戦国降臨GIRL

天組 満足度
◆公演時期   2012年12月18日(火)〜23日(日)
◆会場 LinkIcon池袋・シアターKASSAI
◆脚本・演出 まつだ壱岱
◆音楽 神津裕之
◆振付 CHAMI

あらすじ
近未来。ヤマトの国。
環境の悪化により、「男子」は消滅の危機。
「男性」は成人する前に死亡してしまう。
研究の結果、この環境化でも生存できる遺伝子を持つ「男性」が特定された。
それは、千年以上昔に「ヤマト戦国時代」を戦い抜いた男達、「戦国大名」
研究者は戦国大名の遺体や、所持物から、
細胞片を採取しゲノム(遺伝子情報)解読することに成功。
そして、その情報を生体エネルギーに変換させ、
自らの肉体に「戦国武将」を降臨させる携帯型端末、
「降臨フォン」が開発された。
しかし、あの武将を降臨できるものだけは見つからなかった。
それは最強の武将、「織田信長」
学園の少女達に命令がくだされた。『織田信長とシンクロできる少女を探せ』
(パンフレットより抜粋)

観劇感想

「天」組のみの観劇。

物語の簡単な流れとしては、

研究者グループの汐崎弥生たちが、
最強の武将である「織田信長」を降臨できる少女を探す。
→「織田信長」の力を欲する卑弥呼たちも同様に探す。
→天然ボケの織川百華が「織田信長」を降臨できる少女。
突然の危機に「降臨フォン」無しで「織田信長」を降臨させる。
→降臨させたのはたまたまで、「降臨フォン」を使っても呼びだせなくなる。
→卑弥呼や、その仲間が呼び出せないことを知り、彼女たちの仲間を襲う。
→大柴田先輩が信長を呼び出せない織川を守って絶命。
→さらに卑弥呼たちは、武田信玄を降臨。
圧倒的な強さで伊達、明智、秀吉たちも歯がたたない。
→ついに織川百華が覚醒。信長を降臨させ、仲間とともに武田信玄を討つ。
→通常は未来の記憶をロックしてある明智なのだが、
卑弥呼たちの力によってロックが解除され、本能寺の変を思い出す・・・


こんな感じです。
特に違和感なく、私は楽しめました。
SFなので無難な流れですし、敵対グループもいるし、
裏切りもあったりで、あまり深く考えることなく観ることができます。
主義主張とか、思想的なものもほとんどない。
勧善懲悪とはいかないまでも、頭空っぽにして観られます。
ちょっと深いのは、カエルと信長、明智の関係ぐらいでしょうか?

降臨する武将が、何歳ぐらいの時なのか?
記憶は最後まであって年齢は若い時なのか?
明智は別にして、ちょっと微妙なところはあります。
伊達なんて、あのメンバーからすると相当若いはず。
1582年(十五夜にで覚えますよね)の本能寺の変の時で、
15歳ですから。

さて、アイドルメインの舞台。
こういった舞台で思い出されるのが、
BOYS BE ALIVE TRY AGAIN
(12年前ですか。懐かし過ぎる)
アイドルでも、演技ができる!というのを見せてくれた舞台。
中島礼香、奈良沙緒理、木下統耶子が特に印象的。
奈良沙緒理なんて、もっといい女優になると思ったのですが。
桂亜沙美も出演していましたが、彼女は実力が違いすぎました。

この当時もグッズ販売盛況でしたが、
今回の舞台も似たようなものです。
そういう戦術。

舞台を観てまず思ったことは、
みなさん演技的にはものすごく頑張っていました。
特に表情付け。
いい表情をする。
おちゃらけでやってる人なんていません。
「戦国」ですから、厳しい表情も多い。
そこはよくやってくれました。
そのぶん、正直、セリフの軽い人、趣を感じない人はいます。
セリフの意味を理解しているのか?
それも気になりますが、そもそもの発声の部分も気になる人はいます。
昔からトレーニングをしてきていた人と、
最近になって、という人では仕方のないこと。

それゆえのせいかわかりませんが、
舞台を見ていて、前半部分は話の流れが早く感じました。
テンポが早い。
舞台進行が早く、セリフがどんどん流れて、
惰弱な私の思考が追いつけないこともありました。
役者が自分の番のセリフを早く言ってしまいたいから、
「間」が無いんですよね。
ここは舞台を長年やっている人との差でしょう。
中盤から後半にかけては気にならなくなりましたが。

内容は、ありていに言えば、
「女子高生が携帯型端末「降臨フォン」を使って、
戦国武将を降臨させて戦うバトルもの」という感じ。
ようは私の好きな「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンド・バトルに近い。
もしくは「ペルソナ」や、「Fate/stay night」のマスターとサーヴァントか。
ちなみに「キャラメルボックス」の「また逢おうと竜馬は言った」
で、
坂本竜馬と土方歳三が、ある意味スタンド・バトルしています。

