◆ 舞台 銀河英雄伝説 第四章 前篇 激突前夜

満足度
◆公演時期   2013年11月29日〜12月2日
◆会場 東京国際フォーラム ホールc
◆原作 田中芳樹
◆制作/プロデューサー 多賀英典
◆脚本 川光俊哉
◆演出◆脚本 ヨリコジュン
◆音楽 三枝成彰
◆音楽ディレクター 大平太一
◆美術 寺田真理
◆照明 宮野和夫
◆振付 bable

あらすじ
人類ははるかなる宇宙に進出し、
西暦2801年、銀河連邦を成立させ、この年を宇宙暦1年とした。

宇宙海賊を壊滅させた英雄ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは
「神聖にして不可侵たる」銀河帝国皇帝に即位して銀河帝国を建国。
独裁政権を確立し共和主義者たちを弾圧した。

共和主義者たちはルドルフの死後も帝国の圧政に耐え忍ぶ日々が続いたが、
帝国暦164年、アーレ・ハイネセンを中心として、
辺境の流刑地で密かに天然ドライアイスを材料とした宇宙船を建造して、
帝国からの逃亡に成功。
帝国暦218年、安定した恒星群を見いだし、
そこに民主共和政治を礎とし自由惑星同盟を建国した。

こうして人類は、専制政治を敷く銀河帝国と、
民主共和制を唱える自由惑星同盟に分かれ、
慢性的な戦争状態が150年にわたって続いていた。

時に、銀河帝国にラインハルト・フォン・ミューゼル、
自由惑星同盟には、ヤン・ウェンリーが台頭しつつあった。

(公式サイトより引用)
観劇感想
2011年に舞台「銀河英雄伝説 第一章 銀河帝国編」
2012年に舞台「銀河英雄伝説』第二章 自由惑星同盟篇
2013年に舞台「銀河英雄伝説」第三章 内乱を観ています。
スピンオフの舞台はありましたが、私はそちらを観ていません。

そして、先に述べておきますが、
私は大の銀河英雄伝説ファン。
原作を何十回も読み返し(字が物凄く多い。慣れるとスラスラ読めます)
アニメもビデオ時代からすり切れるほど見ました。
そういった、かなりコアなファンであることを前提に、
観劇感想を書きます。

流れ的には、
帝国軍では、シャフト技術大将がガイエスブルク要塞にワープ装置をつけることを提案。
→ラインハルトがケンプ、ミュラーをそれぞれ司令官、副司令官として、
イゼルローン要塞攻略の任を与える。
→その頃、同盟軍では政府からの指示で、ヤン・ウェンリーが査問会に呼び出される。
→超法規的措置で、政府高官からネチネチといじめられるヤン。
→軍事上最重要のイゼルローン要塞から司令官がいなくなる事態、
偶然(?)にも帝国軍がガイエスブルク要塞をともなって攻撃を開始。
→同盟はヤンが帰還するまで応戦。
→その不自然な対応に帝国軍のミュラーは不審をいだくが、副司令官の立場から静観。
→帝国軍に押され気味ではあったが、ユリアンの機転、ヤンとの連携により、帝国軍を撃破。
→ケンプ司令官は死亡。ミュラー副司令官も重傷を負う。
→帝国では幼帝エルウィン・ヨーゼフ2世が誘拐されるという事態が発生していた。

原作通りの流れ。

舞台「銀河英雄伝説」第三章 内乱で、銀英伝原作と舞台の融合がかなり確立され、
今回も原作ファンである私からすると、満足する出来ばえでした。

今回はヤン、ラインハルトという主要キャラクターのみならず、
サブキャラクターの印象度が物凄く高い。
査問会でのネグロポンティ役のスガマサミの高圧的な態度とか、
ホワン・ルイ役のbableの原作とはちょっと違ったスマートなホワン・ルイも好印象。
ま〜査問会の場面は完全に舞台向きですからね。
面白味はある。
予想はしていたけれど、それ以上にこの場面は原作ファンとしては楽しい。

帝国軍側としては、こちらもまた予想通りに、ケンプとミュラーがおいしい役。
豪放でありながら、部下に公明正大なケンプの石坂勇はイメージも似ている。
さらに温厚で穏やかなタイプのミュラー役、三上俊も好演。
彼もミュラーの穏やかさを良く表現している。
今も人気の俳優さんですが、またさらに人気が出るでしょうね。

