◆ 「友情2010」


◆公演時期   2010年1月4日〜2月28日
◆会場 銀座 博品館劇場
◆作・脚本 布勢博一
◆演出 吉村ゆう
◆総合演出 田中林輔

あらすじ
コスモスの花が咲く時、北海道から転校してきた島崎あゆみは、白血病に冒され、
適合するドナー(骨髄提供者)が現れるのを待ちわびる日々を送っていた。
あゆみの転校してきたクラスには、森山信一という周囲から孤立した少年がいた。
脅かすつもりであゆみにナイフを向けた信一であったが、
その瞬間、あゆみが毅然と言い放った。
「死ぬことなんて怖くない。どうせ私はあと一、二年で死ぬんだから」
クラス全員がその事実を知り、生徒たちに動揺が広がる。
そして、クラスに変化が現れ始めた……
(パンフレットより一部抜粋)
観劇感想

友情 秋桜のバラード  2004年
に続いての観劇。
話の流れは変わっていませんので、ネタバレな流れを知りたい方は、
リンク先にて。

私が観劇した日は平日にもかかわらず劇場は満席。
すごい動員数で驚きでした。
出演する人もけっこう変わるので、その意味合いがあるのかもしれません。
期待する出演者に合せての観劇、という人もいるでしょう。

生徒がダブルキャスト、
大人も4組体制、
さらには日替わりキャストと、
キャスト陣はかなり変わります。
私が見た回は、生徒は「秋組」、大人は「3組」

後述しますが、大人のベテラン俳優がすばらしいの一言。
かとうかず子の先生役を初めとして、
あゆみの父母役、新田純一、星奈優里、
森山信一の父母役、清郷流号、大和なでしこ、
さらには英語教師の安藤一人も、なかなか味があって面白い。
民宿の経営者であるダンプ松本も、すごくうまい!というわけではありませんが、
味がいいんですよね。あの独特の雰囲気が。
コメディチックの演技がいいもの。
こう見えて、けっこう舞台出演多いですから。

大人キャストがしっかりしていのるで、生徒も自由に演技ができます。
ただまぁ〜、正直、
看護婦役の花風みらいがイマイチ地味な印象を受けましたが。
出番が少ないので、そういった印象を受けたことも否定できません。

1幕、2幕の2部構成ですが、
1幕の流れはじつにスムーズで見応えありました。
2幕は、やはり病気等で重くなるシーンが多く、
大人キャストたちが語るシーンも多いので、少し場が止まるんですよね。
生徒たちが、悩みや過去の出来事を語るシーンで一応和らぎますが。

病気のことのみならず、在日問題等、とても深い内容。
ただ、大人になっていろいろな情報を得たり、経験したり、
自分なりに解釈したりして、
この問題に関しては自分の思考がどんどん変わっていきます。
舞台を通して得る知識も、その中のひとつだということ。
一方向だけでなく、いろいろな方向から考えないといけない。

信一の提案で、クラスメイト全員が坊主になるのですが、
女子がすごく明るい。
イマドキな感じなのでしょうか?
男子は丸坊主にすることに対し、全く屁とも思いませんが、
女子が全員即OKというのは、舞台の意味合いも十分にわかるのだけれど、
ちょっぴり違和感を感じざるをえません。
もちろん、全員がOKすることによる感動の舞台なんですけどね。
そこを否定してしまうと、もともこもない。
私的には少し間があって、「うん、よし!」という方が、まだ納得いくかな?

キスシーン、前回もあったのですが、
今回は直接的。
私が前に見た回は、ひたいなり、ホッペだったような気が・・・
ちょっと記憶が定かではありませんが。
自分の命はもう・・・なんて考えると、こういう行動に出てしまう・・・
そのためのキスシーン。
ここもけっこう感慨深いです。
あゆみ役の佐藤葵 とても良い演技でした。
男の信一の方がドキドキしてしまうという、
イマドキ感もいいです。
藤村直樹の演技も初々しい感じが良くでていました。

最後に歌ですが・・・
正直あまり印象に残りませんでした。すみません。

観客席を見渡すと、1幕中盤にもかかわらず、もう鼻をすする音が・・・
かなり早い。
そして2幕ではあちこちから・・・
私は変人なのでそこまで感情移入しませんでしたが。

