イストリプロデュース公演vol.3「big family〜歌族の帰り道〜」

満足度
◆公演時期   2012年10月25日(木)〜28日(日)
◆会場 新宿 シアターモリエール
◆脚本・演出 竹田昌広
◆演出補 松本昇大
◆制作 イストリ
◆総指揮 片桐豊
◆制作プロデュース 田中圭
◆振付 広瀬双葉

あらすじ
父、母、そして男女合わせて8兄妹の大家族 海杉ファミリー。
繰り返す慌ただしい毎日。
そんなある日、妻のたかねが、旦那の携帯電話を誤って操作をして電話をしてしまう。
相手の連絡先の名前は男性なのに、出てきたのは女性の声。
浮気と気付いたたかねは夫と口論の末、家を飛び出してしまう。
そして、残った家族たちは・・・
観劇感想

イストリプロデュース公演vol.3ということで、
「100年分の声援を」
「腰抜け男ども、義理と人情は…女が見せてやる!」
に続いて。
というか、私全部観てますね。

今回思ったことは、
どちちらかというとホームドラマ。
もちろん、独特のコメディはあるけれど、
家族がメイン。
上記2作品と比べて、
エンターテイメント性としては乏しいと思う。

ただ今回は、
「こういった内容の舞台もできるんだぞ!」という感が見られる。
ギャーギャー騒ぐだけの、お馬鹿なコメディ、
だけではなく、社会風刺っぽいこともできる、
なんてことを、あくまで私の妄想として感じました。

あと今回は、ほぼ全員にスポットが当たる。
出演者がひとりひとりピックアップされます。
家族のみならず、恋人まで。
そういったアピール部分があるのは、
出演している役者たちも気合入るでしょうね。
それぞれの個性発揮できるもの。
蛇足ながら、観に来てくれた友達にもアピールできますし。
普通はそこまで各個人にスポットを当ててくれる脚本なんてありませんから。

最近は音楽番組なのに口パクが多く、
私なんて閉口しますが、
この舞台は口パク無し。
その点で、普通に嬉しい。
特に私の席からは、広瀬双葉の声が良く届きました。
しかもパンフレットを見ると、彼女が振付担当なんですね。

テレビの向こうのアイドルを応援するのもいいけれど、
舞台でこれだけ頑張っている子を応援することもいいと思う。
今回の舞台ってわけではないけれど、
かわいいが女の子たくさんいる。
しかも、実力もある。
そういった子が舞台で演技をする姿、
観ていて胸にくるものがあると思うけれど。

さて本編。
簡単な流れとしては、
四女の四津世がたまたま犬のベスを見つけ、家に連れてかえって家族に飼うことをせがむ。
→妻のたかねが、忘れていった夫の携帯電話から浮気を発見。口論の末、家を飛び出す。
→家族が混乱。夫の太郎は犬のベスと喧嘩をして病院に入院。
→太郎は入院中に看護婦のルカと愛を育み、ルカが母親代わりとして海杉家の一員となる。
→家族が猛反発の中、別の浮気相手である愛子とともに、今度は太郎も家を飛び出してしまう。
→父も母もいなくなり、とにかくもルカが兄妹たちの面倒をみることに。
→その兄妹たちはそれぞれに悩みを抱え、それをなんとか解決していこうとするルカであった。
→にもかかわらず、太郎に関わった女性が増えていき、家族たちはさらに混乱することに・・・
こんな感じです。

大家族がテーマ。
私の場合、一番思うことは、
失礼ながら、遺産分配大変だな〜ということでした。
特に土地とかあったら、もらったとしても固定資産税払い続けられないな〜
なんてことも思いました。
蛇足で申し訳ない。

大家族がテーマではあるけれど、
じつのところ犬のベスがよく出てきます。
これが、佐藤春樹が演じる、見た目は普通の人間。
犬が普通に人間の思考をもっていたら・・・みたいな感じです。
たしかに最初はよくでてきましたが、
中盤から後半は忘れることが多い・・・
これは本人も言いますけど、脚本としても皮肉かもしれませんね。
それだけ家族愛に重点をおくと、犬の出番が少なくなるのは仕方ありません。

次々に太郎の種馬ぶりがわかり、
魅了される女性が出てくる、出てくる。
看護婦、不倫相手、先生や生徒、さらには長女が結婚する男性の元恋人まで。
人間ルックスじゃないってのが顕著・・・のような感じですかね。
逆に男性の観客は、この舞台を観ると勇気が出てくるかもしれません。

