公演時期 | 2011年5月4日~7日 |
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会場 | 笹塚ファクトリー |
第1話「合コンドラフト会議」 | 作・演出 きたむら けんじ(劇団 東京フェスティバル) |
第2話「ザ・モンスタースチューデンツ&ティーチャーズ 」 | 作・演出 佐藤秀一(演劇ユニット 3LDK/ジャパン・クリエイティブ・マネージメント) |
第3話「漂流日記」 | 作・演出 前島良行 |
あらすじ第1話「合コンドラフト会議」 理想の合コン相手をドラフト会議で選ぶ国家事業。 結婚適齢期の男女をランダムに抽出して、合コン相手を指名できる夢の制度。 第2話「ザ・モンスタースチューデンツ&ティーチャーズ 」 新しいダンス・スポーツができたということで、テレビ局が取材に訪れるが・・・ 第3話「漂流日記」 旅行中、嵐で船が漂流。着いた場所は沖縄のとある島。だが、何か様子がおかしい。 (パンフレットより引用) 感想こういった舞台は初めて観劇しました。 パンフレットから読み取ると、 いろいろな事務所 (エイベックスを主体として、ケイダッシュ、ベリーベリーやプラチナム等) イチオシの俳優、女優たちが舞台をつくりあげる、そういった感じです。 新人女優、俳優たちの勉強の場であり、 自分のアピールの場でもあり、 さらには、観客の中に業界人がいて、 青田買い、掘り出しもの、目星をつけていただく、 そういった雰囲気も感じ取りました。 舞台観劇を続けていると、観客、客層の雰囲気でだいたいわかるんですよね。 どういった現場であるのか。 とにかくも、基本は新人公演という意味合い。 当たり前ですが、 私は各関係者、各会社とは全く無縁なので、 感じた感想を述べるだけです。 持ち上げるとか、お世辞を使うとか、褒め言葉の羅列とか、 そういったことはいっさいありません。 サイトの開設時から、このスタンスなのでご了承ください。 私が観劇したのはAキャストのみです。 各30分の舞台。 第1話「合コンドラフト会議」申し訳ないのですが、脚本が面白くない。 そもそも合コンとドラフトの意味合いが、最後までわかりませんでした。 ドラフトを知らない人もいるだろうし、合コンの意味合いすら知らない人もいる。 題材が難しいし、どのあたりの客層に向けての公演なのかわからない。 おそらく、18~25、6歳ぐらいでしょうか? そういった人のために、一応チラシに詳細が記載されていますが、 観客全員が、その詳細に目をとおすわけではありませんから。 友達との会話なのに何かダラダラな流れ。 ドラフトの緊張感もあまり伝わってきません。 出演者の間、セリフもイマイチ。 キャスト9人、一応それぞれに個性づけ設定をしているのですが、 新人公演なのだから、もっとコテコテ、ガチガチなキャラ設定でも良かった。 なんとなく中途半端。 そもそもメインというか、引っ張っていく人がいない。 あえて言うのであれば、山科真理役の絵理子。 彼女は演技なれてますね。 コメディチックな演技全開。 小芝居とかうまいですし。 だから、もっと彼女を活用してほしかった。 けっこう笑いをとっていますが、 彼女のキャラクターならもっともっと使えるはず。 一応主役っぽいのは、ドラフト1位指名とされる、 須藤由衣役のさがゆりこなのだけれど、私の印象は薄い。 さらにちょっと清楚っぽい佐々木茜役の佐倉美沙も目立つ部分はあるのだけれど、 キャラ設定がイマイチなのか、印象が薄い。 二人とも美人なのに残念。 ものすごくもったいない。 なんとか場を作っていこうと、 新聞社?藤井卓役の吉村栄一が頑張って気を張ってます。 勢いで頑張ってるけど、もっともっと強めに突っ込んで良かったかもしれない。 場が停滞しすぎるもの。 向原仁役の村川哲也は落ち着いた役で、私はすごく好感が持てました。 ちょっと出番が少なかったのは残念でしたが、 ナイツの土屋伸之をさらに格好良くしたルックスは、ひじょうに印象に残ります。 それから、粕谷篤志役の三澤翼。 なよなよっとした雰囲気で、ヒョロヒョロしてひ弱な感じ。 それほど演技はうまくはないけれど、 私はすごく惹かれました。 面白い。 雰囲気的には八乙女光に似てますね。 あくまでこの役だからこその演技もあるけれど。 できたら最後はちょっと弾けても良かったかな~なんて思います。 第2話 「ザ・モンスタースチューデンツ&ティーチャーズ 」1話がかなりガッカリだったので心配したのですが、 こちらは予想外に面白くてビックリ。 