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ミュージカル 『SEMPO』~日本のシンドラー 杉原千畝物語~ 2013観劇感想

満足度星星星星半星
公演時期 2013年9月10日(火)→29日(日)
会場 新 国立劇場 中劇場
演出・振付 上島雪夫
作詩・作曲 中島みゆき
作曲 吉川晃司 Peter Yarin 脇田崚多郎
脚本 川﨑登
音楽監督 脇田崚多郎
美術 松井るみ
プロデューサー 川﨑登 山田修爾
制作 (株)ライズ・プロデュース
主催 SEMPO制作委員会

あらすじ

1939年7月。外交官としてフィンランドに赴任していた杉原千畝は、 日本人のいない、リトアニアに日本領事館を開設するよう命じられる。 ソ連とドイツの動向を諜報するという任務を背負っての転任であった。 2か月後、ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発。 その頃ポーランドでは、 ナチスによるユダヤ人迫害が激しさを増していた。 ノエルと婚約者エバにも魔の手が迫り、 ノエルはリトアニアへの脱出を決意。 しかし、エバの父の反対を受け、二人は離ればなれに。

やがてリトアニアにも戦火が及び、 ソ連より日本領事館の閉鎖命令が下る。 その直後に杉原が目にしたのは、 領事館を取り囲む、200人以上のユダヤ人であった。 ノエルら代表団は、 第三国への出国に必要な日本の通過ビザの発給を懇願する。 本国に電報を打つ杉原だったが、 返答はもちろん「否」。 従うべきは、組織か、人の道か……。 苦悩の果てに、杉原はついに決断を下す。 (公式サイトより抜粋)

感想

私は2008年のミュージカルSEMPOも観劇しています。 全体的な話の流れは、前回と同じです。 まず驚くのが、舞台袖にある旭日旗。 いざ劇場内に入っていきなりですから。 当時のイメージなのでしょう。 いきなり奥が深い。 観客にとっても、ある意味踏み絵的な存在にもなってしまう。 というのは、昨今の事情から。 観劇する前に、審判を仰がれます。

オーケストラピットあり。 生オーケストラでの舞台、そして歌えるなんて本当に贅沢。 役者もさらに気合が入るところ。 今回も前回同様に制作がライズということで、 歌唱力はみなさん抜群。 歌い方はかなり独特なんですけど、 それが個性、人それぞれのワールドをもっている感じ。 自分の歌で観客を魅了させる。 とはいえ、好き嫌い別れるところもありますが。

私は前回の舞台を観ているので、 変わった部分を考えると、 まず、エンターテイメント性はかなり控えめになりました。 前はもっとショー的に、照明の色使いもカラフル。 ヒトラーも登場し、戦争の現状である説明的ミュージカルナンバーも、 派手でした。 今回はヒトラーは登場せず、 説明的なミュージカルナンバーも控えめ。 日本、ドイツ、ソ連の3人の女性は登場していましたが、 (今回は国旗がハッキリ確認できませんでした) こちらも短め。 また、前回はもっと人を殺すシーンが多かった気がします。 そちらも控えめ。 ジョゼフが撃たれるシーンも、もっとひどい描写だった気がします。 このあたりは修正してきたのかもしれません。

場面場面、意外とキャストが固定することが多く、 そこでひとつの事柄が終わってしまうのは残念。 というのも、仕方なのないことだけれど、 杉原千畝役の吉川晃司がずっと出ているわけではないから。 観客としては、主役をずっと観ていたいし、 その主役をを追って、いろいろな出来事が起こるのを楽しみたい。 これは私の正直なところ。 ただ、スーパーヒーローみたいに、 なんでもかんでも登場して解決してしまうにはいきませんから、 それは仕方がありません。 史実を元にしている舞台ですから。

ただ、物語後半は杉原千畝役の吉川晃司に集中。 ユダヤの人が大使館に押しかけるシーンや、 前回同様のビザを発給するシーン。 ここは単純作業ではあるものの、気合入りまくり。 サインをしたり、ハンコを押したりの繰り返しだけれど、 その入れ込みようが半端ない。 当時の杉原千畝もこのぐらいやっていたのではないか? というタイムスリップをした感覚になります。 この時点で、感極まって泣いている人が、客席からも多数。 そして、前回と同じく、汽車に乗りこむ間際まで、 汽車に乗ってからも窓から差し出されるビザをとり、 発行のためのサインを。 ここのやりとりは後半の山場。 率直に言って凄かったです。

大きく変わった点のもうひとつは、 エンディングに杉原千畝のビザの発給によって助けられた人たちが、 彼にお礼を言う場面ができました。 これがどこまで実際の出来事なのか、 多少夢物語的な部分もあるのかもしれませんが、 彼によって助けられた人への敬意を表した演出なのでしょう。 自分が生きている、ただそれだけのこと。 でもそれは、杉原千畝がビザを発給してくれたからこそ。 そんな風にも感じ取れました。

たしか前回は、一番初めに触れた、 ペンダントのくだりに結末として戻った気がしたのですが、 気のせいかな? あと、前回の方が杉原千畝とグッシェとの対立が、 もっと厳しかったイメージがあります。 今回の方が、けっこう早めに和解した感じ。

最後の幕が降りて、杉原千畝が実際に手がけたビザが、 そのスクリーンに多数投影されます。 ここも感動的。 実際にこのビザの発給によって、救われた人がいる、その証。 それを見るだけでも、心震えます。