B級と言う言い方は失礼だけれど、
この題材で普通に映画にできますよね。
映画の公開収入ではなく、レンタルDVDでの活用メインで。

ただ、いきなりネタバレで申し訳ないけれど、
話が途中で終わる。
続編ありきもの。
これは正直残念。
まだ終わってないから「次観てくださいよ」ってことですよね?
どうなのかと。
まー「銀河英雄伝説」の舞台も、もちろん続編ものですが、
こちらは小説が長過ぎですから。
収まりきらないの仕方ありません。
だから、やっぱり舞台は基本完結してほしい。
次観る機会、あるかどうかわかりませんし。
普通は一発勝負。
でもまぁ、そういう公演の方法があっても決して否定はしません。
次回同じキャストで公演できるかどうかは微妙ですが。

武将を呼び出せる人も、戦国武将の役の人も、殺陣があります。
どちらかと言うと、やはり戦国武将役の人の方が多いですね。
切れ切れですよ。
よくやっている。

この舞台、明らかに呼び出す役、
織川百華 陸奥魔紗子 明血三ツ子 初芝秀美 大柴田先輩がメインなので、
ちょっと戦国武将役の方は出番が少ないのは残念。
織田信長役の階戸瑠李なんて、せっかくいい演技をしているのに、
何かもったいない。
いろいろ事情があって、仕方のないことだとは思いますけど。

SFアクション・ファンタジーなので、正直なんでもアリです。
学園での出来事なのに、
政府の極秘機関のため、警察にも連絡できないのはつらいところ。

女性ばかりで、登場する子はかわいい子ばかりだけれど、
それだけの華やかさだけでなく、
しっかりと「死」を描いたのは良かった。
柴田勝家、大柴田先輩の死によって、
織川百華が戦うことの意味を知り、覚悟を決めて、織田信長を降臨させる。
その流れをきちんと作ったのは、アイドルだけの舞台の中で光りました。

この劇場、LinkIcon池袋・シアターKASSAI<は、
舞台と客席との段差が低い。
なので、役者がしゃがんだまま演技をしていると、表情が読み取れないし、
見えにくいのは残念。

予想以上に、照明のタイミング、
そして音響、SEのタイミング(鉄砲とか)
ここが抜群にいい。
ここは凄く評価してあげたい。
スタッフがしっかりしているからこそ、
この舞台も引き締まる。
だらだらタイミングずれてたら、観客引きますから。

歌やダンスもありますが、
ちょっと残念なのは、ソロとかが無かったこと。
ミュージカルと謳っていないので、当然ではあるんですけど、
できたらほしいかなと。

気になった役者は・・・

主役、織川百華役の斉藤雅子
アイドル王道の美少女。
かわいいです。
難しい数学の公式を話すところのセリフは軽い。
これはそもそも織川百華が天然という設定ゆえの演技なのか、
本当に軽いのかもわからない。
全体的にほんわかしている。
こんなほんわかした天然ボケなのに、成績は優秀。

天然ボケの子が第六天魔王と恐れられる織田信長を降臨。
これって「デビルマン」の不動明が、物凄く優しい性格だからこそ、
凶暴なアモンを抑えることができた、ってことにも通じる気がします。

そこまで主役主役していないので、
物語の流れとしては、やはり成長過程の最初なのでしょうね。
今後の続編に彼女の実力がわかる・・・のかな?
そのために演技の評価とか、心の揺れ動きとか、
どう評価するのかは難しい。続編も見てってことなんでしょうけど。

身長150センチのようですが、そこまで小ささは感じませんでした。
主役をみんなが支えてあげた感はあります。

織田信長役の階戸瑠李
前述しましたが、出番が少なくもったいない。
悪鬼のような感じではなく、「凛」としたたたずまいな信長。
威圧感もなく、線が細い。
どちらかというと優美、甘美、色っぽい印象。
意外と戦闘シーンが少ないので、次回の続編からが真骨頂でしょうか?
しかし、ま〜美人。
知的な美人なのに、色っぽさも漂う。
そこまではいいのだけれど、まだ信長が見えてないな〜私には。
伊勢長島での戦い、あれを思い起こせる感じがほしい。
なぜあの戦いあったのかと。

陸奥魔紗子役の栞菜
まず思ったのは、彼女はチラシの写真と舞台の雰囲気とは全然違います。
パンフレットはわかりますけど、チラシの方は宣材写真なのかな?
ちょっと違っていてビックリ。
この陸奥魔紗子役は、キャラ設定がイマイチつかめない。
なんと言うかな、ツンデレ系、と言っていいのかな?
それもあってか、意外と私は印象に残りませんでした。
傘型の鉄砲での、殺陣?
あそこは良かったんですけど。
その他が印象に残らない。
眼帯をしていた片目をせっかく開いたのに、
何も伝わらなかった。
ここは次回、改善してほしい。
小鳥遊六花の邪王真眼・・・とは言わないけれど、
せっかく眼帯を外すのに、パワーが無いのはつらい。

