劇団ひまわりミュージカル 銀河鉄道の夜 ベガ公演 2008

◆公演時期   2008年8月14日〜24日
◆会場 シアター代官山
◆脚本・演出 中島透
◆作曲・音楽監督・指揮 西村友
◆振付 港ゆりか
◆原作 宮沢賢治

あらすじ
漁に行ったきり戻らぬ父を持ちながら、病気の母を支えるジョバンニ。
級友からは、帰ってこない父親のことでからかわれ、
子供の頃からの友達であるカムパネルラも、
気の毒そうに見ているだけだった。
ケンタウルスの祭の夜、丘にかけのぼって寝ころぶジョバンニ。
何処からともなく、
「銀河ステーション」という不思議な声が聞こえてきます・・・
(パンフレットより一部引用)
観劇感想
劇団ひまわりのミュージカル。
今回はいろいろダブル、トリプルキャストですが、私が観た公演は、
ジョバンニ 石川由依
カムパネルラ 熊本野映
カオル 宮原理子
タダシ 野本ほたる
ザネリ 松村理子
カトウ 鈴木愛吏
マルソ 田中瞳佳
このキャストとなりました。

1995年8月「銀河鉄道の夜」にも観たことがある舞台。
当時でも話しが難しく、理解に苦しみました。
今回はやや優しくなるかな〜という思いで観劇しました。

今回の舞台は、演出が秀逸!
すごいですね。
星空の映像投射。
舞台セットとして、銀河鉄道の客席は張り出し舞台のように前後に動かす仕掛け。
さらには瞬間移動したかのような、役者の神出鬼没さ。
タイタニックの回想シーンでの、海の水と流れを表現する青の旗の振付。
工場内の、地味ながら休むことのないダンスシーン。
どれもこれも、素晴らしかったです。
しかもさらに、今回はオーケストラの生演奏もあります。
これだけの仕掛け、ダンス、演出がきわだつと、
たしかにひとつの公演で終わるのはもったいないですよね。
アルタイル公演があって当然でしょう。

ただ、実際問題として、やっぱり内容的には難しい物語です。
心の底から、スッキリはしません。
子供たちは理解できたかな〜?
たぶん、原作の宮沢賢治自身、
書いてて自分でもよくわからなくなった可能性大(汗)
結局のところ、人それぞれの解釈でいいのではないでしょうか?

それから、オープニングは映像とオーケストラの生演奏なのですが、
ごめんなさい。正直ちょっと長過ぎる気がします・・・

話しの流れ的には、
級友たちによるジョバンニへのからかい→アルバイトと母の看病と牛乳もらい受け→
祭りに出かけるが、また級友たちからからかわれ、ふてくされて広場でうたた寝→
ふと気づくと、銀河鉄道という名の汽車にカムパネルラとともに乗っている→
いろんな星座の駅を駆けめぐり、
鳥捕りや灯台看守、カオルやタダシという乗客たちとの出会いと別れ→
そしてカムパネルラとも・・・
こんな感じですね。

前述した、銀河鉄道の客席の仕掛けは、素直にすごいな〜思いました。
本当に汽車に揺られている感じ。
観ている観客も、けっこう集中して観られました。

タイタニックの回想シーンでは、
海の水と流れを表現する青の旗の振付が本当に素晴らしいです。
荒れ狂う波を表現していて、
波間に漂うボート、流されそうになる人々、取り残される人々、
いろいろな思いが伝わってきます。

また、灯台看守の旗振りのところも、意外とジーンときました。
淡々としたところが、私は好きですね。

ただ、なんとなく、乗客のカムパネルラは不思議ちゃんのイメージしかない(爆)

気になった役者は・・・

ジョバンニ役の石川由依
石川由依というと、なんとなく女性らしい雰囲気で、
森は生きているの娘役のイメージがあるのですが、
今回は少年役でビックリ!
ボーイッシュな役ですが、すごく似合いますね。
ドギマギした小芝居も抜群にうまい。
少女でない、少年的な歌い方も良かったです。
歌唱力は元々ありますから。
演技的には、いじめられっ子の役。
複雑な心の葛藤、弱さ、寂しさ、よく表現されていると思います。
特に最後の泣き叫ぶシーンは秀逸。
う〜ん、石川由依の本領発揮ですね。素晴らしい。

ただひとつ思ったのは、彼女ひとりの少年役は厳しい。
相手役の熊本野映のカムパネルラがいてこそ、
光が反射するがごとく、演技も光るように思えます。

そのカムパネルラ役の熊本野映ですが、
彼女の少年役も素晴らしい。
こちらは落ち着いた演技で、不思議系な少年役。
歌もうまいのですが、思っていたより声質よりも低音だったので驚きました。
低音といっても、違和感のある歌声ではありませんから、普通の女性の声です。
ただ、前述しましたが、
全体的に最初から最後まで不思議ちゃんっぽい役なので、
ふわふわ〜とした感じでした。