気になった役者

杉原千畝役の吉川晃司

前回にも増した威圧感増しました。 最初はちょっとボソボソ声で、あれ?声質変わった? なんて思ったのですが、後半の出番も多く、 ソロで歌うナンバーも多いので、 ちょっとセーブしていたのかもしれませんね。 演技は、前回同様に本当に熱い。 後半のビザの発給にサインを書き続ける姿は、感動するでしょう。 多くを語らず、黙々書き続ける。 ここの演出は、前回同様で本当に良かったです。

今回は演技よりも、歌唱力の方が印象強いです。 明らかに前よりもうまくなっている。 歌い方も違う雰囲気。 年齢を重ねても、努力をしていることが明白。 口パクばっかりやっていると、喉も細くなるし、パワーも落ちる。 現役バリバリで歌を歌うというのは、練習の積み重ねだもの。 蛇足ですが「KISSに撃たれて眠りたい」は、 私のカラオケの十八番のひとつ。 声質が似ている(?)ので、じつに歌いやすい。

杉原幸子役の鈴木ほのか

ま~かわいい。 となりにいる、妹よりも断然かわいい。 照明の影響か、メイクのせいかわかりませんが、 ほうれい線が見当たらないし、血色が良く、 肌ツヤもピチピチで゛物凄く若く感じました。 演技も歌も言うことない。 両方とも素晴らしくて、本当に言うことない出来ばえ。 準主役は間違いなく彼女でしょう。 ノエル役の坂元健児、エバ役の白羽ゆりともに、 プロなので言うことありません。 意外とノエルが出番少なめかな?と思ったぐらい。 杉原節子役はAKBの人がダブルキャストで演じるのですが、 私の回は片山陽加。 ハッキリ言って、私はAKBに全く興味がありません。 それが大前提。 元子役の佐藤すみれぐらいは知っていますが。 ということもあり、全く期待していませんでした。 が! この片山陽加という女優は相当うまい。 まず表情がいい。 いろいろと表情付けがしっかりしている。 ちょっと横向きが多いのは気になりましたが。 セリフもしっかりしているし、歌唱力もあって驚きました。 AKBでもこんなに生歌がうまい人がいるの?ってぐらい。

杉原幸子役の鈴木ほのかと演技をする場面が多かったのですが、 少なくとも見劣りはしていません。 私が思うに、もうAKBを卒業していいと思う。 舞台女優として、みっちり稽古を積んでいけば、 相当な女優になると思います。 それぐらい私は高評価。 ただ一点、ひとつだけ気になるのは、申し訳ないけれど、目のクマ。 鈴木ほのかが逆に無いので、 対比としてそれが目立っていました。 おそらく、疲れていたのでしょう。 他のお仕事と並行した結果。 こういうことも、プロとして、舞台女優として、 お客様の前で魅せる部分としては、次回、気をつけてほしい。 チケット代金を払っているのに、 疲れた表情の女優を見て、楽しいわけがない。

ライズ・プロデュースということもあって、 私の印象としては、宮本竜圭、あぜち守、 沢木順の、 あの独特なワールド感がなんとも言えません。 自分がこの場を盛り上げる感、アリアリですから。 彼らの個性は、本当に強いもの。 場面場面、クセはあるものの、私は面白く感じました。

エリーゼ役にマルシア

マルシアを観るのは、 モーニング娘。『リボンの騎士 ザ・ミュージカル』以来。 この時も、アイドルの舞台だから、なんて気にすることなく、 自分のできる表現を思う存分に発揮していました。 今回も同様。 バラエティはバラエティ、舞台女優は舞台女優として、 集中力が半端ない。 演技も、歌も。 当たり前のことなんですけど。 テレビで出演しているイメージがあるので、 そのギャップもあって、さらに凄さを感じる。 特に、彼女はやっぱり歌かな~? 本物だもの。 彼女こそ、もっとテレビの音楽番組に出演するべきなのに。 いずれ口パクは淘汰され、 その時は原点回帰がかならずある・・・と思います。

ソリー役の山田瑛瑠

完全に只者ではない子役。 演技力抜群だし、何より歌唱力も素晴らしい。 この大舞台で、 彼の為のソロのミュージカルナンバーがあるぐらいですから。 それだけ期待の星なのでしょう。 いや、この子はこれから相当伸びるでしょう。 と言っておきながら、 運動部に入って部活大好き人間になることも考えられます。 少年の子役は、進路がけっこう変わりますから。 でも、頑張って舞台を続けてほしい。

名前を見知っているところでは、 ニーナの近藤亜紀や、 ユダヤの民の大胡愛恵、鈴木莉菜、石毛美帆、相馬毬花。 そんなに出番ありませんが、チェックはしています。 前回もそうですけど、ニーナは意外と出番が少ないんですよね。 私的にはもったいないところ。 鈴木莉菜、石毛美帆は他の人たちと食事をしているところで登場。

大胡愛恵は、今回可愛らしい衣裳で良かった。 彼女はこの雰囲気の方が断然いい。 ミュージカル プリンセス・バレンタイン2 ROCK! PRINCESSの、 プリンセス・シスター役で主役だったものの、性格的にSキャラ。 私は苦手でした。 女優ですから、どんな役でもこなすことは当たり前なので、 あくまで私の感覚としてです。 そんな中、ユダヤの民役の相馬毬花が、 後半の最後の最後でまさかの美味しいセリフ。 まさか、ここで喋るとは思いませんでした。 私もビックリ。

総括

エンターテイメント性の派手な演出は控え、 地味ではあるものの、人々の毎日の暮らしや、 その日の出来事に集中。 中でも前回同様に、 杉原千畝役の吉川晃司のビザを発給し続ける姿は圧巻。 後半は特にここを集中させて、観る方ものめり込むほど。 日本人として、魂を揺さぶる舞台。

※敬称略
キャスト表