公演時期 | 2021/10/22→11/7 |
---|---|
会場 | 池袋サンシャイン劇場 |
演出 | 三宅裕司 |
脚本 | 吉高寿男 |
出演 | 三宅裕司 小倉久寛劇団スーパー・エキセントリック・シアター |
あらすじ時代劇が衰退する中、自分の居場所を守るために奮闘する斬られ役の無名俳優たち。 そして、そんな彼らを支援する一人の若手女優。 降りかかる数々の困難に立ち向かう中、一人の無名俳優に千載一遇のチャンスが訪れ、人気俳優の仲間入りを果たす。 彼は自身の主演最新作の相手役に支えてくれた女優を指名するが、彼女は若年性アルツハイマーに冒されていた。 最高のチャンスに訪れた最大のピンチ。 しかし、彼らはこの危機を乗り越えるべくある作戦を実行する。 果たしてその結末は・・・ (公式サイトより引用) 観劇感想の前にコロナ後、初めての観劇がSET。 本当は他の舞台の予定もあったのですが、 やもえない事情で見送ったことがありました。 まず気になったのは、三宅裕司氏もネタとしてよくお話しされるのですが、 客層として高齢者が多い。 毎回増えているな~と感じていましたが、 今回はたまたまか偶然なのかはわかりませんが、いつにも増して増えている印象。 コロナの影響、劇団運営の新陳代謝、懐に余裕がある層、 いろいろなことを考えさせられる。 特にコロナの影響で舞台観劇がほぼ無くなった若い人はふと気づく。 今まで観劇行くことで消費していた資金が手元にあることを。 舞台観劇に行かないと貯まる現実に。 そうするとその資金で何かできないか?と別のことを考えてしまう。 かくいう私もそう。 それに気づかせてしまったコロナの影響は今後けっこうあると思う。 観劇感想さて本編。 斬られ役として活躍した福本清三さんが主演の映画 「太秦ライムライト」から影響を受けた作品であることは間違いありません。 また「蒲田行進曲」のオマージュ的部分もあり、「階段落ち」は言わずもがな。 そういった古き良き時代の太秦、京都撮影所の思いが伝わってきます。 しかもこの舞台観劇後に現実のニュースとして存続の危機が報じられ、Netflixにスタジオ貸しもすでに行われている。 本当に深いテーマだと思う。 あらすじにも書いてあるとおり、京都太秦で起こる悲喜こもごもの舞台。 大部屋俳優しかり、制作スタッフしかり、そこを職場とした人たちにスポットが当たった作品。 大部屋俳優の中には悪役商会的なものと善人商会的なものがあり、 小倉久寛が演じる重鎮の内川伊太衛門や、今回の舞台の主役であろう伊勢本福三役の栗原功平は善人商会、 おおたけこういちが演じる欠平満側は悪役商会的な振る舞い。 ところが実際の現場ではその逆。 このネタは私の予想どおり。 普段の方がおっかなくて、現場で撮影に入ると善人というギャップネタはわかっていても面白い。 おおたけこういちさんとかこういうギャップの扱いが本当にうまい。 時代劇が衰退しつつある昨今、ドラマや映画の撮影が行われるだけでありがたい。 アイドル出身の主演女優の時代劇ドラマの制作が決定。 主役は樫本ハンナ。 名前は言わずもがな(笑) 物語の前半部分は彼女がトラブルメーカーとなる。 わがまま、ムチャぶり、とにかくいろいろなことに文句を言う。 三宅裕司が演じる黒鰆呆監督を含め、スタッフもキャストも不満だらけだが、貴重な撮影期間のため文句は言えない そんな樫本ハンナを演じたのが安川里奈。 ツンツンしていて生意気な雰囲気がじつにいい。 キリッとした眼力も印象的。 今回は時代劇ということでみなさん殺陣に力をいれているが、 彼女の殺陣のシーンも良かった。 アイドル女優なのに殺陣頑張っていると。 私的に惜しむらくは、前半で消えてしまうところ。 すごくもったいないな。 後半でも何かのきっかけで出てくるかな~?と予想していたのですが、これは大ハズレ。 安川里奈の樫本ハンナはもう一回観たいな~という欲求がある。 撮影の最中、 樫本ハンナの台本に無い予想外の剣さばきで山城屋理紗が演じる陽空ばみりが怪我をしてしまい、撮影が中断。 もちろん、樫本ハンナが怪我をさせたなんてことは誰も言えない。 山城屋理紗は今回のサブヒロイン的存在。 時代劇ということもありカツラをつけるとまた印象が違う。 役柄的に控えめと思いきや、 長年のライバルである岡山玲奈が演じる長吉友理沙との会話の部分では、力強さを感じる演技。 ちょっと上目づかいなところも印象的。 結果、制作はストップしてしまう。 時代劇の制作を諦めきれない彼らは、 太秦の看板女優・長吉友理沙の発案により、太秦のメンバーで時代劇を作ることになる。 スポンサードリンク今回のヒロインともいえる長吉友理沙役の岡山玲奈。 どちらかと言うとのほほんというか、脱力系な雰囲気もある。 