中盤、後半はルカがメイン。
長男であることに悩み、自分の部屋に引きこもる一郎に料理を作り、
次女の格闘技に対抗しようとマーシャルアーツを習い、
次男の「痔」のためにクッションや薬を買うためのお金を与えたり、
いろいろと尽くしていきます。
本当にけなげ。
にもかかわらず最後は・・・というのが本当にせつないところ。

「痔」の話しでのコメディ、
そして、四津世のいじめ問題。
ここのバランスは良かったと思います。

気になった役者は・・・
というか、う〜ん、今回の出演者、本当にみなさん素晴らしかったです。
各々にスポットライト浴びたおかげで、観客として物凄くわかりやすかった。
優しいと言えば、優しい演出ではありますが。
キャスティングも良く、全員がハマッテいた感じです。
もちろん、役者の演技力もありますが。

ちなみに「腰抜け男ども、義理と人情は…女が見せてやる!」
に出演している方も多いのですが、
そのパンフレットのイメージと違う方もいて、けっう意外。
役作りは重要ですね。

ほぼ主役の海杉太郎役の仲圭太は、
今回も本当に良かった。
たしかにおいしい役ではあるけれど、
ダメな父親役、それでいて、最後の娘を守る姿。
あそこはじつにいい演技。
殴りたくても殴るのを堪えての土下座。
舞台の話なのに、何か現実と向き合う、胸が痛いシーンでした。
今のテレビドラマはつまらない(私は)
彼の方が10倍気持が伝わってくれる。
もちろん、舞台とテレビドラマとは全然違うけれど。

長女の大塩未来のほんわかした笑顔、そして八重歯に癒される。
彼女は「腰抜け男ども、義理と人情は…女が見せてやる!」では、サツキ役でしたか・・・
全然印象違うのでビックリです。
ロングの髪から、ショートカットにしたんですね?
しかも笑顔・・・全く違う。すごいです。

三女、小池久美子のちょっとツンケンした態度も面白い。
しかもまさか、友人のユカリ役にも手を出す父親とは。
そのユカリ役の大図愛も、プニプニした雰囲気が最高だった。
私はめっちゃ好き。

女性関係では、小林先生役の栗生二稲が美人すぎてビビリます。
このメンバーの中では、とてつもないルックスのオーラ。
モデルっぽい。
だけでなく、演技もしっかりしています。

小田マコ役の大澤千明はパンフレットの雰囲気は全く違い、
凛としてスーツ姿も格好よかった。

愛子役の荻原美彩は、小金持ち的な奥様の雰囲気バッチリ。
大金持ちというわけではなく、ちょっと背伸びしている感じ。
ても、そのまんまの雰囲気。

かなり無理がある子供役の小久保亜佑子も末っ子役を頑張ってました。
一応末っ子の甘えん坊キャラということで、
ある意味個性が無いのが個性とも言えるから、
甘えん坊的なところをフューチャーせざるをえない。

ミエ役の伊藤瑞姫は意外と難しい役。
三男の三郎が好きな、ギャル系。
ギャルでありながら、なぜかひ弱そうな三郎が好き。
過去の相撲大会で、
三郎が大男相手にウッチャリをかました場面が記憶に残っている。
それが初恋みたいな感じ?
この揺れ動く心は、難しい演技だったと思います。

次女、二葉役の広瀬双葉は、
背が小さいけれど、目力、力強さで頑張ってました。
せっかくなので、もっと殺陣があってもかよかったかな?
最初の頃は、一番ルカと対抗していました。
前述していますが、この舞台の振付も担当。
歌もよく伸びてました。
舞台だとそういうことがすぐにわかります。
「腰抜け男ども、義理と人情は…女が見せてやる!」では、ユリ役。
なるほど、髪形変わると女性は印象変わりますね。
パンフレット見て、今気づくほど。

海杉たかね役の塚本都世子は、
母親として最初と最後が印象的。
途中出演シーンがないので、忘れがちですが、
最後はおいしい。
家族愛の定番という形にはなってしまいますが、
子供たちが自分の元に集まってきますから。
ここの暖かい温もりをもった雰囲気が、
彼女の演技力としての見せ所ですね。

