公演時期 | 2010年8月11日~27日 |
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会場 | 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール |
原作 | 美内すずえ |
脚本 | 青木 豪 |
演出 | 蜷川幸雄 |
音楽 | 寺島民哉 |
美術 | 中越 司 |
照明 | 室伏生大 |
衣装 | 宮本宣子 |
音響 | 井上正弘 |
音楽監督 | 池上知嘉子 |
振付 | 広崎うらん |
あらすじ全日本演劇コンクールで敗退し、解散が決定した劇団つきかげ。 北島マヤは仕方なく、外部の舞台「嵐が丘」に出演することになる。 一方、姫川亜弓は独自路線、 「王子とこじき」「テンペスト」と、舞台をこなしていく。 劇団つきかげの次の公演は、北海道の劇団一角獣との合同公演「石の微笑」 北島マヤは人形の役。 様々な苦難を乗り越えながら、マヤは人形役を完璧にこなしていく。 ところが、母親が行方不明になったことを知ったマヤは、 舞台公演中、涙を流してしまう。 演じるべき、「人形」の仮面がはずれてしまった・・・ 月影千草に謹慎を命じられたマヤであったが、 急遽代役で出演した栄進座の「おんな河」で、 ハプニングがありつつも役をこなしていく。 そして、ついに「奇跡の人」ヘレン役の候補として選ばれる、 北島マヤと姫川亜弓。 オーディションから、彼女たちの戦いが始まる・・・ (パンフレットより一部抜粋) 感想2008年の音楽劇「ガラスの仮面」 その続きとなる今作。 もちろん、私もとても楽しみにしていました。 話しの流れ的には、 嵐が丘→王子とこじき→石の微笑→テンペスト→おんな河→奇跡の人 今回、時系列が原作とは変わっています。 「おんな河」「王子とこじき」があって、 「おんな河」を見たお偉いさんが、マヤに注目をして、 キャサリンの子供時代に抜擢。 そこであまりにもマヤが回りとのバランスを崩したため、 月影が他のキャストの呼吸を感じとらせるために、 「石の微笑」で、自らは全く動かない人形役にあてる。 本当はそういう流れ。 前回は無かったと思うのですが、 今回から、舞台の左右上部にある電光掲示板に、 舞台の内容やあらすじを表示。 これはかなりありがたい。 やっぱりわかりやすいもの。 前回同様、観客の開場時間が始まってから、 キャストがそのままの流れで登場し、舞台にあがります。 もちろん、大和田美帆らも。 舞台で写真を撮っていて係員に怒られるシーンもあります。 だめだよ、マヤちゃん。 ちょっと面白い。 また、オープニングのレッスン風景も前回同様。 彩の国さいたま芸術劇場大ホールは、 本当にビックリするぐらいの奥行きがあって、 ダンスの遠近感がすごい。 舞台進行中も、客席から登場することが本当に多い。 前回よりも多いかも? 客席脇の通路もしょっちゅう通ります。 だから舞台前に、係員が厳密にチェックしていたんですね。 荷物が当たらないようにとか。 レッスン風景が終わると、漫画「ガラスの仮面」のキャストのパネル。 それを動かしたりします。 これは前回もありました。 「ネットで検索」という言葉や、 携帯でのやりとりは、漫画原作を読んでいると新鮮。 原作当時ありませんから。 最初がいきなり「嵐が丘」には驚きました。 まだ稽古シーンで、馬は本物ではなく、人が入っている偽物。 上にキャサリンの兄が乗っているので、ずっと我慢しなければなりません。 キャサリン役のマヤが、演出家からダメ出しを受け、 馬の足役の役者が、 「こっちも大変なんだよ」なんてマヤに捨てゼリフ。ここのやりとりは面白いです。 ただ、ヒースクリフ役の真島良とのからみが無いのは残念。 本当はけっこう奥深い内容なんですよね。 彼女がいるのに、本当にマヤちゃんを好きになってしまって、 「石の微笑」の舞台に通いつめるぐらいですから。 「無宴桜」での台本すり替え事件が無いのも残念。 ここも、姫川亜弓との対決がありましたから。 突如、即興で舞台に出演することなり、台本を完璧に暗記したにもかかわらず、 その台本は書き直される前のもの。 