私的に原作ファンなので、本当は入れてほしかった場面をいくつか。
捕虜になった同盟の軍人から、
ヤン・ウェンリーが要塞にいないことを伝え聞き動揺するミュラー。
他の捕虜からは「ヤンがいない」ということは、帝国を混乱させるための罠だと説明される。
どちらの言葉が真実なのか、悩むミュラー。
「ヤン・ウェンリーと言う男、いればいたで、いなければいないで、
どれだけ我々を苦しめることか。魔術師ヤンとは、よく言ったものよ」
ここ好きなんですけどね。

さらに、部下が問う場面。
「ヤン・ウェンリーとは、それほどまでに恐るべき男なのですか?」
「卿は、あのイゼルローン要塞を味方の血を一滴も流すことなく、
手に入れることができると思うか?」
「いえ・・・」
「ではやはり、ヤン・ウェンリーは恐るべき男だ。優れた敵には相応の敬意を払おうではないか少佐。
そうすることは、我々にとって決して恥にならんだろうよ」

そしてもうひとつ。
原作では、ケンプ司令官の死を部下が看取ることになるのですが、
舞台では、そこははしょってミュラーが看取ることになります。
わかりやすいと言えばわかりやすい。
単純明快。
ただ、原作である、ケンプの部下から死を知るシーンも印象的。
「大神オーディンも照覧あれ!ケンプ提督の仇は必ずとる!
ヤン・ウェンリーの首をとってやるぞ。だが、今はだめだ。俺には力がない。
奴との差がありすぎる。だが見ていろ何年か先を」
そうしては敗走する自軍に向けて音声だけで鼓舞する・・・ここは本当にカッコイイ。

そう言えば、ガイエスブルク要塞が動いた時に、
ミュラーが放った「ガイエ(禿鷹)が羽ばたいた」というセリフも入れてほしかったかな。

ミッターマイヤー、ロイエンタールがケンプの死を聞いた瞬間の、
「ケンプが死んだか」
同じ言葉でも、二人の言葉のニュアンスは趣が異なる場面。
ここも入れてほしかった。
ミッターマイヤーは素直に死を悼み、
ロイエンタールはやや複雑に。

惑星ハイネセンを守護する12の衛星防衛システム「アルテミスの首飾り」
それにひっかけての12人の女性のダンスの演出。
ここは・・・う〜ん微妙だな〜
ヤンがそれを壊してしまい、
査問を受けるきっかけのひとつになったことはわかるんですけど。

ガイエスブルク要塞の発進シーンは、けっこう印象深いです。
大型の球形が本当に出てきて、そのまま飛び出し、
幕に投影されてさらに大きくなるという演出でした。
素直にカッコイイ。

それと似たような演出として、戦闘機であるスパルタニアンの発進シーン。
ユリアンがその場で搭乗しますが、それが投影されたCGと融合して飛び立ちます。
この演出もカッコイイ。

今回、ロイエンタールの伏線がけっこうありました。
今まではおそらく、ほぼ無かったと思います。
「ローエングラム公は仰られた。私を倒すだけの自信と覚悟があるなら、
いつでもいどんできてかまわぬぞ、と」
これをミッターマイヤーに言ってますからね。
それはミッターマイヤーも困惑しますよ、いくら親友でも。

私的にアッテンボローが登場しないのは残念。
セリフとしては登場しましたが。
ヤンやミュラーのように、穏やかな口調で過ごしたいな〜というのは理想なのですが、
やっぱり人間、頭に血がのぼって回りが見えなくなることはあります。
そう言った意味において、アッテンボローは人間くさく、私に似ている。
毒舌家のところとか(笑)

ヒルダとオーベルシュタインの二人の場面。
こういったシーンは原作でも珍しい。
オーベルシュタインが、誰にも話すことのない、自分の飼っている犬の話しまでしますからね。
今回の舞台では、そこまで目立つ場面もないゆえ、二人の為に演出をした感じでしょうか。

そのヒルダ役、折井あゆみですが、歴代のヒルダ役と比べてどうなるものかと、
正直心配ではあったものの、演技的には全く無問題でした。
ショートカットのため、雰囲気的に釈由美子にも似ている。
セリフもしっかりしているし、歌唱力もありますね。
気品的な部分はまだまだ足りないけれど、予想以上に頑張っていました。