珍しい競技ダンスということで、テレビ局の取材クルーが訪れるが、 ディレクターの長谷川にしてみると何か物足りない。 そう思った長谷川は、 ダンスメンバーのひとり柏木香代子が、 鹿児島に引っ越することを部員に話せないでいることを知る。 そのことを誰にも話してはいけないと香代子に伝え、 他の部員たちには、香代子がいない場所で、 「じつは余命3カ月である」と大嘘をつき、メンバーたちは動揺する・・・ こんなあらすじです。 脚本が学園ものということで、わかりやすいのもありますが、 ひとりひとりのキャラ設定がしっかりしているので、一番安心します。 観やすい。 金持ち、オタク、元気少女、暴言少女、か弱い美少女、ちゃらい男、 パッと観ただけで、スッと入ってくる。 冒頭からダンスシーンとは驚き。 レベルが高いのは、 田中光樹、田中聖弥と、田村花恋ですけどね。 他の子もよく頑張ってますよ。 短い期間とはいえ、そうとう練習積みましたね。 ダンスで試合をするという、よくわからないスポーツ「ジェネシス」 「ありがとうございました」でいう「した!」みたいな言葉の、 「サスペンダー」とか、意味不明さはいいと思う。 演技的にも、このグループはうまい人が多い。 セリフ回しがきちんとしているし、テンポがいいし、 チームワークというか「和」がしっかりしている感じ。 30分の物語としては、一番できがいい。 テレビ局サイドとしてのVTRの「演出」 子供を平気で騙す大人たち。 それを仕事として割り切る。 そんな部分をこの舞台では表現していました。 30分の舞台にしては、起承転結が綺麗にうまく詰め込んであります。 メッセージ性が無い舞台なんて山ほどありますが、 この舞台はたくさん散りばめられています。 厳しく、気が強い鈴木先生役の古川小百合。 声優さんもやってるんですね。 しかし、普段は全然違う雰囲気なのには驚き。 この人は普通に演技うまいもの。 彼女の演技がぶれなかったことも、この舞台が安定した要因のひとつ。 暴言少女、エリ役の君島光輝。 初舞台ですか。 とてもみえない。 いい発声だし、暴言もいいし、気が強い演技もうまい。 パンフレットの写真と雰囲気違いますね。 ひじょうにいい素材だと思います。 今後伸びていく可能性大。 内山田役の田中聖弥は、ヲタクで、なよなよした雰囲気はよくでているし、 ジェームス役の田中光樹の女性好きでちゃらい部分も面白い。 キャラ設定に合っているのがいい。 名前の裏設定もいい感じ。 このふたりの面白さ、私にはすごくツボでした。 か弱い美少女、柏木香代子役の大坂美優。 かわいい。 しゃべり方もかわいい。 演技はまずまずだけれど、役にじつにあっている。 落ち着いて、けなげな雰囲気と、いじらしさを感じさせます。 これは間違いなく人気出ますね。 アイドルグループに入っていたとしても、うなずけるほど。 ただ、女優路線なのかな? 今は年齢が低いこともあっていいけれど、 年齢を重ねての演技が気になります。 元気少女、はるか役の田村花恋。 魔法使いサリー、 ミュージカル「きみにとどけ・・・~この愛永遠に時をこえて~」にも出演。 ま~演技的には一番うまいでしょ。 声の大きさ、張りが全然違うもの。 新人公演とはいえ、彼女の場合はこの年齢にしてベテランですし。 ダンスシーンのレベルの高さなんて、すぐにわかります。 ハキハキしたキャラなので、観客の印象にも残りやすい。 それでいて、この部活動のリーダーではないところには疑問なんですが。 演技的に、一番合っているキャラですね。 前向きで、努力家で、ハッキリ物事を言う優等生の役柄。 先生やディレクターとセリフのかけ合いが多いところは、 じつに安心して見ていられます。 観客もそうとう見入っていたと思いますよ。 鈴木先生同様に、舞台を安定させる要因のひとつ。 カメラマン兼任AD役の太田直行。 ディレクターの強引な演出に疑問をもちながらも、 そのまま受け入れて撮影し続ける役柄。 正直難しい役だと思う。 最初は受け入れて、最後に・・・という形ではあるけれど、 内山田役の田中聖弥のフリがあって、よ~やくという感じ。 撮影機材を壊してまで・・・はできなかったので、 最後の映像の部分は、彼なりの精一杯、ブラフかもしれませんね。 そして、なにより一番の肝はディレクター長谷川役の丸若薫。 とにかく一手に悪、汚い大人を引き受ける役割。 見ている観客全員が嫌悪、敵視するほどの嫌な役。 それを平然とやってのける。 