もう本番の舞台に出演していて、ど~すればいいのかわからない。 そこで、元々出演していた姫川亜弓が登場し、 北島マヤに物語の内容を説明口調で悟らせ、 マヤは亜弓の意図することを理解し、重要なセリフをはいて、舞台を退場する。 ここの流れも好きなんですけど。 それも無し。 「石の微笑」では、人形の演技を身につけるための「竹ギブス」! これははずせませんね。 まさに「キタ~!!」という感じ。 たまらなく面白い。 そして、大和田美帆の人形の演技。 バッチリだと思う。本当にカチカチ、カクカクな人形。 よくやっているよ、大和田美帆。 私がファンになりそうなぐらい、素晴らしい出来ばえ。 「石の微笑」でのキャスト発表のところは原作通りですが、 劇中劇がほとんど無かったのは残念。 ある程度は欲しかった。 あれだけだと、結局どういう舞台なのかわかりませんから。 左右上部の電光掲示板にあらすじはありましたが。 母が行方不明であることを告げられ、 ついに仮面がはずれてしまうというところだけをピックアップする感じ。 マヤから、演技の仮面がはずれる、いわば人形が泣いてしまうシーン。 舞台の左右にモニターを設置、 ずっと生中継の映像ですが、涙を流すところだけインサート映像。 人形役、マヤの顔のアップ。 これで、観客にも涙を流したところがわかるわけです。 2幕は全部が「奇跡の人」編。 これは致し方ないでしょう。 ここがメインだし、時間はさかなければなりません。 それでも、とあるエピソードが削除されていました。 そう、ヘレンが言葉を初めて発っする、 「ウォーター」をどう表現するか。 姫川亜弓、北島マヤ、ふたりともに悩み、 そして、ふたりともに違った表現で演じます マヤは、いっぱいに膨れた水風船が弾けるイメージ。 亜弓は洗濯機のコンセントを濡れた手で触ったことによる、電気ショックのイメージ。 原作ファンにしてみると、いれてほしかったところ。 おそらく、原作、脚本、演出と、かなり議論したことと思います。 あとは、「奇跡の人」公演中、 マヤ、亜弓、お互いの演技を見ることなく、 たい焼きを食べているシーンがあるともっと良かった。 ヘレンを演じるために、別荘でひとり目隠し、耳に詰め物をする、あのシーンも登場。 目はともかく、耳も聞こえない自主練習?は、大変でしょ。 真面目な話、食事もさることながら、トイレやお風呂だってままならない。 ま~基本は、たまたまそこを訪れる、 紫のバラの人こと速水真澄との目隠しでの抱擁が重要なんですけどね。 女性はこのシーン、好きな人が多い。 ヘレン役のオーディションは面白い。 「ヘレンとして遊んでください」で、 他のヘレン候補は、床に転がっているオモチャで遊ぶのに、 姫川亜弓は床にへたりこんだまま何もしない。 そこで審査員が、ボールを投げる・・・ そして、亜弓の顔面に直撃。 このシーンもバッチリ。 ここで審査員のミュージカルナンバーがあるのですが、 コメディチックで面白かったです。 つまりは、盲目であるヘレンは、オモチャがあることにすら気付かないということ。 次に登場する北島マヤも、亜弓と同じように床へへたりこみます。 ここでの音楽の「またか!」みたいなナンバー。これも面白い。 最終審査「ヘレンとして待つ」のところも雰囲気ピッタリ。 火災報知機が鳴って、 他の候補が動揺するのに、マヤと亜弓だけが全く動かない。 そう。耳が聞こえないから。 ヘレン合格後の稽古、本番の舞台もすばらしい。 亜弓さんの鼻血もありますから。 断片的な「奇跡の人」にもかかわらず、間違いなく感動します。 家族との食事シーン、 その後のサリヴァンとヘレンの駆け引き、 そして「ウォーター」までの流れがメイン。 マヤ、亜弓、そして歌子。 ものすごく体力を使う場面。 大暴れしますから。 観客は引き込まれますよ。 ま~これだと、本当の「奇跡の人」も、 あそこの場面だけ観ればみんな感動する・・・なんて思ってしまう。 それから、私のマニアックな見方として、 ヘレン役候補の金谷英美。 空想キャスティングで述べたりしているんですが、 このキャラクターけっこう好きなんですよね。 