公演時期 | 2013年9月8日(土)→9日(日) |
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会場 | 大間々ながめ余興場 |
主催/劇作 | ハーモニー |
代表 | 田村花恋 |
演出/作曲 | 石橋俊二 |
脚本/作詩 | 田村綾子 |
振付 | 田村花恋 |
照明 | Stage Art T/早川知雪 |
音響 | 石橋光 |
着付 | 平山正枝 |
作画 | 藤木聖士 |
制作 | 高木真佐代/石井邦枝/大石礼子 |
あらすじ老舗味噌屋「上州長田屋」の社長が謎の家出。 残された家族、職人たちは? そして、とある町に数カ月前から河川敷に住み着いた、 初老のホームレス。 その人柄に、商店街の人々、盲目の少女、 政治家夫婦を名乗る女性も集まってきました。 そんな中、会社からリストラされた男性が、 彼の弟子を志願して・・・ (パンフレットより一部抜粋) 感想話のおおまかな流れとしては、
まず、この公演会場である「ながめ余興場」が物凄い場所。 渓谷の中にありますからね。 山、谷、緑、川、全部が目の前にある。 昭和12年建設からの由緒正しき余興場。 余興場内には、萩本欽一さんのサインをはじめ、 たくさんの芸能人の色紙があります。 いかにここが芸能の場として長年愛用されてきたかがわかります。 今後の予定ですと、吉本の芸人さんも来られますから。 地元に人にしてみても、大事な大事な場所。 余興場の外には、この公演のために出店が開いているぐらいですから。 お客様は、それはそれはこの舞台を楽しみにしていたのでしょうね。 詳細は検索してください。 それに関連して、まず、空気がいい。 都会とは全然違う。 タバコは吸はないので、嗅覚敏感で、すぐに感じ取れました。 それから、音が響く。 大声で歌うと、自然の環境で、まさにひとりカラオケ状態。 いつでも歌える(近所迷惑は考えないといけませんが) ちなみにこんな場所でもLTEになり、スマホはサクサクでした。 日本の通信網はすごいと改めて実感。 余興場の照明、そして音響も気になるところ。 最前にマイクを5本たてていました。 舞台上、屋根にせまる上部に大きなスピーカー2個。 正直、照明も音響も全く問題ありません。 照明はサイドからの光源もあり、 もしかしたら舞台上はかなり暑かったかもしれません。 照明装置もしっかりしていて、スポットライトも数線の斜光も、 こちらも問題のないレベル。 伝統の余興場ということで、 歌舞伎と同じように「花道」もあります。 さらには回転舞台も。 造りがしっかりしている。 それから今回の舞台に合わせた、パンフレットの画が素晴らしい。 これに全部凝縮されている。 熱いよ、熱過ぎる。 音楽やSEはそれほど流れないので、 観客を引きつける舞台役者の技量が物凄く必要な舞台。 劇団四季出身の方が主役とは言うものの、 基本は市民ミュージカル。 稽古期間は1年くらいでしょうか? それぐらい稽古に稽古を重ねて、ようやくの晴れ舞台。 キャストやスタッフの思いがたくさん詰まった舞台。 それをふまえて・・・の感想にしたいところ。 ハーモニーの舞台は、ミュージカル「きみにとどけ・・・」以来です。 オープニングで全員が出演するところは、 「キャラメルボックス」っぽい雰囲気。 幻想感、これから始まる期待、ワクワク感はあります。 前半部分は、正直見ていてつらい部分もある。 セリフの間合いと言うのかな? ここがまだまだですからね。 ただ、後半安定してきたのか、持ち直す感じ。 石橋俊二、田村花恋、須藤昌代、中村直子、 この3人の歌声はプロ。 言うことないでしょ。 その中でも、ミュージカルナンバーとしては、 石橋俊二と須藤昌代のところが一番印象的。 ここは素晴らしい。 そして、私なりに面白いなと思ったところは、 超熟女の「ハーレム・エンド」 この発想は気づかなかった。 ある意味すごい。 面白いアイデア。 でも、結局このエンドではありませんけど。 あったら、あったで面白い。それも人生かな。 一幕、二幕ありますが、 じつのところ一幕のエンディングでも、いい感じな雰囲気。 話しは何も解決していないんですけど、 あまりこだわらないままでもいい。 何気なく見栄をはって、 広崎加奈子が政治家の妻という嘘をついてしまうところは良かった。 人間だもの。 何かしら欠点、恥ずかしい部分、見栄を張りたいところがある。 それを自然な形で表現してくれるのは嬉しい。 物語としては、リストラされた神山勇人が、 ホームレスとなった長田蔵造の家に住み着くところから始まります。 言わば、物語の起点となるのがダンボールハウス。 その見立てがシュークリームにも見える。 それこそが、「ミュージカル・シュクリーム」にもつながるわけです。 食べ物のシュークリーム好きというのも、話にからんできます。 