
クラスメイトのともこが自殺し、遺書ともとれる手紙が担任の元に届く。その手紙には、5人のクラスメイトの名前が記されていた。5人の親が呼ばれ、いじめの事情聴取が始まる。いじめはあったのか、事実を公表すべきなのか。それぞれの思惑が絡みあい、ぶつかりあう。

 

生徒とその親を、同一人物が演じるという大胆な演出で、演劇ならではの場面転換を行った野心作。えぐりだされた本音が、見る人の心に深く刻まれる。

だいたい青森弁。
つまりは、東京とか、他のところからこの高校に来るわけではなく、
地元の人が多いということかな?
それとも役作りかな?

 

ともこが自殺し、
遺書ともとれる手紙が担任の元に届き、
その手紙には、5人のクラスメイトの名前が記されていた。5人の親が呼ばれ・・・ということだが、
その5人の親の衣装は学校の制服・・・つまりは、生徒役と親をリンクさせているということ。
同じ場面で、全員が生徒、全員が親になるということ。
これは斬新。
つまりは、子の後ろには親がいて、親の後ろには子がいる、
という意味合いを強くしているのだと思う。
ここはなかなか奥深い。

 

それにしてもテーマが重く、深い。
高校の演劇とは思えない。
しかも、みんな声の張りが強い。
よく発声している。
聞き取りにくい人なんていない。

 

男子のやとわれ店長役も抜群にうまい。すごいなこの子。
簡単そうで難しい役。

 

亡くなったともこも生徒の格好で、母親役で登場する。
つまり後ろにいるってこと。
イジメをした子がそれに悩んで、
またイジメを呼んで亡くなるというのも良くある話。

 

エンディングの締めはちょっと。
結末が、何の解決もしていないのですが・・・
高校ではここまでなのかもしれない。
ここから先は大人が考えてくださいってことでしょう。

 

中学生や高校生で、よくイジメや差別の映画を見せられますが、
この舞台を見させた方がよっぽど、身に染みると思う。
最後に出演者のコメントもありましたが、
終わった後も精神的に大変なようです・・・そうですよね。

千葉県立松戸馬橋高等学校
「赤鬼」

作:野田 秀樹
構成:土田 峰人

海のかなたから流れてきた異人は、人を喰うと噂され、「赤鬼」と呼ばれる。人々から恐れられた赤鬼だが、ひとりの女と意思が通じあうようになる。赤鬼は、なぜこの地にたどり着いたのか。その隠された理由が明らかになった時、赤鬼と女は、知恵足らずの兄と、女に思いを寄せるミズカネと共に、海へ旅立つのだが...。

差別や異文化同士の衝突、疎外された人間の姿を描き、話題を呼んだ野田秀樹の名作に、高校生が挑む。

野田秀樹の舞台ですよね。これは有名。
NHKでヨーロッパ版だったかな?放映しているを観ました。
それを高校演劇でやるというのは、すごい選択。
話のネタバレを知っていて見ると、オープニングは良く理解できる。

 

途中途中で太鼓やらSEが入るので、
音響担当は大変。

 

トンビ役の頭が足りない表現の演技は難しい。
これを演じた高校生は雰囲気からして野田秀樹っぽかった。
おつむが足りないながらのストーリーテラーは秀逸だと思う。

 

妹(あの女)は染谷妃波に雰囲気似てる。
女海賊っぽいイメージで、回りの漁民からは嫌われているようだ。
ほぼ主役だし、よくやっているとは思うけど、もっとパワーあってもいいかな?
全く下手ではないですけどね。

 

もうひとりのミズカネ役は意外と難しい。
ただ荒っぽいだけの役なら簡単だけれど、ちょっと深いですからね。
今回演技をした子も、良くやってると思うな。

 

エンディングも特に大きく野田演出とは変わっていなかったので、
安心して見られる舞台かな?

最優秀校
北海道帯広柏葉高等学校
「これからごはん」

作:北海道帯広柏葉高等学校演劇部

 

祖母の告別式の早朝、孫の真奈美は探し物で忙しかった。真奈美が小さいときに、祖母から、「お棺に一緒に入れて欲しい」と頼まれていたものが、思い出せないのだ。おぼろげな記憶を頼りに、家中を探す真奈美とその家族。やがて、家に残された、さまざまな物を通して、祖母の思い出が交差する。

 

なにげない日常描写の中での母親と娘の葛藤(かっとう)を通して家族愛を再確認していく。心にさわやかな印象を残した作品。

ずっと物を探しているシーンばかりで、セリフのかけ合い。
ダンスも歌もない、ストレートプレイ。
淡々とこれがずっと続く。というか最後まで続く。

 

う~ん、ハッキリ言ってつまらない。
意味合いはわかる。
親子三代の話しやら、親戚の話しやら。
へたとかうまいとかではなくて、
観たい舞台か?と言われたら観ないもの。
審査員に年寄りが多いのかな?家族愛とか?親子代々のつながりとか。
私はダメだな。

 

これは前述したイジメ問題の舞台とはまた違って、
ほのぼのした日常会話が永遠に続く・・・
生活臭が漂うのはわかるけど、
面白味はないし、飽きる。これは仕方ない。

 

仮にこれが商業演劇で金は取れないでしょう。
まさに高校演劇だからできるもの。
これをやるというのがすごいと思う。

 

エチュードで作っているのはすごい。
つまりは脚本が最初からあるわけではなく、
最初にある程度アドリブで物語りを作らせ、
そのセリフを脚本に入れていくというやり方。

 

う~ん、最優秀にしては、つまらない。
高校演劇だからこその選考理由だと思う。
歌もダンスも無いから魅せるものはないし、
演技だけで魅せるのはやっぱり経験が必要ですからね。
おそらく、審査員の方の心に響くものがあったのでしょう。
残念ながら、心のせまい私には響きませんでした。
申し訳ございません。

 

群馬、前橋高等学校の「そば屋」は見たかったな~
これ、つっこみとか面白そうだし。
というか、コントにも近い。
放送作家志望の人も多いですよね。
最近はお笑い系のこういったタイプが多いかも。
ラジオでもテレビでも、お笑いの放送作家になりたい人が多いですから。

 

まとめとして、アナウンサーが出演している生徒に、
「演劇をこれからもたずさわっていきたいか?」という質問をしたところ、
4分の1から5分の1は手を挙げていました。
私としては多い方だな~と思いました。
演劇関係は職業としては本当に大変ですから。

 

逆に「もういい」と言う人もいて面白い。
苦労するとは知っていたが、ここまで苦労するとは思わなかったとのこと。
素直な気持ちで、見ていて清々しい。

 

特に商業演劇の話しになると、
お金がからみますからね。
出演している演劇関係者も釘をさしてました(笑)
チケット等、ものすごく大変だし、回りのサポートがあってこその舞台ですから。

 

NHK衛星第2 青春舞台2009

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