明血三ツ子役の船岡咲
メインキャストの中では、
男性っぽい雰囲気と女性っぽい雰囲気の両方を兼ね備える感じ。
中間的。
それが明智、という繋がりがあるかもしれませんが。
演技的には、私は悪くないと思う。
ただ、意外と雰囲気が陸奥魔紗子とかぶる。
正直、このふたりが変わっていたとしても違和感ないくらい。
仲間から裏切りの場面は、良くやっていたと思うけれど。
もうちょい、この役を自分のものにしてほしい。

初芝秀美役の桜衣かれん
今回、戦国武将を呼ぶメインキャストの中で、一番印象に残ったのが彼女。
演技はうまいと思う。
セリフもしっかりしているし、何よりハキハキした雰囲気がいい。
舞台進行もとどこおりなく、よく流れる。
それから、ところどころダンスシーンもあるのですが、
彼女はうまいでしょ。
キビキビして、切れがあるのがわかる。
キャラ設定もしっかりしているし、彼女は印象度高かったです。

大柴田先輩役の北山亜莉沙
どちらかと言えば男っぽい雰囲気。
顔の表情付けは、じつによくできていると思う。
柴田勝家を呼び出す人ですから、こういう雰囲気を持っていないと。
キャラ設定も、暑苦しく熱い感じがいいし、表情に圧もある。
ただ、もったいないのは声質。
やっぱり、この役であるのならもっと声を出してほしい。
続編があったとしたら、これが彼女の最大の課題でしょ。
セリフそのものも、ちょっと軽い。
声をだして、さらに重くしてほしい。
と言うのも、続編で敵側が蘇らせる、なんてことはある・・・かな?
まだまだ荒削りだし、発展途上。
私は、彼女の演技、嫌いじゃないです。
だからこその期待。

伊達政宗役の小玉百夏は、完全に男っぽい雰囲気。
彼女の場合は、降臨させる陸奥魔紗子もからくり傘で攻撃できるので、
二人で相手を攻撃しやすい。
そんなに守る必要もないですし。
他の戦国武将同様、それほど喋るシーンが無いのは残念。
「出落ち」という言い方は大変失礼だけれど、
登場するシーンはかなりかっこいいです。
インパクトもあります。

柴田勝家役のつちださゆりは、別格。
雰囲気が違うもの。
凛々しく、かっこいい。
殺陣もできるし、存在感ありあり。
私的には、もっとセリフをあげてほしかった。
無口設定なのかな?

汐崎弥生役の瀬川ももえ
ちょっとお茶目なところもある、研究生のリーダー格。
彼女は研究グループ?メンバーの中でも要でしょ。
演技ができるから、説明要員として非常に重要。
彼女がいなかったら、研究生グループは落ち着きません。
武将降臨メンバーがメインだけれど、
サポートキャラ的な彼女の存在は重要。

渚洋子役の新名杏梨
彼女はキャラ設定が難しい。
急に言葉遣いが変わったりしますからね。
まだまだ発展途上な子。

望月望役の雲母
きららって読むんですね。
それにビックリ。
完全にアニメ声。
1998年生まれで14歳。今回の出演者の中では最年少とのこと。
全然見えない。
アニメ声ではあるけれど、背は高いし、
ルックスも子供じみているようで、大人の雰囲気もある。
うーん、その年齢を考えると、よくやっていると思う。
序盤はセリフ多いですからね。
もちろん、アニメ声の役には賛否両論はあるけれど。
本当の性格は全く知りませんが、
役的には、バッチリあっていました。
背の高さと幼さを兼ね備える、
ある意味、アンバランスな子。

ケロ役の鍵谷まみ
今回の役の中で、もしかしたら一番難しい役かもしれない。
そもそもこのカエルは、
織田信長が所有していたカエルで、
「本能寺の変」の危機を信長に知らせた、という伝説がある、
「三足の蛙」だそうです。
この役を演じる鍵谷まみが、まーかわいい。
幼いルックスで、まさにアイドルアイドルしている。
これが知れ渡ると、相当人気が出る気がします。
表情も愛くるしいし、カエルなので演技も難しいけれど、
普通にこなしてましたから。
セリフも特に違和感ないですし、ものすごくいい感じでした。
何か、みんなにうんうん頷いている雰囲気が特に印象的でした。