カオル役の宮原理子
久々の宮原理子ですが、う〜ん、ずいぶん大人の女性の雰囲気になりましたね。
2004年の「ミュージカルアニー」のアニー役
2006年の「葉っぱのフレディ 〜いのちの旅〜」でのクレア役
かつては萌え系なイメージがありましたが、今はどこ吹く風。
微塵も感じられません。
立派な女優さんです。
演技力、歌唱力とも申し分ありません。
お姉さん役だとは思うのですが、柔らかな雰囲気がお母さん役にも思えました。
彼女自身の雰囲気として、包み込む演技。
この役は後半しか登場しないので、カムパネルラ役の方も観てみたかった・・・

じつのところ、主要キャラクター以外で一番印象に残ったのが、
ザネリ役の松村理子
イジメ役のリーダー的存在ですが、なかなか良い演技ですよ。
憎たらしさが、かなりでていました。
もっとイジメぬいてやろう!というところまでのパワーはありませんが、
ジョバンニをからかう姿は引きつけられました。

後半のサソリのところで登場する、赤いドレス姿は松村理子ですよね?
配役のバルドラのさそりでは、違う名前が書かれているのですが、
こちらは黒いドレスの方なのかな〜?
ちょっと詳しくはわかりませんが、顔だちを観る限り、赤いドレスは松村理子だと思います。
イジメ役のザネリの時よりも、やっぱり美人系なので、こっちの方が目立ちますよね(汗)
何より、ダンス!!
う〜ん、素晴らしい!
ダンスの力があるあると噂がてら聞いてはいたのですが、
しっかり観るのは今回が初めてかな?
森は生きている2007でも、かなり印象には残っていますが、
印象の強さはこちらの方が上。
この時の、ツンとしたやや冷たい表情もグッド!
う〜ん、ちょっと惚れる感じ(爆)
元々ルックスが美形ですし、さらにダンス力があり、ただ一人の赤い服。
これだけの条件がそろうと、彼女自身の華もあって、ひじょうに目立ちます。
本当に素晴らしかった。

学者役の斉藤崇は、演技が抜群にうまい。
太っているという体型を最大にいかしたコメディ。
小芝居も凄く楽しい。
じつはそれだけでなく、歌唱力もすごいんですよ。
ビブラートを聞かせた歌い方も秀逸でした。
じつは彼の歌の後に拍手をしようとしたのですが、誰もしないからやめました。
臆病な私(汗)

鳥捕り役の浅場万矢は、独特な雰囲気でビックリ。
表情の付け方も変わっているし、面白い演技、妙な感覚でした(笑)
瞬間移動的なものは、似た人なのかな〜?
演技、そして歌も良かったです。

車掌役の清水理沙は、瞳パッチリなのですが、
切符きりバサミをカチカチさせて、ちょっと怖かった(涙)
それだけ、銀河鉄道の不思議さを出したのだと思います。

カトウ役の鈴木愛吏は、瞳パッチリで、おでこ全開の可愛らしい女の子。
舞台上でも、良く目立ちます。
最初、宮原理子かと思ってしまうほど。
ただ、ルックスだけしか印象がないので申し訳ないです・・・
私的にはこれから注目したい役者ですね。

タダシ役の野本ほたる
今回は他の役者との対比で発見しましたが、けっこう背が低いんですね。
いったいいくつなのかな?年齢も低いですよね?
にもかかわらず、ファミリーミュージカル魔法使いサリー2008では、
ベテラン今泉舞と同じチェリー役。
そりゃ、無理があるというもの・・・・・
今回の役も、あまりピンとこないんですよね〜
セリフの発声もイマイチですし・・・
なにか私とは合わない。

リンピー役のシャイ樹菜は、けっこう観る機会が多いのですが、
なかなか存在感ある女優になってきました。
2008年のやさしいライオンから、相当伸びた気がします。
前述していますが、彼女も登場する工場内のダンスシーンは、
地味〜なダンスながら、ずっと踊りっぱなしなんですよ。
なかなか気づきにくいですが、役者さんたちは大変だと思います。

総括
今回、基本はダンスの舞台だったと思います。
レベルの高いダンスに、圧倒されました。
さらには、演出が本当に素晴らしかったです。
きっちり作り込んでいるという感じが、ビシバシ伝わってきました。
「銀河鉄道の夜」という物語自体、本当に難しい話なのですが、
まずまず、優しく表現した舞台だったと思います。
いや〜、何回も繰り返しになりますが、演出が本当に素晴らしい〜!

(敬称略)


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