◆ 世田谷シルク「渡り鳥の信号待ち」

満足度
◆公演時期   2012年1月19日〜22日
◆会場 東京シアタートラム
◆作・演出 堀川炎
◆原作 宮澤賢治「銀河鉄道の夜」より

あらすじ
あかり職人の父親を持つしおり。
いつも強気で同級生と喧嘩をしては、
先生に怒られている。

彼女の町にはお盆になると突然、別人のように話し出す人がいる。
幽霊に体をのっとられたと噂する小学生たち。

ある日、
彼女は嫌々ながら父親のため牛乳を買いに隣町まで出かける。

その時、彼女が乗ったその列車は、
未来からはぐれた光速列車だった・・・
(チラシより抜粋)
観劇感想
公演場所の東京シアタートラムって、
どこかな〜?と思いましたら、
世田谷パブリックシアターのすぐ近くなんですね。
これにはビックリ。
そんなところに劇場があるとは。
しかも、意外と広い客席。

「第2回世田谷区芸術アワード”飛翔”受賞」ということで、
あくまで私の印象からすると、
客層が独特。
普通に観劇に来た方や、若い方の中に混ざって、
年配の方が多かったのは印象的。

題材が宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」
これをテーマにした舞台、
私も過去に2回観ています。
イーハトーボの音楽劇 『銀河鉄道の夜』と、
劇団ひまわりの「ミュージカル銀河鉄道の夜」ベガ公演ですね。
ちなみにアニメも見ました。
先に言っておきますが、
「銀河鉄道の夜」は、
小説を読んでも、結局意味がわからない。
大人でも、お偉い先生方でも、
解釈は人それぞれでしょう。

舞台になると、
演出家や脚本家の解釈によって、
またいろいろと複雑になっていきます。
つまるところ、
「正解なんてない」ということでしょう。
雰囲気で感じ取ってくださいということかな。

舞台上には、特に大きなセットもなく、
たくさんの椅子。
この椅子が、学校や列車の椅子や、
造形物にも使われます。

演出としては、
スクリーンに映像を投影して、
文章での駅のアナウンス表現、
幽霊のような、なにかわけのわからない、ダンスをする人々。
音楽は不思議と洋楽が多い。
と、かなり斬新です。

特にアンサンブルのダンサーとしてあらわれる、
幽霊のような物体は、
死者をイメージしているのであろうか?
それとも、人間の一生?、生と死?
ときたま阿波踊りにも似たダンスもしています。

と、ここまで先に観劇感想を書いていたのですが、
あとからあらすじを書いていて驚く。

彼女の町にはお盆になると突然、別人のように話し出す人がいる。
幽霊に体をのっとられたと噂する小学生たち


そういう伏線もあったんですね。
これがあると、少し考え方が変わります。

主役のえみりーゆうな、こと
しおりが手を伸ばしたところ。
ここで何か起こるな〜というのは、すぐに予想できました。
ネタバレになりますが、
彼女が死ぬとは意外。
男のカカシが死ぬと思いました。
男が生き残ってもつまんない(笑)


で、結局のところ、
列車に乗っていたり、
我に返って、現実に戻ったりしていましたが、
どこへでも行ける切符?というのを持っていることから、
世界が加速した中で、彼だけが動けるということなのか?
「ジョジョの奇妙な冒険」でいう、
プッチ神父の加速した世界で唯一動ける存在なのだろうか?
委員長こと佐藤容子は、同級生なのか、
母親なのか、娘なのか?
カカシの力によって、
その加速した空間の中でも彼女(委員長)は、
永遠に動けることができるのか?

前述した、
彼女の町にはお盆になると突然、別人のように話し出す人がいる。
幽霊に体をのっとられたと噂する小学生たち

この町特有の盆踊りとして、阿波おどりのようなものがありますが、
死者を敬う、という意味合いもあるのでしょうか?