ミッターマイヤー役の岡田亮輔は、予想以上にイメージにピッタリ。
雰囲気もそうだけれど、喋りかな?
ここはミッターマイヤーの真面目な実直さが伺える。
私はとても好きですね、このミッターマイヤー。
今回はロイエンタールの発言に気を使うシーンも多い。

そのロイエンタール役の玉城裕規は初めて見ましたが、
ロイエンタールらしさ、という点ではまだまだかな?と思う。
演技やセリフというよりも、雰囲気そのものの円熟味がまだまだ。
アニメの場合、若本規夫が声優なので、
あの深みのある印象が強いもので申し訳ない。
それに私はロイエンタール、かなり好きなキャラなので要求も多くなってしまう。
「フォン」の称号を持つ貴族の雰囲気、生い立ち、本来の気質として彼が皇帝でも・・・
そうったもろもろの重さがほしいところ。
ルックスはカッコイイんですけどね。声質がもっと重く深くてもいい。

今回の舞台の裏の主役とも言える、シャフト技術大将役の迫英雄
あえてアニメのイメージ通りにするために髪の毛を剃ったのかはわかりませんが、
髭も、体のふくよかさもイメージにピッタリ。
そして雰囲気もピッタリ。
ちょっとシャフトが好きになりそうなぐらい。
それぐらい魅力ある演技でした。
なかなか憎めない人物なんですよね、シャフトは。

フレデリカ役のはねゆりは、二章からずっと演じていますが、
本当にイメージ通り。
かわいいし、けなげ。
ほんと、ヤン提督にはもったいないくらい。
料理ができないのがタマにキズですが、そのぐらいへっちゃらでしょう。
原作だと、査問会からヤンを救うために奔走する姿はやや気の強いイメージもありましたが、
はねゆりはかなり優しい感じ。
ベイ准将と、もっとやりあってもいいぐらい。

同盟での「査問会」のシーンは、まさに舞台にうってつけ。
ヤンは中央で舞台客席に向き、
国防大臣のネグロポンティや、オリベイラ、ホワン・ルイらが壇上から囲んでヤンを見下ろします。
河村隆一は、絶対にこのシーンやりたかったでしょうね。
ある意味、ヤンが政府高官たち、お偉方にたてつく唯一の場面ですから。
本音がガンガン出る。
政府高官も、ヤンがここまで毒舌家とは思っていなかったので、ビックリするところ。
原作だと、もっと切れたイメージもありましたが、
河村隆一ヤンは、もっと落ち着いて柔らか。
昔はヤンがイケメンすぎると思っていましたが、今は完全に慣れました。
それだけ河村隆一がヤンが大好きで演じていることがわかる。

この場面は見どころがいっぱいありますが、セリフとしてはオリベイラがヤンに問いただす場面。
「活力と規律を生むのは戦争であり、戦争こそが文明を進歩させ、人間を鍛え、
精神的にも肉体的にも向上させるだよ」
そこでヤンが答える。
「素晴らしい御意見です」
「戦争で生命を落としたり肉親を失ったりしたことのない人であれば、
信じたくなるかもしれませんね」
ここからどんどん痛烈に批判していきますから、
「人間の行為のなかで、何がもっとも卑劣で恥知らずか。
それは権力を持った人間、権力に媚びを売る人間が、安全な場所に隠れて戦争を賛美し、
他人には愛国心や犠牲精神を強制して戦場に送り出すことです」
観ている私たちも胸がスッと解消する場面。

民主主義国家と、専制国家。
ヤンは自らにいつも問う。
「もし、人民の大多数が民主主義ではなく専制国家を望んだ時、
民主主義の整合性は成り立つのかと」
そもそもこのお話では帝国と同盟、一部フェザーンという国家がある。
これがひとつの人類と考えた時、
半数以上が帝国軍の人民。
その大多数の人たちが独裁専制国家を望んでいるのだとしたら、
ヤンは敵の悪玉となってしまう。
それでもヤンは戦い続けなければならないのか?
それを自問自答している。

後にラインハルトと初めて会談をしますが、その時のラインハルトの言葉。
「民主共和制とは、人民が自由意志によって、
自分たち自身の制度と精神をおとしめる政体のことを言うのか?」
ヤンの心に突き刺さるこの言葉も印象的。