マキ役の橋垣美佑は、
「痔」つながりとして次男の二郎と付き合うことになります。
彼女も演技がうまい。
よく声が出ている。
独特な彼氏と彼女の関係なので、
ここもたしかに難しい役どころではあります。
彼女は、「腰抜け男ども、義理と人情は…女が見せてやる!」ては虹子役。
本当に!
ビックリ!
イメージ全然違いますね。
でも、だからこそ女優。
これは一番驚きました。

裏の主役は是澤洋文かな?
彼は完全にキーポイントでしょ、男の中では。
「腰抜け男ども、義理と人情は…女が見せてやる!」
でも良い演技をしたけれど、
今回もじつにいいと思う。
三枚目役は抜群にうまいもの。
「痔」の演技ばかりになってしまうのはつらいけれど、
普段の演技も私すごく好きですね。
男が好きになる役者かな?

それから次世代のエースとして、
四女役の大脇由美恵
私は素晴らしいと思う。
ものすごく良い演技をする。
観ていて見応えあるし、引き込まれる。
舞台の最初に登場した時点で、私はピンときました。
元気で明るく、人なつっこい笑顔。
ちょっとドタバタする感じも魅力的。
この舞台は満遍なく、ほぼ全員に見せ場がありましたが、
時間が許せば、彼女中心の話しを長めにしても良かったと思います。
四女中心の物語、ルカを通して物語、どちらでもいけますね。

後述する中村裕香里とはまた違った、
元気で愛嬌ある、次世代のエース候補。
彼女を発見しただけでも、この舞台を見る価値がありました。
今後もますます伸びていくとこでしょう。
私が舞台観劇素人だったら、
間違いなくまず彼女を好きになる。
それぐらい魅力的な女の子。

そして中村裕香里
今回は久々にどちらかと言えば、
大人しく素直で天然な役。
当たり役というわけではないけれど、
彼女のキャラ的に言えばやりやすい役柄。

天然で素直で、男に尽くして、そして身を引く。
ちょっぴりせつない、可憐な女性の役でした。

今回、彼女は歌のソロもあります。
子役時代から、歌にも定評ありましたから。
下手なわけがありません。
さすがの一言。

ただ、ひとつツッコミを入れるとすれば、
子役あがりの女優たちもレベルアップしているわけで、
歌唱力については、さらに上の段階にいっている人もいます。
そこが難しいところではあります。
ま〜普通に観るぶんには全くわかりませんが。

「100年分の声援を」では、
家庭環境に問題がある難しい役、
「腰抜け男ども、義理と人情は…女が見せてやる!」では、
普通の子がなぜかヤンキーになってしまうという弾けた役。
特にこの2作品の間の中村裕香里の成長は凄まじかったです。
そして「LIFE 〜未来のあなたの為に〜」では、
超ド天然、斜め方向アニヲタのウェイター役。
この役は天然ということでハマリ役でした。

女優である以上、いろんな役を演じなければなりません。
でも、残念ながら、人それぞれの性格、個性によって、
当たり役もでてくれば、
本人の雰囲気とマッチしていない、ミスキャスト、
なんてもの出てきます。
その点、中村裕香里に関しては何でもできる。
こういう女優は珍しい。

彼女だけではありませんが、
これだけの実力をもった女優が、
世間一般に知られないのはもったいないし、
寂しい。
過去に私のサイトでは、子役メインで紹介しましたが、
今は知り合いを作らないため、
今までの子役がみんな大人になって活動をしています。

そろそろ、私のサイトでも、
「こんな女優がいるよ」とか、
「番組プロデューサーさん、事務所の関係者さん、
一度のこの女優を見て!」
なんて、アピールしたほうがいいかな〜?
と思うようになりました。
なんでもいいから、何かしらのきっかけになってほしい。
朝のNHK連続テレビ小説の主役に、いきなり新人が抜擢!
だっていいと思う。
私は偉くもなんともないけれど、
実力ある子が埋もれるのは寂しいもの。

総括

今回は少し社会風刺を入れてきた挑戦的な舞台
・・・だと私は理解しました。
違ったら違ったでそれでかまいませんが、
その取り組みはいいと思う。
コメディもたくさんありますし、そこからの感動系ですから。

客席も満席。
固定ファン?の方もついているようですし、
このカンパニーと言っていいのでしょうか、
とても成長いちじるしいカンパニー。
私の好きなSETにも似た、
ミュージカル・アクション・コメディな舞台。
しかも全員が若い。
今後の成長も期待できる、新進気鋭のカンパニー。

(敬称略)
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