マヤ、亜弓に、わずかの差で負けてしまうのですが、 絶対リベンジしてみせる・・・みたいな気持ちを心の中でつぶやき退場。 私もいつか絶対に何らかの形で登場することと思いました。 もちろん、今でも思っています。 ただし、この退場から、いまだに登場していません・・・ ということで、金谷英美好きな私としてみると、退場があっさりで寂しい。 鬼ババの名シーンがあったら良かったのにな~ 今回は、深谷美歩が演じましたが、 正直、私のイメージとは違うかな? 頑張ってましたけどね。 目がパッチリしすぎのような。 もっとごつい感じでもいい。 好きなところは、栄進座「おんなの河」 このイジメのシーン。 結城麻江は、本来自分が演じるはずの役をマヤに横取りされて、 マヤに大恥をかかせてやろうと、友人と一緒に罠を仕掛けます。 それがいわゆる、子守りをしている時に、 背中に背負った赤ん坊である人形の首がとれてしまう。 ここは傑作!! 漫画どおりのシチュエーションで、観客驚くもの。 あの状況で「ほんに子守も楽じゃない」みたいなセリフ、 舞台じゃなかなか言えませんよ。 超ビビると思う。 少なくともセリフは発することができず、人形の首を直すぐらい。 北島マヤだからできる、セリフだと思う。 ここの大和田美帆の笑顔、めっちゃ良かった。 ただ、原田菊子から「舞台あらし」の異名を明言する場面がないのは残念。 あの場面、名シーンなんだけどな~ 原田菊子と月影千草が語りあうシーンも本当は欲しかった。 けっこう名シーンが削られています。 そして、第17回アカデミー芸術祭 北島マヤは姫川亜弓を抑えて、助演女優賞を受賞。 コメントをしようとしてマイクに顔面をぶつけるとか、 花束を捧げるところとか、めっちゃ面白い。 本当にマヤがやりそうだもの。 そして亜弓とのやりとり。 亜弓さんいいわ~ 私は絶対負けてない!って感じが物凄く伝わってくる。 ここはちょっと、マヤではなく、亜弓さんにかたいれしてしまう。 亜弓さんあんなに努力しているのに、 マヤちゃん天才で、なんなくこなしてしまう・・・ってな感じで。 エンディングはピーターパンのような、フライングシーン。 マヤと亜弓が飛びました・・・ ただ、テレビ番組で「ガラスの仮面」の告知している時、 この場面が放送されていました・・・ エンディングを放映しちゃうのは、ちょっともったいないような。 私は舞台途中の映像かな~という感覚で見ていましたから。 まさか最後とは。 全体的に前回のような大がかりなシーンは無くなりました。 雨演出もなし。 劇団のシーンもないので、けっこう劇中劇が連続。 人とのからみも少ない。 前回は友人との会話がもっと多かった。 青木麗や桜小路ともけっこう話していましたし。 みんなで和気あいあいのイメージが強いです。 今回はそういう意味合いはいっさいなし。 人と人とのつながりがやや薄い。 特に2幕はほとんどないもの。 奇跡の人の別荘での稽古、 舞台上の姫川歌子との稽古、 そして、本番での「ウォーター」 劇そのものとして集中はできるし、 奇跡の人の断片だけでも感動するのだけれど、展開は止まりますからね。 演出するほうも、この止まった空気を動かすのは大変だったと思います。 気になった役者なによりまず、主役、マヤ役の大和田美帆の歌唱力これには驚きました。 前とは雲泥の差。 のびがあるし、力強いし、声量あるし、しかも安定している歌い方。 これはそうとうトレーニング積んだでしょう。 私は久々の観劇なので、他の舞台、ミュージカルでの稽古量もあると思います。 マヤの素朴さ、ボケのようなコメディの素、とてもいい演技をする。 姫川亜弓役の奥村佳恵前回よりもさらに演技がうまくなってきました。 歌も頑張ってます。 なによりいいのが、「王子とこじき」のこじき役。 これをやるとはね~ 少年っぽい演技もなかなかやります! そもそも姫川亜弓は努力の人。本当に努力。 なのにあまり何もしない(と思われてしまう) 素朴で天然な天才のマヤに常に屈辱を味わう。 ここが、やっぱり泣けるんですよ。 亜弓さんに同情してしまう。 