森田蘭子役の鈴木絵未里
ホワッとした子で、力無く、か弱く、人懐っこく、末っ子タイプの甘えん坊。
みんなの妹。
他のキャラと違うので、意外と印象に残ります。
地なのか演技なのかわかりませんが、
雰囲気はバッチリでした。
違和感全く無し。
森蘭丸の武将降臨は、続編になるのかもしれませんね。
蛇足ながら、ルックスが今井仁美に似ていました。

卑弥子役の更崎由奈は、普通にうまいでしょ。
なんと言うかな、
特撮ヒーローものの、女性ボスキャラ敵な感じ。
線が細く、一見なよなよっとしていながら、
艶かしい蛇的要素を持つ。

今川元蛇子役の安井紀絵
彼女は一応敵キャラなのだけれど、憎めない。
アニメの敵キャラで、主人公に毎回毎回負け続ける。
でも頑張る!
そういうキャラ設定・・・だと私の脳内で再生しています。
演技はそんなに言うことないな〜と思ったら、
けっこう場数積んでいる人なんですね。失礼。

アイドルだらけの中で、とりたてて美少女!ってわけではないけれど、
アイドル的な可愛さではなくて、表情、雰囲気。
生き生きしているところに、私は惹かれました。
そういう部分に、魅力を感じる。
ただ、本人自体があまり動いてないので、
そういった意味ではもったいないかな?
このキャラはなんとなく化けそうなので、
続編では卑弥呼を裏切って味方になるような・・・
なんてことにはなりませんよね?

武田信玄役の安藤彩華
登場が後半になるのはもったいないのですが、
まず、背が高い武田信玄は抜群にいい。
キャスティングは見事としか言いようがない。
迫力が違うもの。
他の戦国武将が霞んで、まるで子供対大人。
あえて言えば、ウォーズマン対バッファローマン戦のよう。
圧倒的な信玄の力が、見た目にもわかる。
殺陣のシーンも長いので、かなり見応えあります。
後半、最大の見せ場、ここは本当に楽しかった。
ここで消えるかな〜?復活するかな〜?
もったいないお化けでますよ。

白童子役の中村まいは普通にうまいでしょ。
幽霊なのか、魂的存在なのかはよくわかりませんが、
人間たちを小馬鹿にする感じはじつにうまい。

童子童子役の田中真央は初舞台ってパンフレットに書いてありましたが、
そうは見えない。
セリフも流れるようでしたし、もうベテランさんかと思ったくらい。
歌手活動をしているから、そもそも発声が違うんでしょうね。
だからよく声が届いたわけだ。

明智光秀役の中村裕香里は、パンフレットに書いているように、
「ナルシスト、色っぽく」
まさにその有言実行通りの演技。
戦国武将なのだけれど、色っぽい演技。
艶がある明智光秀。
丸っこい瞳なのだけれど、表情付けによって、
怪しく切れ長に見定める視線も魅力的。
天然ボケキャラをやると思えば、
こういう演技もできるのが彼女の強み。
たくさんのアイドルに囲まれても、決して見劣りしないルックスと、
演技の実力。
初めて彼女を見た人は、けっこう惹かれると思うのだけれど、
どうかな?

羽柴秀吉役 宮沢なお
なんの予備知識も無かったので、
パンフレットを見てビックリ。
まさかここで登場するとは予想していませんでした。
ココスマ関連の常連であった、あの子とは驚き。
気づく方も気づく方ですが。
なんと言うかな、彼女は性格女優。
駆け出しの頃の秀吉の為、やっぱり猿な雰囲気作り。
彼女は男性的な役もうまい。
荒削りな感じがじつにいい。
ちょっと別件ですけど、NHKの「薄桜記」に出演している高橋和也のような感じ。
出番少なめなのはもったいない。

今川義元役の堀高エミリは普通にかわいい。
「おじゃる」な麿感があって良かった。
珠と扇子を使った殺陣も見応えありました。
アヒル唇も特徴だけれど、この舞台アヒル唇の人多いですね。
戦国武将の中では1対1で戦うシーンも多く、
出番が多いので印象に残ります。

総括
女性アイドルメインの、華のある舞台。
まだまだ発展途上の女優さんばかりですが、
グラビア活動だけでなく、
舞台で演技をする姿は、また違った魅力。
演技や表情は本当に良いものがある。
稽古を積んでいるのがわかる。
あとは、セリフ、発声だけですね。
ここは長年やらないと身につきませんから。
音響で調整しても、わかる人にはわかります。

SFなので、細かい設定は深く考えずに楽しめる舞台。
女性アイドルが舞台でアクションをする、というのも伝わりやすいコンセプト。
物語としては、エンターテイメントとして、とても楽しめます。

さて、この舞台は何も完結していないので、
続編があることは確定。
次回は隠しキャラ的に、
徳川家康とか来るでしょうね。
あとは、前田慶次とかくるかな?

(敬称略)
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