パンフレットの最初ページに、
元・内閣総理大臣、森喜朗からのコメント。
う〜む。正直いろいろツッコミどころはあります・・・
どんな人でも、
その行為によって間接的にでも救われる人がたしかに存在しますから。
私的、公的、いろいろ難しいです。

気になった役者は・・・

私が観た回の主役は、佐藤葵
なるほど、ほんわかして、おっとり系な感じでありつつも、
気の強さを感情に出す女の子。

こなれた演技、というわけではなく、
そんなに器用なタイプではない。
ただ、この役にはひじょうに合っている気がします。
穏やかな雰囲気でよく頑張っている。
難しいこの役を十分にこなしていました。

森山信一の藤村直樹は、不良役ではあるもの、
主役のあゆみに心惹かれる、おいしい役どころ。
だけでなく、ちょっと深い背景もあります。
彼はいい!
登場時の不良的雰囲気は抜群だし、怒鳴り声もいい。
排他的雰囲気をかもしだしているせいか、
観客には怖いイメージ。
それがじょじょに変化して、心替わりする演技が素晴らしい。
観客にもその意思が伝わってくる感じ。
難しい役どころですが、とてもやよくやっていると思う。
私はこの役者好きですね。

高石朝日役には大日向裕実
女子としてのリーダー役。
みんなを明るくまとめる、ムードーメーカー的なリーダー。
出番も多いです。
ハキハキとした役どころなので、本人もやりやすかったでしょう。
演技的には無難にこなしていました。

ただ、彼女は元東京メッツ。
リトルメッツではなく東京メッツです。
当時の若さで大人と遜色変わることのないダンスをしていました。
今回、簡単なみんなで踊るダンスシーンがありますが、
ものすごく物足りない。
ま〜本気出してしまうと、他の生徒役の人とバランスがとれなくなってしまうので、
そうとうおさえたダンスでした。
正直もったいないとは思います。
本気のダンスは、すごいですから。
本人のダンスの実力を知っていると、それを抑えなければならない舞台はつらい。

鈴木幸子 圓札あかり
後半の生徒たちがひとりひとり、自分の過去、罪を告白する場面。
彼女の告白は特に重いです。
後でパンフレットを確認してみると、かなり晴れやかな雰囲気の子なのですが、
舞台上は最初から真っ暗で地味な感じでした。
ひとりだけ場違いな雰囲気。
それが後半の中盤で、よ〜やく手首の傷や、その経緯について語ることになります。
この場面での思い入れは相当なものでしょうね。
見ているこちらもつらくなります。
演技的にもじつによく頑張っていたと思います。
ただ、その後、再びあゆみの病状へ話が流れてしまうため、
この時の印象が薄くなってしまうのは残念。

今回、先生役は日によって変わるのですが、
私が観た回はかとうかず子
かとうかず子の舞台の演技は観てみたかったので、じつにラッキーでした。
パンフレットにも記載されていますが、
先生役は初めてとのこと。ビックリ。
イメージ的に昔のトレンディ・ドラマの印象が強いです。
昨今ではコメンテーターでも活躍しています。

で、やはり声の張りが違う。
ここはさすが。
当然のこととはいえ、舞台での演技も全く問題ありませんでした。
というか、テレビ関係者がこの舞台を観て、
かとうかず子を先生役で起用したい、と思ってしまうぐらい(妄想)
この役はとても素晴らしかったです。

あゆみの父母役、新田純一星奈優里もすばらしい。
新田純一のお父さん役は、味があって本当にいい。
星奈優里は、なにより、美人なお母さんすぎる(笑)
こういう舞台の場合は、華がありすぎても困りものだな〜と思いました。
演技はうまいんですけどね。

たまたま中条きよしが参加していましたが、
舞台が終わった後のMC力に驚きました。
ま〜ベテランですけれど。

総括
舞台はベテラン陣がしっかりしているし、
生徒メンバーも無難にこなしていました。
なにより、かとうかず子の先生役が素晴らしいし、
あゆみ役の佐藤葵、森山信一役の藤村直樹はとても良い演技で、
観客を感動に渦に巻き込みました。

前半は安心して見られますが、
後半は話が重いのでちょっと疲れました。
舞台として公演中、何度も観る作品ではないと思いますが、
チケット、パンフレットの販売によって、
骨髄バンクの支援にもつながりますから、その兼ね合いもあります。
久々の「友情」の観劇、感慨深かったです。
(敬称略)


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