これを聞いて、私もかつて電車の中で、 ヒロタのシューアイスを20個ぐらい一気に食べた記憶が蘇りました(笑) 今ではとても無理ですけど。 蛇足終了。 この神山勇人は本当に不器用。 見てる観客をいらつかせること山の如くという感じ。 だけれども、その不器用な部分が長田蔵造にとっては、 かつての自分のを見ている感じでほっておけない。 それが人情。 そこで彼が一肌脱ぐことになり、 結果的に「上州長田屋」に帰るきっかけになるんですよね。 人とのつながりで、心の変化が生じるということ。 基本、ダンポール小屋での話しがメインのため、 「上州長田屋」の場面は少なくなるのは、仕方のないところ。 後半関わってきますけど、もうちょいこちらでの一悶着があってもいいかなと。 こちらで登場する、久保美由紀、髙野美緒、青木孝彰の演技を、 もっと観てみたい衝動にも駆られました。 この物語、じつは幽霊も登場します。 声は、なぜか広崎愛子にしか聞こえません。 その幽霊の声をなんとなく、 自然に受け入れてしまう素直な広崎愛子役の田村花恋の演技はじつにいい。 あまり深く考えないとらえ方は合っていると思います。 気になった役者四季出身者の方もいますので、感想すらおこがましいです。 長田蔵造役の石橋俊二元劇団四季の方なので、私がどうこういうレベルではありません。 ただ、こういった舞台で、のほほんとした役を演じるってのは凄いですね。 ベテランであるからこその柔軟性。 かつて妻と娘を火事で亡くし、そこから乗り越えて社長になったものの、 今まで忘れてしまっていた娘のことを思い出し、家出をしてしまう。 そして、神山のダメさ加減に、自分の昔の姿を重ねてしまう。 深みのある、味わいのある演技。 こういった地方の観客へのアドリブというか、盛り上げ方は、 彼のようなベテランにならないと、なかなかに難しい。 昭和仕込みの歌唱力は良く響く。 広崎愛子役の田村花恋。代表として、1年間本当によく頑張りました。 たくさんの苦労もあったことでしょう。 それはそれとして。 前に出演した「池袋レインボウズ~season1~」では、 生まれてきた赤ん坊の聴覚が不自由であった、母親の役でした。 これがまさに狂気。 戦慄すら感じる。 こんな演技をするのか?ってぐらい驚きました。 しかも、この時、1日3公演ですからね。 3回もこの演技をするのかと思うと、背筋がゾッとするぐらい。 そして今回は、盲目の少女の役。 これまた難しい役をよくやる。 瞳の視点を特に変えることなく、杖で回りを確認しながら移動。 どれだけ練習、稽古を積んだのかがわかる演技。 本当に恐ろしい。 まさに努力の積み重ね。 執念の演技。 彼女の気迫が痛覚として感じとれるほど。 ひとつ思うことは、 彼女の演技はものすごくストイック。 ひとつのことに対し極度に集中する感じをいだく。 もちろん、悪いことではないけれど、のめり込みしすぎな感もある。 パッとすぐに現実に戻れるのか不安にさえ思える。 それほどの入れ込みよう。 彼女の演技の稽古を実際に見ているわけではないけれど、 演技に対する取り組み方がカミソリのように切れ味抜群。 研ぎ澄まされた演技。 と同時に、彼女の場合は切れ味が鋭過ぎ、 舞台を肌にたとえると、荒れる場合もある。 だからこそ、彼女には潤滑油、シェービングジェルのように、 ワンクッションある演技もほしい。 マンガ「柔道部物語」に、 「俺って・・・・天才だあああ~!!」 「俺ってストロングだぜぇ~」 と自己暗示の声だしがありますが、 ここで五十嵐先生が、 「あんまり天才だと気が重くなったりするから、 バランスをとるために、もうひとつの心構え」 と称して、 「俺ってバカだぁ!!!」 があります。 人間、自分をバカに見せるって、本当に難しいこと。 恥ずかしいもの。人に見せたくないもの。 それをやることがいい。 田村花恋に馬鹿になれって、言うわけありませんが、 体全体の力を抜く、脱力の演技もほしい。 そうしないと、体がまいってしまわないか、不安。 少し余裕をもった方がいいかな~とも思う。 特に今回の場合は演技だけでなく、 代表としての役回りもありました。 この年齢にして、あらゆる部分に気を使うことを経験しているもの。 歌やダンスについては、言うことないです。 歌い方は独特ですけどね。 神山勇人役の上田裕之どこかで観たことあるな~? と思いましたが、3LDK第9回公演「 (改訂版)おい!オヤジ。」の、 一番言えなかった人ですか。 ひとり物凄い汗の量で大変でした。 汗はかく人、かかない人、本当にわかれます。 ダンサーですら、かく人、かかない人いますから。 ダメダメ感全開の役。 観客から見ていても、「そら、リストラされるだろ」って感じ。 それをいとも簡単に舞台上で演じるというのは、それはそれで難しいこと。 演技が下手に思えるほどの、暑苦しさと、がさつさとし、しつこさ。 