そのネグロポンティのスガマサミもおいしい役でした。
この「査問会」のシーンだけでなく、
ヤンに査問を受けたことを秘密にしてほしいと土下座するシーンもありますからね。
マシュンゴに放り投げられるシーンはおまけですが。

今回、旗艦ヒューベリオン艦長のシャルチアン大佐役、大刀も出番が多い。
ま〜メルカッツ提督とのいざこざをへての、和解みたいな流れがありますから。

ラインハルト役の間宮祥太朗は、前回同様、私は違和感のないラインハルトでした。
今回はメインというよりも、キルヒアイスとの過去回想場面が多い。
ま〜今回はヤンと直接戦ったりしますせんから。
キルヒアイスとのシーンは長い気もしますが、重要なシーンなので、難しいところ。
悩むシーンが多いので、その演技のメリハリは難しかったことと思います。

過去回想ばかりのキルヒアイス役の福山翔大でしたが、
穏やかな雰囲気はイメージ通り。
過去回想ばっかりで、もったいないですが。

ユリアン役の長江崚行も前回に引き続いて、いい感じ。
スパルタニアンでの初陣、
そしてヤンがいないイゼルローン要塞での、戦術論の目覚め。
おいしい場面が多い。
彼は原作のユリアンの雰囲気がピッタリなので、ハマリ役でしょう。
ほんとに違和感が無い。

シェーンコップの岩永洋昭はあいかわらずかっこいい。
殺陣も多かった。
ただ、個人的には両手に持ったダブルトマホークは好きじゃないな〜
片手でガンガン行く方が好き。

マシュンゴは原作やアニメとは違って、かなりコミカルタッチになっています。
どちからといえば、パトリチェフのコメディ版かな?
でも、演じた一ノ瀬ワタルはいい味だして、かなり美味しい役でした。

メルカッツ役の渡辺裕之は、今回は出番が多く嬉しかったでしょう。
やっと本領発揮といった感じ。
原作やアニメよりも年齢が若く、雰囲気も微妙に違いますが、
「ファイト!一発!」的な感じですね。
軍服を脱ぐメルカッツには驚きました。

ほぼ毎回出演のオーベルシュタイン役の貴水博之は言うことないな〜
基本、完全にオーベルシュタイン役を自分のものにしていますね。
自分の家の話、しかもあの犬の話しをヒルダに話すなんて、
かなり意外でしたが。

今回ようやくもうひとつ勢力、フェザーンが登場しました。
自治領主アドリアン・ルビンスキー役に西岡徳馬
その補佐官、ルパート・ケッセルリンク役に廣瀬大介
初めて見る人は、この勢力についてイマイチわからないかもしれませんが、
これは原作をなんとか読み込んでもらうしかありません。
ルビンスキー役の西岡徳馬は、ま〜こんな雰囲気かな〜と思いましたが、
ルパートが、けっこう女性的な雰囲気で驚きました。
これはあえて舞台用にアレンジしたのでしょう。
それはそれでいいと思う。

総括
全体的な感想としては、前回と引き続き楽しかったです。
ただ今回は、舞台が今まで以上に広く感じました。
センターに人がいて、両端から問うシーン等はかなり離れている。
視野もせまくなって、なかなか全体的に観ることができませんでした。
私の席が、少し前の方だったこともありますが。

この舞台とは別件で、私が観た回では、
河村隆一のアコースティックライブもありました。
何事も勉強なので、私も拝見。
当然のことながら、生歌。
さらに一曲は、マイクすら無しのアカペラ。
魂を揺さぶられる歌唱力で、圧巻の一言。
どこぞの口パク、かぶせなのに紅白に出る人に見せてあげたい。
そもそも紅白は、NHKに協力した人しか出れませんけれど。
「紅白に選ばれるから、素晴らしい歌手」そんな議論には閉口。
NHKも民放とは変わらない、広告だもの。
本物を見きわめる能力。
人それぞれの価値観なので、私が言うことはありません。

回りに耳を傾けると、この舞台のために、地方から出てきた方もたくさんいますね。
それだけこの舞台、河村隆一を観たかったという、彼の動員力もが伺え知ることができます。
ライブを見て、私もいろいろと勉強になりました。

(敬称略)
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