こんなに努力しているのに、天然の天才がそれを越えてしまう・・・ その無念さ、歯がゆさが奥村佳恵の演技から伝わってきます。 それから彼女は髪形やカツラ、メイクで雰囲気がコロッと変わる。 前にテレビ番組に出演していたのですが、 この姫川亜弓の雰囲気は全然違います。 やっぱり、姫川亜弓を演じるにあたり、 髪の毛から、メイク等、いろいろな苦労をして似せているんだな~と思いました。 正直なところ、月影千草役、夏木マリが主役にも思える。存在感が、前回よりもさらに深まった感じ。 当然といえば当然なんですけど。 文句なんてあるわけがないもの。 この役に関してはピッタリすぎる。 姫川歌子の香寿たつきは元宝塚。ルックス、スタイル、原作のイメージそのまま。全く問題なし。 後半ヘレンとの格闘が控えているので、1幕は少しだけ。 劇中劇とはいえ、「奇跡の人」のサリヴァンですからね。 ヘレンと2回も対応しないといけませんから。 毎回舞台が大変。 速水真澄の新納慎也写真だとイマイチ(失礼)なのですが、 舞台の生の姿は、速水真澄のイメージに近いと思います。 漫画のキャラである速水真澄のイメージに近づけるなんて、 並大抵のことではありませんが、 なんといっても細身のスタイルがいい! 演技もさることながら、歌唱力が凄くあることに驚き。 いい歌声。 惚れ惚れする。 桜小路優役の細田よしひこけっこう背が高い。 雰囲気は穏やかな感じで、これも原作のイメージどおり。 小池徹平のような感じ。 私はあまり存じあげなかったのですが、 けっこう有名なドラマに出演していたようですね。 ただ、歌唱力はまだまだ。 これは仕方ありませんけど。 今回は出番が少ないの残念。 前回はいろいろな場面でからんでいましたから。 「嵐が丘」での嫉妬、 奇跡の人の稽古中に出会って「じゃあ、またね」ですれ違うところ。 このぐらいです。 桜小路にしてみればマヤとデートをしたいのに、 舞台に夢中で、自分のことには何も気付かず。 真面目に稽古をしているマヤの邪魔はできない、と思ってしまう。 こう考えると、桜小路も大変だ・・・ そりゃ、他の女の子と付き合いたくなるのもわかる。 時間がある限り、一緒にいたいもの。 男心、全然わかってないよ、マヤちゃん。 ちょっとせつない。 二ノ宮恵子役の黒木マリナあいかわらず歌唱力抜群。 前よりもさらにパワフルになった感じ。 髪の毛、ショートカットにしたのかな? 次回、パート3があるとしたら「真夏の夜の夢」ではおいしい役なんですが。 でもパート4ぐらいかな? 青木麗役の月川悠貴去年に続いての出演。 今回出番がやや少なくて残念。 前回はつきかげでのメンバー公演が多かったですからね。 男性のような女性を、男性が演じるというのは本当に面白い。 ただ、歌うとバス声なのは驚く。意外と低音。 そのギャップもまた素敵。 そうそう、 「森は生きている」女官長役の花山佳子も出演。 歌唱力は物凄いですらからね。 開始直後のレッスンでは、ダンスも披露。 足あげも頑張っていました。 ベテランも容赦なし。 本当に大変。 総括基本、すっごく面白いのですが、 前回と比べてしまうと、やや物足りない。 前回は、マヤがまだまだ未熟、未完成で、 劇団つきかげメンバーとの出会いや、ライバル亜弓との初対決、 桜小路との淡い初恋の場面もあったり、 劇中劇も多く、雨のシーンもあり、 展開がたくさんあって、息つくひまがなかったんですよね。 今回は2幕がすべてヘレンの稽古の話ですし、 演技がかなり上達してきてしまった、マヤ対亜弓ですから。 これは致し方ありません。 演技がうまくなったらうまくなったで、 昔の未完成の方が好き、なんてよくある話。 前回よりも物足りないとしても、十二分に楽しめる舞台。 今後もう一回ぐらい続編がありそうですが、 だとすると、テレビドラマ編、母との死別、テレビ業界からの追放、 そして、復活の序曲である学校の出し物かな? それとも「おらぁ~たずだ」で有名な、 泥まんじゅうを本当に食べるシーンでの復活でもいい。 そうそう、乙部のりえもキーポイントになるから、誰が演じるのか見逃せない。 さらなる続編も楽しみです。 ※敬称略 |