◆ 3LDK第9回公演「 (改訂版)おい!オヤジ。」

満足度
◆公演時期   2012年4月10日〜15日
◆会場 テアトルBONBON
◆作・演出 佐藤秀一(3LDK・JVM)
◆脚色 3LDK

あらすじ
齢70にして金髪ヘアー
ジーンズとアロハをこよなく愛したオヤジがこの世を去った
たった一言の遺言とバカみたいな大金を遺して・・・
そこへ奴らは現われた!!
(公式サイトより引用)
観劇感想
そもそも、「3LDK」というのは、
2003年、佐藤秀一(作・演出)、上田裕之(俳優)、大原やまと(俳優)の3人により、
結成された演劇ユニット。
「限定された観客にのみ向けられた作品ではなく、
初めて演劇を観る方から目の肥えた方まで、
幅広い人たちに楽しんでもらえる作品を創りたい」という趣旨のもと活動。
固有の特色が強くなりがちな“劇団”という形はあえてとらず、
各公演ごとに映像・舞台・その他幅広い方面から出演者やスタッフを募る
“ユニット”という形態をとっている。
メンバーは個々に様々な場所にて活躍。
そこで得た経験を持ち寄ることによって、
よりクオリティの高い作品作りを目指している。

とのこと。

会場の「テアトルBONBON」って、
アルジャーノンに花束を 2006年の会場、
「中野ザ・ポケット」のすぐ近くなんですね。
どうりで来たことあると思いました。

客層的に、「キャラメルボックス」の方が出演していることもあり、
なんとなく雰囲気を感じ取りました。
私はピン!と感じてしまうタイプなもので。

話の内容的には、
あらすじにも書かれているように、
独特だった父親が他界して、
その通夜、いろいろな出来事が起こっていくという感じです。

ストレートプレイで、セリフはたくさん、長台詞も。
それが休憩時間無しの2時間強。
それだけ役者の質が問われる舞台。
ほぼ噛んでいる人はいませんでした。
声の張りもしっかりしている。
スムーズに流れます。
質が高い。

舞台セットは通夜での居間を再現。
食事等が置かれている長いちゃぶ台。
そこに座って、家族やいとこや友人が会話していく展開。

壁には古い振り子時計。
これが実際に動いており、時間帯で音を鳴らします。
3時とか、半とか。
この音、舞台上のSE、効果としても計算されていますね。
ちょうど重要なセリフがあるところに、
うまくかぶさってくることが何度もありました。
私が観た回なんて、最後の方のセリフにうまくかみ合いました。
もちろん、舞台の進行状況によって、
微妙に変わってくるとは思いますが、
ある程度は計算しての演出だと思います。

最初は、お通夜が終わってひとだんらくをした、
家族の会話ばかり。
もしかして、ガラスの仮面の「通り雨」のように、
淡々とした日常が2時間以上ずっと続くのかと思い、かなり心配しました。
それはそれで舞台としては成立するのですけど、
正直言って、そんなに面白くはありませんから。
客席からは笑いも起こっていましたが、
私は笑えませんでした。
ので、「これはまずいな〜」と思いながらの観劇。
けっこう長かったです。

小さな事件はポツポツと起きてはいたものの、
中盤ぐらいからでしょうか?大きな変化が現われるのは。
そのあたりから物語が大きく動き始め、
さらなる事件が次々と起こっていきます。
海外ドラマの「24」のように、たたみかける勢い。
「またかよ!」という感じで。
ネタバレが多過ぎるので、
なかなか全てを書けないのがつらいところ。
ひとつ書くと、全部が通じてしまいますから。

ウルトラマンの人形が出てきたところは、
そこからの流れが予想できましたが、
最後のオチは予想できず。
面白かったです。

気になった役者は・・・
基本、プロの役者の方ばかりなので、
下手な人なんていません。
というか、普通の一般の人を演じること自体が難しいですから。
個性ありすぎな役とか、変人なら演技はしやすいですけど、
一般の人の演じ分けは本当に難しい。
家族構成とか、
そういったあたりを研究して性格に入れてくるのかな?

香坂聡役の畑中智行はドッシリとした長男を演じていて、
相当なセリフ量でした。
この方がキャラメルボックスの方なんですね。

矢島勇二役の大原やまとは次男なんですけど、
難しい次男役。
見た目ちょっと喧嘩っばやいのかな〜とも思いましたが、
そうでもないお茶目な雰囲気もある。

中尾譲司役の上田裕之は、独特な役。
通夜に来た客というか、いとこというか、その過程を示すのが難しい。
観ている方とすれば、ウザく感じるし、イライラする感じ。
観客からそういった印象をもたれてしまう役を、
どのように演じるのかは役者の度量でしょうね。
観客との呼吸も必要な、キーポイントの役でした。

唯一の子役、
矢島亜紀子役の田村花恋
去年ですと、
ミュージカル「きみにとどけ・・・〜この愛永遠に時をこえて〜」
「ラブリーズ3〜きみの迷い道〜」
こんな感じで観ています。

なによりひとつ思ったのは、
喪服姿がよく似合う。
フェチとかそういうものではなく、
やはり女性の喪服姿は、男性からしてみると、
何か惹かれるものがある。
ドキッとする。
(私だけかもしれませんが)

それに、彼女は色っぽい。
今回出演している誰よりも色気がある。
これは彼女の武器でしょう。
本人は自覚していなくても、男性からはすぐにわかる。

演技も、大人の方に混じっていながら、
全く遜色がないレベル。
コメディチックな演技もうまい。
何も喋らなければ、普通に清楚な可愛い女の子。
それでいてコメディがキチンとできますから、
そのギャップが観ていて楽しい。
「ラブリーズ」等で鍛えた、
ストレートプレイにも対応できる演技力を身につけている。
出番が多いのもうなずけます。
子役って気づかない方も観客の中にはいるでしょうね。
年齢を聞いてビックリでしょう。
それだけしっかりしているもの。

総括
舞台を通じて思うことは、
「家族愛」、「生と死」というよりも、
みんな何かしら隠し事をしている、ということでしょうか?
ウソ、秘密、そういったものを隠して生活をしている。
それが通夜の場で炸裂。
人が亡くなった場だからこそ、本当のことが言い合える。
言い合えるって、それは素敵なことでもある。
そんな印象を受けました。

見る人によって、印象が異なるでしょうね。
家族愛に重きを置いて感傷的になる人もいるでしょうし。
私はコメディに重心を置いたので、
面白おかくし舞台を拝見しました。

ただ、最終的に子は親を選べませんから、
やっぱり大変。
(敬称略)
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