ミュージカル座 「スペリング・ビー」

満足度星星星星半分空星
公演時期 2016/12/7→11
会場 六行会ホール
作詩・作曲 ウィリアム・フィン
脚本 レイチェル・シェインキン
翻訳・訳詞 芝田未希
演出 菊地まさはる
音楽監督・編曲・演奏 久田菜美
振付 大塚庸介

あらすじ

舞台は架空の地パットナム郡の体育館で開催される、
英単語のスペルをつづる「スペリング・ビー」大会。
この大会に優勝してワシントンの全国大会を目指す出場者たち。
出場者は昨年の優勝者のチップ、ゲイの夫婦に育てられた最年少出場者のシュワージー、
脚でスペルを浮かび上がらせる“マジック・フット”の持ち主のバーフェイ、
昨年の全国大会で優秀な成績を修めた転校生マーシー、いつも孤独で辞書だけが友達のオリーブ、
繰り上がり当選で夢が叶ったコニーベアーの母親は安全ヘルメットをかぶらせて送り出した。
6人の個性的な子供たちは極度の緊張のなか、大会に挑んでいく。そして彼らを見守るのは、
毎年司会を務める不動産業を営むロナ。出題者で痛風持ちのパンチ副校長。
敗退したこどもたちを慰めるカウンセラーのミッチー。果たして一位の座は誰が勝ち取るのか!?
そして彼らが本当に手にするものとは!?
(公式サイトより引用)

観劇感想

月組のみの観劇。
アメリカではおなじみの、英単語の綴りを正確に言い当てる大会“SPELLING BEE(スペリング・ビー)”。
全米から小・中学生が参加して行われ、全国大会ではなんとテレビ中継もされてしまうほど。
このスペリング・ビーの地方大会をテーマにし、2004年にオフ・ブロードウェイ初演、
翌年にはブロードウェイへ進出。
さらにその年の演劇界で権威ある賞“トニー賞”の2005年度・6部門にノミネートされ、
最優秀脚本賞&助演男優賞を受賞した。
という感じの有名なトニー賞受賞作品。
話の内容的には子供向け。ファミリー向けの作品。
サスペンスでも、社会的風刺が効いてるだの、そういう難しいたぐいの話ではない。
役柄も基本、小学生なので(中学生もいるのかな?)子供のお話。
とはいえ、大人も十分に楽しめる作品となっている。
つまりは子供の話しだけれど、大人になった自分たちにも気になる部分があるという、
再発見的な意味合いがある。
ただそれとは別に、
アメリカ的な部分が強いのが気になるところではありますが。

物語の流れとしては、前述していることがほとんど。
これでだいたい話しは通じます。
6人の選ばれた子たちが、スペリング・ビーの大会を通じて、
人間として少し成長する過程を描いている。
ひとりずつ落選して、最後の二人で決戦。
登場人物はキャストのみならず、客席から何名かの人も事前に選ばれる。
抽選もあるほどの人気。
そういうのはとても楽しい。
私が出ると確実に変人キャラに出るので「あえて出ない」という屁理屈を述べておこう(笑)
吉良吉影(ジョジョの奇妙な冒険の4部ボスキャラ)と同じように、私は静かに暮らしたい。

出題者からの質問→答え。
子供たちの得意技、過去の生い立ち、現在の心境。
基本はこの繰り返し。
起承転結も、ひとりひとりのエピソードに組み込まれている感じ。

ミュージカルナンバーが多いのはとても嬉しい。
私は歌が好きなので、歌がたくさんあるととても楽しい。

それから、青い照明がけっこう多い。
6人の過去の振り返りの場面において、よく多用されていた。

気になった役者は・・・

基本、みなさんプロなので言うことはありません。
あくまで私が感じたもの。

小林風花 オリーブ・オストロフスキー 役

アルゴミュージカルや、カゴメ劇場にも出演している女優。
まず一番思ったことは、ピンクの衣装。
どうやら、私は2003年から彼女を見ているようですが(汗)
おそらく今まで一度も着たことがないと思います。
ピンクの小林風花は見たことも聞いたこともない(笑)
それほどすごく衝撃的な衣装。

母親がインドで修行中、
父親がこれから来るので席を空けておいてほしいということでしたが、
じつは参加費も払えないほど貧乏な家庭環境のよう。
そういった人の恋しさ、寂しさもあってか、
モジモジとして人見知り全開のような雰囲気。
本当に可愛い。
今までで一番可愛い(笑)
ま~こういう役がありませんでしたからね。
たまにはやっておいたほうがいい。
おでこ全開で、本当に小学生のよう。