そういう部分もありながら自分が太秦の看板である強い意志も感じる。 瞳、視線の動きもいい。 そして、観れば誰もがわかりますが殺陣。 相当な稽古を積んでいる。 (もちろん、切られる相手も覚えないといけないから大変) とても見応えがありました。ここは素直に拍手。 こういった部分を舞台で観られるのは楽しいな。 資金調達に苦労していたものの、樫本カンナもそれに加わって恩返し。 ちょっとひねくれたアイドルがじつは・・・と言った感じでホッコリする。 そんな中、今度はアメリカから大手ネットメディアが時代劇を撮るということで話が変わってくる。 大規模な予算が組み込まれるとのこと。 喜びもつかのま、監督は三宅裕司が演じる黒鰆呆監督ではなく、 ネットメディアが推奨するクエンサン・タラネーノ(久下恵美) しかも京都太秦のセットの町を焼き払うというのだ。CGを使わずに。 内部崩壊、不平不満もありつつ、仕事のためその身を委ねる俳優たち。 ただ、主役には無名であった伊勢本福三(栗原功平)が抜擢。 さらに相手のヒロイン役には長吉友理沙(岡山玲奈) いざ本番・・・のはずが、 突然の長吉友理沙の引退。そして結婚の発表だった。 今回の実質的な舞台の主役は伊勢本福三役の栗原功平。 私としては「SET 第56回本公演 テクニカルハイスクールウォーズ~鉄クズは夜作られる~」の刃金研磨役が印象深い思い出。 (ちなみに一夜千夜物語 2004年から観ているようだ) 今回の役は特に個性的というわけでもなく、純朴で実直真面目で、時代劇を愛する若者といった感じ。 さりげない好青年で、飾らない雰囲気がとてもいい。 こういう自然な役こそ難しいと思う。 スターになったものの、自分の中で消えぬくすぶる思い。 斬られ役としていつか長吉友理沙に斬られたい。 その思いが伝わってくる演技は良かったな~ 恋愛であったのか、ただの斬られ役としての本能なのか。 そこは難しいところ。 そして、集大成とも言われる池田屋の階段落ち。 あの階段数は十分だと思う。 それを舞台の公演中、毎回毎回落ちる。 観ているこちらも驚くし迫力あるし、落ちる方も稽古の賜物だろう。 しかし、田舎に帰った時のあの彼女はひどかったな~(涙) 数年後。 巨額なお金をかけた作品はボロカスだったものの、 主演俳優だった伊勢本福三に注目が集まり、彼は大スターになっていた。 彼は本来ヒロインで共演するはずであった長吉友理沙の引退が納得できず、彼女が結婚した夫の元に向かう。 そこで夫から伝えられたのは、彼女が若年性アルツハイマー病に冒されているという事実であった。 久々に長吉友理沙と対面する伊勢本福三。 彼女の言葉は「こんにちは」だった。 この言葉に夫は驚愕する。 今まで会った人は必ず「初めまして」という挨拶であったと。 もしかしたら病気の回復が見込めるかもしれない。 彼女のためにバラバラであった仲間たちが集まり、壮大な作戦が開始される。 (ちなみにここは私、すぐに予想できました。おそらく、「こんにちは」と言うであろうと。) 最後はベタな展開ですが、王道な流れで私は満足。 ただ、全体を通してストレートプレイが多かった印象があります。 やはりコロナの影響で、ダンス、アクション、歌は演出等を含めて削られた部分があるのかも。 本当に大きなミュージカル的な部分は最後だけでしたからね。 そのぶん、前半は若手のストレートプレイが多く、ゆったりと観られました。 ただ、やっぱり今までミュージカル・アクション・コメディを知っていると物足りないな~もっと観たい。 筋文子役の丸山優子、蛸佳美役の白土直子、いわゆるキンカンの歌がないですからね。 そのぶん後半の日本語と英語のネット番組紹介前の講談につながるのかも。 ピックアップ
スポンサードリンク 総括前述していますが、今回はおそらくコロナの影響で、 舞台演出上取り入れられなかったものがあると思います。 歌やダンスはほぼ無し。一番最後だけ。 これはコロナが収まって次回にとっておくことにしましょう。 まさに時代劇が衰退する寂しい中、この舞台で若い観客の心に昔ながらの背景、そして未来に思いを馳せてほしい。 「るろうに剣心」「新撰組」まだまだたくさん新しい時代劇の映画は撮影されていきますから。 あとは役者。 そして殺陣。 かつてNHKで、DEEP PEOPLE 『時代劇をいろどる殺陣』林邦史朗×清家三彦×松方弘樹 というのもがあり、殺陣の魅力について放送された番組がありました。 当時のアメリカの番組では剣はただ振るだけ「そうじゃないだろう」と。 実際に人を殺す剣の切り方と、テレビ映えする切り方が違う。 各々の殺陣が存在し、それを語りあう番組でした。 さすがに今は殺陣を教える人もいるでしょうね。 今回の舞台は時代劇とネット放送の今昔物語だけでなく、 殺陣についての素晴らしさ楽しさも堪能できました。 ※敬称略 |