それを終盤に向けて修正していきますからね。 ある意味、この舞台の裏の主役は彼。 しかも最後の最後で、広崎愛子への感謝の手紙を渡し、 それを読んで「なぜ直接言ってくれなかったのか」と悔やむ愛子の目の前にいる神山。 悔やみながらも、神山はその場を立ち去ります。 「マジメか!」 と、私は言いたくなる。 「そこは押してあげないと。田村花恋が可哀相だよ!」 と、役名そっちのけで言いたくもなります。 泣ける場面。 広崎加奈子役の須藤昌代パンフレットの写真より、舞台上の雰囲気の方が遥かに美人。 化粧や照明のせいもあるとは思いますが、めちゃくちゃ輝いてました。 しかし、わざわざ舞台上で実際の年齢を言うセリフがあることは、 ちょっとショックでしょうね、女性にとって。 最初は政治家の奥さんという触れ込みのはずなのに、名前が違っていて、 おかしいな?と思ったのですが、 これはわざとだったんですね。 政治家の奥さんのフリをしていたという、嘘。 人間、誰でも見栄を張りたくなるもの。 さらには、目の不自由な娘を産んで、そして育ててきたことに対する本音。 ここも熱かった。 蔵造との、ちょっとした大人の恋愛もあり、ここもいい感じ。 市民ミュージカルなのに、大人の恋愛模様というのは、なかなか異質。 ミュージカル「きみにとどけ・・・」でも出演していましたが、今回は出番多いです。 脚本家の代弁者なのかもしれない・・・なんて思ったのは私だけ? 長田彩乃役、髙野美緒彼女もミュージカル「きみにとどけ・・・」に続き出演。 全開、田村芽実と一緒にはしゃいでいた方ですか! どこかで観たことあるな~とは思いましたが、まさか彼女とは思いませんでした。 雰囲気、まるで違っていました。 まっ、髪形も変わっていますからね。 一幕前半と、二幕後半という出演シーン的には少なく、 ちょっともったいない感じもします。 可愛らしい子だし、本当だったらもっと使いたいところ。 父のことを思いやる、優しく、気立ての良い娘さんという感じで、 優しさに満ちあふれている演技。 私なんて、すぐに惚れてしまう感じ(笑) 喋り方もかわいいし、ちょっとアニメ声なところもいい。 ただ、意外と歌唱力がまだまだなことに逆に驚く。 大人の方はみなさん歌がうまいので、 彼女も普通に歌えるという思考でしたが、 そこまでのレベルではない。 頑張ってましたけどね。 回りがうますぎだもの。 これから頑張ってほしいな。 下手ではないですよ。 あくまで、回りと比べて。 北島つばさ役の中村理沙。この舞台、唯一の人外。 幽霊です。 ほわ~んとした演技。 どちらかというと、演技よりも歌の人かな? 歌唱力はあるのだけれど、声楽の声質というか、 トーンを上げる歌い方。 長谷川未来役の遠藤文夏普通に子役レベルとしても高い。 都会のジュニアミュージカルに出演している子役と比べても、 それほど違和感の無い演技。 過去にミュージカル「きみにとどけ・・・」でも出演していて、 私も印象深いです。 その頃から印象に残っていた女優ですが、確実に成長しているのがわかる。 彼女は笑顔もいい。 屈託のない優しい笑顔。 発声もしっかりしていて、聞き取りやすい。 印象的にいうと、高地杏実と飯嶋あやめを足して二で割った感じかな? 歌唱力はまだまだだけれど、 これは練習すれば問題ないレベル。 何と言ってもまだ若いですから。 今はガンガン突っ走ればいい。 今後もぜひ頑張ってほしいな。 武井聡美役の中村直子歌唱力抜群、演技も政治家の奥様役で、 気品あふれる感じ。 ただ、あの旦那さんにはもったいない(笑) きっとどこかに良いところがあったのでしょうね。 広崎加奈子との会話も楽しい。 熟練した演技ができる大人の女性同士の会話ですから。 長田夢乃役の久保美由紀おかみの役。 演技もいいけれど、歌唱力に驚く。 娘である長田彩乃役の髙野美緒と歌う場面がありますが、 彼女の方が断然うまいことに驚き。 調べてませんが、只者ではないですね。 長田蔵造に集まってくる街の人の中では、 大宮さち役の服部乃吏恵が印象的。 自然な演技で、この役にはあっていました。 とにかく自然体で違和感無し。 こういう人いるだろうな~という、そのまんまな感じがいい。 長谷川未来の父親役は、あえて明記されていませんが、 素人レベルだけれど、ダンスもしているし、 独特なテンポがあって、良い意味での観客から笑いを産み出していました。 彼のそのキャラクターをベテラン俳優たちがうまく支え、そしてのせている。 それゆえの面白さ。 意外とヒットだと思います。 総括じつは改めてよく考えると、話しはあまり完結していません(笑) 幽霊が浄化することもないし、愛子の恋、就職、神山の今後もある。 蔵造と広崎加奈子の大人の恋愛の部分も観てみたかった気もする。 続編、作ろうと思えば作れますね。 懐かしい芝居小屋の、ほのぼのした雰囲気がある、市民ミュージカルでした。 ※敬称略 |