今回、喋り方も子供仕様。
普段の声ではなく、子供の声。
そして歌い方も子供バージョン。
使い分けができるのがプロ。
もちろん、他の5人の子供の役を演じている役者さんも、
同じように子供の歌い方でした。

予想以上に子供のように初々しい演技は素晴らしかった。
子役時代より、今が一番可愛い。

和田一詩 ウィリアム・バーフェイ役

私的に、とても素晴らしかった。
小学生?設定なので、アゴヒゲではなく、もみあげがあごまで伸びている男の子。
足でスペルをつづる姿はとてもいじらしい。
ちょっと自意識過剰で、自分よがりな部分もあるけれど、
この大会を通じて少しだけ成長していく姿がとても良かった。
なんとなく汚らしい印象もあるけれど、私には意外と清潔感がある雰囲気に思えました。
そして純粋さが見える。
オリーブのことが気になりだし、彼女が間違えたため、
自分が間違わなければ勝ちが決まる、だが彼女のために1位になりたくない。
そんな1位と2位のはざまで揺れ動くナンバーは凄く良かった。

折井理子 ローゲン・シュワルツ&グルーべニア役

パンフレットの写真の雰囲気とは全く別人の、そばかす(?)多めの女の子。
正直パンフレットの写真での美人な素の部分も見て見たかった。
ま~役柄なので仕方ありませんが。
吃音の表現もあったようですが、私はそこまでは感じなかったかな?
二人のゲイの父親に育てられた・・・これは海外ドラマ「glee」のレイチェルもそうでした。
ドラマの方がこの作品をインスパイアしたのか、どちらが先行かはわかりませんが。
最年少ということもあり、小学生というよりかはおしゃまな幼稚園児のよう。
父親たちが、バーフェイの足のつづりを邪魔するために液体を巻いたことを
特に違和感なく私は受け入れてしまったので、言うことないな~
素顔だけが見たかった(笑)

橋本真一 チップ・トレンティーノ役

昨年の優勝者で今回も最有力であったが、とあるミスで早々と不合格に。
イケメンが出てきた。
が、けっこう危険なミュージカルナンバーを歌うことに。
まっ、子供ということで、そこまで卑猥なナンバーではありません。
観客動員数にも影響があるのかな?やっぱり重要だもの。
後半はあまり出ないので、売り子でも登場。
だから前半出番が多いのか。
性格的には、若くて無邪気でいいと思う。
ジーザスも頑張った。

亜季緒 マーシー・パーク役

彼女はパンフレットのそのまんま。
凛として、スッとして、落ち着いた秀才タイプ。
「できて当然よ」という、完璧主義で何でもできる。
日本のマンガ風に言わせると、文武両道の学級委員長と言ったところか。
やや弱点としては、自分のイメージダウンにつながるような言葉には敏感に反応する。

普通こういうタイプは、
意地悪な役で主役とのライバル的なキャラ付けになりがちだが、
この物語ではそれがない。
他の5人を相手にするのではなく、自分自身を相手にしている感じ。
そしてそれは彼女の完璧主義であるがゆえの、
見えなかった部分を見いだすきっかけにもつながっていく。
私的には凄く良かった。
たしか青い衣装だと思ったけれど、凛とした青が良く似合う。

樋口祥久 リーフ・コニーベア 役

ダンサーなので、ダンスシーンが少なく残念。
イメージ的には、「アルジャーノンに花束を」の主人公のような感じ。
ふだんは、知恵遅れのような、ちょっと抜けているような部分があるが、
スペルに関しては、突然神の啓示を受けたかのように言い当てる。
この演出はとても面白かった。
表情もじつにいい。
ただ変な表情をしているわけではない。
異質なキャラだけれど、面白かった。

総括

基本、「スペリング・ビー」大会の会場内で全ての出来事が行われる。
単純明快。
子ども向けでありながら、
どこか大人が忘れていたものを思い出し、呼び起こすものもある。
ただ、正直アメリカンナイズな作品なので、
私としては頭を空っぽにして、童心に返った気持ちで観た方がいいかな?

トニー賞を授賞した作品とはいえ、脚本的にはあまり中身が無い(失礼)
子供たち個々の物語、過去、そして成長を大人たちが見守る作品とも言える。

演出もしているダグラス・パン役の菊地まさはるが話していたが、
初めて見た時にミッチ役が一番興味深かったと言う。
人それぞれ見方が違うな~とつくづく思う。
(敬称略)
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