列車内にて光速になると、
車内の人物たちが前世?の記憶を取り戻し、
しおりとカカシが、ジョバンニとカムパネルラになり、
一緒に乗っていた老女が委員長の姿に変化。

つまりは、体を乗っ取られるのではなく、
お盆の季節になると、光速列車がこの近くを通るために、
列車の光速化によって前世の記憶が呼び覚まされる、
ということなのでしょうか?

そして、現世で死んだことに気づかないでいる、浮遊霊?たちが、
わざわざ旅行と称してこの町に来た理由は、
なんとなく、天に召される場所がこの地であることに、
導かされてのもではないのか?
それが光速列車に乗り込むゆえんでもある・・・ような気がします。
「緊急事態」という表現は、その浮遊霊?のために、
列車を停止させ乗せてあげるということなのでしょうか?
ちなみにここで登場する3人は、
原作のタイタニックの人々の3人をイメージしていますね。

現世と死後の世界がつながっている、
もしくは、そのはざま。
それがこの町なのかも。
テレビドラマの「熱海の捜査官」みたいな感じもする。
管理人と、牛乳配達人は、
なぜか死者を見ることができる。
これも謎。
死んだことに気づいていない人々を列車に乗せる・・・
みたい役目があるのかな?
現世での牛乳の配達忘れと、
過去の配達忘れがリンクしてたりとか、
単に生と死の世界ではなく、
現在と過去の世界が微妙にリンクしている感じ。
そもそも「銀河鉄道の夜」の世界観が、昔の田舎のお話で、
別方向として未来の田舎の現実がある。
時系列が並行した2つの物語とも考えられる。

鳥の形をした甘いアメのようなものも、
老女が取りだしたのは、深い理由があるのかな?
これは原作にある話しそのまま。

全部がカカシの空想、夢、
だとしたら、ちょっと寂し過ぎる。
それだとなんでもOKですし。
現実にあったことと考えたい。
なので、やっぱりいろいろと関係を考えてしまう。

運転手?のコメディチックなところもあるのですが、
そこはどうもついていけなかった。

気になった役者は・・・

えみりーゆうなは、性格女優タイプ。
正直「華」はないけれど、
気が強い雰囲気の演技は良かった。
ポニーテールだけれど、
なんとなくボーイッシュ。
アヒル唇も印象的。
声がよくとおっているのは、ま〜当然ですが。
そもそもこの設定、小学生なのか、中学生なのか。

カカシ役の荒木秀智は、少年役、小学生?という感じかな。
特に独特な性格というわけでもなく、
普通な少年。
それを違和感なく演じていたのは、なにげにすごい。
なんとなくだけれど、俳優の濱田岳のような雰囲気。

おそらくヒロインである、委員長こと佐藤容子を演じたのが、
稲森みき
この子は瞳パッチリで、アイドルルックスでかわいい。
そうは言っても、年齢は20歳は越えているでしょう。
体形もスレンダー。
老女役としても登場し、老女のセリフづかいもうまい。
そっか。おばあさんって、
年をとればとるほど、高音になるんですね。
声質の変化もよくとらえている。
ただ、いちばん最初の部分の口げんかをするところは、
ちょっと早口で何を言っているのかわからなかった。
そこだけちょっと気になりましたが。

総括
「銀河鉄道の夜」のお話しを、
演出家によって再構築したお話。
すべてが作り話なのか、
少し、作・演出家の個人の昔話が混ざっているかはわかりませんが、
意外と淡々としていて、しみじみじた田舎のお話。
「銀河鉄道の夜」の時代の話しなのか、
最近よりちょっと昔の田舎の話しなのか、
追及する必要もなく、私はけっこう素直に受け入れることができしまた。

ただ、話の内容は難しく、万人向けではありません。
たくさん観劇している私でも難しいのだから、
舞台観劇が初見の人なんて、
どういう話なのか、さっぱりかもしれません。

前衛的とか、新進気鋭な作品とは思いますが、
一般向けとしては難しい。
アニメの「輪るピングドラム」にも似た、
観る方も勉強、理解力がないとついていけない。
玄人向けの作品。
(敬称略)
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