表情に微塵も悪びれた様子を見せない。 ここは素晴らしい。 彼と先生や生徒たちの対比があるからこそ、 この物語の面白さが感じられると思います。 第3話 「漂流日記」ネタバレになりますが、簡単なあらすじ。 旅行中、嵐で船が漂流。 着いた場所は沖縄のとある島。 遭難した旅行者の6人は、そこの住民である3人に助けられ、学校に避難。 不思議とお菓子や携帯電話に興味を持つ3人。 会話も何か成立しません。 彼女たちは今は戦時下だと言う始末・・・ 「沖縄」という単語と、3人の服装で、なんとなくネタバレは早めにわかりました。 ただ、30分という時間内でどう決着をつけるのか、そこがすごく不安にもなりました。 携帯電話はつながる。 空襲は起こる。 海上保安庁からのアナウンスはある。 と、戦時下と現代の事象がごちゃまぜ。 沖縄戦時下であろう3人は幽霊ではなく、 時空間のひずみということで実体化していて、 旅行者6人となぜか同じ時間軸にいるという形。 かなりハチャメチャではありますが、それはそれとしていい。 お互いが力をあわせていろいろなことを乗り越えていく・・・みたいな形であれば。 時間の制約上、そういった部分が観られなかったのは残念ですが。 ただ、エンディングが無難すぎる。 みんな無事に帰るなんて。 戦時下の女性を好きになったのなら、 覚悟を決めてこっそりひとり残るみたいな形でも良かったと思います。 今回は帰るから、次に会いに来る・・・っていうのはずるい。 好きな人のためなら、やっぱりそこに残るでしょ? たとえ戦時下の時間軸でも。 そこまでの覚悟、決意があるからこそ恋愛なのに。 な~んて、私は思いました。 それから、みんがみんなこの状態を受け入れるのにも違和感。 ひとりぐらいパニックになってしまう人がいてもいいけれど。 ま~時間の都合がありますが。 あくまで雰囲気的に、こちらのチームは美人が多い印象。 舞山香織役の桃瀬ツカサは舞台に映えます。 かわいい。 仕事の後輩を連れて旅行に参加するも、こんな状況にあってしまい、 少し引け目を感じている雰囲気。 和田幸恵がだだっ子っぽいので、それをなだめる感じにもなりますが。 主役というわけではないけれど、もう少し前に出ても良かった感じ。 みんなおとなしすぎますから。 ルックス抜群ですし、今後伸びてくるかもしれませんね。 和田幸恵役の野上希は演技うまいですよ。 「先輩に連れてこられたせいで、こんな目にあった」と文句を平然と言う、 携帯が無いと生きられないイマドキの女性。 自然な感じの演技でした。 このイマドキの女性を自然に演じるっていうのは、じつは難しいと思う。 比嘉秀美役の鈴木莉菜は、「森は生きている」に何度も出演している実力者。 正直、言うことないです。 歌のイベントでも観たことありますが、歌唱力も物凄いですから。 平良美浦役の立道梨緒奈。 志望はダンサーのようですが、 戦時下の女性の三つ編み姿はバッチリ似合っている。 ちょっと奥手で控えめな雰囲気も、ものすごくいい。 このキャラだからかもしれませんが。 平良奈緒役の安倍花映も、ひじょうに落ち着いた演技。 妹の平良美浦を見守る姿も、じつにいい。 戦時下3人のキャスティングは抜群でした。 総括 新人公演とはいえ、脚本の中身にもよるし、 ほどほどに演技ができるキャストがいると、回りの見方もかなり変わってきます。 前述していますが、個性をコテコテにつけたほうが、 出演者もやりやすいでしょうね。 私としては、笑える場面が少なかったです。 観客層が若かったこともあるのか、笑いは起こっていたのですが、 私には響きませんでした。 同世代の方が感情移入しやすいのかな? 私があまり感情移入しないタイプではありますけど。 必ず2、3歩引いて観ますからね。 なかなか同調しない変人なので、これは仕方ないです。一生直らない。 完全に別件になりますが、今の写真技術が上がっているせいか、 パンフレットの写真と、舞台上の雰囲気が違う子が多いのには驚き。 宣材写真が重要であることは前々から重々承知だけれど、 パンフレットの写真だけでは判断できない子が多いのもまた事実。 やはり生で自分の目で見ないと、 その人の雰囲気や立ちふるまいは全くわかりません。 初めて見る男性、女性が多く、光る方がたくさんいました。 まだあまり染まっていない、新人好きな人には嬉しい観劇の場。 提供してもらうことができること自体、本当にすばらしいことだと思います。 観劇好きには、舞台を観ることができるからこその「感想」ですから。 ※敬称略 |